転生したら坂柳有栖だった件   作:烏兎 満

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不定期更新だ!


第一話 自己紹介

 

 高度育成高等学校。

 私がこれから通うこの学校には一般的な高等学校とは変わった特徴がいくつかあります。

 

 どれもこれも驚かされる特徴ばかりなのですが、一番特徴的なのはやはり外部との接触が禁止されていることですね。

 この学校は東京湾の上に60万平米の土地を作り出し、私たちはその敷地内で生活することを余儀なくされます。その間、その敷地外との連絡や接触は一切禁止。もちろん、肉親と会うことも禁止されています。

 しかし、この学校は監獄のような場所ではなく、むしろ人によっては天国と言ってもいいでしょう。この敷地内には映画館やショッピングモールなど様々な施設が完備されている上に学費は全額負担。流石、政府が主導で運営している学校は規模が違いますね。

 

 他にも様々な特徴があるのですが、説明していくとキリがないのでここまでにしておきましょう。

 

 さて、私は今一人で教室の座席の一つに座っています。

 残念ながら櫛田さんとは別のクラスになってしまい、私は今ひとりぼっちです、寂しいですね。

 すでに私のクラス内では新しい人間関係が構築され始めていて、私だけ置いてけぼりを食らった気分です。

 別に、私のコミュ力が低いわけではありません。断じてそんなことはあり得ませんので。今からそれを証明させてもらいます。

 

 私は後ろの席に座っている、というか、突っ伏して眠っている生徒に視線を向ける。入学初日から爆睡しているこの人は一体全体どんな神経をしているのでしょうか。

 

 私は彼女の頭を突いて起こすことにしました。そろそろ先生が来るでしょうし、眠っているところを見られたら大変です。

 

「………んぁ?」

 

「おはようございます」

 

 彼女は寝ぼけているのか焦点のあっていない目でこちらに視線を向けてくる。

 というか、彼女、森下藍じゃないですか。確か彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()A()()()()()()()()()()()()()

 いや、今は原作知識などどうでもいい。それよりも彼女と良好な関係を構築できるように会話を進めていきましょう。

 

「………天使?」

 

「ふふ、まだ寝ぼけていらっしゃるようですね」

 

 天使だなんて、嬉しい褒め言葉ですね。

 彼女は一度大きく伸びをしてから、これまた大きな欠伸をしたあと先ほどよりもはっきりとした目でこちらを見つめてくる。

 

「申し遅れました、私の名前は森下藍といいます。あなたの名前を教えていただけますか?」

 

「私は坂柳有栖です。これから一年間同じクラスメイトとしてよろしくお願いします」

 

 お互いに自己紹介を終えると、森下さんは私のことを興味深そうに見つめてくる。

 

「何か、私の顔についていますか?」

 

「いえ、この世のものとは思えないほど整った顔立ちをしていたもので、つい凝視してしまいました」

 

 えぇ、これ私口説かれてるんですか?

 確かに坂柳有栖()は絶世の美少女と言っても過言ではないくらい美しくて可愛いですが、面と向かって言われると少々照れるものがありますね。

 

「ふふ、ありがとうございます。もしかして、私は口説かれているのでしょうか?」

 

「ええ、もちろん口説いています。あなたのような美少女と仲良くなっておきたいのは誰もが同じだと思いますよ」

 

 冗談で言ったつもりが、まさか本当に口説いているとは。やはり、彼女はつかみどころのない不思議な性格の持ち主ですね。

 少し彼女について好奇心が湧いてきました。

 

「森下さんはなぜこの学校を志望したのでしょうか?」

 

「希望する進学先や就職先に100%応える、というのがこの学校の謳い文句です。実際、この学校を卒業した生徒たちは検索すればすぐに出てくるほどの有名人ばかり。それに加えて学費も全額負担。これだけの要素があるならば、この学校を志望するのは当然の帰結です」

 

 言われてみれば確かにこの学校に入学しない選択肢はないですね。

 原作のことばかり考えてしまっていたからか、一般的な認識を少々忘れてしまっていたようです。

 

「なるほど、私も似たようなものです。せっかくの機会ですので連絡先を交換しませんか?」

 

 私の提案に少し驚いた様子を見せたがそれも一瞬だけ。

 すぐに彼女は携帯を取り出して、私とチャットアプリの連絡先を交換する。

 交換した時に見ることのできるアイコンは何も設定されていませんでした。話してから五分も経っていませんが、とても森下さんらしいアイコンですね。

 やはり、原作キャラクターたちは実際に交流を持つと、本当に現実に生きている人物たちなんだと実感します。ここは本の中ではない。そこだけは肝に銘じておきましょう。

 

