破壊と殺戮に覆われた神野の空に、3本の巨大な『剣』が出現した。
「嬉しいねぇ。まさかこんな光景をお目にかかれるとは」
オールフォーワンが不敵に笑う中、並び立つ3人の男。
1人は赤い髪色をした青年。粗野な風貌とポケットに手を入れたまま立つ姿は一見するとガラが悪そうに見えるが、その瞳は異様に優しいものをしていた。
もう1人は青い服を着た青年だった。メガネで切れ目で明らかに学歴が高そうな風貌をしており、優雅に抜き身の刀を構える様はどこか格式張っていた。
そして最後の1人。3人の中で端に立つ少年は2人と違って酷く幼く、またこの場にそぐわない表情をしていた。
「おい・・・王ならシッカリしろ」
「で、でも!!!この場はヤバいですって!!!!明らかに俺って場違いですよね!?!?」
赤の王(周防尊)の言葉に白銀の王(高槻シロ)が反論する。すると青の王(宗像礼司)が会話に入ってきた。
「そんなことはないぞ第一王権者。君がいてくれると『これから起こるアレコレ』が全部君のせいになって事故処理がやりやすくなるからな。是非このままいてくれ」
「いやですよ?!?!それ聞いて余計逃げたくなったんですけど?!?!」
「なら第一王権者であるところの君はどうする?この全てを我々の『クラン』が解決しろとでも言うのか?それはハッキリ言ってムリだ。だから君が自己破産を・・・」
「16で自己破産は嫌なんですけど!?!?」
「シロ」
「はい!!!」
「やれ」
「いやでも、その、尊(みこと)さん、その・・・」
「この国のためだ。我慢しろ」
「宗像(むなかた)さんはちょっと黙ってくれますか?」
「シロ。・・・アンナに言うぞ?」
「うぐ・・・もう一声」
「・・・アンナにお前の頑張りを伝えておいてやる。八田(やた)が」
「・・・・・・ほうほうほう。・・・・・って、八田(やた)さんここにいませんけど?!?!」
「なんとかかるだろ」
「なりませんよ?!?!?!?逆にできたら八田(やた)さんバケモノですよ?!?!」
「じゃあアンナに5文字なら喋っていいぞ」
「うぐ・・・・・・ぐぐぐ・・・・っしゃあオールフォーワンなにするものぞー!(泣)」
「・・・・・・ふむ。周防よ。第一王権者は・・・」
「あぁ。そういうことだ」
「そうか。それは良いことを聞いた」
「・・・『王権者』同士の談笑は済んだかな?」
オールフォーワンの一声で、再び場に緊張が走った。
「私はこれからオールマイトを処刑しなくちゃならないんだ。そこを退いてくれないかな?」
「・・・愚問だな。我々が出てきた時点で貴様に選択肢など無い」
《青の王》宗像礼司がオールフォーワンの言葉を斬って捨てるが、オールフォーワンは余裕の笑みを崩さず王同士でさえ触れてはこなかったことに触れた。
「そうかな?君達が凄いのは知っているが、しかし限度はあるのだろう?特に《赤の王》なんかは限界が近いんじゃないのかな?」
「・・・」
「君達は王でありながら情に厚いと聞く。犠牲を出したくないのなら、退いてくれないかな?」
「・・・まさかコイツ、尊さんが足手纏いとでも思ってるんですかね?」
「らしいな。なんとも情けない奴だ」
「・・・おい火傷野郎」
周防尊の足元から炎が吹き上がった。
「覚悟は、できてるんだろうな?」(社長ボイス)
この事件で世間は、本当の巨悪とオールマイトの限界、そして『裏社会にいた強者達』を知ることとなった。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
時間は少し遡る。
折寺中学校の教室にて。
2人の少年が言い合いをしていた。
「爆豪。俺とハンドシェイカー(意味深)しないか?」
「うるせぇクソバカぶち殺すぞ!?!?」
爆豪勝己は知っていた。奴の個性『ハンドシェイカー』の影響で、奴と手を繋いだら気持ち良くなってしまうことを。お互いの気持ちが分かり合えて、まるで奴とズッ友であるかのような気持ちになることを。
「爆豪。一緒に気持ち良くなろう」
「いやならねぇよ?!?!ってか近寄んなバカ来るんじゃねぇ!!!!」
「爆豪・・・爆豪・・・」
「ギャアアアアアアバカばっかバカ来るんじゃねぇよバカ!!頬を染めんな近寄んな手を差し伸べるな近寄んなマジふざけんなアッチ行けバカクソ変態野郎!!!」
「大丈夫。怖いのは最初だけだ」
「んなワケねぇだろ知ってんぞ!!!ハンドシェイカーはパートナー性なんだろ!?!?」
