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大部分はほぼ原作のまとめみたいなものです
本棚と雄大な自然、世界をつなぐ空間を《フシギ図書館》という。
ここが私たちの、秘密基地だ。
巨大な木の株の中に、《キュアデコル》の力で一つの部屋を作った。最初は木製の机と椅子と絨毯くらいしかなかったのに、友達が持ってきたホットプレートやロボットにフィギュア、裁縫道具が置かれている。壁には「道」と書かれた垂れ幕がかけられたりしている。
私、星空みゆきは、家から絵の具とある作りかけの本を持ってきた。
ここである絵本を作るために。
家で作ることが多かったのだけど、今日は気分を変えてここで作ることにする。
自室に比べて開放的な空間かつ、絵本やベッドなどの誘惑もない。ここで作業をするのはとても効率的と感じた。
それはほんの数週間前までここが使えなかったからだ。それは、この世界と《メルヘンランド》との交流が最近まで中断されていた。中断、というのはもともと交流があって、あることがきっかけで無くなったということになる。
詳しく言うと━━それは私たちが紡いできた物語に大きく関係する。
そして、その物語は私が書く絵本の内容そのもの。
私たち《スマイルプリキュア》の冒険だ。
タイトルは《最高のスマイル》。
1ページ目をめくる。まず描かれているのは、桃色の長いツインテールが特徴的な女の子。頭には翼のアクセサリが羽ばたくように飾られてる。胸に大きなリボン、ラインの入ったこれまた桃色のドレスといえるような衣装。腰元のは変身アイテム《スマイルパクト》。《キュアデコル》をセットして変身する。名前は《キュアハッピー》。私が変身した姿だ。
どうして変身したのか。
まず、私は転校生だった。
不安もあったけど、それよりも新しい出会いへの期待に胸を躍らせた。
で、登校初日、私は自己紹介で緊張しつつも、新しいクラスメイトのおかげでなんとかクラスになじめそうだった。運命とも感じられるその出会いに私は嬉しくなった。
そして放課後。
私はまた、新しい出会いをした。
突然、《バッドエンド王国》という場所から現れた狼が、私たちの町を真っ黒に染めにかかった。
その中で出会ったのが《キャンディ》だ。《メルヘンランド》の妖精で、私を伝説の戦士、《プリキュア》の一人、《キュアハッピー》に導いてくれた、私の友達だ。
私は使者を撃退するとともに、物語は始まる。
まずは仲間集めだった。
プリキュアは5人いるようで、私のほかに4人。運命的にも、みんなクラスメイトだった。
名前を《キュアサニー》、《キュアピース》、《キュアマーチ》、《キュアビューティ》。すべて私の大切な仲間で、友達。
またも《メルヘンランド》からやってきた妖精、キャンディの兄である《ポップ》から、《プリキュア》の使命を聞き、さらに深く戦いに身を投じていく。
だけど私たちは中学生で、使命も大事だけど、何気ない(?)日常も大切だ。
私は見返すようにページをめくる。
キャンディと入れ替わったり、小さくなったり、子どもになったり、ロボットになったり、テストの点で悩んだり、夏休みの宿題に絶望したり。
どれも全部大切な思い出だ。
でも、辛い時もあった。
《バッドエンド王国》との戦いは激しくなる。
敵の目的は世界をバッドエンドに染め上げること。そのためにまず、《皇帝ピエーロ》を復活させること。その目的のために、復活に必要な《バッドエナジー》を集めるためにも、世界をバッドエンドに染めようとする。
友だちを助けるために、自分たちの日常を捨てる覚悟を持つか考えた。
苦しみのない世界を受け入れるのか。
必死に考え、挫けそうになりながらも、それでも私たち、プリキュア”5人”は立ち上がる。
彼女は”宝物”とともに、自分の友情を胸にして戦った。
彼女は諦めかけた自分の夢をもう一度見て戦った。
彼女は家族のために、命を懸けて戦った。
彼女は選び抜いた自分の望みとともに戦った。
そして私は、自分を動かし、ときめかせる”ウルトラハッピー”を見つめ、友達を、笑顔のために戦った。
そして迎えた最終決戦。
”悪役”の苦しみをぶつけられ、私たちは悩みながら戦った。先にあったのは理解し、感謝すること。彼らが物語にいる意味を考えた。
もう一人の自分との死闘。ネガティブな私は、自分さえよければいい、と言い切り私たちに牙を向ける。でも私たちは、気合で押しのける。
そして《皇帝ピエーロ》との最終決戦。圧倒的力、絶望的な戦力差。苦しかった。辛かった。だけど、私たちには友達がいる。友達という希望がある。私たちはキャンディという希望と、《ピエーロ》を打倒した、かに見えた。
最後は選択だった。
世界を救うために、プリキュアとなって戦うために、キャンディと永遠の別れをしなければならなかった。
私たちは絶望し、泣いた。
どうしてこうなったのか。私たちの希望を失うことでしか得られない奇跡にすがることしかできなかった。
私たちは、戦う。
最後の変身、全力の力を《ピエーロ》にぶつけた。
きっと未来では、辛いことや苦しいことがある。だけど、きっとみんなで乗り越えられる。きっとその先に《ウルトラハッピー》があることを信じて。
私が描いたものはここで終わる。
だけど、まだ描いていない続きがある。
今日はその部分の色を塗って終わりだ。
