SEED世界に転生したがオーブ語しか分からない 作:黒巛清流
アークエンジェル。大気圏を突破し地球に降り立ったこの艦はひとまずの休息を取っていた。
「うあ゛あぁ…うぅぅ…」
ストライクから運び出されたキラは戦闘後から発し始めた熱と体調不良に苦しめられており、アークエンジェル艦内にある医務室のベッドで呻き声を漏らしていた。
ミリアリアが呻き声を上げるキラの額に流れる汗をぬぐう。
トールやサイ、フレイにカズイも後ろで冷たい水やタオルを用意していた。
よく見ればフレイは軍服ではなく作業服を着ている。ブリッジで通用する知識を持っていないフレイは機材運び程度は出来ると作業員の仕事を手伝っているようだ。
「俺だってコーディネーターを見るのは初めてでね。自信をもって診断出来るわけじゃないさ。どう思うよラスティ?」
すると軍医はそばにいたラスティに声をかける。軍服は着ていないが片手に着いた拘束具程度しか周りの人と違いはなく捕虜だったということに気づかない者の方が多いぐらい。ラスティはアークエンジェルに馴染んでいた。
「と言っても俺だってあんなことをしたことはない。それにコーディネーターだって風邪ぐらい引いたりもするしな」
と射撃テスト時のアスランを思い出す。まぁあいつそれでアカデミー2位という成績を取ってはいたが。
「MSに乗っていたとはいえ大気圏突入したんだからな…一過性の熱中症みたいなもんだとは思うが…」
「感染症の熱ではないし内臓にも問題ない。とにかく水分を取って体を冷やしておくしか出来ないな…」
軍医が結論付けると同時に外から声を掛けられる。
「フラガだ。入るぞ」
フラガが部屋に入る。どうやらキラを心配してのようだ。
軍医が椅子から立ち上がりキラの調子を話す。
「早く調子がよくなってくれればいいな」
「そうね」
「…う…あ……はっ!」
キラは目を覚まし体を起こそうとする。その体をどこからか伸びた手がやんわりと抑えた。
「いきなり起きるな、体に響くぞ」
その手はラスティのモノだった。ラスティは本を片手にキラの様子を見ていたようでそばには飲料水や点滴が用意されている。
「全く、信用し過ぎなんだよな…俺ザフトだぜ…? なのに一人で唯一のMSパイロットを任せるとか…」
そんなことをぶつくさと言いながらもてきぱきと点滴を取り替えたりしていた。
「ここは…?」
「医務室だ、お前が着艦した時には意識がなかったんだっけな…。ここは地球だ、砂漠のな。一晩寝ていたみたいだぜ」
「………グエル…さんは…?」
「……機体や信号は発見できなかったため、MIA(戦闘中行方不明)扱いだ。だがコーディネーターのお前でもこうなんだ…ナチュラルのあいつは……」
「グエルさん…!」
その言葉にキラは項垂れる。目元からは涙が溢れてきてぽたぽたと枕を濡らし、僅かに嗚咽を混じらせた。
ラスティは何もすることなくキラが落ち着くまで傍で本を読んでいた。時折視線を向けながら。
「マニュアルは昨夜見たけど、なかなかたのしそうな機体だねぇ」
「メビウスとは結構違いますね」
ムウとリドリックは目の前に鎮座するスカイグラスパーを眺めていた。
ストライクの戦術支援用に開発したらしくストライカーパックシステムを装備する事で強力な武装を運用出来る上にストライクに換装させることもできるようだ。
「しかしまぁ、ストライカーパックも付けられますってのは、俺は宅配便か?」
「…今はストライクが要ですからね」
そういうと二人は閉口する。二人もまだグエル・ジェタークがMIAした事実をちゃんと飲み込めてないのだ。
軍人であるがゆえに切り替えは出来る。だが志願したとは言え彼は民間人だった。
あの日からマリューもナタルも調子が悪い、特にナタルだ。あの任務の出撃を許可したのはナタル自身であるからぱっと見は普通だがマリューも心配するほどまいっているようだ。
「フラガ大尉…いえ、少佐ならどんなとこにもお届けできますよ」
