まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう 作:ヒラメもち
初日の夜にライブして、次の日は物販してお昼にライブやって、また物販して、この2日間はハードだった。
でも、楽しくて、幸せな気持ちだった。
お兄ちゃんたちが来てくれるのはもちろんのこと。
みなみちゃんやフリルちゃんたちクラスメイトとか、タイキ君やあかねちゃんとか、ゆきちゃんやノブユキ君やケンゴ君、いっぱい知り合いが来てくれた。
おじいちゃんとおばあちゃん、メイちゃんやアオト君、ママのお母さんもネットで見てくれてるって話だったし。
そして、名前も知らない人たちだけど、大人から子どもまでライブに来てくれて、どんどん私たちのファンになってくれてる。たくさんの人がグッズも買いにきてくれて、いっぱい笑顔も見れた。
やっとアイドルになれたんだって実感できて、すごく嬉しいし。
ママもこういう業界でお仕事してたんだって、知ることができた。
こんなに疲れても、ファンの前では笑顔を見せ続けていたんだって。
「づがれだ~」
「メムさんったら、まだまだ体力ないわねー」
「かなちゃんも足ガクガクしてるじゃん」
私たちはスーツケースをころころしながら、車まで向かっていた。
メムちゃんもバイトでそこそこ体力があるほうで、かなちゃんも昔からトレーニングしてる。
でも2人よりも体力がある私だって、とても暑い中で歌ったり踊ったり、それと物販でほぼ立ちっぱなしはキツかった。
「仕方ないよぉ。今日はお昼からずっと衣装だったもん」
「冷房が効いた楽屋はごった返しを通り越して、ごった煮だったものね。満足に休む場所もなかったわ」
たくさんのアイドルグループが出ていて、しかも人数がすごく多いところもあるから、楽屋はカオスだったよね。
「はぁ~ アイたちの時はメインステージで、別室を用意してもらえたのよね……」
ミヤコさんの表情がヤバイ!
普段は苺プロのマネージャーたちの統括もやってるし、私たちのマネージャーの1人でもあるし、もうすっごくお世話になってる。
「あっ、ごめんなさいね。JIFは規模が大きくて仕方ないもの。壱護もこうして私を先に帰らせてくれてるし」
この後はメイちゃんをお迎えに行って、そこから家事って、いいお母さんでもあるよね。
「よーし! なら来年はメインステージ行こう!」
「みんなが気楽に休める楽屋のためにだねぇ!」
「まっ、それくらいの意気込みよね」
メムちゃんもそのうち
のんびりしていたらタイムアウトって、経験しているから。
「だからヒムラさんに新曲頼んでおいてねー!」
「欲を言えばそうだけど、気が早いねぇ」
「デビューもしてなかった私たちに作ってくれただけでも光栄なのよ」
「まったく、純粋に期待してくるところは母親譲りね」
えー、だって、ママたちの頃からいっぱい曲を作ってくれてたじゃん。
B小町の曲と言えばヒムラさんだし、2代目B小町って感じの新曲だったのも嬉しかった。アイドルを引退したママが歌ってる曲も作ってくれてる人だもん。
「わかったわ。彼にもまた頼んでみるわね」
「さすがミヤえも~ん!」
次はどんな曲だろうってワクワクしてると、あんなに疲れてたのに、なんだか元気が出てきた。
軽くなった足取りで、車の側で待っていてくれてるパパやお兄ちゃんの姿を見えてくる。無性に抱きつきたくなるけど、ここはまだ外だからがまんがまん。
「お疲れ様です」
「ええ、ありがとう」
そう言ってパパはミヤコさんを車の助手席に乗せてあげてるし。
『先に乗っておけよ』って私たちに言ってくれるお兄ちゃんは、そのムキムキな腕で、私たちの持ってたスーツケースをどんどん後ろに積んでいくし。
私のパパとお兄ちゃんが見た目も性格もイケメンすぎるよ。
「みんなおつかれ~」
「ママぁ~ ルナぁ~」
「ふみゅぅ」
お兄ちゃんにお礼を言ってから、私は車の中で待ってたママやルナに抱きつく。なんか疲れが完全にふっとんだ気がするし、ここはオギャバブランドだよ。
「ルビーも大きくなったね~」
「ばぶぅ~」
ヨシヨシしてくれるママより背が高くなったけど、溢れる母性は偉大だと思う。
お膝に座っているルナはもちもちな抱き枕のようだし。
「おかげで重いんだけど」
「えー、アイドルだから羽のように軽いでしょ」
私がアイドルになって、みんなが推してくれて、すっごく喜んでくれて、愛されてるって感じて幸せだなぁ。
「ほら、私たちが座れないでしょ」
「ごめんごめんー」
乗り込んでくる かなちゃんに謝りつつ、私は1番後ろの席に移動した。