 もう少し森下さんと話していたかったのですが、始業のチャイムが鳴り響き、それと同時に担任の先生と思われる体格の良い男性が教室に入ってきます。

 

「よし、全員席につけ。俺は一年Aクラスを担当することになった真嶋智也だ。普段は英語を担当している。この学校では三年間クラス替えは行われない。これからお前たちと一緒に三年間学ぶことになるだろうからよろしく。今から1時間後に入学式が行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて説明する」

 

 少し堅苦しい口調で話す真嶋先生。しかし、冷淡に見えて実際はとても生徒想いな素晴らしい教師です。来年必ず訪れる()()()()も視野に入れた上で、良好な関係を築いていけるといいですね。

 真嶋先生はこの学校に関するパンフレットを前から順に回していくことを指示する。

 

「今から学生証を配る。この学校で導入されているSシステムではこの学生証を使って決済を行う。クレジットカードのようなものだ。しかし、ポイントは消費されるため使い過ぎには注意が必要だ。敷地内においてこのポイントで買えないものはない。なんでも購入可能だ」

 

 買えないものはない。なんでも購入可能。

 原作通り、この含みを持たせた言い方もDクラスではなくとも変わりませんね。

 しかし、Sシステムは普段から使っている現金とは違い、簡単に決済できてしまい、金銭感覚が曖昧になってしまいそうです。気をつけなければ、ですね。

 

「ポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。そして、お前たちには入学した時点ですでに10万ポイントが振り込まれている。そして、ポイントは1ポイント=1円の価値を持つ」

 

 この説明を受けてクラス内がざわつき始める。

 このクラス内で何人がこのSシステムに疑問を持つのでしょうか?

 実際、原作では他クラスの様子などは描写されていないため、どれくらいの人数が気づいているのかわかりませんが、少なくとも原作の坂柳有栖は気づいていたでしょう。

 

 Aクラスの人たちは周りの人々と何を買おうか雑談などをしています。できればクラス間闘争の資金となるため、なるべく節約して欲しいものですね。

 しかし、私が原作の知識を持っていなければ私も彼らと同じように散財していた可能性が高いです。

 改めて原作知識があるということはこの世界において反則級の代物だと理解します。なんかズルしてる気分で嫌ですね。実際そうなんですけど。

 

「この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちはその10万円をもらう価値と可能性があるということだ。このポイントは卒業後には回収されるため卒業後まで貯めておいても得はない。どう使おうともお前たちの自由だ。ポイントの譲渡などは可能だが、カツアゲやいじめなどに学校側は厳しく対応する、ということを理解してほしい」

 

 いじめは厳しく対応する、ですか。

 原作では確か坂柳有栖が一之瀬帆波に対して、誰がどう見てもいじめにしか見えない攻撃をしていましたが、あれは許容されて良いものなのでしょうか? 証拠がなく訴えることができなかったとはいえ、あのような誹謗中傷を学校側は見過すとは思いません。

 原作の坂柳有栖もかなりリスキーな攻撃をしていたと思いますが、事前にどこまでやっても大丈夫なのか、というラインの見定めをしていたのでしょうか。

 ちなみに、私は誹謗中傷が好きではないので原作のような真似はしません。一之瀬さん、可哀想ですし、私の印象も悪くなってしまいます。

 

「説明は以上だ。何か疑問点や質問のある者はいるか?」

 

 真嶋先生の言葉に私は躊躇なく手を挙げる。

 

「坂柳と葛城か。よし、では坂柳から順に質問を受け付けよう」

 

 私は、ほぼ同時に挙手した男子生徒に視線を向ける。

 

 葛城康平。

 原作ではAクラスのリーダーの座をかけてクラス内で坂柳有栖と対立していた男の子。病気の関係で髪の毛がなく、そのガタイの良さからとてもじゃないですが、高校生には見えないですね。

 

 しかし、一旦彼のことは置いておいて、真嶋先生に質問をしましょうか。

 Aクラス全員の生徒たちの視線が集まる。

 

「では、早速ですが一つ質問をさせてもらいます。真嶋先生はポイントは毎月1日に自動的に振り込まれる、と言いましたが、()()1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 私の質問に真嶋先生が一瞬驚きの表情を浮かべましたが、すぐにこちらの質問に答える姿勢を作ります。あの切り替えの速さから察するにこの質問に対するマニュアルでも用意されているのでしょう。

