まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

72 / 108
番外編33 (瑠美衣視点, 東ブレ⑥)

 

 

 今日は土曜日ですが、レッスンやライブもなくてお休み、だから私はショッピングに出かけていました。

 

 みなみちゃんとフリルちゃんも予定を合わせてくれたんだ。こういうJKの青春にも憧れていたし、友達と東京の街で遊べるなんて夢みたいだよ。

 

 ルナも来ればよかったのに、最近こたつ大好きコタツムリなんだよね。気持ちは分かるけどさ。

 

「おかげで楽しい動画になりそう! ありがとね!」

「ええよぉ、100円ショップって見るだけで楽しいもん」

「MEMちょの反応が楽しみ」

 

 帰ったら『箱の中身を何か当てるゲーム』をするんだけど、そのアイデアを出し合ってるだけでだいぶ時間がたっちゃった。フリルちゃんの言う通り、かなちゃんやメムちゃんがビックリするといいな。

 買った『たわし』はパパにプレゼントできるし、一石二鳥だね。

 

 今日はたくさんウィンドウショッピングしたもんね。だからチートデイってことで、久しぶりにフライドポテトもシェアして食べた。めっちゃJKしてる気分だよ。

 

 もう夕暮れ時だから、そろそろ帰らなきゃね。

 お兄ちゃんたちも早く帰る日らしいから、練習してるとこの近くで、私もパパの車に乗せてもらう予定なんだ。

 

「帰りはフリルちゃんのお姉さんに送ってもらうんだったよね?」

「そう、家がそこそこ近いから」

「すごくいい人なんやけど、緊張するんよなぁ~」

 

 フリルちゃんのお姉さんも昔はアイドルだったらしくて、今は姉妹揃ってマルチタレントをやってる。しかも秀知院学園ってとこの出身なんだって。

 その高校は偏差値がすごく高くて、でもお兄ちゃんなら受かるだろうって聞いてる。

 ふふん、せんせは頭いいもんね。

 

「はっ! もしかしてフリルちゃんもB小町に興味ある!?」

「ごめんなさい。MEMちょの追っかけで忙しいから」

 

 ばっさりと断られちゃった。

 女優としても忙しいのに、ちょっとしたライブでも来てくれるだけで嬉しいけどね。

 

「みなみちゃんはどう? 可愛いからいけるって!」

「うち、人前で歌って踊るの無理よぉ~!」

 

 『誘ってくれるんは嬉しいけどなぁ~』って照れてて、顔も性格も美少女すぎるよ。

 クラスの男子もすぐアプローチかけようとするから、しっかりお姉さんな私がガード固めてあげないとね。

 

 だんだんと見えてきたのは普通な建物だ。

 舞台の練習に使っているって聞いてたから、もっと和風だと思ってた。

 

 フリルちゃんも来るのは初めてみたいで、興味津々な私たちはこっそりと窓から中の様子を見てみる。

 これまた普通な廊下だけど、そこを歩いている男の人がこちらに気づいたみたい。

 

「ぴゅ~ キミたちも役者?」

 

 髪を染めてて、腕まくりしてて、上手に口笛をして、しかもイケメンだ。

 窓からスタイリッシュに登場してきて、男性アイドルっぽさもある。

 

「鴨志田朔夜(さくや)?」

 

「へぇ、俺のこと知ってるんだー

 っと… そっちこそ不知火フリル?」

 

 『もしかしてお友達?』って私がこそこそ聞くと、『前に見た2.5のドラマに出てた』ってフリルちゃんが冷静に教えてくれる。

 マルチタレントとして顔が広いけど、芸能人として知ってただけなんだ。

 

「あっ! じゃあ、わたしはわたしは~?」

 

 自分のあごに指を当てながら聞いてみる。最近はB小町の活動をすごくがんばってて、バラエティの番組にもほんのちょっと出られることもあるし。

 

「あー、役者の子?」

 

 がーん、確かにそういうのもしてたけどさ。

 私の知名度もまだまだかぁ…

 

「せっかくだからさ、名前教えてよ」

 

 イケメンのウィンク、これは女子ウケしそうな人だね。この人も芸能人らしいし、教えても平気かな。

 

「ルビーです! B小町でアイドルやってます!」

 

「なるほど、ルビーちゃんは かなちゃんの友達なんだ」

 

 そう言ってから、『あー星野アイさんの()ねー』って鴨志田さんは小さく呟いた。

 あの、露骨にイケメンスマイルが向けられなくなったの感じるんですけど。

 

「ねぇ、君は?」

「うち、みなみって言います…モデルです…」

 

 そこから、どこの事務所だとか、そこに友達いるだとか、ライン交換しようよだとか、どんどん攻められてる。

 

「ノノンやクレハちゃんも呼んでさ、今度みんなで遊ばない?」

「えっとぉ~ 先輩たちのご都合もありますから……」

 

 これは、かなりのやり手だよ!

