スマイルプリキュアS   作:友だち

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ここまで行きたい! ってとこまで長すぎたので前後編にわけます
また、前回ハッピーが使った技を
ハッピー・シャワーからシャイニングにかえました


(11) 離れる ③前編

 総合公園の夜は静まり返っていた。閉演時間も過ぎ、行き来する人はいないからだ。もちろん今はもう入ることはできない時間なのだけど、仕方ない。私の感覚では、緑色のエネルギーはこの場所に飛んでいる。

 

 わずかに辺りを照らすのは星空と月明りのみ。それもそらを飛ぶ鳥により、一瞬陰になった。

 ここにマーチがいるのは間違いない。

 

 私たち4人は走りながら探す。

 

「━━もう少し」

 

 それがなんとなくわかった。

 

「分かった」

 

 サニーらは反応する。

 

 《七色ヶ丘総合公園》は今年の春お花見をした場所だ。マリと戦い、そしてサニーとの合体技を出した場所だ。

 花見をした広場を抜け、桜並木を通る。もちろん花びらなんて見えないし、闇夜の中では枝しかないように見える。でもきっと新芽ができていると思う。もう数ヶ月も経たずに、この並木は桜でいっぱいになる。

 

 だけどきっと、あかねちゃんはその前に七色ヶ丘を出ていく。

 れいかちゃんも有名高校に受かったんだっけ? ここから遠いので、きっとれいかちゃんも一人暮らしだ。

 

 きっと今年の春は、昨春みたいに5人で集まることは無いのだろう。

 

 ━━その場合、プリキュアは?

 

 頭に浮かんだ疑問を浮かべているなか、マーチの位置を示す方向が大きく横にズレていることに気が付いた。

 

「待って!」

 私の合図でみんなが止まる。

 

「どうしたのでしょう?」

 ビューティの声に、私は並木の横を見る。その奥には、森だった。

 

「この奥にいるの?」

 少し困惑しながら聞いてくるピース。

 

「うん」

 エネルギーがこっちに向かっている感覚がある。きっとここだ。

 私は確信とともに無造作に生えた草を踏みながら進んでいく。

 

 ざくざくざく。4人の足音を頼りに進んでいく。

 そうしてようやく人影を捉えた。

 星の明かりすらも、冬の木で歯でほとんど届かない暗闇の中人影を見たら、お化けかなんかと勘違いをしてしまう気がする。

 

 だけど、その人影は私が知っている人物だ。鮮やかな緑のトリプルテールが見える。

 

「マーチ!」

 

 私が叫ぶと、彼女はこっちを向いた。

「ハッピー! どうしてここに?」

「えっとね……………………。何て言おう…………。━━━━ビューティお願い」

「分かりました。ハッピーの力を使ったの。私たちはハッピーから力をもらっているから、その力の繋がりからマーチを探したのよ」

 

「そういうこと…………」

 マーチはすんなり受け止めてくれた。ところで━━━━。

 

 私がふと考える中、サニーがここで起きたことを聞いていた。

「コアソウルはさっき倒したよ。ボカーーーンと破裂していったね」

 

「じゃあ倒したってことかな…………」

 それを聞いたピースが大きな息を吐いた。少し安心したんだろう。

 

「ま、結果的にだけど、うちらいらんかったな」

 と、サニーが答える。

 

 そしてピースがふと聞いた。

「そうだ。コアソウルを倒した後の魂っぽいものの色、何色だった?」

 

「えっとね…………」

 マーチは視線を斜め上にずらし、思い出し始める。

 ━━しかし数秒後、マーチの顔はみるみるうちに顔が険しくなり、次第に手のひらが口元に近づいている。完全に覆った時にはすでに、絶句したような表情を見せていた。

 

「え………………」

 

 マーチがそれから出した言葉はそれだけだった。「覚えてない」と言いそうだったけど必要なかった。場が凍り付く。まだ敵が隠れているかもしれないことをみんなが認識した、その瞬間━━━━。

 

