スマイルプリキュアS   作:友だち

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(6) 人間一人、魂一つ ②

 今日みんなに集まってもらったのは、一度プリキュアのことについて話したいと思ったからだ。

「みゆきの家ってここにあるんやな」

「最近引っ越してたからアパート暮らしだと思ってたよ」

 星空家を見て、あかねちゃんとやよいちゃんがウチを見上げながら入る。

 お母さんとお父さんが勝手に決めていたから、私はこの家について詳しく知らない。

 私は玄関を開けて、みんなを家に入れる。

 そしてキッチンにいるお母さんに、四人を見せる。

「あ、学校で同じクラスの━━」

 お母さんはコーヒーを飲みながら雑誌を見ていた。七色ヶ丘に転校する前からいつも見る光景だった。そのお母さんは、私を見ると唖然としていた。私というより、私たちだろうか。

「あれ? お母さん? 言わなかった? 友達連れてくるからって、それで晩御飯もごちそうするって━━」

「あ、いえ。みゆきがそんなに友達を連れてくるなんて、思いもしなかったから……。もちろん全員にごちそうするわ」

 まあ、いつも5人で来るときは《フシギ図書館》でヒトっ飛びだったからかな。だからわざわざ玄関からお邪魔することは━━。あ、でもそれは《前の世界》での話か。確かに、七色ヶ丘に来るまでは、こんな大人数で家に来ることなんて無かったわけだから、仕方ないか。

 でもお母さん、さすがにびっくりしすぎじゃない? 

 そんな疑問持ちながら、自分の部屋に案内した。

 お母さんは烏龍茶の2Lサイズ、そして紙コップを用意してくれた。それといくつかお菓子もあった。包装紙に包まれたものが3つほど。私は両手に抱えながら二階にある私の部屋にいる。おそらく、そこではみんなが集まっているはずだ。

 おそるおそる階段を昇る。

 ━━それにしても、と私は考える。

 今日は特に、みんなが、私がしっているみんなとは違うような姿を見せる。

 それは私のせいだろうか。それともキャンディがいないからだろうか。

 確かに、それもあると思う。あかねちゃんは私が無理やり自主練しようと誘ったせいで、あかねちゃんのバレーでもっとうまくいかなくなってしまうこともあった。やよいちゃんがポスターコンテストで描いた絵は、キャンディがいないという大きな違いがあり、その結果も大きく異なった。そしてあろうことかやよいちゃんはその経験で、”前の世界”のやよいちゃんとは別の道を歩もうとしている。

 だけど私は別世界の記憶をもっていること、”この世界”にキャンディがいないことだけがそのような変化がある理由ではない。

 階段を昇り終えると、自室のドアの向こうから4人の会話が聞こえた。

「━━ええ。2ヶ月ほど前、なおから電話越しに聞きました」

 今話しているれいかちゃんは、”前の世界”では弓道部に入っていた。しかし、”この世界”のれいかちゃんは剣道部に入っている。部活は1年生、つまり今より一年以上まえからこの差が生まれていたとしたら。ほんの数週間前に”この世界”にやってきた私の影響によるものとは思えない。

「そうか。二人は家族ぐるみの付き合いだもんな」

 あかねちゃんの声が聞こえる。あかねちゃんはあまり大きな変化はないように思えた。少しばかり、直情的なところが少ない、ということくらいかな。

 すると、部屋の目の前でぽろっとお菓子が入った袋が床におちる。

「あ.........」

 トレーでも持ってくるんだったな、と思いながらしゃがむ。小指と薬指で袋を掴もうとする。

「そうそう。この前お母さんの付き添いで、病院に行ったんだ。それでレントゲンでお腹の中を見てもらったんだ。するとね━━」

 耳元になおちゃんの声が聞こえる。

 なおちゃんの性格も両世界で特段変わったことはないように思える。あるとすれば、プリキュアになった原因で、コアソウルたちに向けての対抗心がより大きくなっているようにも感じる。あとはもう変わらない。家族想いで、その家族ももう一人━━。

