まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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11月4日「いい推しの日」には一挙放送だったり、アニメ第3期の新情報の続報予定だったり。

そして書きたいことが増えてモチベがあったので、気まぐれに書きました。


サイドストーリー1
短編1 (愛久愛海視点, 春休み)


 

 

 みんなとの高千穂の旅行から数ヶ月が経過し、今年も春を迎えた。

 

 それぞれの場所に戻っていき、再び全員のスケジュールが合うことは何年後になるか分からない。なぜなら誰もが多かれ少なかれ芸能界に関わっているからだ。

 

 冬の間には2代目B小町の北海道ライブは付いていったけど、あの時は観光する時間もなく東京に戻ったほどだ。

 

 父さんと母さんも、姫川さんや黒川たちも、現地に応援に来る余裕はなかった。

 

 僕も、星野愛久愛海としての高校生活、星野アクアとしての芸能活動、その両方をこなす日々が続いている。

 

 高校入学してからの1年が経過したが、芸能科の教室には空席があちこちに目立つ。

 特に不知火は『歌って踊れて演技もできるマルチタレント』として大量の撮影があるため、1日教室にいることが珍しいほどだった。僕自身も舞台や映画撮影がある時期には何日も休むことがあって、逆にルビーやカナが他県でライブやロケをする時もある。

 

 とにかく忙しい。

 芸能人として売れるほど、忙しくなる。

 

 それは初ライブを行ってから、いまだ1年も経過していない2代目B小町の3人も当てはまっている。

 

 ヒムラさんとアネモネさんの協力があって完成し、配信された2代目B小町のMVは、なんと2000万再生をすぐに上回った。

 これは最大手のグループのMVで見るような数字で、いくら2代目とはいえ、新人アイドルグループがそう簡単に出せるものじゃない。しかもこのペースなら5000万再生近くまで伸びるかもしれない。

 

 つまり、バズった。

 B小町ちゃんねるの登録者数も急激に伸びている。

 

 ルビーとカナとメムさんは、2代目B小町としての立場を確かなものにしたんだ。2代目ということでレッテルを貼ってきた者たちすら、3人の実力に魅せられて(ファン)になっていっているだろう。

 

 そんな輝かしい少女たちも、忙しく、そして充実した日々を過ごしている。

 ルビーとカナは学生だし、メムさんは自分自身のチャンネルのこともある。

 

 だからこそ、僕も含めて、学生の1人として喜びを感じる時期がやってきたからには。

 

「「「春休みキタ~~!!」」」

 

 苺プロの事務所に来て年甲斐(としがい)もなく喜び、僕とルビーとカナは両腕をつき上げた。

 

 ここはミヤコさんの部屋だけど、昔から母さん中心に入り浸るせいで、もはやリビングのように家具が置かれていた。だから多少騒いでも問題じゃない。

 

「いつもクールなアクア君まで、珍しくはっちゃけてるねぇ」

 

「まあな」

 

 振り向きながら反応したメムさんに、僕は相づちを打つ。

 冬休みは年末や正月の生放送など、芸能人としてスケジュールが埋まってしまったしな。まとまった連休は久しぶりだ。

 

「お兄ちゃん、結構お茶目なとこあるもんね」

「そうそう、たま~に見せるのよねぇ」

 

 『ほーん』とルビーやカナに相づちを打ってから、メムさんは動画編集作業に戻った。事務所でサポート体制があるとはいえ、その動画作成の統括は自分自身で行っている。

 

 ノートパソコンを操作していて、ブルーライトカットのメガネをかけている横顔はまるでOLのようだ。そういえば最近って、OLという言葉はあまり使われなくなった気がする。

 

「ねぇねぇ春休み何する? どっか遊園地行く?」

「ショッピングとか、映画館とか……東京タワーとか?」

 

 僕がソファに座れば、ルビーが元気よく引っついてきて、カナも張り合うように密着してくる。

 

 ルビーのガチ恋は続いているし、どうしても甘やかして僕も受け入れてしまう。

 カナも親友でありライバル関係は続くと分かっていて、そんな負けずぎらいな姿を僕は可愛らしいと思ってしまう。

 

 メムさんが『これがリアルハーレムかぁ』と小さく呟いたけど。

 