 みなみちゃんは押しに弱いのもあるんだけども。

 

「ところで、姫ちゃんたちの練習は見れる?」

「そうそう! お兄ちゃんたちまだかかりそう?」

 

 フリルちゃんが話に割り込んでくれて、私も畳み掛けた。

 

「姫川さん? それと、アクアのことかな?」

 

 やった、食いついてきたよ。

 さすが私とフリルちゃんだね。

 

「あー、俺の顔が利く時ならともかく、今回そういうの厳しそうだからねー」

 

 やんわりと断られたけど、フリルちゃんは残念がっている様子はなかった。私はお兄ちゃんやタイキ君の練習見たいけど、本番を何倍も楽しむために我慢してる。

 

「でも、キミたちのためだ。とりあえず、頼み込んでみようか?」

「あ、大丈夫です」

 

 タイキ君のお父さん、メリハリとか大事にしそうだし。

 

 思わずストレートに断っちゃって、失礼だったかなって思ったけど。

 鴨志田さんはイケメンスマイルを浮かべていて、気にしてはいないみたい。

 

「それにしてもアクアの妹なんだ」

「はい! そうです!」

 

 お兄ちゃんの妹は、私とルナだけの特権だよ。

 

「まだ高校生なのに、いい役者だよねー」

「ホントですか!?」

 

 それから、鴨志田さんはお兄ちゃんのことを褒めてくれた。

 

 演技の時は常に冷静だとか。

 共演シーンもやりやすいだとか。

 いわゆるチャンバラに付いていけるだとか。

 

 何より、話してみると意外と愉快なやつだとか。

 

「またお兄ちゃんに男友達ができるなんて!」

「せ、せやなぁ~」

 

 クラスにも話し相手がいるくらいで男子の友達はいないし、まあそういうところもお兄ちゃんせんせらしいけどね。役者の友達がちょっとずつ増えてて、私は嬉しい気持ちでいっぱいだよ。

 フリルちゃんが『食いつきがいい』って呟いたけど、なんのことだろ。

 

「……おっと、そんなに喜んでくれるなんてね

 そうだ、ルビーちゃんたちも友達になろうよ」

 

 そう言ってスマホを片手で操作して、QRコードを見せてくる。

 

 つまりライン交換ってことだよね?

 こういうお誘いには気を付けろって教わってるけど、お兄ちゃんの友達なら大丈夫だよね!

 

 

 そんなとき、『カァー』ってカラスが鳴く声がした。

 

 

「おっ、まじで不知火とルビーじゃん」

 

 タイキ君、それとメルト君が歩いてくる。『今日あま』のヒーロー役をしていた人で、この舞台にも出るって話は聞いてた。

 

「タイキ君この前ぶり! メルト君も久しぶり!」

 

 『えぇ!?』って驚きを見せたのは、みなみちゃんとメルト君だけど、そんなに意外なのかな。

 それにしても、メルト君の左手にはテーピングが巻かれてて、練習すごくがんばってるんだね。

 

「……姫川さん、今日は居残りだったはずでは?」

「腹ごしらえだよ。とりあえずラーメンでな」

 

 鴨志田さんとタイキ君が話してて、ラーメンって響きがいいよね。

 本格的にアイドルを始めてから、さすがに外食でラーメンなんて控えてるし、今日はチートデイでフライドポテトを食べちゃったし。

 

「なるほど、それじゃ俺は先に上がっておきますよ。お疲れ様でした」

「おーう」

 

 それにしても、タイキ君はパーカーだけだから寒そうだね。

 練習の後だから身体が温まってるかもしれないけど。

 

「メルトも、明日の稽古に響かない程度に頑張れよ」

「はい! お疲れ様でした!」

 

 メルト君はビシッとお辞儀をして、なんだか運動部の先輩後輩って感じだね。タイキ君とメルト君もラーメン食べてから練習に戻るって、そういうのも青春っぽいよね。

 

 というか、ライン交換はいいの?

 そう聞く前に鴨志田さんは『またね』って、私たちにウィンクをして建物の玄関に向かって歩いていく。

 

 ホントに男性アイドルみたいな人だったなぁ。

 

「アクアのやつなら、有馬を待ってるぞ」

「そっか! りょーかい!」

 

 さすがお兄ちゃん、女の子を待ってあげるなんて紳士的だよね。

 

「ここで待ってるのも寒いだろ。入ってすぐのとこで座って待つといい」

「あれ、いいの? 怒られない?」

 

 部外者は立ち入っちゃダメって感じだし。

 

「別に平気だと思うけどな。まあ怖そうなオッサンに何か言われたら、俺の名前出しておけばいいよ」

「わかった!」

 

 なるほど。

 たぶん金田一さんがここのボスだから、姫川さんも顔が利くってことだよね。いい人とどんどん仲良くして、こういうコネが使えるようになると、私も一端(いっぱし)の芸能人してるって感じがしてくるよ。

 

『なぁ、この2人ってさ』

『純粋な仲良しさんなんやろなぁ~』

『それに天然コンビ』

 

 ひそひそとメルト君たちが話してて、もうみんなは仲良くなったのかな。でもライン交換って話までは進んでなさそう。

 

「じゃあ俺たちは行くから」

「あー、また機会があれば?」

 

 タイキ君は手を軽く上げながら歩いていって、メルト君も軽く会釈をしてから追いかけていった。

 

「ん、またね~! 舞台楽しみにしてるから~!」

「えっと、またいつか?」

「風邪引くなよー」

 

 そう言って私たちは2人に手を軽く振った。

 フリルちゃんの言う通り、もう少し厚着してほしいよね。

 

 

 さっ、お兄ちゃんとかなちゃんを待とうかな。

 今日はメムちゃんも(うち)に来て動画も撮るし、みんなと一緒にご飯、すごく楽しみだよ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。