「では話します。まずみなさんは、もう一人の自分について考えたことがありますか?」
れいかは、自分の考察を話し出した。正直なところ、自分が出した結論はまだれいかにとって実感が湧かないものであった。それほどまでに、れいかにとって事実か疑わしかった。だが、あかねが言った通り、話さないと何も伝わらないし、何も起こらない。その一心で、自分の覚悟とともに友人たちに打ち明けたのだ。
あかねが疑問の声を上げた。
「もう一人の自分って、どういうことや?」
れいかは頷いて、説明を続けた。
「私たちが今いるこの世界とは別に、もう一つの世界が存在するということはみゆきさんの反応から明らかでしょう」
「《別の世界》のことでしょ」
なおの確認に、れいかは「ええ」と返した。
「その世界には、私たちと同じ姿をした別の人たちが住んでいて、そこからみゆきさんが来たというのが私の考察です。どう思いますか」
れいかが別世界の真実について話し始めたとき、あかね、やよい、なおの三人はそれぞれ異なる反応を見せた。
あかねは眉をひそめ、れいかの話を半信半疑で聞いていた。彼女の顔には困惑と疑念が浮かび、何度も首を傾げる仕草が見られた。
やよいは驚きのあまり目を見開き、れいかの話に耳を傾けていた。彼女は普段から空想好きで、アニメや漫画の世界に浸ることが多かったが、現実に別世界の話を聞かされると、戸惑ってしまうだろう。
なおは腕を組み、真剣な表情でれいかの説明を聞いていた。
「でも、れいかが言うなら……」
3人の中で、なおが最も納得をしてそうだった。それは自分と過ごした時間が長い分、信じてくれているのだろうか。それでも彼女には、れいかの話を信じたいが、完全には納得できない複雑な感情が見えていた。
あかねは再び口を開いた。
「あかね、れいか。別世界に自分がおるって、ほんまにあり得るんか?」関西弁で質問を投げるあかねの声には、不安と驚きが混じっていた。
れいかは少しの間考え込んでから、静かに答えた。
「分かりません。ですが、まだ不明点はあれど、矛盾点は何一つ見当たらないのです。みゆきさんが『クラスのみんなを騙したやよいちゃんの方こそよっぽど━━!』と言ったところではっと口を覆い、その後『違う、違う』と否定をしていましたね。私はその仕草が気になりました」
「そこになんの意味があるんだい?」なおが首をかしげながら質問した。
「まさか━━」
やよいがなにかに気づいたように声を上げた。
「やよい、どういうことや?」
あかねの反応に、信じられないというような表情で恐る恐る口を開けた。
「別世界に、《クラスのみんなを騙した私》が存在する━━━━」
れいかは深呼吸をしてから頷いた。「はい。それが別世界の真実だと思います。そこでみゆきさんは別世界のやよいさんたちとプリキュアをして、バッドエンド王国と戦い、一度世界を平和にしたのでしょう」
れいかの言葉に、空気が一層重くなった。
「じゃあ、どうしてみゆきはうちらを拒絶するんや?」
あかねの問いには、困惑と悲しみが入り混じっていた。
れいかは目を伏せた。
「これも私の完全な予想です。みゆきさんが『プリキュアになるみんなを可哀そう』だと言ったこともあります。それも、別世界のことを考えると納得がいくのです」
「どういうことなんだ? れいか」
なおは眉をひそめた。
れいかは言葉を選びながら話した。
「別世界の私たち4人も、みゆきさんと一緒にプリキュアをやっていたとします。そして、その4人がこの世界に来たことで、この世界の私たちをプリキュアにしようとした。でも、それはここにいる私たちを代替品のように扱っているとみゆきさんが感じていたのではないでしょうか。だから、みゆきは私たちを可哀そうだと思ったのかもしれません」
なおは呟く。その眼には深い後悔が見えた。
「でも、もしそうなら、みゆきちゃんがそのことを隠してる理由が分かる気がする。あたしたちを傷つけたくなかったんだろうね」
「そうです。みゆきさんは私たちのことを思って真実を隠しているのかもしれません」れいかは優しい声でそう言ったが、その目には深い思索の色が見え隠れしていた。
彼女たちは沈黙の中でそれぞれの思いに浸り、みゆきの気持ちと自分たちの関係について改めて考えさせられた。れいかの話は信じがたいものであったが、彼女たちの心に響くものがあったはずだ。