私たちは《ピエーロ》を倒した後、キャンディと永遠の別れをした、はずだった。
またキャンディと出会うことになる。
キャンディは「星に願った」からと言っていた。
願いが奇跡を起こしたのか。
わからない。
だけど、私たちはずっと一緒だ。
最後のページはみんなの笑顔の一枚目で終わった。
正直うまいとは言えない絵だけど、この一冊は私にとって宝物になる。
これまでの戦いを思い出す。忘れることは無い。
私たちの、私たちだけの、大切な思い出だ。
過去は変えられないというならばそれでいい。だって私たちの物語が永遠に残り続けるのだから。
部屋の窓からは、茜色の木漏れ日が差し込む。
「うわ。もうこんな時間」
私は部屋からでる。
真っ赤に染め上げられる図書館は、幻想的だ。
すると、向こうの本棚から音が聞こえた。
《フシギ図書館》は世界中の本棚から入ることができる。すると、図書館内のあの本棚から入ってくるわけだ。とすれば、本棚の向こう側で何かが起きている、いや響いている。私は本棚のほんの隙間から”向こう側”を眺める。その先には私の部屋につながっていた。
絵本が散らばった勉強机に、洗濯したばかりのふとんが置かれたベッド。部屋の真ん中には絨毯とその上に置かれた、背の低い丸い木製の机。役目を終えた《ロイヤルクロック》と《デコルデコール》がある。
そして扉。
コンコン、と扉を叩く音。
そして「みゆきーーーー」と自分を呼ぶお母さんの声が。
「うわっ」
すぐに本棚の本を動かし、自分の部屋へ本棚を通じてワープした。
そのまま走って、部屋の扉を開ける。
「どうしたの、おかあさん」
「あせらせちゃってごめんなさい。みゆき。ちょっと頼みたいことがあって」
申し訳なさそうに、おかあさんはお使いを頼んできた。
星空家は車を持っていないので、移動は基本的に徒歩だ。しかし、《フシギ図書館》を使えば、一瞬で移動できる。ズルだって言われれば言い返すことはできない。
今回は、今はもうやることは無い、お母さんからの頼みなので使えば移動時間の速さに感づかれてしまうかも、ということで歩いていくことにした。
お母さんに渡されたエコバックとお金をポケットへ。玄関で19センチのスニーカーを履く。
後ろに立つお母さんへ振り向き、「いってきます」のひとこと。「いってらっしゃい」の言葉を聞き終わり、私は前を向き、ドアを開け、家を出る。
これは、私の長い冒険の始まりだったということを知る由もなかった。
今の自分は何気ない日常の中にいることを意識もせず、商店街の八百屋へ向かい始める。
私は地に立ち、前に歩く。
私は目が覚めた。
「う〜〜ん」
布団の上で伸びをした。
時計を見る。今は午前七時。
寝坊して遅刻寸前ばっかりだった頃からは、これでも成長したほうだと思うの。辛いながらも、もそもそとベッドから脱出した。
窓に近づいて、桃色のカーテンを開ける。日射しが一杯に部屋の中に入り込む。眩しさに目を眩ませるが次第に慣れてくる。
窓から見えるのは七色ヶ丘の街並み。そして空は雲一つ無い晴天。昇る太陽を見ながら、
「今日もきっと、ウルトラハッピーな日になるといいな」
自然と笑顔ができたのが分かった。
私は制服に着替えた。白いシャツに紺色のスカート。そして、桃色のネクタイ。
「みゆき〜〜。起きてる〜〜!? ご飯出来たわよ〜〜」
一階からお母さんの声が聞こえた。
「は〜〜い!」
私は1階に降りる。焼き魚とお味噌汁の匂いがした。
お母さんがいつも通り朝食を作ってくれている。
私はあくびをしながらキッチンへ向かった。
ご飯を食べたあと、洗面台で髪のセットをしたい。自業自得かもしれないけど、これが本当に時間がかかる。できるだけ朝ごはんは早めに食べておきたい。
「おはよう」
「おはよう、みゆき」
「おはよう」
お母さんが朝食の準備をちょうど終わらせてくれていた。お父さんもスーツに着替えていて、そろそろ出勤の時間のようだ。
私は朝食を食べる。いつもの味がする。
「そういえばみゆき━━━━」
お母さんが私に話しかけてきた。
「何?」
「学校に行くの、緊張する?」
真剣に私を心配する眼差し。
「緊張? 嫌だなあお母さん。あともうちょっと経てば、引っ越してきて1年だよ」
いくら人見知りだった私のことを気にかけてくれていても、学校で友だちもできて、沢山のことを経験してきたわけ。さすがに今その言葉は心配症でしょ、と思っていたら。
「何冗談言ってんだみゆき」
お父さんが変なことを言ってきた。
「そうよ。昨日は転校初日で寝れなかったんじゃないの?」
「あれ?」
お母さんの言葉を理解するのに時間がかかった。
だって私は、七色ヶ丘中学校に転校してきて、友だちができて、プリキュアになって━━━━あれ?
「あれれ? ちなみにお母さん。今日って、何年何月何日だっけ?」
「それは━━━━」
お母さんの言葉を聞いた。
「えーーーーーー!!」
驚きのあまり、机を両手で叩き、立ち上がる。その拍子に汁椀が腕に当たり転がる。味噌汁がこぼれる。食卓中を広がるだけじゃ飽き足らず、机から落ちて私のスカートにたれてしまう。
お父さんとお母さんの困惑している。
だけどこぼれた味噌汁も、驚く両親も、私は気にしてられる余裕はなかった。
今日は、私が七色ヶ丘中学校に転校してきた日、そして初めてプリキュアになった日だったのだ。
私は、タイムスリップでもしてしまったのか。