スマイルプリキュアS   作:友だち

43 / 51
(12) 決して忘れない(一章最終話)②

 私たちが変身を終えると、目の前にはコアソウルがいつのまにか立っていた。

 

 大きさは3メートルほどで、マントを来ているようだった。さらにフードをきつく羽織っている。

 

 まずは、コアソウルを倒さないと。

 

 私たちは走り出し、フードをかぶったコアソウルのもとへ走り出す。

 

 コアソウルはふと右手を空に向けて前に出した。黒い液体が手の上で凝縮されるようにして、半径15センチほどの球体が生まれた。光沢のある黒が見える。私は、それ美しいとも思ったし、禍々しいとも感じた。きっとあれは水晶だ。

 

「きっとあのコアソウルは占い師だ」

 

 私が4人向かって報告をする。

 

「やな」

「うん」

「おっけー」

「わかりました」

 

 それぞれ違った答えが返ってくるなか、私たちはコアソウルに近づく。

 しかし、それでも問題はあった。

 黒くて薄い物質が空から回転をし、三次元的な弧を描くようにして私たちのところへ向かってくる。

 

 思わず、私たち5人は足を止めた。

 薄い物体は私たち5人の前を通りすがる。私は、ひとまずは危険がさったことを確認したとしても、その物体を目で追いかける。

 きっとこれは━━━━マリのスマホだ。彼女は自分のスマホを二つ持っていて、拡大して空を飛ばして操ることができる。

 そのことを認識した途端、私の視界が暗く━━━━。

 

 ハッピー!

 視界が大きく崩れる。

 ピースによって、私は抱きかかえられているのと、雷の音がしたのは同時に感じた。

 

「危なかった…………」

 

 ピースが呟いたのが、彼女の胸の中で聞こえた。

 私に何かされていたのだろう。それを見たピースがすぐさま、私に飛びつき、私の危機から救ってくれたにちがいない。ピースの腕から離れて、さっき私がいる場所を見る。一見円柱に、いや少しだけ上側のほうが小さいから円錐台かな。地面についたところを見れば、少しだけ横に出っ張ったものがある。縁だろうか。つまり、この円錐台は中が空洞で、私を捕まえるつもりだったらしい。そしてこの円錐台の質感からして━━━━紙。

 

「カップラーメンですか」

 

 ふとビューティが呟いた。

 たしかに、この形は間違いない。

 

「ちっ」

 コアソウルの奥では、ヒオリたちが空に浮かんでいる。ヒオリは自分の作戦が失敗したことを嘆いているように見えた。

 

 これはヒオリが使ったものだろうか。

 

 そう思っていると、

「じゃ! いくわね!」

 

 マリはふと私たちめがけて、正確にはビューティのほうめがけて跳んできた。

 

「私ですか━━━━」

 

 自分が狙われていることに素早く気が付いたビューティは、その場を跳んで離れる。

 マリもビューティを追っているから、彼女の狙いはビューティで間違いないだろう。彼女は自分のスマホを二枚。ビューティめがけて追う。二鳥の鳥が獲物を捕まえるようにしてビューティを後ろから襲い掛かる。

 

「やあ!」

 

 しかし、ビューティは地面を宙返りをしてかわす。アイスブルーの髪がばさりとなびく姿は美しい。

 

「今よ!」

 

 マリは何か長物を持って、空を飛ぶ氷のプリキュアめがけて突きをいれた。

 しかし、ビューティはいつの間にか自製の剣を持っていた。地面に立つと同時に、剣峰でその攻撃を受け止める。

 ガキィィィンと金属が響く。

 

「いつもマリたちの戦法を暴くのはあなたよね」

「否定はしませんが、私が倒れたら勝てると考えるのならば後悔しますよ━━━━」

 ビューティは鋭い目線でマリを睨む。私はそれを見ていた。

 

 今、マリが動いた。ヒオリも自分の力を見せた━━━━。すなわち━━━━。

 

 私の長いツインテールも風によって横になびく。その風上をみると、マーチがジラが出した化け物たちを吹き飛ばしていた。

 

 ジラは自分が持っている本から、見たこともない生物を作り出して操ることができるのだ。正直そこまで強い相手は経験したことはないけど、数を考えるなら他二人の追随を許すことはないはずだ。

