勝負は一瞬で終わった。私があれだけ苦戦したコアソウルも5人の力を使えば一瞬で消え去った。まずマーチが人魚に対応を強要させ、そのうちにピース、サニーが打ち砕く。網攻撃は必ずピースが逃げるので回避は余裕だった。サニーの攻撃は人魚の体を簡単に吹き飛ばす。人魚の最後の攻撃━━というより悪あがきのような狂乱状態で暴れただけ━━もビューティの正確な一撃で抑えることに成功した。最後に私のとどめでコアソウルは消え去った。
すると周りの空間が消え始め、私たちは全力でその空間から逃げた。
外に出るとマリもいなくなっていった。
辺りは完全に闇の中だ。
さすがに時間帯から帰るべきだということで、私はみんなに真実を話すのはまた明日以降ということになった。
そして翌日。
私たちは放課後。いいところにベンチがあったので、私たち5人は座った。
そして私は全員に話をし始める。
私は”この世界”の人間じゃなくて、もともと”別の世界”でプリキュアとして戦っていたこと。その時の仲間は、みんなと同じ顔や声の持ち主だったということ。自分は、両世界のみんなを同一視して、一緒にプリキュアをしようとしていたこと。だけど、それは同じDNAを持っていようが、私の目の前にいるみんなは唯一無二で、決して替えの利かない存在だと気づいた。だから別の世界の自分が、という理由でプリキュアをさせたくなかったということを話した。
そして、そのことをずっとみんなに隠していたことに対する謝罪を話した。
私が話している間、みんなは静かに真実について耳を傾けていた。見えた表情はやはり、というようなものだったので、結局私が隠し通すことは不可能だったのだろうと思った。それでも静かに真実に耳を傾けようとしてくれるその姿に私は感動して、また申し訳なさに胸が痛んだ。
私が話し終えると、数秒してあかねちゃんの「やっぱりか」という納得したような言葉が静かに帰ってきた。
「うちらはソウルフルパクトの繋がりの結果━━やと思う。それで、みゆきの記憶を見たんや」
「記憶━━?」
私は訳も分からず首をかしげる。
「えーーと。何と言おうかな?」
やよいちゃんは、人差し指を頬当てて数秒後に話し始めた。
それは恐らく、”前の世界”のこと。プリキュア5人はが《怠け玉》の中に入ったときのことだと思う。”前の世界”でのあかねちゃんたちが《怠け玉》の中に入れられ、永遠にバッドエンドの中に閉じ込められる。私も助けに入るんだけど、危うく私も《怠け玉》の毒牙に負けたままになっていた。キャンディがいなければ全滅だった。私はあの世界で必死に、みんなに訴えたのをよく覚えている。あの戦いで、《ロイヤル・クロック》の力で、《ロイヤル・レインボー・バースト》を放った。
なぜか、”この世界”のみんなはあの時の私の記憶を見ていたのだ。それはきっと、ソウルフルパクトの繋がりが要因だろう。
そして一つ不安があった。それは、私がここ数日ずっと考えていたもの。
「でも、みんなは大丈夫だった? もう一人の自分を見て、嫌な気分になったりしなかった?」
嫌な気持ちになった? という言い方は嫌な尋ね方だろう。自分でもいい気はしなかった。それでも、隠してきたことを打ち明けたのだから、私は話した責任を持たなければならないと思った。
「正直、嫌な気分になった」
真っ先に、なおちゃんの返答が帰ってきた。
「私がもう一人いるのが凄くイヤって思った。あたしは、あたしだって。ずっと思いながら眩暈にこらえてた。れいかが、みゆきちゃんは”別世界”のあたしがいる世界から来たって予想してたけど、だからって、なんて言うんだろう。私の魂が、そのことを否定してきた感じだった」
みんなを見る。あかねちゃん、やよいちゃん、れいかちゃんの3人は、言葉を否定したり、付け加える必要が無いというかのように黙っていた。全員がなおちゃんの言葉を肯定するようだった。
ふと私は考えた。本当に私は、言うべきだったのか。どれだけみんなから嫌悪されようと、黙るべきだったのだろうか。れいかちゃんにいくら真実を突き付けられても知らないふりをするべきだったのだろうか。
私が悩む間、もう一度なおちゃんが静かに口を開いた。
「みゆきちゃん、確かに最初は混乱したし、戸惑った。でも、あたしたちはみゆきちゃんが何を抱えているのかを知ることができて、本当に嬉しいんだ」
「嬉しい?」
