まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう 作:ヒラメもち
私たち2代目B小町は、ファーストライブから充実した日々を送っている。
MVを撮影してアルバムを出したり。
何度か小さいライブも開いたり、みんなで動画を撮ったり。
私はママと一緒にバラエティ番組に出演させてもらったり、かなちゃんは役者も両立していたり、メムさんは配信がもっと盛り上がったり。
やっとアイドルになれたし、ママたちが活躍している芸能界に入れた実感が出てきた。
「私も
「ようこそ芸能界へ、ってところかしら」
「ルビーちゃん、お茶の間で大人気みたいだよねぇ」
だって私は、『可愛くて頭が良くて気づかいができる子』だもん。
壱護さんが言ってた、『自分のキャラクターを印象づけろ』って。
『1つの番組でせいぜい30秒、そのチャンスを逃すな』って。
だから私は『星野アイの
だってそれは事実で自慢したいことだし。
「や~ これって私とお兄ちゃんとルナだけの特権ってやつだよね!」
『私たちの子どもたちです』って自信を持って言ってくれて。
「ママとパパありがとぉ~!」
「純粋にいい子だねぇ」
「メリットだけじゃない。もしあんたが何かやらかしたら、アイさんに影響するリスクだってあるのよ」
うっ、それはそうだよね。
「まあ、あの人たちなら、笑ってフォローするんでしょうけど」
それもそうだと思う。
私の周りにいる人、みんな優しいもん。
でも かなちゃんの言う通り、スキャンダルなんてもってのほかだよね。
どんなことがイケないんだろ。
とりあえず、歩きスマホとかしないように気を付けてるけど。
「まっ、コネでもなんでもいいから、波に乗り続けて有名になっておきなさい。じゃないと、私がセンターの座を独占しちゃうから」
「目に見えて登録者数を稼いでるのは私だよぉ?」
「私だって知名度どんどん上げてやるもん!」
こんな風に私たち3人は、同じアイドルユニットの仲間で、そしてライバルとして切磋琢磨しています。
お兄ちゃんからも口酸っぱく言われてるもんね。
『スタート地点に立ったにすぎない。芸能界で生き抜くことが大変なんだ』って。
もっともっと実力をつけて、いろんな手段でどんどん知名度をアップさせていかないとね。
「さっ、そろそろ時間よ。対決といきましょうか」
「コラボって熱くなるねぇ」
「このストレイライトとの対決コラボで私たちB小町の存在を世界にアピールしよう!」
『おー!』って私たちはハイタッチした。
☆☆☆
あの3人がストレイライトのメンバーで、
コッテリしたオタの人気をめちゃくちゃ稼ぎそうな子、見た目も雰囲気も正統派アイドルって感じの子、女子ウケもしそうなカッコイイ子だ。
それぞれの個性で多数のファンを集めている人気アイドルユニットで、少し先輩なアイドルたちでもある。
そしてこれから、知力・体力・運というジャンルで代表者が対決する3本勝負をする。その様子を収録して、動画サイトで配信して、最後にはステージで対バンライブをするんだって。
「さあ、始まりました! Belles of three. Stray match!」
司会さんによって盛り上がってる、ように見える演出のためスタッフさんたちが声を出している。
その中にはミヤコさんやお兄ちゃんの姿もあって、マネージャーとマネージャー見習いとして来てくれた。最近はママに付き添ってるパパのように、ボディーガードもこなせる自慢のお兄ちゃんだよ。
最初はブレインバトルで、知力対決。
スポーツ、芸能、学問、雑学、社会、それぞれのジャンルのパネルが用意されてて、それで早押しクイズをする。いわゆる『パネルクイズ アタックなんとか』ってやつ。
「ストレイライトの代表は、ふゆちゃん!」
「今日のために勉強してきました! がんばります!」
生で見ると、胸の大きさもすごい!