 暗闇でギラリと光ったような気がした。

 

「危ない!」

 

 私が叫ぶ。途端に、光ったものの正体が見えた。黒く覆われているが、体毛で覆われているのが見えた。二足歩行で短い尾。そして鋭い爪。

 

「うわっ!」

 サニーが地を蹴り攻撃を避けた。

 

「お猿さん!」

 ピースの目の前では鋭い爪を地面が埋まり、そして引っこ抜くお猿さんの姿が見えた。

 

「金太郎に出てくる動物だ」

 

 私はみんなに伝える。

 熊、猿。どちらも金太郎で見たことがある動物だ。熊があまりにも有名だけど、私が読んだ何種類もの金太郎には猿も描かれていた。

 そう思い出していると荒い鼻息が聞こえた。少し遠方から聞こえる足音。木をも突き飛ばして、こちらに一直線で向かってくる動物。間違いない。猪だ。

 

「でりゃああああ!」

 サニーが動く。指を鳴らして、右手に炎を宿す。曲がらずこちらに走ってくる猪めがけて思い切り拳を入れた。

「《プリキュア・エレクトリュオネ・ノヴァ!》」

 彼女の強力なパンチは猪すらも吹き飛ばす。しかも、サニーの拳に灯っていた炎をそのまま猪にまとわりついていた。炎は渦巻き、敵を囲む。そして縮み、爆発した。

 

 サニーを止めてもらえることを信じ、猿にはビューティが倒しに行く。

「《プリキュア・クライオゼニック・ヘソン!》」

 

 そして、本当だったらここでなにか霊魂のようなものが見えるんだけど━━ない。

 

 つまり、猪もお猿さんも、そしておそらくマーチが倒した熊さんも、コアソウルの本体ではないのか、はたまたはコアソウルですらないのか。明確にこれら動物たちを《こういう存在〉だと断定するには情報が足りないけれども、動物たち以外に倒すべき何かが残っているのは分かる。

 

 とすればそれは何か。動物たちを出すことができるのは、物語上で彼らを従えることができるもので、それはつまり━━━━。

 

 ザクッ。

 草大きく踏まれる音が耳に入る。

 私は振り向く。マーチたち4人も、音がした方向に吸い込まれるように視線を向けていた。

 長くて細い4本の足。頭に枝分かれするように生えた角。鹿さんだ。

 

 そしてその上に私は乗る彼の姿を見た。大柄の男性がまさかりを持って私たちを睨んでいた。金太郎本人。

 

 熊さんに相撲で勝利した後、森の動物たちを親分になる。だからこそ、多くの動物たちを従えることができたわけだ。今まで出てきた動物は、乗っている鹿さん含めすべてが金太郎の絵本で見てきた動物だった。

 

 ちなみに、金太郎が乗っているのは本来熊さんなんだけどね。言わないことにしよう。熊はマーチが倒したらしいし、きっと次に乗れそうなのが鹿さんだったんだろう。

 きっとこの金太郎がコアソウルだ。その瞬間、私は金太郎の中にある何かを感じ取った。この感覚。もしかしたらコアソウルの中にある魂ぽいものに反応したのかもしれない。

 

「とりあえず、金太郎を倒そう」

 ビューティが初めて変身した時に戦った龍のように、コアソウル本体を倒しても消えないかもしえない。だけど明確な主従関係がある敵と戦うんだったら、王様を倒せば大きく勝ちに持ってこられる。

 

「オッケー」

「わかった」

「了解です」

 

 サニー、ピース、ビューティの返事が聞こえた。マーチもきっと了承してくれただろう。

 ━━そういえば私たちの場合、主従関係ではないけれども、私が倒れたらきっとその時点で私たちの負けな気がする。だってその場合、プリキュアの力が4人から消えることになるだろうし。

 

 ”前の世界”ではそういうわけでは無かったからか、今まで意識してなかったことにようやく気が付いた。

 そう考え、戦おうとしたときだ。

 

