重力の崩れた虚無の空間に、砕けた瓦礫と死の静寂が満ちていた。
その沈黙を破るように──サニーの叫びが響く。
「……行くでっ! 《エレクトリュオネ・ノヴァ》!!」
全身に込めた怒りと、悲しみと、そして決意。炎が唸りを上げ、空間を裂くように飛んでいく。
「《ガラクシア・トルナード》!!」
マーチが竜巻とともに蹴りを打ち込む。
「《アストラル・ド・ブリッツ》!!」
ピースの両手の人差し指と中指から放たれた雷撃がハッピーのコアソウルを撃ち抜く。
最後に、ビューティの剣技が静かに場を引き締める。
「《クライオゼニック・ヘソン》!!」
四人の同時攻撃が、ハッピーの体に強い衝撃を与える。巨軀は直線的に下へ吹き飛び、近くに当たったものも壊しながら、下の大きな岩場へと着地した。土煙が舞う。
近くの足場に降り立ち、煙が舞うのを見る。
だが。
「……効いてない……?」
ピースの声が揺れた。汗ばんだ額に泥がにじみ、息が上がる。さっき放ったはずの浄化技が、まるで空気を裂いた程度でしかなかったように感じられた。
「いや、効いてはいる……はずや。でも……耐えてるんや。だって相手は、あのハッピーやで……」
サニーが歯を食いしばりながら言う。その目は正面、迫りくる黒い影──コアソウルと化したハッピーに釘付けだった。
「でも……じゃあ、どうすれば……なにか……!」
マーチが振り向くより早く、コアソウルが飛び、すぐさま近くに。
「──うわあっ!」
ドカッ!
鈍い衝撃音が空間を揺らした。マーチの腹部に重たい何かがぶつかり、弾かれたように空中に浮く。
「……速っ……!」
間もなく、コアソウルが空中で旋回し──そのまま頭突き。
「うわああああッ!」
叫び声とともに、マーチが吹き飛ばされた。地面がない空間に、彼女の体は岩肌にぶつかり、滑り落ちる。
「……なんて速さ……!」
ピースは負けじと、空気に折れ曲がるように高速移動し、コアソウルの側頭部へ蹴りを入れた。
しかし、コアソウルは動かない。
「そんな……! きゃああああ!」
払われるようにピースは吹き飛ばされる。
そんななか、サニーが自分が考えた攻略法を叫ぶ。
「ええか、みんな! とにかく、あいつの動きをよく見るんや! 攻撃パターンを掴めば、隙は絶対にある! あいつ、昔から複雑なことはあんまりせえへんからな!」
サニーはすぐさま、近くの足場へ飛び移る。
その言葉に、全員が頷いた。
「私も、そう思います……!」
ビューティが氷の結晶を放ちながら応じる。鋭い氷柱がコアソウルに突き刺さる。そこから氷があふれ出て、氷の檻に閉じ込める。。
「──しかし、問題は……すいさんたちが、まだ動いていないこと……!」
ピースが叫ぶ。視線の先、遥か上空に浮かぶ“すい”は、ただ腕を組み、微笑を浮かべたまま戦場を見下ろしている。
「時間がありません……! いずれ、私たちの体も消える。実体としてこの空間に存在できる時間が、刻一刻と削られてるんです……!」
「確かに……!」
ビューティの言葉に、マーチが苦悶の表情で立ち上がる。全員、息が荒い。疲労は確実に蓄積していた。変身の持続時間も、すでに限界に近い。
「もう……この場所に時間という概念が残ってるかどうかも怪しいけどな……!」
サニーの声には焦りが滲む。空間は歪み、軸がねじれている。距離も方向も、もはや正常ではない。
氷の檻にヒビが入る。コアソウルはそこから出てきた。
それでも。
「だったら……!」
マーチが叫び、上から飛び降りて踵落としをハッピーの頭に落とす。
「攻撃の手を緩めない! 捨て身でもいい! 持てるすべてを……全部、ぶつけよう!!」
***
すいは、戦場の遥か上空──崩れゆく空の裂け目から、その様子を飄々と見下ろしていた。
崩壊しかけた世界。宙に浮かぶ廃墟。捻じれた空間。そして、その中心で必死に戦う四つの光。
「まだ……抵抗してるのですか?」
彼女は面白そうに目を細め、口元に笑みを浮かべた。その瞳には、憐れみではなく、好奇心が浮かんでいる。まるで昆虫が最後の足掻きを見せるのを、顕微鏡越しに観察しているかのようだった。