***
私は走る。絶対に助ける。
コアソウルになんの目的があるのはか分からないが、あかねちゃんたちを狙っているのは確かだ。
私は必死に走り続けながら、もっと速く走ろうとマーチの風の力を呼び起こそうと集中してみた。だが、その走る速さはあまり変わらなかった。そればかりか、体力の消費が大きくなった。このまま風とともに走ろうとすれば、逆にたどり着く時間は短くなるだろう。
その時、バランスを崩して地面に転んでしまった。痛みが全身を駆け巡る。
私は拳を固く握りしめた。自分の無力さが、みんなを危険にさらすという恐怖が、胸の奥底で冷たく広がっていく。
自分がもっと強ければ、こんなことにはならなかったのだろうか。いや、そもそもみんなでプリキュアになっていれば、なんら問題は無かったはずだ。簡単にあの人魚を打倒出来ていたかもしれない。
私は、”あの世界”でのみんなとの絆を信じてきた。でもだからと言って、その絆を”この世界”のみんなに押し付けるのは間違っている。でも私たちには、”この世界”だけでの絆が生まれている。”この世界”でだけの友情があった。
それでも私は”この世界”のあかねちゃんたちとプリキュアをすることを拒むんだろうか。
私は立ち上がる。マーチの力は使えない。そうだ。この風の力はマーチの力だ。私にはうまく扱えない。自分の力だけで走るしかないと腹を括る。
公園の入口が見えてくる。通り過ぎる。もう少しだ。人間とプリキュアの足の差は大きい。加えて運動が超苦手なやよいちゃんがいて、他の3人が彼女を見捨てて逃げるなんて思えない。ここから距離は近くない。
だけどどこにいるだろうか。どの角を曲がって、どの町に出たのか。相手が人なら商店街や大通りなどたくさん人がいる場所に行けば問題はない。だけど、コアソウルにそんな常識は通用しない。となれば人気の無いところだろうか。
私は街中を探す。だけど見つからない。
でももしみんながプリキュアでいたのならば、何か不思議な力で位置が分かったかもしれない。私がみんなの力をすべて持っているというメリットは今はもう無いに等しい。だったら、だったら。
━━どうして私はためらっているの。どうしてソウルフルパクトの光を分散させて、みんなに送ろうとしないの。
できないんじゃない。あの屋上でクマのコアソウルと戦った時、サニーたちの力が使えることも、もう一度5つに分かれたソウルフルパクトの光を集めることも、私はなぜか《知っている状態》だった。もちろん分からないままのこともある。サニーに必殺技の名前なんて聞くまで知らなかった。だけど、今ソウルフルパクトの光をみんなに送ることについて考えた時のこの感覚は、私が知っている状態だと言い切れる。
自分に言い聞かせながら走る。
その時、ずるっと。足元をとられた。
「うわああ!?」
ガツンと後頭部を強打した。私が地面に手をついておき上がろうとすると、左手が粘度の高い液体に触れていた。見れば黒い絵の具のようなものが付いていた。嫌な予感が胸をよぎる。
これはただの絵の具ではない、敵が使うものだと直感的に感じた。これを大量に浴びたマーチが頭を抱えて苦しんでいる姿を思いだした。液体の量が少ないからなのか、こけて頭をぶつけたことによる頭痛で紛れたのか、それとも私の力が大きいからなのかは分からないが、私にあの時のマーチが感じていたであろう頭痛は無い。
恐る恐る絵の具が垂れている方向を見ると、黒い染みがぽつぽつと一つの道を作るように伸びていた。これを辿れば、敵のもとにたどり着けるかもしれない。そこでコアソウルを倒してしまえば、みんなは安全だ。
私は立ち上がり、その水滴が作る線を追い続ける。
いつしか、私は細い路地裏へとたどり着いた。立ち止まり、中を見る。見る限り入り組んでいて、先は見えない。薄暗く、不気味な静けさが漂っていた。心臓が高鳴り、呼吸が荒くなるのを感じた。ここでコアソウルが待ち伏せをしているのか。それともみんなに牙を向けているのか。
黒い絵の具が垂れた跡を追いかけながら、私は狭い路地裏を駆け抜ける。