 

 そして。私は背後からの威圧を感じ、すぐさま横によける。数舜まえに私がいた空間に長いものがすり抜けていった。

 

 赤い中華風のきものを纏い、大きくした割り箸なか? を伸ばし、私に攻撃したのだろう。

 

「あなたをここで倒すわ!」

 

 これで、私とヒオリ、ジラとマーチ、ビューティとマリの三つの一対一が出来上がった。

 

 私は後ろに引く。当然、ヒオリは私のほうに意識を向ける。彼女は地面の上を滑るように飛行して、もう一度私めがけて割りばしを刺しにくる。かなり勢いと鋭さが伺える攻撃に、ひやりとしつつも先ほどとお同じように体を避ける。突きによる風により、私のツインテールがはじかれるようにはためく。さっきは不意打ちに近い形でも避けれたので、攻撃は当たらないだろうという確信はありはした。

 

「サニー! ピース!」

 

 私は二人の名前を叫ぶ。

 

「コアソウルやな!」

「うん!」

 

 サニーはすぐさま、私の意図を察してくれたようだ。ピースも同様らしく、すぐに「わかった!」と返し、コアソウルのほうへ向かっていく。

 

 それを見送ったあと、すぐにヒオリに意識を向ける。

 

 ヒオリは持ち前の割り橋を私めがけて振ってくる。当たればたたじゃ置かないかもしれないが、おそらく避けることはさほど難しいことではない。

 

 そればかりか、感覚的に慣れてきたこともあって、数回攻撃を見ていくだけで、私は次第に反撃に手を移すこともできた。

 

「やあ!」

 

 ヒオリは必死そうに突いてきた箸をついてくる。私は体を回しながらかわす。そしてすぐさま地面を蹴って、ヒオリの腹に蹴りを入れた。

 

 ヒオリは着物を地面に擦らせ、背中をつき滑る。商店街の一店舗にぶつかった。

 彼女には苦悶の表情が見えた。

 

 この世界を守るため、私は決して戦いをやめてはいけない。そう頭の中に響かせながら、駆け寄る。

 

 ヒオリは自分が建物の傍らにいることに気が付いたのか、すぐさま体を浮かせる。倒れた体を、空中で整え、建物の屋根の上に足を下ろした。

 

 私は迷わず飛び掛かる。

 途端に、上から何かが降ってくる。今七色ヶ丘は黒く光る球体で照らされているので、自分が何か陰で覆われているのがわかった。

 

 一瞬だけ上を向く。やっぱり、私を捕まえようとしたカップラーメンの器だった。視線を上げた瞬間、やはり容器の中は空になっていた。カップラーメンの器といえば、白いようにき赤を基調とした装飾がされているイメージを持っているが、ヒオリが使う器はコアソウルのように基本的に真っ黒だ。

 

 私は体を捻るようにして空中で少しだけ横に移動。

 

 もし、カップラーメンの器に閉じ込められた場合、捕まって逃げることはできるのだろうか。そんなことを考えようとした途端、ヒオリはすぐに割りばしで攻撃してくる。とっさに、その割りばしを右手で掴む。一瞬振り落とされそうになるが、なんとか耐え抜いた。

 

 ヒオリは赤い屋根の上で、私を見て驚きの表情を見せる。

 右手に力を入れる。思い切り体を押し上げ、ヒオリの目の前に身体を浮かせる。

 

「やああああああああ!」

 

 今度は左手で、ヒオリの胸めがけて拳を突き出した。

 

 彼女の体は吹き飛ぶ。割りばしから手が離れ、飛んでいった。彼女は数十メートル離れた建物の二階の壁に激突し、下屋根にうつぶせになって倒れた。

 

 私たちは間違いなく強くなった。

 

 2年前のあの日、私は”この世界”に飛ばされて、訳の分からないまま、それでも必死になって人を救おうと、プリキュアになった。

 

 その中で色々な人と関わって、様々なことを学び、無視できない変化が自分の中に起きた。

 ━━私は”この世界”を愛している。

 

 ”この世界”を壊すなんて、絶対に許さない。どうして自分の中に目覚めたか分からないこの力を使って、”この世界”を守るのだ。

 

 そんな中、ヒオリは立ち上がる。

 

 そうして、地面を手をかざすと、もう一度割りばしが出てくる。それと同時に、私が右手に持っていた割りばしは、パキィと半分に割れ溶けるように消えていった。

 

 割りばしは基本使いまわしだからかな。

 

 そんなことを考えていると、遠き距離にあるはずのヒオリはすぐに割りばしを持って、その場所(・・・・)から割りばしを槍でこれから攻撃するかのように振りかぶり━━━━。

 

 ━━なに?