「キュアハッピー」

 冷淡な声が聞こえる。

 金太郎の近くに人影━━━━ジラだった。空に浮かびながら、無表情のまま私たちを見くだしている。

 

「ここまでの力をお持ちのようで、感動しました」

 淡々と、不気味なほどに、そこに一つも感情はない。彼は情緒というものを持っているのだろうか。自分のなかでそんな疑問すら浮かんでくる。

 

 そんな中、視界の端にちらりともう数人の人影が見えた。

 人の数は数人。

 一瞬それがなんなのか理解できなかった。けれど、心臓が強く鼓動を打ち、胸の奥に不穏な予感が広がる。じっとその人影に目を凝らし、再びそちらに視線を向けると――木の根元で、なおちゃんの弟たちが手錠をかけられていた。

 

「あ…………」

 私は言葉を失った。

 それと同時に、隣にいるマーチの心理状態を案じた。サニー、ピース、ビューティの動揺の声も聞こえて、みんなが今の状況を知っているのだろう。

 

「なんで…………?」

 

 何がどうなっているのか分からず、ただ呆然とつぶやく私の目に、さらなる異変が飛び込んできた。その疑問に答えるかのように、空から一羽の小さな鳥が舞い降り、あの金太郎の肩に止まった。その鳥は不気味なほど冷静に、じっとこちらを見下ろしている。その姿に、ハッとすべてが繋がった。

 

「この鳥が監視をしていたのです」と、ジラの冷淡な声が響く。

 ジラは、私が兵隊と、マーチが熊さんと戦っている間にあの鳥を空に忍ばせ、なおちゃんの弟たちを見張らせていたというのか。その時のショックから、こどもたちの意識は無いようだった。

 私は息を呑んだ。

 

「さあ、どうします? キュアハッピー?」

 

 ジラはただ私の力を試しているように見えた。

 それでも、やっていることが普通に考えて残酷すぎる。どうしてそんなことをするの? ウルフルンたちのように、何か恨みがあるのか。ジョーカーのように、何も持っていないのか。ピエーロのように、存在そのものが恨みや怨念なのか。

 

「どうして…………そんなことをするの…………?」

 私の声は震えていた。今、理解できないという恐怖を感じているからだ。

 

「簡単だよ」

 すると、感情がこもってないマーチの声が聞こえた。

 

 横を向いて、彼女の表情を見る。思っていたよりも冷静に見えた。私は、彼女が怒りを超えた感情を抱いていることを悟った。

「こいつらは、あたしやあたしの家族のことを何とも思ってないからだ。あたしたちのことが憎いんじゃない。感情をむけるような相手と思っていないんだ」

 

 ジラはきっと、私のことを試している。そして、私以外の人のことを実験に必要な要素としてか思っていないのだろう。

 じゃあどうして━━━━?

 私は、ジラの過去を考えた。

 

 そんな私をよそに、マーチの冷え切った言葉は続く。

「あたしでも驚いたよ。《好きの反対は無関心》っていうけれども、こんなにも誰かの安否がどうでも良く思える人に出会えたのは…………」

 

 ”前の世界”のなおちゃんは、私と”前の世界”のあかねちゃんとやよいちゃんが弁当を食べようと使った席を奪おうとしてくる意地の悪い先輩に対して怒ったことがある。

 ”この世界”でも、文化祭のときか。生徒会長━━今はもう任期を終えている━━のれいかちゃんにインタビューが突然入った時、記者の人に「先にお願いしてほしい」と考えていた。それはある意味で、記者の人に期待しているからともとれるかもしれない。

 だが今は違う。目の前にいる眼鏡をかけた少年にはなにも期待していない。自分の家族を危険にさらすものにしか思えないのだろう。だから彼の安否などどうでもよく思うようになったのだ。

 

 私だって、”前の世界”でウルフルンたちに何回も家族を危険な目にあわされた。だからといって、私は今のマーチと同じような感情を抱いたことが無い。

 ━━それはどうして━━━━?