路地裏は薄暗く、入り組んだ迷路のように見えた。壁には古いポスターが貼られ、放置されたゴミ袋が積み重なっている。時折、猫の鳴き声が遠くから聞こえるが、それ以外は静寂に包まれていた。足音がコンクリートに反響し、心臓の鼓動とともに響き渡る。絵の具の道は途切れることなく続いており、その先に何が待っているのか分からないが、私は迷うことなく進み続けた。
焦りと不安が胸を締め付ける。しかし、仲間たちを救うためには、立ち止まっている暇はない。私は絵の具の線を目で追い、注意深く足元を確かめながら進んでいく。
しばらくすると、曲がり角の向こうから、黒い絵の具の水たまりの端が見えた。私は息を呑む。薄暗い路地裏に広がる黒い絵の具は、不気味な光沢を放っている。その異様な光景に、一瞬足がすくむ。心臓が激しく鼓動し、緊張が全身を駆け巡る。
私は角を曲がる。その先には10メートルほど続く路地裏。その先は行き止まりで、網目状に線が入るコンクリートの塀が見えた。
━━そして私は、想像を絶する光景を見た。
目の前に広がるのは、黒い絵の具の水たまりが不気味に広がり、大切な友達が運命に抗うこともできずに網に絡み取られ静かに引きずり込まれていく光景だった。
あかねちゃん、やよいちゃん、なおちゃん、れいかちゃんの姿が、目の前でゆっくりと動いているのを見ていると、私の心の中には冷たい痛みが広がっていった。それはまるで、私の内側から何かが引き裂かれていくような感覚だった。
あかねちゃんとれいかちゃんは、顔を絵の具にうずめ、物言わず黒い絵の具の中に沈んでいた。ただただ虚ろで、まるで動かない木のようだった。彼女の頭から脚先まで、全身が黒い液体に覆われていく様子は、私の心に深い悲しみを刻み込んでいった。
なおちゃんの姿は、黒い液体の中で横たわっていた。彼の体の半分が絵の具に沈んでおり、もう一方の手は無力に伸びたままだった。顔の半分が液体に埋もれていて、そこに浮かぶ表情は無い。彼女の瞳は、どこか遠くを見ているように感じられ、その視線は私の方を向いているかのようだった。だけど、怒りも、悔しさも、もはや何もない。流されるままの姿が、まるでこの現実を静かに受け入れているように見える。
やよいちゃんは、仰向けになった状態で、黒い絵の具に包まれていた。彼女の顔には、かすかに血の気が引いているのが見えた。ふと、目を閉じることもなく、ただ朧気に空を見上げている彼女の瞳がわずかにこちらに向いた。かすかに笑みを浮かべた、わずかにその口が動いた。
みゆきちゃん。
無音で発せられた声が確かに聞こえた瞬間、私は愚かなことをしていることに気が付いた。
私はバカだ。何を呆気に取られていたのか。私は思わず前に足を出す。みんなを助けないと。助けないと。
だが突然、網が私の目の前に貼られていた。こんなもの、と私が無理やり前に進もうとする。しかし進めない。網の力は強大で私の歩みを頑として認めようとしない。私は網を見渡す。強力な杭が地面や壁に刺さっていた。私はなんとなく、杭を抜くことは難しいと思った。その結果私がとった行動は網を登ること。必死に手を伸ばす。足を網に絡ませ、登ろうとする。いやそもそも私はプリキュアなんだから跳べばいい。そう考え網を地面にして足に力を入れて跳ぶ。だが、ぐいっと右足が網に取られた。私の行く手を阻むくらいに強い網が、私の脚力だけで敗れるわけがない。そのまま私を地面に落とし激突させた。網にからめとられた足の向こうで、全員の体が完全に消えようとしていた。
そうだ。プリキュアの光をみんなに送ればなんとかなるかもしれない。
私は思い切ってプリキュアの力を使うことを決意した。プリキュアの力を使って、あかねちゃんたちを救うんだと、自分に言い聞かせながら、光を放つ準備を始めた。私は心の中で必死に力を振り絞った。腰元のソウルフルパクトから、光を送ろうとした。
ふと、”あの世界”での出来事が、私の目の前に蘇ってきた。私は仲間たちと一緒に戦い、喜びと悲しみを共にしてきた。そして今、ここにいるみんなは代替品になってしまうのではないか。そんな不安が心に広がっていく。
腰元の光が小さくなった。
違う。彼女たちは、”この世界”の独立した存在だ。彼女たちには彼女たちの命がある。
その考えが私の心を震わせた。私がここで迷っていること自体が、彼女たちの安全を考えているとは言えないのではないかと、心の奥底で反省する気持ちがわき上がってきた。
そもそもみんなの安全が大切なのに、私は何を迷っているの?