 

 私が彼女の不可解な行動を気に留めようとした途端に、彼女は私の目の前に現れた。

 

「うわあああああ」

 

 叫ぶと同時に、割りばしの先が私の喉に突き刺さり、そのまま飛ばされた。

 

 ***

 

「ピース!」

「うん!」

 

 サニーたちはコアソウルに向かう。

 みるみるうちにコアソウルのもとへ近づいていく。すぐさまサニーはコアソウルにとびかかり、拳に炎を灯し、コアソウルの胸元━━━━水晶玉へと拳を突き出した。

 

 途端に、コアソウルの水晶がちかちか、と光った。

 

 と思えば、コアソウルの姿はどこにもなく、ただ空気だけの空間を炎が舞うだけ。

 

「消えた!」

 

 とおもい、あたりを見渡す。

 

 自分と同じように辺りを探していたピースがそどこかに指を差す。

「あそこ!」

 

 コアソウルは、少し離れた場所に立っていた。近くには景観維持のためか、人工的に植えられた木の近くに佇んでいた。

 

「なんや…………何を使った」

 

 すると、今度はピースがすぐに攻撃に移る。雷のように折れ曲がりながらコアソウルに近づく。サニーでは捉えなれなかった。一発威力はそこまでだろうが、確実にコアソウルに攻撃を当てるとなれば、彼女以外の適任はいない。いつ来るかもわからない攻撃から逃げることは困難で、ピースの攻撃は間違いなく。

 

「あ━━━━」

 

 水晶が光った。真っ黒い水晶が一たび黒く光ったと思いきや、次は青色に光った。

 そうしてコアソウルは消える。

 ピースの攻撃も空振りに終わる。

 

「大丈夫か━━━━」

「私は大丈夫。だけど、今のコアソウルの動き、見えなかった…………」

「見えなかったって━━━━」

 

 ピースに反応できない速度で移動したのか。それとも━━━━。

「もしかして、瞬間移動か━━━━」

「かも━━━━」

 

 ばしゃああああん、という水しぶきが聞こえた。今、この空間は真上にある黒光りする巨大な球体の下なので雨は降ってはいないものの、水たまりはある。なにか、いやなにかが落ちて、水が跳ねたのだ。視界の端に見えたピンク。

 

「ハッピー!」

 

 水たまりの上に倒れる少女は、左手で喉を押さええていた。

 ひゃああああああ、ひゃああああああとおぞましい呼吸をしていた。

 

「大丈夫か…………」

 

 サニーはすぐさまハッピー駆け寄る。

 

「ゴホッ! ゴホッ! の”どに”、ばじが…………」

 

 喉に、はしが。こう言いたかったんだろう。確かに苦しそうではあるものの、ハッピーの呼吸音が次第に良くなっていった。それは敵の威力が強くなかったのか、逆にハッピーが強すぎるのか、はたまたは彼女だけが持つ特殊な力なのか。

 

 一瞬の思考を振りほどく。ハッピーはすでに膝をついて立ち上がろうとしている。

 

 本来”この世界”を守らなければならないのは自分たちだ。そう思い、すぐに戦おうとするが━━━━見つからな━━━━。

 

「やああああ!」

 

 目の前に現れた女性━━━━、ヒオリ━━━━、が現れて自分のもとに現れた。見えた瞬間、ほんのひと時前まで首を押さえるハッピーを見ていたのか、腕を交差して自分の首元を守った。予想はあたり、ちょうど腕が交差する場所にヒオリの持つはし、つまり割り箸があたる。しかし、その拍子にサニーは後ろに吹き飛び、尻餅をついた。

 