 両手に花という状態は事実である。しかも現役アイドルである。妹と幼馴染とはいえ、母さんたちがそうだったように世間に真実は隠し通していくことになる。

 

「こほん、どこに行くかは後で決めるとして、ルビーとアクア、あんたらのスケジュール帳を見せなさい」

 

「ん、ああ、これだな」

「そうそう、それね」

 

 有馬に言われて、僕は制服のポケットから新品の赤色と青色のスケジュール帳を出して机に置いた。母さんと父さんで毎年プレゼントしてくれているものだ。

 

「ルビー、あんたねぇ、自分で持っておきなさいよ」

「ほら、なくしそうじゃん?」

 

 『だってママのもパパが持ってるし!』『あの人は専属だからでしょうが』と話しつつ。

 カナは『交換日記みたいでうらやましい』とボソッと呟いた。

 

 交換日記だなんて、またずいぶんと懐かしい響きだ。

 メムさんが子どもの頃も流行していたんだろうか。

 

「にしても、あんたらも敷き詰まってきたわねぇ」

 

 カナは白色のスケジュール帳も合わせて3冊を確認しながら、そう呟いた。

 

 そう芸能人らしく褒められても。

 僕は子役時代からの積み重ねで、やっとここまできた感じだ。

 

 鳴嶋のようにイケメン売り特化しているわけでも、姫川さんのように月9主演経験があるわけでもない。実力主義な五反田さんの撮る映画にも、まだ主演として出してはもらえていない。

 

「うわっ……私の春休み、少なすぎ……」

「あんたは今気づいたんかい。まあ芸能人として喜びなさい」

 

 ルビーは口元を抑えて驚いているけど。

 

 ルビーたち3人とも可愛く、SNSや動画サイトなどでバズっている。だからテレビ局からもどんどんオファーが来ているはずだ。むしろ選ぶことが大変だって、ミヤコさんが贅沢な悩みをよく愚痴っている。

 しかも同じアイドルグループでありながら、強みが別々だから単独での出演機会も1年目から多い。マネージャーなどスタッフに関する人手不足も感じていそうだ。

 

「だな。僕なんてまだ頼み込む立場だぞ」

 

 僕も鏑木さんに頼んでみたはいいが、どちらかというと女性タレント中心の苺プロから、どれだけの番組に参加できるかどうか。

 そんな悩みも、ほぼゼロから初代B小町をドームまでいかせた斉藤さんの協力が心強い。

 

 カナと一緒に目指している夢を考えれば、僕も芸能界で登り詰めていかないとな。

 

「そりゃ嬉しいけどぉ! JKらしく春休みも欲しいじゃん!」

 

「ったく、動画編集でメムさんなんて1日も休みないのよ?」

「週1くらいは休ませてよぉ!? てか暇なら手伝ってぇ!?」

 

 ルビーとカナは顔を見合わせてから、『たしかに』と呟いた。

 学校に通っていない分、メムさんが頑張っているんだ。

 

 2人ともスマホを出して動画編集を手伝おうとする辺り、時代だな。

 

「にしても3人とも春休みかぁ」

 

 そういえばメムさんって高3の設定で恋愛リアリティショーに参加してなかったか。

 来年も高3設定を貫くのだろうかということと、この1年で『漢字でGO!』の配信くらいしか勉強要素を見なかったということ。

 

 まあ気にはなったが。

 

「私の時は何して過ごしてたっけぇ~」

 

 メムさん本人が春休みもしくは大学など設定を考えていないし。

 たぶんリスナーやファンも、高3設定は緩く考えてるんだろうな。

 

「そだ! 遊びに行って動画撮れば一石二鳥(いっせきにちょー)じゃん!」

「あんたまた企画増やすだけ増やすんだから」

「んー、お花見とかありかもね。企画といえば、新曲のレッスンも始まるねぇ」

 

 3人のやりたいことで、スケジュール帳の空白はどんどん埋まりそうだ。

 

 僕も自分のスケジュール帳を見ながら、今後の予定について振り返っていると。

 

 

 ゆったりとした眠気がくる。

 それに逆らうこともしないで、目を閉じることにした。両肩に暖かみを感じながら。

 

 

 

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