合宿×「オルガン」=悪夢。
時代はかけ算なのかもしれない。
体育祭前のとある日。HRを終えて帰り支度をする高槻シロに轟焦凍が声をかけた。
「・・・・・正直、この中ではお前が頭1つ抜けていると思う。だがな、それでも勝つのは俺だ」
原作より緑谷が目立っていないからヘイトがこっちにきたのかな?と軽い気持ちで考えた高槻シロは、そのまま軽い気持ちでアホほど愚かしいことを言い放った。
「あーえっと、期待してくれてるとこ悪いんだけど、もし体育祭の最終戦が例年通りトーナメント制なら俺は即刻辞退するつもりだぞ」
その言葉に、教室が凍った。
「どういうことだ?」
「まぁ、AFOの言ったことは一理あると思っただけというか・・・確かに、今更ヒーローに成る資格と無いよなーっていうか。ほら、俺の個性ってハンドシェイカーと『王の力』の2つだけど、どっちも誰かがいないと何もできないだろ?だから個人戦はちょっと分が悪いし」
言い訳紛いの戯れ言を高槻シロが吐くと、黙って聞いていた爆豪勝己が急に席から立ち上がった。
「あるんだろ。もう1つ」
USJにいたクランズマン達は特殊な力を持っていた。それも、全員が『赤の王』と同じような力を、だ。
もし赤の王がそういう『個性』なら話は分かるが、もしそうでない場合。『赤の王』という存在が何かしらの力を与えることができる場合。クランズマンが、王から力を与えられた人達のことを指す場合。
「クランズマンってのが何かは知らねぇが、アイツらの仲間で『同類』なら戦えるんじゃねぇのかよ」
「俺はクランズマンじゃないぞ」
「ならAFOが言っていた『白銀の王』ってのは何だ?『赤の王』とは何が違う?」
「・・・・・」
「テメェは前に言ったよな。ミスったら70万人が軽く死ぬって。だがハンドシェイカーの力も『王の力』も暴走するタイプには見えねぇ。少なくともお前は何かを隠している。違うか?」
「爆豪が策士だ・・・」
「すげぇな爆豪、理詰めしてるけど面構えが完全に脅迫のソレだぞ・・・」
「ウッセェテメェらは黙ってろ!!!」
これからは体育祭、インターン、林間合宿と予定が目白押しのため、自然と王権者との関わりも増えてくるハズ。ならば先に話しておくのも悪くはない、ハズ。
良い機会だなと思った高槻シロは、国家機密をベラベラと喋り始めた。
「・・・・・大戦末期のドイツで『ドレスデン石盤』っていうのが発見されたのが全ての始まりでな」
アドルフ・K・バイスマンという男が発見した『ドレスデン石盤』には力を与えて王権者と呼ばれる異能力者を作る力があった。
力を与える枠は7人で、それぞれの枠に名前があり、
第一王権者『白銀の王』不変の象徴。
第二王権者『黄金の王』運命と繁栄の象徴。
第三王権者『赤の王』暴力の象徴。
第四王権者『青の王』秩序と制御の象徴。
第五王権者『緑の王』変革と改変の象徴。
第六王権者『灰色の王』絶対守護の象徴。
第七王権者『無色の王』最弱なトリックスター。
の7枠それぞれに異なった力が与えられる。王権者に成れる基準は不明確だが、石盤が何やかんやあって東京都に移され『黄金の王』に保管されてからは石盤の近くに住む日本人の誰かが王権者と成ることが多くなっている。また、王権者は自分の力を貸し与え『クランズマン』と呼ばれる配下を作り出すことも可能。また王権者が全力を出す時、『ダモクレスの剣』と呼ばれる巨大な飛行物体が空に出現するため王権者がどこにいるかは比較的分かりやすく、ダモクレスの剣が出ているということは有事だと覚えておくと後で役立つかもしれない。
・・・・・と、そこまで話した高槻シロは言葉を切った。
そして咳払いをしてから、自分のことを喋り始めた。
「そんで、俺はその第一王権者『白銀の王』だから、まぁ一応尊さん、皆が見た『赤の王』と同じことはできると思う。ただ、王権者同士の仲はあまり良くなくてな。
俺と尊さんと『青の王』はある程度連絡も取り合う仲だけど、他の『緑の王』とか『無色の王』とかとは会ったこともないから、何を仕出かすのか分からないんだよ。最悪、無言で殺しにくることも有り得ると思う。だから白銀の正確な戦力を知られたくないために今回はパスってワケだ。別にヒーローに成りたいワケじゃないしな」
「ヒーロー科生徒にあるまじき発言が出たな・・・」
「ミスったら70万人が死ぬってのは?」
「ダモクレスダウンのことは中学校で習ったよな?」
「確か、過去に起きた原因不明の爆発事故でしたよね」