「でも……ふふっ、いいでしょう。きっと今まで、“世界が消える直前まで”抵抗されたことはなかったのでしょうから」
その下では、コアソウルと化したキュアハッピーが、圧倒的な力で攻撃を仕掛けていた。黒く巨大なその肉体が、拳を振るえば大気が弾け、蹴りを放てば空間が軋む。
だが、最初こそサニーたちは翻弄され、地に叩きつけられていたものの、次第にその様子が変わっていく。
攻撃の軌道、重心の傾き、呼吸のタイミング。仲間として2年間共に戦った経験が、無意識のうちに体を動かす。彼女たちは、キュアハッピーの戦い方を“知っている”。
「それで、ここからハッピーが工夫してくることは?」
空に浮かぶ自動車に降り立ったマーチが、電信柱の上に立つビューティに聞く。
「どうでしょうね。ここ二年の“ハッピー”なら、確かにそうかもしれません。でもその前の彼女は、頭を使う場面ではほとんど”向こうの私”に任せていたでしょう」
「やろうな。だから……このまま攻撃を続ければ、いずれは押し切れるかも……いや…………」
「そこからやろ!」
ジャングルジムにぶら下がるサニーが叫ぶ。
「ハッピーは、追い詰められた時にこそ、底力を見せてくるタイプや! これまで何回あったと思ってんねん!」
「うん……それ、わかる……!」
ピースは頷く。彼女の表情には、これから来るかもしれない事態に対しての不安が見えた。
七色ヶ丘中学で生徒会の活動をしていた時、生徒会長のれいかから、自分がコアソウルにした人物についての話は聞いていた。
すると後ろに時空間を移動するトンネルが開く。
「ねぇ、あのコアソウル……“この世界”から出したらそれで終わりじゃないの?」
ヒオリが自分に注文をしてくる。
「別に”この世界”から出すのと、このまま”この世界”が消えても、結果は変わらないじゃないですか」
世界から出すか、世界が壊れてこの場所も世界の外になるのも変わらない。
「それはそうだけど、もしあいつらがコアソウルを浄化したら? 魂はオリジナルの器に戻るわ。またそこから回収することになるとか面倒じゃない?」
「いいですよ。そこからどうやったら取り戻せるのか考え、答えを出すのが楽しいですし…」
「こっちは楽しみとかじゃないの! だから━━━━ぐ…………」
その言葉に、すいはようやくヒオリに目を向けた。ゆっくりと、右手を上げる。
「効率? ああ……それって、あなたの価値観ですよね?」
次の瞬間、ヒオリの身体が苦しみによじれた。頭を抱える。。
「ぐっ……また……!」
次第に、ヒオリの苦悶の声はしなくなる。頭から手を外し、ゆっくりと前を向く。目には光が無く、虚空を見ていた。
「……少し調整が必要そうですね。行きなさい。《時計の間》へ」
「……はい……」
感情の無い機械のように声を出し、ヒオリは姿を消した。
その直後、すいの視線が再び地上──コアソウルとプリキュアたちへと向けられる。
黒い巨影の前で、4人はなおも戦っていた。
だが──ハッピーのコアソウルの動きが、明らかに変化していた。
鈍い。重たい。荒くなっている。
「……倒れる直前ですかね」
すいは静かに呟いた。
このままなら、いずれは4人が押し切るだろう。
ビューティが瀕死に見えるコアソウルを見て提案した。
「じゃあ……そろそろ、こっちの最大火力を仕掛けましょう」
その目には決意の光が宿っていた。
「ハッピーが“無茶”に走る前に……この世界ごと、終わらせるってことだね」
「はい」
マーチが確認を取る。
「全力でいくで!」
サニーが拳を握る。
そのとき、すいの唇が僅かに持ち上がる。
「なら……私も、そろそろ混ぜていただこうかしら。彼女たちが最後にどんな顔を見せるか……楽しみですね」
空間がねじれた。すいの手が動いた瞬間、空間が一瞬で張り詰めた。
──来る。
その予兆は、微かな音すら呑み込む“気配”のようなものだった。世界の天蓋がぐにゃりと歪み、その歪みに沿って無数の黒い亀裂が走り始めた。
「これは……!」