「元気な男の子が━━」

 途端、私は戦慄した。

 2Lのペットボトルも、袋も、紙コップのすべて床に落ちた。

 なおちゃんの家族━━緑川家から生まれてくる子はゆいという女の子のはずだ。まさか、こんな変化があろうとは思えなかった。

 受精から産まれる子の性別が分かるまでの期間を考えると、この差も私が起こしたもとは思えない。

「みゆきちゃん?」

 ドアからそのなおちゃんが顔を出した。私がペットボトルを落とした音に気が付き、様子をみに来たのだろう。

「なおちゃん━━」

「こんなにあるならあたしたちにも運ばせてもらったらいいのに」

 なおちゃんはドアを全開にする。するとローテーブルを囲むように座る、あかねちゃん、やよいちゃん、れいかちゃんの姿が見えた。

 私の状況が分かると、全員が立ち上がる。なおちゃんと同じように床に散らばったお菓子などを拾いに来てくれた。

 

 

 

 自室の中心にある円形のローテーブルを囲む。

 コップにそれぞれ7割ぐらい淹れて、全員の前に置いた。

 私はこれからプリキュアのことについて一人で説明しなければならない。"前の世界"では、メルヘンランドからやってきた、キャンディのお兄ちゃんであるポップがやってきてプリキュアとは何か? という説明と使命を教えてくれた。

 それは、スマイルパクトで変身するプリキュアでのことだ。ポップはスマイルパクトで変身するプリキュアのことを《ロイヤルクイーン様が地球に降らせた奇跡の光》と説明した。

 かなりメルヘンチックな説明で、さすがはメルヘンランドの女王様、と言いたくなる。ピエーロとの戦いですでにご逝去されていたので、こういう伝え方しかできなかったんだろうか。

 まあ私が考えてもそんなことわかるはずがない。

 とにかく私が知っていることを話さないと。

 まず、どうやって私がプリキュアになったのか。それと、頑張ろうって話をしよう。

 ごほん、と咳ばらいをした。

 私の部屋で座り込んでいた、4人の視線が一気にこちらに向く。

「え、と。まず、みんな集まってもらったのはプリキュアのことについて話したいと思ったからなんだよね」

「それで。プリキュアってのは何なの」

 体育座りをしているなおちゃんが手を挙げた。

「えっとね━━」

 多分ソウルフルパクトで変身するプリキュアは、スマイルパクトのそれとは違うはず。だからポップが説明した通りにはならない。だから私はこの説明は必要ないって思ったんだけど。

 あ、でもさすがに聞かれるか。失敗したなあ。

 ポップが言ったとおりに言っておく? じゃあ私が別世界から来たことも言う? でもなんでプリキュアのことは言うのに、そのことは言わないの。 って、今考えることじゃないでしょ! 

 で、なおちゃんって何言ったっけ? 

 ━━今日のプラン。早々に沈没。

「えっとね━━」

 多分もう10秒くらいみんなを待たせている。

「つまり、わからないってことでええんか?」

 そうだ。プリキュアって何って聞かれたんだ。とにかく何か言わないと。それについては、あかねちゃんの言う通りだし。

「あ、うん」

 と相打ちをするだけに終わった。

 少しの時間が過ぎたあとに

「いや何も進んでないやん」

 という耳の痛いつっこみが聞こえた。

「とりあえず、私がしようとした話をさせてほしい……」

 私は転校してきた日、ヒオリという人物がコアソウルという怪物を召喚し、そのときに私はキュアハッピーに変身した、ということを話した。私が"この世界"に来た初日にあったことを、私が別世界から来たことについてを隠して。

 もちろんこの中の数人にとっては聞いたことのある話で、もはや確認でしか無いと思う。だけど、ここですべてのプリキュアが集まった今言うことが大事だと感じた。今一度、みんなで共有しておきたい。

 その後、れいかちゃんは私に質問をしてきた。

「みゆきさんは、前もプリキュアとして戦ってきたというわけですね。その敵方と今私たちが戦っている"何か"とは別の存在なのでしょうか」

「う、うんそうだよ。前に私たちが戦っていた怪物はアカンベェって言うの。怪物を召喚する人━━ウルフルン、それとアカオーニも人としてカウントしていいのかな━━も違っていて━━あとは━━」

 私はアカンベエとコアソウルの違いについて説明した。

 それをれいかちゃんたちは真剣に聞いてくれている。私はこれまで何度も戦ってきた分、より具体的に話すことができた。それが、アカンベエとの戦いを見たことのないもう一人のプリキュアであるみんなには、実感が伴った説明として聞き入れてもらえたのだろう。