 

「悪いが、その質問には答えられない、とだけ言っておこう」

 

 予想通り、Sシステムの核心に触れる質問には答えてくれませんね。

 しかし、私の質問でAクラスの多くの人たちがこのSシステムに疑問を持ち始め、周囲の人と話し合っています。まぁ、疑問を持ちやすいように質問したので、疑ってもらわなければ困ります。呑み込みの早い優秀なAクラスでよかったです。

 

 私は真嶋先生にありがとうございます、とお礼を言ってから席に座る。

 

 さて、葛城くんはどんな質問をされるのでしょうか? 

 原作ではわからない裏側を私に見せてください。

 

「じゃあ、次は葛城」

 

「すみませんが、俺の質問はすでに彼女がした質問と似たようなものです」

 

 あぁ、残念です。こうなるなら、もう少し遅く手を挙げればよかったですね………。

 しかし、現時点の情報だけですでにSシステムについて疑問を持つことができるなんて、やはり、彼は優秀です。

 

 真嶋先生は一度クラス全体を見渡すと、入学式の時刻を今一度生徒たちに伝えて教室を出て行った。

 

 では、入学式が始まるまでに自己紹介大会を始めましょうか。

 

「みなさん、入学して浮き足立つ気持ちはわかりますが、これから三年間同じ教室で過ごす仲間として、入学式までに自己紹介するのはどうでしょうか?」

 

「お、いいねー!」

「さんせー!」

「坂柳さんだっけ? 超かわいいー!」

「ね! 私仲良くなりたい!」

 

 私の提案にAクラスのほとんどの生徒たちが賛成の意を示してくれます。

 中には私の容姿について触れている生徒たちもいましたが、無理もないことです。だって、私、本当に可愛いんですから。外見も仲を深めるためには重要な武器です。まぁ、上手く扱えなかった場合、嫉妬でいじめの対象になったりするんですけどね。

 

「では、私から後ろに向かって順番に自己紹介をしていきたいと思います」

 

 私のすぐ後ろの席に座る森下さんが「え?」と素っ頓狂な声をあげていましたが、彼女は色んな意味で問題ないでしょう。

 

「私は坂柳有栖といいます。趣味は読書とチェスです。あと、運動がかなり苦手なので体育などで苦戦していたら手助けしてくれると嬉しいです。三年間、どうぞよろしくお願いします」

 

 クラス全体からたくさんの拍手を送ってくれます。第一印象は上々ですね。

 さて、次は森下さんの番ですよ。

 

「私は森下藍です。よろしくお願いします」

 

 彼女は短い自己紹介を高らかに宣言しました。

 拍手も先ほどの私の半分くらい、もう半分は簡潔すぎる自己紹介に困惑しているようです。

 

 それから、自己紹介は滞りなく順調に進んでいきます。

 自己紹介で誰も出て行かないあたり、Dクラスよりは結束力があるみたいで安心しました。いや、Dクラスがおかしいのかもしれませんね……。

 

 10分ほどで全員の自己紹介が終わり、私は教壇の前に移動します。

 

「では、先ほど私が真嶋先生に質問した内容について話しておこうと思います。まだ入学して初日のため、なんとも言えませんが、少々この学校はきな臭いです。先生の説明もそうですが、この教室の四隅をご覧ください」

 

 私の言葉に素直に従ったAクラスの面々は四隅に張り巡らされた監視カメラに気づいて驚いています。

 

「な、なんで監視カメラが……?」

「高校って教室の中に監視カメラなんてあるの?」

「……ていうか、なんか多くない?」

 

「その通り。私たちは今日高校生になったため、高校に監視カメラがあるかどうかの有無は判断できませんが、監視カメラの数が異様に多い、ということはわかります。まるで、私たちの行動や態度を監視しているかのように、教室の四隅に設置されています」

 

 原作でも監視カメラの説明はされていましたが、実際改めて見てみると本当にどこにでも監視カメラが設置されていて、ちょっと怖かったですね。見られているってなんか嫌じゃないですか。

 

「そして、このプライベートポイント。私たちには10万ポイントが支給されました。そして、毎月自動的にこのポイントが振り込まれるそうです。しかし、毎月10万ポイントが振り込まれるとは言われていない」

 