ビューティが即座に察知していた。空間の“外側”──世界の縁から、何かが滲み出してきていた。
「《虚空の泥》……!」
《虚空の泥》は亀裂から出た後、4に分かれ、各々がサニーたちのもとへ飛んでいく。
全員が自分が立っているところから跳んで回避する。しかし、泥は急旋回して4人それぞれを追い始める。
「……くそっ、撒いても撒いても無限に来る!」
まるで意志を持つように、泥は四人それぞれの足元へと蠢き、距離を詰めてくる。逃げても逃げても、どこまでも追いかけてくる。
「まさか! このままじゃ……“コアソウル化”される!」
すいがハッピーをコアソウルに変えたのを見ての判断だろう。正しい。ピースが叫ぶ。虚空の泥に完全に呑まれれば、彼女たちもまた──魂を核にした怪物へと変わってしまう。
逃げ切ってもいいが、逃げきれずコアソウルにすればよい戦力になるかもしれない。
そして、ぼろぼろになったハッピーのコアソウルが、両手が立つ。
「まさか、あれ……最後の手やないか!」
サニーの声が轟く。
まだ立てたとは━━━━。
彼女は両手でハートを描く。そこに桃色と、黒のエネルギーが集まる。
そして両手でハートを形作り、前へ突き出し、エネルギーを放つ。
《ハッピー・シャワー》。
キュアハッピーがかつて最も好んだ浄化技。
その光線は途中で軌道を変え、上へ。
しかし今回は違う。
すいの目に映っていたのは、もはや“技”という枠を超えた“意志”だった。対象を狙うのではなく、世界そのものを包み、敵味方の区別もなく、ただ、“裁き”を降らせる光。雨のように降り注ぐ。
逃げ場はない。
「……こんなの、ハッピーもろとも……!」
サニーの声は震えていた。
ビューティの静かな声が聞こえた。
「きっと、ハッピーは『自分が耐えればいい』と思っているのでしょう」
「やばい、逃げ──っ!」
マーチの叫びに、4人は逃げだした。
すいは右手の人差し指を上に差す。
頭上にワープホールを作った。すいに降り注ぐ光線はすべて穴の中へ消えていく。
逃げても、逃げても、泥は追いついてくる。そのなかで光の雨から逃げようんて。
「きゃあ!」
ピースが足を滑らせた声が聞こえた。
しばらくして雨が止む。
すいはまばたき一つせず、その光の終焉を見届けた。
──四人は倒れていた。泥に囲まれ、岩の上に横たわり、息も絶え絶えの姿。
そう呟きながらも、すいの目はすでに先を見ていた。
遠くで、ハッピーのコアソウルが、よろよろと立ち上がっていた
***
──立ち上がらなければ。
その思いだけが、サニーの体を辛うじて引き上げていた。
もはや「体を起こす」という単純な動作にさえ、気力も体力も尽き果てていた。膝は笑い、足は泥に沈み、両腕は震えていた。だが、それでも。
ここで終わるわけにはいかない。ここで倒れてしまえば──ハッピーが、永遠に帰ってこなくなるかもしれない。
手の甲を地面につける。重さに負けそうな自分の体を支えながら、ふと見たその手が──透けていた。
手の奥に地面が見える。いや、正確には地面すらも透け、その下にあるはずのない真っ暗な、果てのない空間が見えていた。
間もなく自分は消える。
冷静に思った。恐怖や悲しみが沸き起こるよりも先に、それは事実として心に降り積もった。
《虚空の泥》が、ぬるりと足元から絡みついてくる。その感触は現実にある泥と変わらないはずなのに、触れられるだけで、内側を削られていくような錯覚に陥る。
苦しい。気持ちが悪い。皮膚の奥まで染み込んで、自分という存在を“外側から”剥がされていくような感覚。
以前ほどの頭痛や吐き気はない──それだけが唯一の救いだった。プリキュアとしての力が以前よりも強くなったからだろうか。
でも、それも一時のことにすぎない。
もしこのまま泥に呑まれれば、自分も──ハッピーのように、コアソウルにされてしまう。
それでも。
それでも、立たなければならない。
「皆……立つんや……!」
体がふらつく。足が震える。でも、立てる。立つのだ。
「言われなくても……!」