「ほ~?よく知ってたな。やっぱ気になってたんだろ、俺のこと」
「んなワケねぇだろ殺すぞ!!!ただ俺のストーカーの生態を調査して知っただけだ!!!」
「つまり俺に興味が湧いた、と」
「だから何故そうなるんだよぉおおおおお!!!」
爆豪勝己、魂の叫び。
「・・・とまぁ冗談は置いておいて」
「置いておくなクソバカ殺すぞ!!!」
爆豪勝己はそこまで言って、目の前に立つ少年を睨み付けた。自分と同じ背丈をしていて、どちからというと頼り無い風貌をしていて、髪は個性溢れるこの世界でも珍しい白銀色。何かを見透かしているような目は異常なほど大人びていて、そして別にソッチのケは無いが変態的な行動を好む希有な性格をしている少年。
少年の名前は『高槻シロ』。
異世界転移者でありハンドシェイカーであり、第一王権者、不変を司る白銀の王の力を持つこと以外は普通の少年である。※ちなみに爆豪はシロが白銀の王だということを知りません。※ハンドシェイカーについては、手を繋いだら不思議パワーが生まれる人達の総称ぐらいに思ってくれたら嬉しいです。
「置いておいて。爆豪、お前『雄英』受けるんだってな」
「・・・おう」
この世界では1人1人に『個性』と呼ばれる特殊能力が宿っており、警察では対処できない凶悪事件が頻発するため個人事業主であるところの『ヒーロー』という仕事がかなり一般的に広まっている。その『ヒーロー』に成る最高の近道こそが『雄英高校ヒーロー科への入学』であり、『雄英に入学する』ということは『最高の近道を通ってヒーローに成る』ということであり。
つまり爆豪は先に進むということである。
「・・・お前なら雄英も余裕だろうな」
「お、おう。んだよ、何か茶化さないのかよ」
「いや、まぁ、な」
爆豪勝己は昔から強かった。ヒーローとしての実力は申し分ないだろう。だが、だからこそシロにとっては微妙な気持ちになっていた。
このまま進むべきか。留まるべきか。
シロは選択を迫られていた。
「なぁ爆豪。もし俺にオールマイト並みの力があるとしてさ」
「ねぇよクソがアホみたいな嘘を吐くんじゃねぇ」
「あるとしてさ。爆豪ならどうする?世間に注目されたり、叩かれたりしても爆豪なら進み続けられる?」
「当たり前だろ」
「ミスったら70万人くらいが軽く死ぬとしても?」
「さっきから何の話だよ。言いたいことがあるならハッキリ言え」
「・・・だよな。悪い。・・・・・1から10まで喋らないと爆豪の理解力じゃムリだよな」
「うっせぇマジでブチ殺すぞテメェ!!!!!」
「え?俺のこと好きって?」
「どんな幻聴だよ頭湧いてんのか!!!?」
「ごめん。聞こえなかった。俺のこと好きって言った?」
「だからどういう幻聴だよ!!!!!同じことを「え?俺のこと、好きって?」同じことを何度も言うなクソバカ変態クソ野郎ぉおおおおお!!!!!」
爆豪の叫び声は下の階の廊下まで響き渡った。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「んだよ。やっぱ『何か』あるじゃねぇか」
昔から高槻シロは異質な存在だった。
イジメても無反応で、泣きもしないし悲しみもしない。喧嘩をふっかけても逃げるばかりのクセに逆らいはする。何かあっても大丈夫だと思っているのか、言論の全てに芯が通っていて、向こう見ずなクセにやたらと人がついていく。まるで生まれつきの『王様』であるかのような奴だった。
だから爆豪は、ハンドシェイカー以外にも何かあるとは踏んでいた。それが何であるかまでは分からなかったが、十中八九『誰にも見せたことのないだけの個性』なのだろうとタカを括っていた。自分を揺るがす程のことじゃないと思いたかった。思うようにした。していた。
しかし奴は、さも当然のように、嘘偽りなど無いかのように、堂々と、『オールマイト並みの力』だと言い放った。
・・・爆豪の中で何かが悲鳴を上げていた。
「クソ・・・何だ?炎熱系の個性か?それとも、オールマイトと同じ増強系?・・・ありえるな、瞬間的な出力ならオールマイト級・・・いや。アイツは『ミスったら70万人くらいが軽く死ぬ』って言っていた。なら爆発系の個性か?」
爆豪は路地裏を1人で歩きながら高速で頭を回転させたが、情報が少な過ぎて結論は出なかった。
・・・代わりに。
「Mサイズの隠れ蓑!!!!!!!!」
爆豪勝己にとっての最悪が、始まった。