「アレは尊さんの先代の『赤の王』が力を暴走させて、『ダモクレスの剣』が落下して起きた人災だ。どの王権者でもミスったらああなる可能性を秘めてるから、それもあって割とマジで白銀の力は使いたくないというか」
「使わなきゃ強く成れねーだろ」
「そうだけどさ・・・・・」
「生きるために殺してきたってのは?」
「・・・・・それを言う前に確認だけどさ、本当これ以上聞く?聞くのなら、もし口外したら『知り合いがやってるテロ組織』が殺しに来るぐらいヤバいことになるけど」
「当然だよ」
今度は緑谷が立ち上がった。
「AFOが言うように、僕はシロくんのことを何も知らなかったし悪の一端にすら触れてこなかった。そんなままじゃ、今のままじゃ僕は最高のヒーローには成れない。それに今は、友達として何か助けに成れたらなと思ってる。だからお願い」
「よく言った緑谷」
「だな!俺も何かあれば協力するから、教えてくれ!」
「まぁシロがどこへ向かうかぐらいは知りてぇよな」
「このままだと悪鬼羅刹に成りそうだし」
「怖いこと言うなよな・・・・・」
前向きに肯定するクラスメイトを見て、高槻シロは崩れ落ちるようにボロボロと喋り出した。
「俺は産まれた時から『ハンドシェイカー』で『王の力』も持ってたから向かうところ敵無しでさ、小さい頃は大分調子に乗ったんだよ。んで、興味本位にダアトっていう組織の研究室に潜入したらアッサリ捕まってさ。
人体実験やらを沢山受けて、死にかけて、色々吹っ切れて。何とか同じ実験体の女の子と逃げ出した時には殺すのに躊躇が無くなってた。それからはダアトの追っ手と殺し合いながらひたすら生きて生きて生きて、実家に帰って来たらお姉ちゃんが怪物に成っててさ。
後から聞いたけど、そのダアトが落とした隕石にウイルスが付着していてお姉ちゃんが真っ先に感染したんだって。
まぁそんなワケで、そのウイルスが暴走してお姉ちゃんが目の前で人じゃなくなって、爆発して起きたのが」
「・・・・・ロストクリスマス」
「そう。その後はもう必死で、ただただ走り回って戦って戦って、結局何もできなくて。お姉ちゃんは止めれたけど、今まで付き添ってくれてた女の子が命を落として、それでも足掻いて足掻き続けて。
もう何が何か分からなくなるぐらい走り回って、もうそろそろ死ぬってタイミングで『吠舞羅』に拾ってもらって。
流石にダアトも王権者には手を出せなかったみたいで、平和な日常に戻れて、んで爆豪と緑谷に出会った。
そこからはもう普通に普通の生活をして雄英まで来たけど、AFOに言われた通り俺の生き方は昔のまんまだからな。自分が危険になったら必ず敵を先に殺すメンタルだから、まぁヒーローには向かないなっていうか」
高槻シロが話し終えると、教室がシンと静まり、次いで爆豪がドカン!!!!と机を殴ったため強烈な音が響いた。
「ビックリした・・・・・」
「テメェに夢はねぇのかよ」
「・・・・・」
「さっきから聞いてたら、テメェずっと流されてばっかじゃねぇか。『王の力』、白銀、ハンドシェイカー、あぁ大層な力ばっかだが完全に宝の持ち腐れだな。力の方が可哀想に思えてきたわ」
「うっせ」
「成りたいものをちゃんと見ろ変態野郎。じゃないとテメェは本当にヴィランに成るしかなくなるぞ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「・・・・・爆豪。あんたマジ日頃の態度改めなよ」
「唯一の欠点(言動)さえ直ればなぁ・・・・・」
「これが親友というものか・・・・・!」
「だからテメェらは何なんだよ!!!」
高槻シロにとってのオリジン。成りたいもの。
それは・・・・・。
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雄英高校体育祭。その選手宣誓。
壇上に上がった高槻シロは、普段通りの様子で声を張り上げた。
「おい見てんだろAFO!!!いいか、よく聞け!俺はヒーローじゃない!ヴィランでもない!高槻シロであり桜満集、つまりそういうことだ!分かったか!分かったら返事くらいしろ!」
シーン・・・・・。
「・・・まぁとにかく、俺は俺だ!文句があるならかかってこい!あと、『涯(がい)』!!!お前は早く顔を見せろバカタレ!!!あと彼女募集中です!以上!」
「・・・すげぇな、選手宣誓で私事しか言わない奴初めて見た」
「高槻。後で反省文な」
「うっす!!!」
高槻シロの顔は、何だか晴れ晴れしていた。