まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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番外編40 (オリ主視点, 東ブレ初日公演⑥)

 

 天真爛漫な笑みを浮かべるツルギは両手に握った双刀で連撃を行う。

 対する刀鬼も最初は防戦一方だったが、次第に反撃を始めた。

 

 しかしその経験からか、何度も急所を狙おうとしてしまい、その度に彼は踏みとどまる。鞘姫と同年代の少女を傷つけることができないのだろう。

 

 たとえブレイドと互角の実力の剣士である刀鬼といえど、戦いに迷いが生じていることもあり、ツルギの猛攻により均衡は崩れていった。

 

「くっ……!」

 

「もらったぁ~!」

 

 ツルギによって弾き飛ばされた刀が天高く舞い、カランカランと地面を転がる。

 その隙を作ったツルギは遠慮なく踏み込んでいった。

 

 そして、刀鬼の身体の前に刀を突き付ける。

 

 それでも刀鬼の瞳はまだ戦意を失っていないが。

 

「私の勝ち! これであんたも私らの配下だな!」

 

 刀鬼が一度距離を取るとほぼ同時に、ツルギが勝利宣言をする。

 

 その言葉に驚き、刀鬼の動きが止まった。

 確かにあのまま斬られたのなら、軽くない傷を負ってはいたが、それで諦めることはないだろう。ただし、それは決闘や死闘だった場合だ。

 

「俺が…負けた……?」

 

 本気ではなかったし、たとえ盟刀がこの手になくとも戦い続ける意志はある。

 

 しかし剣士としての勝負に負けたことは事実で、戦いの最中でもツルギは楽しそうだった。

 

 出会ったことのない価値観に混乱し、刀鬼は己の顔を抑える。

 珍しく彼は感情を見せているが、『分からない』という言葉があてはまるような表情だった。

 

「じゃあ、次は俺がどっちかと戦うとするか。鞘姫ってやつも強そうな剣士みたいだな」

 

 戦いを見ていただけなので、居ても立っても居られない、そんなブレイドは鞘から刀を引き抜いて、その緑色の刀を構えた。

 

「っ! 待てッ! ブレイド!」

 

 刀鬼は焦って立ち上がり、武器を拾いに行こうとする。

 

 そんなとき、眩しいほどの翠緑(すいりょく)の光が辺りを包み込んだ。

 

「なんだぁ!?」

 

 ツルギが驚いた声を出し、ブレイドや刀鬼も腕で目を隠した。

 

 その直後に、緊急事態を知らせるかのごとく、一瞬だけ視界が赤く染まり。

 ステージでは桜の花びらが散るように、紙吹雪が舞った。

 

「さっきの光はなんだ? 盟刀の能力か?」

「それにしては何事もないだ……?」

 

 ブレイドやツルギはお互いに見合って、不思議そうな表情を見せる。

 

 周囲を見渡し、やがて2人は大きく目を見開いた。

 

「そんな…」

「おいおい…何があった…?」

 

 そんな様子に刀鬼もゆっくりと背中側に視線を向けていき、何かに気づいたことで慌てて身体を反転させる。

 

「鞘…姫……?」

 

 ステージの一部だけ、赤いスポットライトで照らされたままだ。

 

 モニターに映った白い着物姿の女性は、地面に倒れ、死んでいるかのように目を閉じていた。

 

「たった一瞬…目を離しただけで…これだけの傷を…負っただと……?」

 

 鞘姫を前に、膝から崩れ落ちた刀鬼の背中が映り込んだ。

 

 彼の絶望した表情は、演技のレベルを越えて、本当に経験したことがあるかのようだ。

 多くの観客が口元を抑える。

 

「鞘姫を…守れなかった……? 俺が…弱いせいで……?」

 

 呆然と言葉を話すが、決して無表情ではない。

 

 絶望して

 悔しくて、悲しくて

 無力な己が(ゆる)せない

 

「誰だ……誰が鞘姫を……傷つけた……?」

 

 涙を流しながら、彼は怒りの感情を見せていた。

 

「その盟刀……お前の仕業か……ブレイド……?」

 