「そうそう、驚いたけど、それだけじゃないんだよね。みゆきちゃんの気持ちがわかって、もっと仲良くなれた感じがするよ」
やよいちゃんが笑顔で付け加えた。
次にれいかちゃんが答えた。
「みゆきさんが”別の世界”で戦ったときの中で、どうしてあの瞬間が私たちの目の前に現れたのかを考えました。あの時のみゆきさんは”別の世界”の私たちに向けて何かを伝えようとししているのを感じました」
確かに、あの時は《怠け玉》によって心を失いかけてるみんなを呼び戻そうとしていた。
「ですので、私たちがあの泥に飲み込まれている間、みゆきさんは何かを伝えたかったのではないでしょうか」
れいかちゃんは微笑みながら自分の考察を口にした。確かに、と私は思った。
だかられいかちゃんたちの前に《怠け玉》内での記憶が呼び起されたのか。だとすれば、私は何をつたえたかったのか。それはもちろん━━━━。
私は一つ頷いた。そして私の心をさらけだした。
「うん。本当は、みんなにずっと伝えたかった。私の悩みをみんなに聞いてほしかった。でも、話したらみんなが傷つくかもしれないと思った。もしそうだったら、私は私の苦しみたくないっていう気持ちだけで、みんなを苦しめていることになるって思ったの」
みんなを自室に呼んだ夜から、ずっと思っていたことだ。私は、自己中な人間だと考えていた。
すると。
「なあ。みゆき」
あかねちゃんが声をかけてきた。
「確かに、うちらはもう一人のうちがいることを信じられずに、拒絶反応みたいなものを感じた。苦しかった。だけど、」
あかねちゃんは一度言葉を切り、深く息を吸い込んでから続けた。
「だけど、みゆきが何を考えてるのかわからずに、どうすればいいのかって悩んでるときのほうが、正直もっと辛かったんや」
それはあかねちゃんの魂から出た言葉だった。
私はそれを聞いて、後悔が大きくなった。
だけど、その後悔を私は共有したかった。みんなに知ってもらいたかった。
「私は、私が声や顔が同じなみんながいる”別の世界”から来たってことを話したら、みんなが傷つくって思ってた。確かにそれは本当だった。だけど、もう一人の自分がいるってことで傷つくよりも大きい傷なんて無いって決めつけていたんだ」
私はこうして肩を並べて会話をしなければ、みんなが一番傷つけたことを知ることはなかったんだ。私はそのことを放棄して、決めつけてしまった。”この世界”にいるみんなは、唯一無二の存在で、私はまだ出会ったばかり。話さなければ分からないことなんて山ほどあるだろう。
互いのことを思って逆に口を噤むよりも、共に共有したい。
この気持ちに気づくまでに過ごした今までの数日間を無駄にしたくないために、私は決意のもとみんなに提案した。
「みんな。約束しよう」
私はベンチを立って、少し前に歩く。振り向き、全員に顔を向ける。
みんなは「待ってました!」と言わんばかりの笑顔を向けていた。私はみんなと心が一つになっていると感じた。その理由は私がみんなと話したからだ。そう考えると私は自然と笑みがこぼれた。
4人は立ち上がる。
5人は円を作るように並んでいる。
私は力強く宣言した。
「約束しよう。私たちは悩みごとを決して黙らない」
右手の小指をみんなの手が届く位置に伸ばした。そこになおちゃん、れいかちゃん、やよいちゃんの指が絡む。
するとあかねちゃんが一つ。
「なあ。もし誰かが破ったらどうする? 罰ゲームに針千本は色々と無理やろ」
「確かに」
まず、れいかちゃんが反応した。
金銭的にも、人命的にも厳しいだろう。
「私たちが大学生とかだったらご飯奢るとかでいいと思うんだけど━━━━」
4人分の食事代なんて私のお小遣いの━━━━何か月分かな? ご飯にかかわるのは確かにいいかもしれないけど。
「あ、そうだ」
提案したのはなおちゃんだった。
「奢るのが無理でも、みんなにご馳走すればいいじゃないかな」
私をたち4人ははっとした。確かにお金もかからないし、可能だし。いやでも。
「私お料理できないけど━━━━」
私が塩と砂糖を盛大に間違える未来が見える見える。
「その時はお手伝いするよ」
やよいちゃんの返答に私は「ありがとう」と答えた。
「いや、それ罰ゲーム的にどうなん?」
というあかねちゃんの言葉。しかにその後、「まあいいか」という自己完結の後、彼女も指を絡ませる。
そうして私たちは約束をした。