 しかし、そんなことを考えることは無いことを思い知らされる。

 

「マーチ。私もその気持ちわかるわ」

 

 ビューティが一歩前に出て、幼馴染に共感をする。だけど、それだけじゃない。

 

「まずは弟たちを救わんとな」

「それからコテンパンにやっちゃおう」

 サニー、ピースもマーチに声をかける。

 

 みんなだって同じだ。ジラ、ヒオリ、マリたちにどれだけの人が恐怖に陥ることになったのか。数えられる数字の人でないことは歴とした事実だ。

 

 目の前に困っている人がいる。私が”元の世界”に戻れば、目の前の困っている人がどうなっても関係ないかもしれない。だけど私は、それを助けない理由にしたくない。

 サニーのいう通り、最初にやるべきことはけいた君たちを助けることだ。

 

「けいた君たちの近くに、何かいるように見えますか?」

「いや、いまんとこ見えんな」

「うん」

「そうだね」

 

 ビューティの質問に、サニー、ピース、マーチが反応する。たしかに、今弟たちは一見直接守っている何かはいないように見える。だけど、木の上から猿、遠くから猪のように何かが見えないとこから見張っている可能性だって否定はできない。

 

「では二手に分かれましょう。けいた君たちを助ける役、金太郎のコアソウルと戦う役です」

 ビューティの提案に否定する人はいなかった。

 

「ではマーチとピースで救出に、残った3人でコアソウルの相手をします」

「「オッケー!」」

 

 全員が了承し、2チームに分かれる。

 マーチとピースは、けいた君たちのほうへ一目差にかけ始める。

 サニー、ビューティの三人もコアソウルのほうへ走り出す。

 

 私はもう一度金太郎の姿を眺める。よく見ると、金太郎は帽子をかぶっていた。模様は真っ黒で見えないが、帽子の上側が平べったく大きくなっている。ただの帽子なら、鍔の以外はほぼ半球のはず。その瞬間、けいた君たちが手錠で縛られていることに気が付き、頭の中で回路がつながったように電流が走った。

 

「コアソウルは多分警察だよ!」

 私はここにいる全員に聞こえるように叫んだ。

 

「なるほどな」

 走るサニーも反応した。

 

「なら手錠に注意しましょう! コアソウルがまだ持っているかもしれません。」

「うん」

 

 そんな会話をしているとだ。鹿に乗っていたコアソウルは突然鹿から飛び降りる。体長3メートルほどの怪物じみた体躯が、サニーとビューティの目の前に落ちる。

 

「鹿はうちがいく!」

 

 サニーはビューティに声を出す。そしてそのまま、鹿のほうへ進路を変更した。

 

 ビューティは走る経路を変えることはない。右手で氷の剣を作る。

 対して金太郎のコアソウルは担いでいたまさかりを肩から外し、振りかぶる。

 

「はあああああ!」 

 そしてビューティが左腰から斜め上に振り上げる剣と合わせるように、振り下ろす。甲高い音が森中に響く。二つの刃がぶつかり、そして制止する━━━━のは2秒ほどだった。

 

 ビューティが力負けをしている。左手でも氷の剣を支えているが、コアソウルの斧に対して体が後ろのほうに流れていく。

 

「危ない!」

 

 私はビューティに加勢するため走り出す。

 

 だけど、力勝負に参加して2対1にしても、勝てるとはあまり思えなかった。だから私はコアソウル本人に攻撃をする。

 

 地を蹴り、コアソウルの顔めがけてパンチをしようとした。しかし、コアソウの目線がぎょっと私を向いた。だけど、今はビューティに集中している以上、まさかりを私のほうに持ってくることは━━━━。

 

「びゅほおおおお!」

 

 私の頬に何かがあたる。後方に回転しながら吹き飛び、(見えないけどおそらく)木の幹に激突した。

 

 ***

 

 サニーは鹿に突っ込んでいく。

 鹿の体躯は大きい。その分パワーがある。しかも、頭にある立派な角が、まともに突進を食らったらただでは済まないだろう。

 