「いつも通りか」
「モテモテだねぇ」
かなちゃんと私で、お兄ちゃんを挟むように座ることになる。昔よりだいぶ大きくなってギューギューだけど、それがいいんだよ。
「ふふっ」「むふ~」
「とりあえず、シートベルト、だな」
照れてて、遠慮したように縮こまってるお兄ちゃんが可愛い。
しかもママの綺麗な後ろ姿も見えて、ここはベストポジションすぎるよ。
最後にメムちゃんも乗って、みんなでパパにシートベルトを締めたか確認してもらったら、車が出発進行する。
「そだ、ライン返さないと」
私は携帯を取り出して。
みなみちゃんでしょー、フリルちゃんでしょー、他にもクラスメイトの誰が来てくれてたかなー。
それにあかねちゃんとかタイキ君とか、ゆきちゃんたちとか、『来てくれてありがとう』って感じのメッセージとスタンプを送る。
「じゃあ私も返そうかしら…ネー」
「対抗することでもないだろ」
かなちゃんやお兄ちゃんが何か話をしてるけど。
感想を送ってくれてる子もいるから、メッセージを打つので忙しかった。
「あっ…… 今日も見てくれたんだ……」
「よかったな」
「なになに?」
そう言いながら横を向くと、スマホの光に照らされてる かなちゃんが幸せそうに笑ってた。
「ママからメッセージが来てたってだけよ」
「いいことじゃん!」
かなちゃんのママは東京から離れたところで暮らしてるらしくて、それでもライブが観れるなんてネット中継のおかげだね。
いいなー、いつか私も『お母さんたち』にもライブを観てほしい。
そのためにも、テレビに出れるくらい有名にならないと。
「いよいよ始まったって感じがしますよぉ」
「youtuberでアイドルか~ なんだか時代だね!」
「使えるものは取り入れていくべきだよ」
ママとルナちゃんとメムちゃんも楽しそうに話してて、運転してるパパやミヤコさんも何かを話しているみたい。
ラインの返信もとりあえず落ち着いたし。
車がゆっくりとカーブを曲がっているくらいで。
「わ~」
「わー」
「ちょ!?」
お兄ちゃんにもたれかかると、ノリがよくて かなちゃんに少しもたれかかったみたい。
私はカッコいい横顔を見上げて。
「せんせ! ライブどうだった?」
「今日もよかったよ。ガチで推せる」
はふぅ~ 幸せマックスだ~
生まれ変わってよかった~
「もっとほめて~」
「私も私も!」
「えらいね。いっぱい頑張っているのが伝わってきた」
でしょでしょ。
私もかなちゃんもメムちゃんもいっぱい頑張ってるもん。
ママのヨシヨシも、せんせのナデナデも、どっちも最高すぎるよ。
「3人ならもっと凄いライブをやれるはずだ。この時点で最高評価を出すには惜しいな」
「さすがドルオタお兄ちゃん!」
「目にもの見せてやるわよ!」
「期待が
私はもう16歳でアイドルなんだから、もっともっとお兄ちゃんせんせをメロメロにしてやる。
いろいろな意味で、かなちゃんと一応メムちゃんとは競争相手でもある。もちろん最高の仲間なんだけどね。
「ん、今日はしっかり休んで、明日は反省会だよ☆」
「「「はい!」」」
ママの笑顔に、私たちも笑顔で頷く。
抜き打ちでも表情を作れるように、毎日のトレーニングはバッチリだよ。
「なんてね。リラックスリラックス~」
「子どもたちもすっかりプロね」
「ですね。アイもみんなもえらいな」
ミヤコさんに相づちを打ちながら、パパは私たちを褒める。
ママが『えへへ~ ほめてくれた~』って言ってて可愛い。
「まさかアイドルの先生にまでなるなんてな」
「ん、自分でも不思議な気分だよ」
信号待ちをしている間に、パパは車の鏡で見てそうだけど、ママは絶対幸せそうな表情だと思う。
「それにすっかりドルオタ! 箱推しって言うんだっけ?」
「だな」
推しのアイドルなママにも推してもらえるなんて、幸せマックスが限界突破しちゃうよ。
マルチタレントとして忙しいだろうけど、またライブを観に来てくれると嬉しいな。
「お兄ちゃんの番もあるよね」
ルナに頷くお兄ちゃんの横顔がカッコいい。
でもどういうことだろう。
「まだまだ企画段階だろうがな」
「そうそう、舞台がね」
私は舞台ってあまりイメージがわかないけど。
「舞台ですって?」
「ホント? アクアの演技を目の前で見れるの?」
「そうなの!?」
つまり、映画やドラマを撮影するのとは違って、お兄ちゃんがライブするようなものじゃん。
サイリウム持っていくべき? 青でいいのかな?
「またみんなで応援に行かないとな」
パパの言葉に私たちみんなでうんうんと頷いた。
これからも、楽しみでワクワクすることがいっぱいだね。