「指切りげんまん。噓ついたら針千本飲ーーます!」
5人の声が重なった。
夕焼けの中で、私たちは新たな一歩を踏み出した。これからもどんな困難が待ち受けていようとも、私たちは一緒に乗り越えていく。隠し事をせず、正直に話し合い、互いを支え合うことで、私たちの絆はさらに深まると確信していた。
で、私はこの後衝撃の事実が舞い込んでいた。
「え━━━━。明後日定期テスト?」
帰り道、ふとした会話の中から聞いた内容を疑った。
「せやで」
勉強に自信がないからなのか、私に呆れたのか、あかねちゃんが苦笑いしながら私の疑問を肯定した。
ところで、私はなにもやっていない。テスト週間中、勉強をするような精神状態でなかったのは確かだ。だからといってテスト勉強を一分たりともしていない事実が変わることは無い。
「ねえなおちゃん」
私はふと質問をした。”彼女”に謙遜をされると逆に困るから、”彼女”の昔馴染みに客観的事実を聞こうとしたのだが━━。
「みゆきちゃん。やめよう」
なおちゃんは、私が今から怪談でもするかのように必死にかぶりをふっていた。私はその理由が分からないでいると。
「みゆきさん」
後ろでれいかちゃんの声が聞こえた。
「私にテスト勉強を手伝ってほしいのですか?」
「実は私、勉強何もやってなくて。れいかちゃんも忙しいと思うから出来ればでいいんだけど━━」
すると、れいかちゃんはくすりと笑った。
「いいですよ。ではまず、よければ今日はみゆきさんの家で勉強を、明日は私の家でお泊まりですかね」
「ほんと!」
2日も見てくれるのはありがたい。
れいかちゃんは顎に手を当てて考え始める。するとれいかちゃんの隣にいたやよいちゃんが、忍び足で後ずさりし始める。今のうちに、視界から離れておこうといわんばかり。
「そうですね。社会のような暗記科目のほうが、前日の詰め込みの効果があるでしょうから、まず今日は数学の計算問題ですかね」
「どのくらい?」
「私がよろしいと思うところまでです」
というれいかちゃんの言い方に引っかかりを覚えた。
「え、それってどのくらい」
れいかちゃんは笑いながら答えた。
「私がよろしいと思うところまでです」
彼女の笑みは冷ややかだった。
私は背筋に悪寒が走る。考えすぎ、きっと杞憂だと自分に言い聞かせながら、微かな希望をもってもう一度質問する。
「えっとね。私が聞きたいのはだいたい何問なのかって」
「分かりません。みゆきさんがこの先に進んでもよいと判断するまで解かせます。10問でも、100問で、1000問でもです。ちなみにその間、絵本等娯楽、昼寝は認めません。お手洗いと食事以外は永遠に問題を解いてもらいます」
私は啞然とした。なおちゃんが止めたのかこういうことだったのかと納得と後悔をしながら、冷え切った笑顔を見る。
私はどこか吹っ切れてしまった。
「ははは。でも私が勉強しなかったのが悪いから私はこれで━━━━」
苦笑いをしながら避難しようとする私の制服の襟を後ろから掴まれた。
「逃がしませんよ」
れいかちゃんはそう言って、私を、星空家に引きずっていった。ちなみに、他3人も巻き添えだった。
時は流れる。
あの時全員で未来に向けて決意を固めたから、時が経つのが早く感じた。
修学旅行では”前の世界”と同じように京都と大阪に向かった。やっぱり私は大凶で、それはもう、うん━━━━。
いつの間にか夏休みに入り、私は宿題に追われた。”前の世界”の教訓を生かして私は早めに宿題に取り掛かろとしたのだが、全くわからず、最終日に青木家で地獄を見る羽目になった。それでもみんなで海に行ったり、山に行ったり大忙しだった。ちなみに、また登校日で肝試しが起きそうだったので、私は土下座で却下した。もちろんなおちゃんも土下座をした。
秋に入る。文化祭では劇をした。”前の世界”と同じように、バンドをしたいがために豊島君がへそを曲げるかと思いきや、挿入歌担当ということで手を打ってくれた。
イギリスからの留学生はブライアンではなかっし、他のクラスの人との交流していた。
新しい生徒会長は”この世界”でもれいかちゃんになった。
そして冬になった。
バッドエンド王国との最終決戦の日を超えて、そろそろ中学3年生になる。私の”前の世界”での最後の記憶は、まだ2年生だ。
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