「お前にも手伝ってもらうぜ、リドリック大尉」
「喜んで」
そんな話をしながら機体を確認していたがリドリックはふと思い至ったようにムウに声をかける。
「そういえばストライクのパイロット、ヤマト少尉の容体は?」
「朝には下がったってさ、ストライクが凄いんだか…あいつの体が凄いんだか…。あ、そういえば俺も気になっていたんだがキラはなんで時々、あれのとこをガンダムって呼ぶんだ?」
ムウはストライクを親指で差しながらリドリックに聞く、リドリックも知らないようで首をかしげていたがそこに荷物を持ったつなぎ姿のフレイがやってきた。
「あ、それは私も気になってキラに聞いてみたんですけど起動画面に出てくるみたいですよ。ジェネラル、ユニラテラル、ニューロリンク、ディスパーシブ、オートノミック、マニューバー・シンセシス・システム。頭文字を取ってガンダム、だそうですよ」
こっちではG兵器って読んでるんでしたっけとフレイが続けるが遠くからマードックの怒声が響き、フレイは謝りながらマードックの方へ走る。それを二人は微笑みながら見守っていた。
「え! キラ、気が付いたの?」
「あぁ、さっきな。食欲もあるみたいだしすぐによくなるだろ」
場面変わってアークエンジェル内の食堂、学友組が食事をとっているとラスティがキラの分の食器を持ってやってきてキラの近況を伝えてくれた。サイの隣ではぐったりとしたつなぎ姿のフレイが机に項垂れている。
「あんまり見舞いに行けてないけどよかったわねぇ~…」
「フレイもお疲れ」
「マードックさん女の子ってこと一切配慮してくれないわ…私もブリッジのあれこれ知ってればよかった…」
フレイは通信機器などの操作方法を全く知らないためマードックさんと同じ整備の仕事をすることになったが地球に降りて重力が追加されたこともありさらに体力を消耗しているようで休憩時間はこう項垂れていることが多い。
「本当にラスティがいてくれてよかったわ…」
「…あのなぁ…一応言っておくが俺はザフトだし捕虜だぞ」
「片付けているその姿を見ても信頼性ないけどね」
「カズイ~!」
そんな風にじゃれている姿はもはや同じ学友そのものだ。
ラスティもザフトにいた時のアスランたちを思い出しているのかもしれない。少なくとも、そこにはナチュラルとコーディネーターの壁は見当たらなかった。
シャワーも浴びてもうすっかり歩けるようになったキラが部屋にいるとラスティが部屋にやって来る。
「よう、もう大丈夫みたいだな」
「あ、ラスティ。うん、体はだいぶ」
そっか、とラスティが言うと右手に持っていたものをキラに渡した。それは折り紙で作った花のようなものでラスティは何なのか知らないらしく、キラに話す。
「ストライクのコクピットに置いてあったんだと」
「あぁ…避難民シャトルの子がくれたものだよ。助かってよかった…」
キラはその花を眺める。ユニウスセブンに置いたものと同じ折り紙の花。それをキラは眺めた後そっと枕元に置く。キラはふと遠い目をした。
『…最後に一つ、俺を…戦う理由にはするなよ』
グエルさんの最後の言葉がフラッシュバックする。どうして…あんなことを言ったのだろう…キラは思う。あのデュエルへの憎しみは自分の中で黒く燃えているというのに…。
「キラ?」
ラスティはキラの雰囲気に声をかける。まるで目に黒い炎でもついたかのような雰囲気にラスティはキラが恐ろしく感じてしまい思わず声をかけてしまった。その瞬間その雰囲気は火がふっと消える様に普段のキラに戻る。
「ん? どうしたのラスティ?」
「…いや、なんでもない」
ラスティはそう返した。
キララスもラスキラも本作ではありません(断言)
原作よりもキラは精神的に落ち着いていますがその分一瞬の殺意が強いです。
大体ジョニィ・ジョースターです。今現在スキルツリーを殺意に振りまくってます。
どのぐらいかというとデュエルにあった瞬間種割れするぐらい。