「アカンベエの目的は、みんなから《バッドエナジー》を吸い取って、《バッドエンド王国》の《皇帝ピエーロ》っていう親玉を復活させることだったの。結局復活させちゃったんだけど、5人が力を合わせてなんとか勝利したの。それに比べてコアソウルは━━」

「待ってみゆき」

 ふと、あかねちゃんが私の口を止めた。

「どうしたの?」

「その、今5人って言ったよな」

 その瞬間私は自分の背筋が冷えた。

「そ、そうだっけ━━」

「せや。みゆきはこれまで5人で戦ったってわけだよな」

「あ、うん」

「それってどんな仲間やったん」

 あかねちゃんはじっと私を見てくる。言い逃れはできないと感じ、肯定した。 

 私はこれまでプリキュアのことは、一般人に秘密にしていた。これは両世界共通のことで、理由は関係者になってしまうと危険な目にあってしまうからだ。マジョリーナになおちゃんの家族がさらわれ、人質に仕立て上げられた挙句、最終的には消し炭にされかける事態にも陥ったことがあるのがいい例だ。

 だけど、プリキュアになっているみんなは間違いなく当事者になっている。だから、私がしっているすべてを伝える必要があるのではないだろうか。しかし、私は、私が前にプリキュアをやっていたのは別世界のことで、その時の仲間は別世界の君たちなんだよ、ということを伝えられずにいる。

 これまで私は何も考えることなく秘密にしていた。バレることは無かったのは、別世界に行くなんてことが私たちの常識では考えられないことだからだ。私だって、別世界に転移したことを受け入れるまでには時間がかかったのだ。

 でも今考えてみて、私は伝えていいのだろうかと頭を捻る。だが、私は答えが出なかった。

 私は回答を濁す。

「みんなによく似た人だったよ」

 ━━似ているどころじゃないよね。

 心の中で呟いた。

「ふうんそうか。まあ、今度きかせてや」

 あかねちゃんは微笑んだ。あかねちゃんが「自分が気になる人物とは自分だ」なんて予想できるわけもない。転校前の友達について教えてもらうくらいの感覚なのだろう。

 私は自分で一息つこうと、

「それともう一つ」

 れいかちゃんが右手を挙げた。

「この前黒龍と戦った時に、マリという人が気になることを言っていました」

 私はコップを口につけながらも、れいかちゃんに視線を向ける。私と目が合ったことを一つの合図と受け取ったようで、彼女は言葉をつづけた。

「『さすがにこの世界で5人揃わせちゃだめとは聞いてたけど』と━━」

 うぐっ。

 その衝撃に、お茶を吐きそうだった。なんとか口の中に押しとどめた。

 が、私の反応を間近で見たやよいちゃんには、私が秘密にしていることがあると察するには十分すぎた。

「ちょっとみゆきちゃん。何か隠してるでしょ……!」

 目を細め私を見つめるその姿。交換留学生として来たブライアンの話ばかりする"前の世界"のあかねちゃんに「好きなの?」と問い詰める"前の世界"のやよいちゃんと重なる。

「今話す必要はないかなって」

 やよいちゃんから視線をそらして言う。

「だったら、どうしてそんな反応をするんだい? それが理由なら自信をもって言えばいいじゃないか」

 指をびしっと私に向けるのはなおちゃん。同時に真っ直ぐに突き刺さる視線が痛いのなんの。

 私がこれで隠し事は無いなんて言っても信じてもらえないだろう。正直に話すことしかできない。

 今日は簡単にプリキュアについての簡単な説明と、みんなでがんばろうみたいな感じの話をしようと思っていた。だけど自分で墓穴を掘ったり、敵の会話から真実に近づかれたりして、本来話す必要のないことをたくさん話してしまった。だから私は、私が隠していることを話したらどうなるか。隠されていることに対してみんなはどう思うのか。真実を話すことに対しての是非について考えられていなかった。

 私は、自分の考えのなさにただ後悔する。

 ここで私は何も話さなかったらどうなるのか。私はふと予想したのは、全員から向けられる不審の目。

 みんなをそんな気持ちにさせたくない。それは私の配慮だという無理やり解釈して、自分の今を伝える。

「━━実は、教えられない」

 私は視線を向ける。

 なおちゃんとやよいちゃんは、「えっ」と言葉に出した。心配、困惑、失望、どれともとれる表情で私を見る。後戻りはできないと隣同士に座る二人に交互に目を向ける。

「私は、これを話していいのかわからない。話したらどうなるか、私にとっては全く予想できないの。だからみんなのために、言うことはできない。これは、信じてほしい」

 口を閉じた後、私は、私がどのように話したのかを覚えていなかった。無我夢中で口にしたその言葉を言い直すことはできない。だからこそ、今伝えたことは私の心からのメッセージだと信じたかった。