「姫さん、それなら毎月何ポイント支給されるんだ?」

 

 姫さん? 確かそんな呼び方をするのは、一人しかいませんね。

 私は疑問を口にした生徒に視線を向ける。

 

「橋本くん、でしたか? 毎月何ポイント振り込まれるかは私もまだよくわかりません。しかし、姫さんって、もう少しマシな呼び方はないんですか?」

 

「あはは、そりゃ悪かったな。でも、結構しっくりくるんじゃないか?」

 

「そうですね、橋本正義に同意します。姫様、なかなか似合っていると思いますよ」

 

 ちょっと、姫って言われる側からするとかなり恥ずかしいのですが………。というか、森下さん、あなたさっきの

自己紹介根に持ってますよね?

 

「ま、まぁ、一旦その話は置いておいて、本題に戻りますよ。とりあえず、来月10万ポイントが支給されないという認識を持っておいたほうがいいでしょう。散財には気をつけてください。あと、このことは他クラスには内密に。もしこの仮説が間違っていたら恥ずかしいですからね」

 

 少し早口で締めくくり、以上です、とクラスに伝えると真剣な雰囲気は途切れ、入学式までの間それぞれが交友関係を作るために周りの人たちを雑談を始める。

 その中の何人かの生徒たちが私の方に歩いてきます。

 

「ねぇねぇ、坂柳さん。あ、じゃなくて姫様! 放課後一緒にデートしない? ね、いいでしょ!」

 

「え、えぇ? デート? わざわざデートっていう必要あります? それと、姫様ってやめてください」

 

 ザ・元気っ子って感じの女の子が快活な笑顔を浮かべてグイグイと私に距離を詰めてきます。

 確か来海恋歌(くるみれんか)と、自己紹介で言っていた気がしますが、原作にはそんなキャラいなかったはずです。

 

 …………いや、ここは現実の世界。全員に心があり、それぞれに人生がある。原作云々なんて言ってる場合じゃないですね。

 

 というか、姫様ってやめてください。

 

「まぁまぁ、いいじゃねぇか、姫さん」

 

「いいも何も橋本くんのせいですからね? 私には坂柳有栖という立派な名前があるんです」

 

「ふ、仕方がないので坂柳有栖と呼んであげましょう」

 

「なんでそんな偉そうなんですか、森下さん」

 

 森下さんは勝ち誇ったかのような笑みを向けてきます。その顔、結構腹立ちますね。

 

「ねーえー! 私のこと無視しないでよー」

 

「あ、すみません。じゃあ、放課後はこのメンバーで買い物をしましょう。おそらくほとんどの人が一人暮らしが初めてだと思うのでそれぞれ相談しあって買い物をするのが効率的だと思うんです」

 

「えぇー! 二人きりがいいー!」

 

「え、それ私も行くんですか?」

 

「いいじゃねぇか、でも男一人だとちょっと肩身が狭いなぁ」

 

 確かに橋本くんだけだと、ハーレムみたいになってしまい変な噂が立ちそうなので、もう一人くらい男子を誘いましょうか。

 私はクラス全体を見回して、ある人物を見つけました。

 

「橋本くんがそう言うなら、あの人を誘いましょう」

 

「え、あの人? 大丈夫なの? なんか一人ぐらい殺してそうな顔してるよ」

 

「来海さん、失礼ですよ。それに、人を見た目で判断してはいけません」

 

 私は席から立ち上がり、長髪で鬼のような形相を浮かべている生徒に声をかけます。

 

「こんにちは、鬼頭くん。今日放課後にみんなで買い物に行こうと思うのですが、よかったら一緒に行きませんか?」

 

 鬼頭くんはこちらを睨み (見て) 、こくりと頷いて私たちのグループに参加しました。

 

「鬼頭隼くんです、橋本くん、仲良くしてくださいね」

 

「お、おう、よろしくな、鬼頭」

 

 鬼頭くんは小さく頷いて橋本くんに応える。

 

「メンバーが揃いましたね。では、そろそろ入学式です。手際よく移動しましょう」

 

 

 

 

 




オリキャラ入れちまった………。
でも、Aクラスって登場キャラ少ないからしょうがないね!

あと、森下書くの楽しい。

来海恋歌

学力B
知性B+
判断力B
身体能力B
協調性B

結構実力者だったり。
ちなみに、黒髪長めのサイドテール
何がとは言わないけどDはある。

次は神室ちゃんを絶対出すぞ!
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