その思いが私を突き動かす。
もう4人の体は完全に消えている。そればかりか黒い液体が次第に小さくなっていく。
ここで迷っている暇はない。私ができることをしなければ。みんなを助けるために、私は全力を尽くさないと.......!
光が。網を抜けて黒い液体の中に向かって放たれると、液体の中に入っていった。
━━お願い、あかねちゃん、やよいちゃん、なおちゃん、れいかちゃん.......
その祈りが心の中で響く。しかし、もう遅かった。液体の中から何かが光ることは無かった。次第に水たまりは小さくなり、点となって消えた。
それは、あかねちゃんたちがあの液体の中に飲まれ、消えていったことを示すには十分だった。
私は深い絶望の中、絶叫し泣いた。顔を覆い、仰向けになって倒れた。
「あああ.......ああああああああああ!」
私は絶叫し、泣いた。
私が間違えた。私の迷いが、4人を苦しめて、そして消したのだ。
バカだ。本当の大馬鹿ものだ。
「ごめん。ごめん。ごめん。みんなを助けられなかった。私はただ、”この世界”にやってきただけなのに、みんなは”この世界”にしかいないみんななのに、私が勝手にプリキュアを押し付けた。そのせいで、みんなを━━」
意味もなく、声が届くはずもない。それなのに私はただ許しを請うように、真実を口にした。
私は自分の寂しさを紛らわすために、顔も姿も同じだからと言って”この世界”のみんなを、”あの世界”のみんなと同一視をしてプリキュアに誘った。だけど、外見は同じでもみんなは別人だ。私は同じ人として接することを、代わりのように扱っていると感じ、何も言わずただプリキュアの力を取り上げた。この世界で生まれた、”別の世界”のみんなとの繋がりに気が付かずに。
打ち明けるべきかかは分からない。ただ私は一人でプリキュアをするべきでは無かった。みんなへの接し方を変えてもいい。だけど、私が”この世界”に来て”この世界”のみんながプリキュアになるまでの唯一無二の道のりは消してはならなかったのだ。
私の涙は幾筋も流れ、頬から地面に流れていく。空はすでに闇夜に覆われている。近場の電灯が、私をあざ笑うかのように照らしている。
「ねえ。あなた」
涙でにじむ視界に、何かが入った。
マリだ。
彼女を見るために、涙を拭った。上半身だけを地面から離し、見上げる。おなじみの赤パーカーを来た女の子は、空気椅子に座りながら上から私を見上げた。彼女は誘い込むように、私に笑みを浮かべて言葉を放った。
「プリキュア。あの子たちはいなくなったけど、また探せばいいんじゃない?」
「は.......」
「学校に友達、いるんでしょ。その人たちにもう一度誘えば?」
マリの言葉には少しばかり嫉妬心が見えた。
あかねちゃんたちに絡みついていた網は、間違いなく人魚のコアソウルのものだ。つまり、マリは今自分のコアソウルを使って、私の仲間━━いや、私が仲間と呼ぶ資格はあるのだろうか━━を永遠の闇に閉じ込めた。凄惨な行いをしたというのに、自分が沈ませた人をもう眼中にないような。いや。マリは、あかねちゃんたちを代替可能の存在だと捉えているのだ。
もし私がマリの言うように、他の同級生たちを再びプリキュアとして目覚めさせたとしよう。新しくプリキュアになったその人たちのことをマリはどう思うのか。手首に噛みつく蚊を仕留めた後、また別の蚊がやってきたなんて思うのではないか。
気が付けば、私の行く手を阻んでいた黒い網も消えていた。