 2秒ほど間をおいて、やよいちゃんとなおちゃんは顔を向け合った。そうして、互いに笑いあって、そのまま私に視線を向きなおした。

「わかった。信じるよ」

 やよいちゃんの反応はそうだった。

 なおちゃんも頷き、私の気持ちを尊重してもらえるのがよく分かった。

 その途端、私の心は軽くなるどころか、さらに重くなったように感じた。

 すると、隣から右手が伸びて、私の右肩を掴む。

「まあ、みゆきが言うべきかわからないほど重大なことなんだろうな」

 それは多分正しくもある。

 だけど、私は考えが足りなかっただけだ。話すべきか自分に問うた時間はあまりにも短い。

 これ以上話を続けたくない。話を続けるべきではない。その思いで私は笑顔を作り、無機質に「うん」と答えた。

 

 

 ***

 

 星空家をあかね、やよい、なおと共に出たれいかは、すぐさまそのまま帰路につく。

 自分のふとした疑問から、みゆきは口を滑らせ、

 玄関からでて少しした後、ふとあかねが呟いた。

「なあ。みゆきって何を隠しとると思う」

 みゆきには何か言えないことがある。それはここにいる4人全員が知っていることだ。

「『さすがにこの世界で5人揃わせちゃだめとは聞いてたけど』。《この世界》とはどういう意味なのでしょう」

 先日、コアソウルをしたがえ、この街を襲ったマリが放った言葉だ。それをみゆきに伝えてみると、お茶を吹き出しそうになったあたり、それは《聞かれてはならない会話》の一種だったのだろう。

「それって、れいかちゃんが聞き間違えた可能性は?」

「いや、だったらみゆきちゃんがあんな反応しないでしょ? 」

 やよい、なおと会話をする。

 れいかが気になったのは《この世界》という表現だ。

「《この世界》という表現を使うのであれば、《別の世界》があるのではないでしょうか」

「そういうことになるわな」

 あかねの返答に、れいかは一つ頷いた。

 するとやよいが自分の疑問を口に出す。

「でも、《別の世界》って言われてもなんのことだかわからないよ」

 それはれいかも同じだ。一体別世界とはなんなのか。どういう場所なのか。

 実際にこの目で見た《別の世界》の存在を知っているマリの立場になって考える。マリは《別の世界》で5人揃ったプリキュアを知っているとすれば、何らかの方法で《別の世界》と繋がる方法を持っているはずだ。

「みなさん。マリたちが別の世界とつながるきっかけになりそうな”何か”って思いついたりしますか」

 そこからしばらくは、4人の足音だけが木霊する。

「あっ」

 するとやよいが突然声を出した。

「あの黒いトンネル!」

「あ────!」

 やよいの言葉に反応したのはあかねだった。

 れいかが聞くと、やよいが初めて変身したときのことについて語った。ジラという少年が黒いトンネルのようなものを開き、そこに入っていったらしい。ジラについて、れいかは実際に見たことは無いが、マリたちの仲間だということは聞いている。

「━━となればトンネルの先が《別の世界》なのでしょうか。そして、《別の世界》がどういう世界かが、私たちに伝えるものを今拒んでいるものなのでしょう」

 私たちに知らせるにはあまりにも重い真実。

 確証はないが、一度みゆきが口を噤む内容を、一旦《別の世界》のことだと仮定しよう。そしてみゆきと《別の世界》を繋げる要素はないか。また、《別の世界》について知るであろうマリたちと、みゆきを繋ぐものは━━━━。

 れいかの中で何かが弾ける。

 

「コアソウル。すべての力を以て、プリキュアを殲滅して。あ、キュアハッピーは消さない程度にね」

 

 マリがキュアハッピーの名前を口に出していた。

 あの時れいかは1文目を聞いた瞬間、これまで猛威を振るっていた黒龍に意識を向けてしまったため、2文目について考えを巡らせることができなかった。少なくとも、これまであの言葉について話題に出さなかったサニー、ピース、マーチの3人もそうだろう。ハッピーだけは、違ったかもしれないが。