 だが、力比べなら負ける自信はない。

 

「でりゃああ!」

 サニーは一つ右拳を前に突き出し、炎を飛ばした。威力は小さいものの、「熱い」と不快感を味には十分な威力だった。

 

 炎は鹿を覆う。

 鹿は「ピューーーー」と高い声で鳴きだした。体を震わせ、炎を振り払った。その後こちらに向けて「グ・グ・グ・グ・グ」と、いまさっきとはうって変わって低い声で鳴いた。おそらく今のは威嚇の声だ。

 

 だけど自分は引くわけにはいかない。そもそも今の炎は鹿の意識をこちらに向けさせるためだ。

 

「来い!」

 サニーが煽ると同時に、鹿も突進を開始した。

 

「どりゃああああ!」

 サニーは思い切り体に力を入れて鹿の角を受け止めた。一瞬、体が後ろに滑るように動くも、足を全力で力を入れて体を止める。

 

 たしかに鹿の突進はやっかいだ。そして突進を避けるという選択肢もあった。だけど、自分のなかで自分が持っているもので勝負をしたいという意思があった。だからこそサニーは己を信じ、鹿から真っ向勝負でぶつかる。

 

 ビューティを金太郎に向かわせたのは、今の自分と鹿の状況が頭に浮かんだからだ。そしてビューティなら金太郎のまさかり攻撃に対応できると思ったためだ。

 

 ちらりと横を見る。だが、そこにはビューティと金太郎の力比べの瞬間が浮かんでいた。それを見て、一瞬で自分の考えがうまくいっていないと思うようになった。

 

 自分が鹿と戦っているのは、鹿との力勝負をするためだ。つまり、ビューティにもそんなことを強いることはできない。そもそも金太郎は相撲が得意だったはずで、鹿以上のパワーを━━━━。

 

「危ない!」

 

 ハッピーがすぐさま駆けつけるように金太郎に攻撃する。しかし、金太郎は左手で何かを取り出し、ハッピーに当てた。

 

「びゅほおおおお!」

 日常生活なら大爆笑ものの悲鳴を上げて、ハッピーは回転しながら吹き飛び、後方の木の幹に倒れた。

 コアソウルが持っているものは━━━━警棒?

 

 ***

 

 コアソウルに吹き飛ばされた私は、まず動けないながらも前を見た。

 ビューティは、私の攻撃にコアソウルが反応したことにより、まさかりから逃れることができたようだ。私は安心しながら体を起こそうとする。

 

 近くをみると、サニーが鹿とぶつかりあっていた。互いに一歩も譲らないというかのように、一人と一匹は静止している。だけどサニーはこちらも心配なようで、首と視線がこちらを向いていた。

 

 そしてサニーの視線の先であるコアソウルに目を向けた。

 そこに、私を吹き飛ばした答えがあった。

 

 コアソウルは右手には相変わらずまさかりを持っていて、左手には━━━━警棒だ。

 あれを懐から取り出し、私を吹き飛ばしたというわけだ。

 

 相手にはさらに手札が増えたということになる。サニーも心配だけど、まずはビューティの支援を。金太郎の物語からして、金太郎が最も強いはずだ。そしてその次に強いと考えられる熊は、さっきマーチが倒せていた。

 

 だから、鹿の相手はサニーに任せてビューティに加勢を━━━━。

 

「ハッピー!」

 

 ビューティの透き通った、それでいて力強い声が聞こえた。

 

「な、なに?」

「サニーのほうへ」

「え……。それじゃあ…………」

 

 コアソウルはさらに強くなったと判断している私は、ビューティの言葉に揺らぐ。強がっているだけなのでは?

