まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう 作:ヒラメもち
番外編49 (瑠美衣視点, 高千穂編①)
車から降りたら、ひんやりとしてて雪があちこちに積もってた。
ビルでいっぱいの東京と違って、ここは自然に囲まれてる。
私にとってもう1つの故郷。
でも私はほとんどあの病院の中で暮らしてた。
だからこうやって遠くの病院を見るのはなんだか不思議な気持ちだった。
イチゴさんやミヤコさんやおじいちゃんが運転してた車からみんなも降りてくる。ここに初めて来るみんなは珍しそうに周りを見てて、なんだか嬉しくなっちゃうね。
「ようこそ、神話と
私はバスガイドっぽく、みんなを歓迎する。
お兄ちゃんも優しく頷いてくれた。
「ついたー! さむーい!」
「自然いっぱいですね!」
「いいところだよね~!」
「ふふ、そうだね」
メイちゃんやアオト君、そしてママもノってくれた。
もしかしてルナも実はテンションあがってる?
「ここがアクアとルビーの生まれたところなのね」
「あれが宮崎総合病院、本当に山の上にあるんだね」
「落ち着けそうなところやなぁ」
かなちゃん、あかねちゃん、みなみちゃんがそんなことを話してて、私はドヤ顔だよ。
だって展望台から見るような景色だったもん。
季節の移り変わりとか感じられてね。
「にしてもすげぇ大家族だよな、アクアって」
「美男美女の一族?」
「それな」
「お前たちも芸能人なだけはあるだろ」
メルト君、タイキ君、フリルちゃん、何よりお兄ちゃん、あの4人の顔面偏差値も高い。
てか私たちって東京にいる時みたいに変装してないから、リラックスしてても芸能人オーラが隠しきれてないよね。
たとえ芸能人じゃなくてもパパとかミヤコママも目立つし。
あゆみおばあちゃんたちも、パパとママの親なだけはあるし。
「それじゃあ段取りの確認だ」
あっ、イチゴさんがサングラスをかけたってことはお仕事モードだ。
プライベートの時は外してるもんね。
「なんか鬼みたいなでっかい石がある~」
「
「えっと、力が強い神様ということ?」
銅像っぽいのを見ながら、子ども組も楽しそうにしてる。
イチゴさんは『……まあいいか』と私たちの方を向いた。
メイちゃんには甘々だし、せっかく観光に来たんだもんね。
「俺たちMV組は、アネモネさんたちと合流してすぐに撮影に入るぞ。MEMちょ、連絡は取れているか?」
「はい、これから集合場所に向かうところだそうです!」
今回の旅行はMV撮影も兼ねてるから、晴れてよかったよね。
これも私たちの日頃の行いがいいからかな。
「俺たちは進捗次第で宿に向かう時間も不確定だ。だから子ども組は月村夫妻たちに任せることになる」
「ええ、お任せください」
「着いてから1杯やりましょうよ。待ってますから」
『こらっ』っておばあちゃんが、おじいちゃんの背中をポンと軽く叩いた。
でも泊まった宿で出てくるご飯も楽しみだよね。
そうだ、ご飯と言えば。
「ねぇ、お腹すいた~!」
「あっ、私も~!」
もうとっくにお昼ご飯の時間だもんね。
私はママと一緒に手を上げて主張する。
ミヤコさんやお兄ちゃんが、やれやれって表情だけど、みんなだってお腹すいてるでしょ。
「ルビーは撮影しながら食べる予定じゃなかった?」
「すっかりアイドルだねぇ~ 写真だけでも送ってあげよっか?」
「パパの言う通りだ!? ていうかママいじわるやめて~!」
私がそう言うと、『ごめんごめん』ってテヘペロするママが可愛い。許す。推せる。
「じゃあメイ、明日は一緒に観光しような」
「月村さんたちかルナちゃんに付いていくように、迷子にならないようにね?」
「わかってる~ パパもママもお仕事いってらっしゃ~い」
「お母さん、私たちも行こっ!」
「もう、そんなに引っ張らないで」
子ども組とパパとママとおばあちゃんたちは道の駅がある方にスタスタと向かっていった。
う~、高千穂牛が食べられるレストラン、私も行きたかったなぁ。
「よしっ、俺とミヤコでMV組の送迎だ。いい感じに乗り込め」
イチゴさんは親指でレンタカーに向けるけどさ。
「わー、それ高校生には困るやつー」
「わかるー、バスの席を決めるのって時間かかるよな」
でしょでしょ、メルト君もそう思うよね。
お兄ちゃんの隣を私たちは狙ってて、そんなかなちゃんの隣をあかねちゃん狙ってて、いろいろと高校生にはあるんだよね。
「そっかぁ、現役高校生いっぱいなんだねぇ……」
「ん、確かにそうだな」
「そう、姫ちゃんだけ高校生じゃない」
タイキ君がフリルちゃんに騙されてるや。
まぁメムちゃんは高校生設定だもんね。よく配信でもボロを出してる気がするけど、そこも可愛いところだし。
「せっかくだし、くじ引きやってみるのはどう?」
「へぇ~ アプリとかでできるん?」
「まっ、何となくでいいだろ」
「そうね、あまり時間もないことだし、あんた何か仕込んでそうだし」
笑顔のあかねちゃんが高速でスマホの画面を見せてくれたのに。
みなみちゃんと違って、お兄ちゃんもかなちゃんもノリがわるいよ!