 そう呟き、幽鬼のように立ち上がり、己の盟刀に向かってふらふらと歩いていく。

 

 確かにブレイドの盟刀である『風丸』も緑色で、風の能力で遠隔攻撃もできるが。

 

「は、はぁ!? まだ戦ってもないのに!?」

「ツルギ離れてろ! 来るぞ!!」

 

 焦った様子のブレイドが前に出て、刀を構えた。

 

「刀鬼のやつ、冷静さを失ってやがる」

 

「……俺は鞘姫を守れなかったッ!!」

 

 刀鬼は刀を握り込んで、地面を破壊するかのように踏み込み、鈍い音を立てる。

 

あ"あ"あ"あ"あ"!!!

 

 彼は獣のような叫び声を響き渡らせた。

 

 いつも優しい愛久愛海の姿からは全く想像できなかった表情だ。

 そんな演技の幅を、役者として世界に刻み付けようとしているけど。

 

 まるで復讐者のようで、あんなに自分を追い込みながら感情を引き出す姿は、見ているこっちまで(つら)くなる。

 

「ブレイド……!!」

 

 刀鬼は刀を鈍器として扱うように強引に斬り込んでいく。

 ブレイドは最小限の足運びをしながら、刀で剣戟(けんげき)をいなす。

 

「あ"あ"あ"!!」

 

「お前にしては、力任せな大振りだな」

 

 BGMもなく、静かな世界でその金属がぶつかる音が鳴り響く。

 

 今日の戦いは自然な程度に派手で、どれも盛り上がったけど。

 見えている光景はとても寂しくて、現実的な戦いでもあった。

 

 このままでは(らち)が明かないと、ブレイドも反撃を行うが。

 

「へぇ、ただ怒りに身を任せてるってだけじゃないのか」

 

 刀で的確に弾かれたことで、彼は笑みを浮かべた。

 

「ハァ…ハァ……ユル…サナイ…」

 

 額から首筋に向かって汗が流れ、刀鬼の瞳には冷たい炎が見えている気がする。守れなかったことを後悔し、周りを全て壊したいと思い、何よりも自分を責める。そうすることでこの戦いに勝とうとしている。

 

 刀鬼は矢のように向かって飛び込んだ。

 守りを完全に捨て去っている戦い方は勢いがあるけど。

 

 その太刀筋は、前回の戦いの時よりも直線的すぎた。

 

「剣士として、いや、それとも鬼の本能ってやつか?」

 

 涼しい表情でブレイドは斜め方向に斬り下ろしを行い、勢いよく振り下ろされた刀を滑らせるように弾き飛ばす。

 

 刀鬼とは筋力の差があろうと、彼が理性を失っている状態では、ブレイドの技量には勝てるはずはない。

 

「ツルギ、そっちはどうだ!」

 

「出血が酷いだ! 早くお医者様に診せねぇと!」

 

 戦っている間にツルギは、倒れている鞘姫のところに行っていた。

 

 そのことに気づいた刀鬼が襲う(まもる)べく、そこに駆けていこうとする。

 

「おい! 気持ちは分かるが落ち着け! ぐっ……」

 

「ガァァ!!」

 

 ブレイドはツルギたちを守るために立ち塞がったが、首筋を牙で噛み付かれた。

 その苦痛に一瞬だけ顔を歪めたけど、すぐさま、その襟首を掴んで投げ飛ばす。

 

「グルル……」

 

 刀鬼は体勢を立て直し、姿勢を低くして狼のように構えた。

 

「どう言っても止まる気はないか。こういう死闘は好みじゃないが…… いいぜ、本気でやってやる」

 

 ブレイドは胸の前で刀を構え、その切先(きっさき)を向けた。

 

 先に動き始めたのは刀鬼で、両手の爪で再び喉元を狙ってくる。

 

「なんて怪力だ」

 

 そんな連撃に対して、ブレイドは刀で何度か防御しながら、刀鬼の動きを探っていた。

 

 鬼としての戦い方について、彼は冷静に見極めていく。

 防戦一方に見えるが、着実に差を埋めていっている。

 

