子供のころは、どんな夢でも叶うと思っていた。
好きな人や、欲しいもの、それは全部自分の思うようになると思っていた。
だから、
大切なものを守るのだって出来ると思ってたんだ。
「ねぇれんくん」
「…………」
「ねぇ、夜神蓮都(やがみれんと)」
「うん?」
「あの……私たちさ……」
「…………」
「大人になったら……その、私たち、結婚できるかな……?」
「…………」
「今みたいにね、ずっと一緒に、いられるのかな?」
青い芝生の上。
雲のない、抜けるような空の下。隣で蓮都の手を握っている少女が、そう言った。
彼女はあまりに近すぎて、その息づかいが聞こえる。僕はそれが好きで。彼女の声が好きで。彼女の瞳が好きで。彼女のすべてが好きだった。
だけど蓮都は彼女を見ないまま、答える。
「無理だよ」
「どうして?」
彼女の声は少し、震えている。___どうして?その問いかけが心に深く突き刺さる。
「わかってるよね?」
「私の……家のせい?それとも……“あの事”?」
「……俺は影。そして君は、表の、それも十師族直系だ。君を守れなかった俺じゃ、とても釣り合わないよ」
「でも、でもそんなの関係……」
「あるよ」
と、蓮都は彼女の言葉を遮った。
すると彼女は俯き、黙ってしまう。いや、泣いていたのかもしれない。彼女も、わかっているから。本当は、わかっているから。だから彼女の息づかいがほんの少し乱れ、蓮都の手を強く、強く握ってくる。
蓮都より二つ年上で、いつも明るく気さくな少女の姿はそこにはない。あるのは初めて彼女が見せる心の弱い部分。
そんな彼女を慰めたら良かったのだろうか、それとも優しく抱きしめてあげればよかったのだろうか。まだ年端のいかない少年はただ見つめる事しか出来なかった。
すると、遠くで声が響き始めた。
「いたぞ!」
「真由美様だ!」
蓮都は、顔を上げる。
隣にいた黒髪のフワフワした巻き毛ロングの少女に今できる精一杯の笑みを浮かべながら言う。
「お迎えだ」
少女はやはり、泣いていた。蓮都の手を強く握ったまま、
「私……れんくんと離れたくないよ」
「…………」
「私……私……」
二人の元に複数の足音が近づいて来るのがわかる。もう時間がなかった。話しかけようと口をパクパクと動かすが、声が出ない。
___伝えなきゃ。伝えようって決めたばかりなんだ。早く伝えなきゃ…。
蓮都は自分が付けていたネックレスを首から外し、少女へと手渡す。そしてそこで、彼女の声は聞こえなくなった。でもそれは、彼女が声を出すのをやめたからじゃない。
蓮都が少女に背を向けて駆け出したからだ。
「れんくん、待って……!」
悲痛な叫びは蓮都には届かない。否、聞こえないようにしている。蓮都は自身の頬を伝い落ちる雫を腕で乱暴に拭う。
抜けるように広がる青い空。気持ちのいい芝生。蓮都はその中を駆け抜けながら思う。
本当に子供のころは、どんな夢でも叶うと思っていたのに、と。大切なものを守れると信じていたのに、と。
好きな人と一緒に過ごし、欲しいものを手に入れ、毎日を笑って生きる。
それはとても簡単そうに思えたのに。それは本当に、 とても簡単そうに思えたのに。
「……力が」
蓮都は小さく呟く。
「……守るためには、力が……足りない」
拳を強く握り、顔を上げる。するともう、少年は泣いていなかった。
立ち止まり、意を決して振り返る。真由美という名の少女は連れて行かれようとしていた。彼女は泣きながら、こちらを見ている。そして何度も、何度も、ごめんなさいと言っているようだった。
ごめんなさい。
彼女は悪くないのに。悪いのは、力のない、弱い、自分なのに。
「…………」
蓮都はそれを見つめ、決意する。
いつか必ず、必ず君に伝えてみせる。だから……
そしてあっという間に、十年の月日が過ぎた。
書いてしまった……。
魔法科高校の劣等生が好きすぎてやばいです!でも、文才がないのでおかしな点がありましたら教えていただければ幸いです。
感想やアドバイスもありましたらよろしくお願いします!