 となると、別の世界の住民たちはみゆきを守る理由があるらしい。しかし、みゆきは彼らが生み出すモンスターを消そうとしている。それでもキュアハッピーだけを守る大きなメリット、もしくは守れなかった場合のデメリットがあるはずだ。

 れいかはそこまで考え、3人に共有する。

「でも、さすがにまだ不確定的な情報が多いし━━━━」

 なおがそう答えた。

「まあ。予想しても分からへんよな」

 話を始めたあかねもここで行き詰まりを感じたようだ。

 確かに、仮定で話を進めると混乱を促すだろう。

 キュアハッピーを守る理由とは何か。もしハッピーを失うと何が起きるのか。みゆきが何か特別な存在であるのは確かだ。しかし、それは何なのかはわからない。

「そういえば、みゆきさんと《別の世界》とはどのような関係があるか、心当たりがありますでしょうか」

 なので、れいかはその手がかりであろう敵とみゆきの関係を導くために全員に問いかける。

 しかし、全員が皆目見当もつかないようだ。

「やっぱりそれも、敵の情報を知らないと駄目なきがするよ」

 やよいの言葉に全員が頷く。するとあかねが、一つ思いついたように答えた。

「みゆきがもともと《別の世界》の住民ってのはどうなんや?」

 いや、それは考えづらい。なおもすぐにかぶりを振って、反論する。

「あのねえ。みゆきちゃんのお母さんがいたでしょ」

「.........う、確かにな.........」

 しかしやよいが、

「じゃあ家族ごとこの世界に飛ばされたとは」

 それも考えにくいだろう。

「ではみゆきさんの両親はどうしてあのような家に住んでいるのでしょうか。無戸籍者が土地に自宅を建てることなどできるとは思いません」

 加えて、みゆきの父親は働いている。しかも、星空家が転校してきた理由は、彼の転勤が理由だというのだ。

 自分の否定に、やよいは「そっか……」と呟いた。

 考えれられるのは、みゆきは転校前にも他4人のプリキュアと共に、《バッドエンド王国》という組織と戦い勝利した。その後転校してきて、ヒオリという女性と、コアソウルという怪物が現れた、ということだ。

 彼女たちの組織は何をしたいのかはわからないが、プリキュアのことを知っている。そして、自分たちとは別の世界のことを知っていて、みゆきもその《別の世界》と絡んでいる。

 ではどうしてみゆきは《別の世界》のことを知っているのか。《バッドエンド王国》との戦いのときで知ったことなのか。だが知っているだけでは、みゆきだけが敵から保護されている理由にならない。「知ってしまった」からと真っ先に消されるのが普通ではないのか。

 やはり、すべての疑問は《別の世界》の真実が大きく関わるだろう。

 だがそれを話すことは、自分たちにとって不利益になる可能性があるらしいのだ。「これを伝えていいのか分からない」とみゆきは口を閉じた。

 どうしてだろうか。「知りすぎてしまう」のであれば、みゆきと同じように逆に保護されるのではないか。そうじゃないとしたら、みゆきは《一度保護された後に、何かをされる》立場であろうことだ。もし自分たちが知れば、自分たちもそんな状況になるのか。だが、知る、知らないの違いだけでここまで扱いの差が生まれるだろうか。

 れいかは強い疑問に覆われる。

 なお、あかね、やよいの3人がここまで考えられているかは分からない。

 だが全員がみゆきが隠した真実について気になっているだろう。

「まあみゆきのやつは、うちらのことを思って、隠しているってのに変わりはないやろうな」

 突然、あかねが声を明るくして話し出した。

「何を隠しとるのかって言い始めたのはうちだけど、とにかくうちはみゆきに変な思いをさせたくないねん。それはみんなもやろ」

 あかねの言葉に、れいかは、そしてなおとやよいも頷いた。

 特にやよいは、笑顔でこの場にいる全員に語り掛ける。

「そうだね。だから私たちは、みゆきちゃんには普段通り接してあげよう」

 誰も反論することはなかった。

 自分たちにとって、みゆきはこの世界を脅かす怪物にあらがう方法を教えて貰った恩人でもおるのだ。本人には自覚はないようだし、むしろ自分たちに感謝をしているようにも感じる。

 れいかは暗くなった夜空の下を仲間と共に歩いていく。

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