「刀の一撃に似ているところはあるな」

 

 彼はこの戦いの中で成長していた。

 その証拠に、足運びにどんどん余裕が生まれている。

 

「多少の怪我をしても、文句言うなよ!」

 

 意を決してブレイドは胴を狙って水平斬りを行った。

 

 素早い動きで狙い澄ました一撃、そう簡単には回避できないはずだが。

 

 刀鬼は反射的に動いてみせた。

 

「なっ!?」

 

 ブレイドは驚きの表情を見せる。

 勢いよく刀鬼が姿勢を低くして回避したことにより、危うく首を斬るところだった。

 

 殺し合いを望んでいないからこそ、ブレイドは隙を見せてしまう。

 

「ぐぁ……!?」

 

 ブレイドは回し蹴りを何とか腕で防いだが、抑えきれない威力によって地面を転がっていく。

 

「ブレイド、大丈夫だか!」

 

 ツルギが心配する声を出した。

 彼は確かに強いが、あくまで人の身であり、耐久力は決して高くはない。

 

「こんなの、師匠の蹴りに比べれば余裕だぜ……」

 

 そう言いながら腕の力で立ち上がると、右手だけで刀を握り込んだ。しかし左腕はだらりと垂らしていて、先ほどのダメージは確実に受けている。

 

 それでもいまだ闘志を失わず、彼は本気の瞳を見せて勢いよく地面を蹴った。

 

一ノ刃 疾風迅雷 突!

 

 己に風を纏い、雷を刀に籠めて、そんな高速の突き技だった。

 

 そんな一撃も、刀鬼は後方にジャンプして回避し、地面に手をつけながら回転して着地する。

 

 いわゆるバク転から突撃を行い、ブレイドの胴をすれ違いざまに爪で斬り裂いた。

 

 赤く視界が染まる。

 

「わ、私も加勢するだ!」

 

「来るなッ! ……(わり)ぃな、これは1対1の真剣勝負なんだ」

 

 慌てているツルギを止めて、ブレイドは再度気合を入れ直すように深呼吸する。

 

「やっぱ(つえ)ぇよ、刀鬼…… 惜しいのは、剣士としての決着をつけたかったぜ」

 

 『まっ、それは次の機会でいいか』と呟いてブレイドは、いまだ痛みで動かしづらそうな左腕で逆手持ちをする。

 

「お前、さっきから暴走してるフリだろ? 鬼としての潜在能力すら、だんだん使いこなし始めているんだろ?」

 

 ブレイドのそんな質問に、返事は返ってこない。

 

 鞘姫を一目だけ見て、構えを取る。

 そんな刀鬼の頬には雫が流れていた。

 

「いいから本気で来い! 刀鬼!!」

 

「……終わらせよう」

 

 一度目を閉じて、冷静に呟いた刀鬼からは、これが彼の最期の戦いだと伝わってくるようだった。

 

 ほぼ同時に、ドンと地面を力強く蹴る。

 

 お互いに出せる最速の動きだった。

 

「うおおお!!」

 

 槍のような手刀の突きに対して、ブレイドは逆手に持った刀で受ける。そのまま全身で押し込むように、刀鬼の突進を受け止めた。

 

 しかしまだ本命の右手の突きが残っている。

 

 その攻撃はギリギリで顔を逸らすことで、頬を掠めていく。

 

「行くぜ!!」

 

 雷を纏わせた拳が、刀鬼の身体に打ち込まれる。

 

奥義 鳴御雷(なるみかずち)!!