 

「大丈夫です」

 

 だけど、ビューティの言葉には自信が見えていた。私は頷く。彼女を信じよう。

 そうして私はサニーのほうに気を向ける。

 

 手で大きくハートの描く。その軌跡に生まれたエネルギーを両手に集め、”後ろ”に放つ。

「《プリキュア・ハッピー・シャワー!》」

 

 自分の技をロケットエンジンにして、サニーとぶつかる鹿に向かって飛ぶ。

「ふうん!」

 

 そして、真横から思い切り頭突きをお見舞いした。

 

 鹿さんは横に吹き飛んでいき、地面と擦れながら落ち、木にぶつかって静止した。

 

「よし、ビューティのためにも一瞬で倒すで」

 

 さっきの私のビューティとの会話を聞いていたようだ。いくらビューティが大丈夫だからと言って、悠長にしたくはない。できるだけ早く、そして確実に鹿さんを打ち負かし、すぐに加勢に入りたい。

 

「ちなみに、ハッピー。一つ聞きたいことがあるんやが…………」

 

「どうしたの?」

 

「金太郎の動物って他に何がおる?」

 

 鹿さんが倒れているうちに聞きたいらしい。

 

「えっとねーー。他にはウサギさん、キツネさん、お馬さん、タヌキさん、リスさん、ヘビさんにカエルさん、あとはオタマジャクシ━━━━」

 

「あーーもいもいもいもい」

 

 もういいよ、とサニーから静止が入る。

 

「さすがにそこまでおるとは━━━━オタマジャクシ!? は、一旦いいとして多いな」

 

「だって、熊さん以外は森の動物としてしか書かれたない分、基本絵を描く人の自由だし…………」

 

「そういうもんか」

 

 まだ別の動物がこの森にいる可能性は大いにある。

 

 向こうのほうで、鹿さんがすでに起き上がっているのが見えた。

 

「とりあえず、さっきのハッピーの攻撃があるから、鹿に知恵があったらもう簡単は突進してこんはずや」

 

「オッケー!」

 

 そして私たちは走り出す。

 

 鹿さんめがけて一直線に進む中、その鹿さんは私たちを待ち構えるようだ。サニーのいう通り、突進はもうしてこないかもしれない。

 

 だが攻撃手段はまだあるだろう。

 

 そう思った途端、鹿さんは右の前足を私めがけて突いてくる。でも避けるのは簡単だった。私は軽くジャンプをして攻撃から逃れる。そして鹿さんの顔めがけて思い切り蹴りを入れた。

 

 鹿さんは「ピューー」と声を立てて体を逸らせながら起き上がった。前足が浮き、二足歩行のようになる。

 

「今や!」

 

 サニーは鹿さんが唯一体を支えている後ろ脚を掴んだ。

 

「どらあああああ!」

 

 そして地面にたたきつけるように投げた。

 

「今や! ハッピー!」

「うん!」

 

 私はこれは変身して2回目だ。本来はできないはずだった。だけど、今はできることが分かった。

 

 私は空にハートを描く。

 

 そして集めた桃色のエレルギーを発射させる。

 

「《プリキュア・ハッピー・シャワー・シャイニング》!」

 

 光線は鹿さんの体に直撃し、覆いこむ。その体は私の光の力に溶けていくように姿を消していった。

 

「よし」

 私はひとつため息をついた。

 

この2年間で私の力はさすがにレベルアップをしたようで、必殺技を複数回使えるようになっているようだ。

 

「ハッピー!」

「うん」

 

 サニーの言いたいことはわかる。

 

 一刻も早くビューティを助けに行かないと。

 キイイインという金属音が響くほうへ耳を向けた。

 

 どうやら、両者の戦いの場所は変わっているようだった。

 

 ここからは見えなくなっていた。そういえば、今はもうマーチの弟たちがつかまっている場所も見えなくなっている。

 

 そこでは、ビューティとコアソウルがまだ戦っている。だけど、ビューティはいまだにコアソウルを打ち合っている。コアソウルは右手のまさかり、左手の警棒を振り回す。ビューティはそれをなんとか受け続けているだけのように見えた。

 

 きっと彼女は、私とサニーが鹿さんを倒す時間を稼いでくれたのだろう。私たちも加勢しなければ。 

 

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