 自分にとって目の前である上空には、ちょうそ黒い球体が禍々しく光っていた。そこには、炎のようなものが渦巻いているように感じた。

 

 そしてサニーは気が付く。暑い、ということに。

 

 ***

 

 マリと剣の打ち合いをする。マリがもっているものは、剣ではなく、スマホの自撮り棒なのだが━━━━。

 

 彼女の剣戟は鋭くはあった。しかし、自分にとってどうということはない。右手一本で十分だ、一太刀一太刀に冷静に対処をする。時々、攻撃に変化をつけるようにスマホが飛んでくることもあるが、今のところ問題なく対応できている。

 

 その中で、ビューティは違和感を感じる。

 

「あははは。いいね!」

 自分と打ち合いをするマリの表情が焦りが見えないことだ。不穏だ。いや、本人は自分の攻撃が通用していないことに気が付いていないのか。

 

「やあああ!」

 ビューティは大きく剣を振った。

 

 マリはそれに対応して自撮り棒で攻撃を受け止める。金属音が響く、自分たちは互いに武器を押し合い、鍔競り合いの形になった。

 

 彼女の余裕そうな表情は変わらない。

 

「大分楽しそうじゃないですか…………」

 

 ビューティは鎌をかけるように聞くと、マリはより一層不気味な笑顔を見せた。

「そうよ。だって今日であなたたちとは『おさらば』だから━━━━」

「そうですか…………」

 

 そうしてビューティはふと力を抜いた。

 

「うわっ」

 

 そのせいでずっと前に力を入れていたマリの体が前に倒れる。態勢を崩したマリを、ビューティは蹴り飛ばした。

 

「ぎゃあああ!」

 

 マリは悲鳴を上げて、地面に落ち、回転して止まった。

 

 ビューティは持っている剣を彼女に向けて、自信であふれたような笑顔を見せた。

「無理ですよ。だって私たちのほうが強いですから」

 

 自分とマリを比べるか、自分とマリヒオリジラ3人と比べてなお自分のほうが強いというか迷った。

 

 マリが何か仕掛けてくることを予想して、どれが一番挑発に載ってくれるか。後者だと正直強がりになってしまうが、前者だと今のままでは肯定せざるを得ない言葉なので、その言葉を聞いたマリが否定しようと行動してくることを踏んだ。

 

「そうね…………」

 

 マリは立ち上がる。その表情はさっきと変わらない。そして今の自分の言葉を肯定した。

「マリは天才だけど、それでもあなたたち一人のほうが強いと認める命令なの…………」

 

 命令━━━━?

 

 やはり彼女には上位存在が。れいかは先刻話したすいのことを思い出す。生徒会室での出来事はかなり突然のことだったので実感はないが、事実だ。

 

 もしかして彼女が、マリたちに命令を下している存在なのか。

 

 だが彼女は自分の記憶ではみゆきが”この世界”に来る前から、数年前から七色ヶ丘にいた。自分とマーチのように、保育園のときから知り合っている人もいた。全員が彼女の協力者だということはありえない。

 

 いや。自分たちのほうが弱いと認める命令━━━━?

 

 それは━━━━命令なのか━━━━?

 

 頬に汗が流れる。冷や汗か、いや、今はかなり暑い。れいかはそう考える。この暑さは夏のものを思い出させる。れいかは引き付けられるように上を向いた。中心からはズレているが、黒い光る物体が、煌々と燃えているように見えた。

 つまり、あれは━━━━。

 

「太陽━━━━?」

 

 

 ***

 

 マーチは足を横に薙ぎ払うように振る。狂風が商店街の中を駆け抜ける。

 

 ジラが作った、怪物たちを薙ぎ払っていく。竜人の兵士というべきか、二足歩行で鎧を着たドラゴンが、剣などを持って襲ってきたがが、マーチが起こした風によってすべてが消えていった。

 マーチが徐々に距離を詰めていく。

 

「とっておきでしたが、仕方ないでしょう」

 

 向こうで無表情でこちらを見ているジラが、本をめくりだす。最初のページのほうだろうか。そこから黒い絵の具があふれ出る。その漏れ方は、この前総合公園で《虚空の泥》が割れた空間からあふれ出ることを思い出した。ただでさえ、今日朝からの雨の影響で、そこらかしこ水たまりだらけなのに、ジラの前には直径3メートルほどの大きな黒いものができる。