 

 

 落雷のような音が会場に鳴り響いた。

 

 

 緑色の雷が放つ閃光が会場を照らした。

 

 

「ハァハァ……すげぇな、刀鬼……」

 

 突き出したままだった拳を引いたブレイドは、刀を鞘に納めながらそう賞賛する。

 

 衝撃力によって刀鬼は後退していたが、咄嗟に足を広げてどっしりと構えることで、防御体勢を取っていた。

 それは大岩のようで、もしくは大盾のようで、決して膝をつくことはない。

 

「だが、俺の勝ちでいいな?」

 

「ああ、お前の勝ちだ……」

 

 もはや気力だけで立っているようなもので、刀鬼はさっきのダメージが相当なもののようだ。

 彼は両腕をだらりと下げ、一歩ずつ地面を踏みしめながら歩いていく。

 

「な、なんだ?」

 

「どけ……」

 

 彼は弱々しい声でツルギにそう伝え、片膝をついて白い鞘と刀を拾う。

 

 そんなとき、どたどたと駆けてくる足音がした。

 

「鞘姫様~!」

「やはり、傷移しの能力を使っていらっしゃったか!」

 

 渋谷クラスタのメンバーであり、服装に斬られた跡がある鬼たちが慌てて近寄ってくる。

 

「すまん刀鬼! 恐らく、俺たちの傷を自分に移し替えてくださったのだろう!」

「俺たちのせいっす…… 百目のやつに、一方的にやられてしまって……」

 

「……そうか」

 

 刀鬼の声に感情はなく、刀を納めた鞘を鞘姫の身体の上にそっと置いた。

 

 それは鞘姫の盟刀であり、その能力は剣主にしか扱えないとされている。

 何も起きないことを分かっていたのか、彼は暗闇を宿したような瞳でただ見つめるだけだ。

 

 彼女を守れなかった彼にとって、まるでここが彼の死に場所とでも伝えているかのよう。

 

「ど、どういうことだ?」

「何も起きないようだが」

 

「……鞘姫様の盟刀『桜花』、それは傷移しの力を持つのだ」

 

 ツルギやブレイドが尋ねると、暗い表情で大男の鬼が答えた。

 

「自分の受けた傷を配下の誰かに移すことができ、ほぼ無敵と言える能力なのだが……」

「鞘姫様はそれを……俺たちを助けるために使ってくれたっす……」

 

「だから、俺たちが戦ってても、傷が消えてたのか?」

「ですが、どうして私たちの傷まで?」

「渋谷にとって、私たちは敵じゃないの?」

 

 渋谷クラスタの鬼たちの話を聞きながら、キザミや女性の鬼たちも歩いてくる。匁を追いかけるためにも、先にブレイドに合流しようとしていたのだろう。

 

「鞘姫様はそういうお(かた)だからだ!」

「誰よりも國の平和を望んでいる方っす!」

 

 渋谷クラスタの鬼たちは涙を流して訴える。

 彼らも自分たちを責めるような表情が、見ていて(つら)い。

 

 そして、左腕を抑えながら、ブレイドもゆっくりと鞘姫に近づいていった。

 

「なら、ますます死なせるには惜しい剣主だな。この國の王になる俺の家臣になってもらわねぇと」

 

 そう言ってブレイドはしゃがんで、白い鞘に手を添える。

 

「何のつもりだ、ブレイド」

「刀鬼、お前と同じ考えさ。この傷を俺たちに移せば、こいつは助かるんだろ?」

 

 刀鬼が尋ねると、さも当たり前かのようにブレイドは答えた。

 

「はぁ~、2人揃ってそんな傷だらけで、もっとボロボロになるつもりだ?」

「よく分かんねぇけど、俺たちにも協力させてくれよ、なっ!」

「「はい、キザミ様!」」

 

 ツルギやキザミたちも、白い鞘に手を伸ばす。

 

「そんな奇跡が叶うのなら、いくらでも協力しよう」

「俺たちを救ってくれたんだから、当たり前のことっす!」

 

 当然、渋谷クラスタの鬼たちも、白い鞘に手を伸ばした。

 

「お前の相棒がピンチなんだ、力を貸せよ」

 

 しかし、いまだ盟刀の能力は発揮されない。

 鞘姫でしか発動できないのかと何人かが表情を曇らせた。

 

「どうか生きてくれ……鞘姫……」

 

 刀鬼は諦めない。

 

「俺は貴女を守るために強くなった。誰よりも優しい貴女のために戦ってきた。これからも全てを捧げるつもりだ」

 

 彼は奇跡を願い続ける。

 

 彼女を失いたくない気持ちがとても伝わってくる。

 

 きっと刀鬼も鞘姫を愛してるから。

 

だから生きて……その愛で…俺たちを照らしてくれ……!!