そんなことをしたら、新しくプリキュアになった人も、沈んでいったあかねちゃんたちの魂も報われない。
いや、そもそも私は、ソウルフルパクトで変身するプリキュアは私と”あの4人”以外認めたくないのだ。
「嫌だ」
代わりがいる。別がいる。みんなを置き換えすることができると思っているマリが恨めしい。そして、一度はそう思った私が恨めしい。腸が煮えくり返るような怒りが生まれ、その情動を静かに吐いた。
「うーーーん。でもみんなは沈んでいっちゃったしね。あ、もしかして無理なの?」
無理かどうかなんて考えることすら馬鹿らしいと思った。
ばしゃっと水の音がした。目の前にドシンと音がする。人魚のコアソウルが、近くの下水道から姿を現したのだ。
「ま、どっちでもいいか。とりあえず、再起不能にはしておこうかな。私はともかく、ヒオリさんのためにもね」
私は地面に座ったまま、頭を項垂れた。
知らなかった。みんなを失った自分はあまりにも脆いことに。今の私には、一緒に並ぶ、背中を押し、絶対に守りたいみんなはもういない。何も考えられず、絶望の中座ることしかできなかった。
人魚はひれをうねうねと揺らし、私に近づいてくる。私の視界の上端に、人魚の鱗が見えた。
その時。
みゆき。
かすかに、声が聞こえた。私は我を忘れて耳を澄ました。この声は、聞き覚えがある。ありすぎる。力強く、温かい関西弁のイントネーション。
「あかねちゃん.......」
信じられない。私は幻聴を疑った。さきほど目の前で消えていった姿を見ているのに、私に声を掛けられるわけがない。
だが私の疑念を消すように、誰かの声が私の耳に内側から届いた。
私たちは大丈夫だよ。
春風のように柔らかく優しいトーン。聞き間違えるはずがない。やよいちゃんの声が幻のように私の心に響き渡った。しかし、幻聴だと片付けるにはあまりにも鮮明で、あまりにもリアルだった。
それにしても、みゆきちゃんはこんな事を隠してたなんて。
真っ直ぐで、頼りがいに満ちたなおちゃんの声が響く。さっきの私の声を聴いてたのだろうか。
そうだ。私はまだ何も失っていない。みんなはまだいる。消えてしまった黒い液体の中で確かに存在している。
あとでみゆきさんの心を聞かせてくださいね。
雪のように綺麗で美しい声はれいかちゃんの声だ。
腰元で光るソウルフルパクト。あの日、”この世界”で目覚めた日から私の中に生まれた光の力の結晶のようなもの。それこそが、私たちを繋ぐ絆の証だ。あの液体は”この世界”にはいない。だけど、世界を超えてリンクしている強大なつながりがある。
私は右手をかざした。
カアアアアンという金属音が路地裏に木霊した。
「あれ?」
マリが驚く声が聞こえた。
手に力を入れる。コアソウルが振り下ろしたであろう何かを掴みながら、膝を立て、右足裏でコンクリートの道路を踏んだ。足を踏ん張り、ぐぐぐ、と立ち上がる。左足首が地面に触れ、膝が伸びる。完全に立ち上がった途端、私は左手を握り、コアソウルめがけてぶつけた。
コアソウルは後ろの塀に激突し、地面に倒れた。しかし、すぐに体勢を立て直そうとしている。
「まさか、あなた。戦う気!?」
私の心が完全に折れたと思っていただろうマリが驚嘆の声を出す。確かに、私の心は打ちのめされていた。だけど、大切な私の人たちが、”この世界”で出来た唯一無二の親友たちが、私の心を蘇らせたのだ。
「私は戦う。”この世界”のみんなのために」
コアソウルに向かい、私は歩を進めた。その歩みには、誰かが背中を押してくれている気がした。