 

 しかし、今までは本から黒い絵の具が出てきて、地面に落ちるころには竜人の兵士になっていたように、今回はなにか変だ。おもわず、マーチが足を止める。その瞬間、もしかしたらすぐに攻撃していたら良かったのでは? という考えも浮かんだのだがもう遅い。

 

 黒い絵の具でできた水たまりは地面から湧き上がるように上昇する。3メートルほどの高さになった途端、急に形を為すように動き、モンスターの様子になる。二足歩行をするドラゴンが、鎧の甲冑をきていることは今までとは変わらない。しかし、腕が6本、そして頭が3本だ。

 

 ドラゴンはすぐに自分のもとに駆け寄り、手数を武器に腕を振り回してくる。

 

 6本の剣戟となると、正面に近づいて対応することはできない。後ろに引き、引き、剣技から逃れる。ふと数メートル、後ろに跳ぶ。着地を左足で行い、体を捻って反時計回りに回転させる。その勢いを利用して、右足を速く振る。鋭さを増し、もはや斬撃となった風が駆け抜ける。

 

 コアソウルに当たれば━━━━。

 

 しかし、コアソウルの六本の腕がすべて、右側に持ってきて、風の斬撃に合わせて左へ振った。剣を受け流すような様子を見せた。マーチの目には、完全に攻撃を受け流すようなものを見せた。

 ━━自分の攻撃では、彼の攻撃防御を突破することは難しいだろう。

 

 ビューティに頼もうか。

 

 そう思い、マーチは近くを見渡す。すると、ビューティがマリと戦っている姿があった。自分の後ろだ。

 

 ちょうどマリを吹き飛ばしているところのように思えた。

 

 なにか二人がしている会話は聞き取れなった。ビューティが上を向き、何か呟いたところで、話しかけた。

 

「ビューティ」

「マーチ…………!」

 

 少し驚いた様子を見せた。

 

「ごめん、戦う相手変わってくれないか━━━━」

 

「え、まあ…………」

 

 ビューティはマーチの後ろを除くように体を傾ける。そこに、六本腕の竜人が見えたのだろう。

「わかったわ。ジラとの戦いは任された。それとマーチ、マリの━━━━」

 

 マーチはマリと戦い、相手を追い詰めた経験がある。

 

 ビューティなら、剣同士の戦いに向いている。

 

 だが、さっきまでの戦いの流れがある。サッカーでも交代で入ってくるときは精神的に難しい。相手の守備時のプレッシャーの感覚や、味方とのその試合における決まりなど、ピッチの中でしか分からないこともある。それに似たような感覚だ。ビューティはサッカーを部活動としてやった経験はないけれども、そのことは理解してくれている。さからこそ、マリとの戦いに臨む自分のために何か言ってくれてようとしたのだろう。

 

 だからこそ反応が遅れた。

 

 二人の目の前に、突然、怪物が現れた。6本腕の竜人が、3本の腕を段差を付けるように振り下ろしてくる。

 

「ビューティ!」

「…………え」

 

 マーチは素早くビューティに飛びつき、攻撃をかわす。その衝撃で、二人とも一体となって地面に転がる。

 

 一瞬驚いた声を上げたビューティだったが、凡その状況はすぐに理解してくれただろう。

 

「申し訳ないわ…………」

「大丈夫…………」

 

 二人ともすぐに立ち上がる。

 

「それで、今どうなったの━━━━?」

「あのドラゴンみたいなやつが突然現れて攻撃を━━━━」

「そう。どんな感じですか━━━━」

「もう━━━━ぱっと」

「つまり、目に見えない動き━━━━と」

「うん」

「マーチに対応できない速さ━━━━ですか」

 

 数メートル先まで近寄ってくるドラゴン。マーチとビューティは背を預けあうように戦う。

 その瞬間━━━━。

 

 びゅうう。と風が吹いた。その風を、マーチは冷たいと感じた。それと同時に、さっきまで以上に暑かったことに気が付いた。

 

 風は次第に強くなり━━━━。

 

「うわっ」

「きゃっ」

 ふたりとも飛ばされてしまった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。