 

 彼は、心の底からを叫ぶ。

 

 『生きてくれ』って何度だって呼びかけ続ける。

 

 そんな願いに応えてくれるのだろうか。

 

 やがて盟刀『桜華』が、翠緑の光を放ち始めた。

 

 ここにいる全員が痛みを感じているような表情をしているけど、誰もが白い鞘から手を離さなかった。

 

 ステージに桜の花びらが舞い、少しずつ光が収まっていく。

 

「ぁぁ……」

 

「刀鬼……こんなに傷だらけになって……」

 

 鞘姫はゆっくりと目を開けて、すぐに刀鬼のことを心配しながら、彼の頬に手のひらを添えた。

 

鞘姫~~!! よがっだぁぁ~~!!

 

 とめどなく涙を溢れさせながら、彼は愛する女性を宝物かのように抱え込んだ。

 

 

 愛久愛海の幸せそうな嬉し涙を見てると、俺も目頭が熱くなってくる。

 『叶わないと思った夢』が叶ったような感情演技が、本物で完璧に思えたから。

 

 鼻をすすりながらアイや瑠美衣も、感動で涙を溢れさせている。

 月愛も、静かに涙を流していた。

 

 

 会場のあちこちで、この奇跡で夢のような光景を見て、たくさんの人が涙を流した。

 

 

 数分の余韻があって。

 

 

 ステージの幕が一度降りたような演出の後、雄大な自然の風景がスクリーンに映る。

 

 BGMが流れ始め、『東京ブレイド』とタイトル表示があった。

 

 さらに『脚本 鮫島アビ子 GOA』と出てから。

 

「よしっ、次の剣主を探す旅に出るとするか!」

 

 そんな明るいブレイドの声が聞こえてきた。

 

「匁を追いかけるためにも、まず千代田ですね! ブレイドさん!」

 

「百目のやつを地獄の果てまで追いかけるぞ、お前たち」

 

 キザミの声、そして刀鬼の声だった。

 

「なんで私より偉そうにしてるだ!」

「この中でナンバー2の鞘姫、俺はその懐刀だからだ」

 

 『むき~! 私が2番目に偉い大臣だ~!』『偉そうな女だ』とツルギが刀鬼と口喧嘩を始めたようだ。

 

「國を盗り、争いを終わらせましょう、ブレイド」

 

「ああ! 俺は王になる! そのためにも残りの剣主をみんな仲間にしようぜ!」

 

 そんな鞘姫とブレイドの会話に『鞘姫、体調はいかがですか?』と刀鬼が割り込み、『私と扱いが違いすぎだ~!』とツルギがツッコミを入れ、『楽しい旅になりそうだな!』とキザミが笑う。

 

「さぁ! お前ら、行くぜ!」

「ええ!」

「おう!」

「はい」

「ああ」

 

 まるで映画のエンディングのようにスタッフロールが流れ始めた。

 

 

 それが終わったら、役者たちが順番に登場してくれる。

 その度に拍手が巻き起こる。

 

 鳴嶋君と鴨志田君で仲良く肩を組んでいたり。

 

 かなちゃんが自信満々で誇らしげな笑顔だったり。

 

 大輝君がしっかりとこっちを見て大きく手を振ったり。

 

 あかねちゃんがお姫様抱っこされて登場して、丁寧にお辞儀したり。

 

 愛久愛海もお辞儀をしてから、幸せそうな笑顔で『ありがとう。愛してる。』って口パクで伝えてくれたり。

 

 

 あれは、見てくれてありがとうって意味なのかな。

 

 こっちこそありがとうなんだけども。

 役者としての頑張りを見せてくれたこととか、幸せそうに楽しんでいることとか、何より元気に育ってくれていることとか。

 

 まあ(うち)に帰ってきたらいっぱい褒めて、『愛してる』って言ってあげよう。

 俺とアイと瑠美衣と月愛も、彼の名前を叫びたくなるのを抑えながら、ずっとずっと拍手を続けていた。

 

 

 

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