黒猫っぽいファッションやフワフワな髪も可愛いし。
「対するB小町の代表は、ルビーちゃん!」
「よろしくお願いしまーす☆」
軽くお辞儀をして、自然っぽく髪を揺らす。
そして人懐っこい笑顔を浮かべる。
お兄ちゃんが褒めてくれる髪、ママ譲りの可愛い容姿を、カメラの向こうのみんなを意識してアピールする。
ママが言ってた、『ステージの上だとどの角度からも、みんなに可愛くしなきゃいけない。けど、テレビではカメラに可愛く思ってもらえばいいし、MVと同じ要領で簡単だよ』って。
「ファイトっすー!」
「がんばりなさいよー!」
あさひちゃんや かなちゃんが応援する声が聞こえてきて、カメラの映り込みを意識しながら、私は元気よく手を振る。
司会さんがルールを説明してくれたから、いよいよスタートだね。
「まずは小手調べ、芸能の10からいきましょう!」
クイズ対決に勝つことがすべてってわけじゃないけど。
私はこういう番組でも活躍できるんだってのをアピールしないと。
「問題、舞台などで出演者の立ち位置にあらかじめ目印を」
聞き終える前に、ポンと手元のボタンを押した。
「ルビーちゃんが早かった、どうぞ!」
「バミる!」
ピンポンピンポンな正解の音が鳴って、ちょっと飛び跳ねるように喜ぶ。
「やったー!」
嬉しかったのも本音だけど、私の『キャラクター』を印象付けるには、いつも以上に一喜一憂しないとね。
「あーん、わかってたのに! ふゆも早押しもがんばらなきゃですね!」
ふゆちゃんも応援したくなるような声や仕草でそう言ってて、それがあの子の『キャラクター』なんだろう。
「さあ、正解したルビーちゃん、好きなパネルをどうぞ!」
「はい! それじゃあ、学問の10で!」
知力対決は続いていく。
前世で入院してた頃はクイズ番組もよく見ていた。それに、かなちゃんから芸能や雑学の本を借りて読んでるし、学問はママと一緒にお兄ちゃんに教えてもらってる。
ふゆちゃんはすでに高校卒業してて、学問だけじゃなくて、スポーツや社会のジャンルに詳しいみたい。
だから、12問を終えて同点だった。
大事な13問目だけど。
「高地トレーニングを行うことで得られる、血液中の赤血球の増加を促す造血因子はエリスロポエチンである、〇か×か!」
ぞーけついんしって何!?
もしミリオネアなら、テレフォンしてお兄ちゃんせんせに教えてもらいたいよ!
「ふゆちゃん正解!」
「あははっ、ありがとうございます」
当てずっぽうなのか、それとも知っていたのか分からないけど、40点差がついちゃった。
次に選ばれたスポーツの50点はお互いに答えられなくて。
というか雪合戦に国際ルールなんてあったの?
「ではラストの問題、学問の50点!」
よしっ、これに答えれば逆転できる。
私は気合を入れ直してボタンに指を添えた。
「化学組成はベリル、結晶系は六方晶系、モース硬度は7と1/2で青色、さてこの物質は何!」
またよく分からない単語のオンパレードだし、お兄ちゃんなら知ってそうだけど。
「化学の問題… ってことは薬品?」
私が悩んでいるうちに、ボタンが押される音が聞こえてきた。
どうしよ、ふゆちゃんは分かってるのかな。
「さ、サファイア?」
「残念、違います!」
司会さんがハズレって言ってくれて、ちょっとだけ猶予はできた。
物質じゃなくて宝石を答えればいいんだ。
私の知ってる青い宝石なんて少ないし、度胸で答えよう。
「次はルビーちゃん、答えをどうぞ!」
「答えはアクアマリン!」
自信満々に言ったら、正解の音が鳴り響く。
「やったぁ-! ホントに当たっちゃった! 愛久愛海だ!」
嬉しすぎてぴょんぴょん跳ねちゃった。
ママやパパがお兄ちゃんに付けてくれた名前だもん。
「すごいな! おめでとう、ルビーちゃん!」
照れてるとこが可愛らしいお兄ちゃんに抱きつきたい気持ちを抑えつつ。
カメラを意識しながら、笑顔を崩さないふゆちゃんに笑顔を返す。
「ルビーちゃん、最後の最後に大逆転! ブレインバトルはB小町に軍配が上がりました!」
司会さんがそう宣言してくれると、スタッフさんたちから拍手が起きる。
「ふゆちゃんも物知りで、ギリギリだったよ!」
「いつかまたクイズ対決するときは、ふゆが勝ちますから!」
私たちはギュッと握手をする。
熱くなってる瞳で、たぶんこの子も負けずぎらいなんだろうなぁ。
「会場のみんな、素晴らしい戦いを見せてくれた両者に改めて拍手を!」
カメラに向かって、私たちは揃って可愛くピースをする。
私がお兄ちゃんやミヤコさんを視界に入れてるように、ふゆちゃんも誰かを見てる気がした。
ともかく、コラボ対決の3番勝負、2代目B小町が1勝だよ。