「有馬さんの言う通りよ。暗くなる前に撮影を終わらせましょう」
ミヤコさんの言葉に頷いて、とりあえず私はお兄ちゃんの隣を確保するように車に乗り込んだ。
そこそこの山道も通って、かなちゃんと左右から肩をぎゅうぎゅう寄せるのが楽しかった。何年も一緒にいてもお兄ちゃん照れて可愛いんだよね。
でもほんのちょっと観光気分を味わえただけで、着いてからはバタバタと忙しくアイドル活動だ。
男子たちにはだいぶ離れてもらって簡単カーテンを付けた車でお着換えをするけど。
「さっっっむ!!」
思いっきり冬にミニスカートなんですけど!
ピンクのカーディガンを羽織っているとはいえ、中に着ているのは白い半そでシャツだし。
「今回の曲は春っぽさをイメージしてるからねぇ……」
「春に売ろうとしてるMVなんだから仕方ないでしょ。役者ってこういうものよー」
黒パーカーでミニスカートなメムちゃんも身体が震えてて。
白くてゆったりなシャツかなちゃんは悟りを開いたような表情だ。
昔はママたちのキラキラMVを楽しんで見てたファンだったけど、いろいろと撮影の裏側を思い知らされてる。
こうやってメイクさんにお化粧をしてもらっても、もし夏なら汗をかく度にやり直しらしくて、かなちゃんが遠い目をしてた。
「おっと、主役たちのご登場だ。MEMちょもまるでJKじゃん」
「アネモネおひさ! それと私ことMEMちょはJKだよぉ?」
こほん、とメムちゃんは咳払いしてから。
「「「本日からよろしくお願いします」」」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
私たちは形式的な挨拶を交わしておく。
向こうの代表のアネモネさん、ピンクパープルなメッシュが入った黒髪で綺麗な人だったなぁ。大人の女性って感じがした。
アイドルのMVはダンスパートとドラマパートに分かれてる。
それでドラマパートのほうだと、テーマに沿ったような日常を撮らないといけない。
例えば用意してくれたサンドイッチを可愛く食べる映像とかね。
お腹ペコペコだけど、ゆっくりおしとやかに食べなきゃ。
まぁママの食レポもいっぱい見てきた私なら大丈夫でしょ。
「うまぁ~」
玉子とハムがシンプルに美味しいや。
そうやって、おしとやかモグモグしてたら。
「美味しそうに食べてるな」
「ふぐっ!?」
まさか撮影中にお兄ちゃんから話しかけられると思ってなくてビックリした。
しかもその声が、夜食をこっそり食べてた時に話しかけられた感じだったし。
「そっちも美味しそう、ちょっと分けてくれへん?」
「うぇ!? い、いいけど」
フリルちゃんまでお弁当を持って声をかけてくるし。
まさかドッキリの撮影とかしてたの!?
「こうしてMEMちょと一緒に、お昼食べれるなんてな」
「そ、そうかなぁ」
「かなちゃんどう? 美味しい?」
「近いから! あんたカメラ入ってるから!」
なんかフリルちゃんもあかねちゃんも役者スイッチ入ってない?
普段と声ちがうもん。
「へぇ、メムってフリルと付き合ってたのか?」
「お昼いっしょに食べてるだけ、だよぉ?」
「おっ、誰かと思えば有馬じゃん。そっちはお母さん?」
「ちがうから!?」
タイキ君やメルト君まで撮影に入ってきてる。
私たちだけ何も聞かされてないから、やっぱりドッキリじゃん!
「良いカオするね~」
ほらアネモネさんはニヤニヤしてるし。
イチゴさんもミヤコさんも面白そうにスマホ向けてきてるし。
ますます心の中は緊張しているのに。
身体はカメラを意識して被写体としての私を保っている。これはママたちとレッスンをしてきたからだと思う。
ふと考えれば、メムちゃんの乙女ヅラとか、かなちゃんの子どもっぽさとか、普段隠してるところを撮られてるんだ。
私の場合はどうなんだろ。
それがハッキリと分からないほどには、ありのままの姿を役者組で引き出そうとしてきてるもん。
「ルビーちゃんは甘えん坊だな、昔から」
せんせ、そんなイケメンで優しい表情な『あ~ん』してくるとかズルいよ!
高千穂旅行の1日目から
B小町3人の服装は、高千穂コラボのものを参考にさせていただきました。