横でマーチの声がした。視界の端に立ち上がる姿が映る。力強さはない。でも、意思の強さは確かにあった。彼女の肩も呼吸に合わせて上下し、泥にまみれたその顔の奥には、暗闇すら透けて見えていた。
限界──いや、限界なんてもう超えて久しい。
振り返ると、ピースとビューティも立ち上がっていた。
だが、二人は──違っていた。
顔の右半分が泥に侵され、まるで仮面のように濃い闇が貼り付いていた。右目が……変わっていた。
「右目……!」
サニーの呼びかけに、二人は目を見合わせた。そして気づいた。目の色が、闇夜のような深い紫に染まっている。
すでに、存在の半分が侵食されているのだろうか。
「それよりも……」
理由は《虚空の泥》によるもの、以上の考察は時間の無駄。そう判断したのか、ビューティはサニーの後ろ側へ指をさす。
振り向けば、遠くでハッピーのコアソウルが膝をついてはいるものの、動いている。
「ハッピーも……もう限界に近い」
でも、あの中に──確かに、ハッピーがいる。
目が合った。
その瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。
でも今は、戦わなければならない。
──両手を横に広げるハッピーのコアソウル。
目の前に暗黒のエネルギーが集まり、徐々にその大きさを増していく。空間が唸るような低い震動を伴い、無慈悲な意志だけを含んだ一撃が、今にも放たれようとしていた。
「まずい……!」
サニーの思考を焦燥が蝕む。
どんな攻撃が来るのか……。また自分が耐える前提の無差別攻撃をしてくるのか、その場合自分たちは逃げられるのか。その前に倒すことは可能か……。いや、もうそんな時間は……、そもそもそんな力を出せる━━━━。
「──あたしたちも、直球勝負で迎え撃とう」
闇の中で、凛としたマーチの声が響いた。
二秒遅れて、サニーは反応した。
「なんやて……!?」
振り返ると、マーチの目が真っ直ぐ前を見ていた。顔は泥に塗れている。傷だらけだ。それでも、揺るぎない。
「私も賛成です」
静かにビューティが言う。
「この戦いは、私たちが知っている“キュアハッピー”の戦法を分析できたから、対処できているのです。けれど、あれは……これまで戦ったコアソウルの中で最も純粋に“強い”存在。普通の方法ではもう通じないでしょう」
「だったら、全力でぶつかる。力と力の勝負ってことだね」
ピースも頷いた。彼女の顔も限界を超えているのに、不思議と迷いはなかった。
サニーは息を吐いた。すでに肺がきしむほど苦しい。でも──
「了解や」
しかし、不思議と不満などは感じなかった。
それはきっと、全員がハッピーをもとに戻す、コアソウルから解放するという目的で繋がっていて、各々が全力だということを知っているからだ。
今のこの瞬間が、自分たちの二年間の旅の“終着点”になる。
だから、最後は……全力全開で、真っ正面から叩き込む。
「次が最後の攻撃や……!」
サニーは叫ぶ。その声は、誰の耳に届いたかではない。自分の魂に届くかどうか、それだけだった。
体の奥が、軋む。
「……行くで!」
声が震えた。けれど、迷いはなかった。
ビューティが下側。左手にピース、右手にマーチ。そしてサニーは上側。
四人の位置は、自然と十字を描いていた。
空間に風が走る。ハッピーのコアソウルもまた、全エネルギーを一点に集中しつつあった。
「──今や!」
サニーの叫びと共に、四人の胸に宿る光が、いっせいに脈動する。
手を前へ。心を一点へ。四人の力が、想いが、命そのものが、ひとつの線に収束してゆく。
「《プリキュア・ラステッド・テトラグラム》……!」
それは、願いだった。
四つの光が、それぞれの色を放ちながら交差する。燃えるような紅、雷光の黄、疾風の緑、凍てつく青。それぞれが異なる色であるはずなのに、どこかでひとつに重なって、虹色へと変わってゆく。
――ひとりでは届かない。でも、四人なら。
虹色の光線が放たれた。まっすぐに、力強く、たった一つの答えを貫くかのように。
同時に、眩い闇色の光線が放たれた。ハッピーの最後の攻撃。《プリキュア・ハッピー・シャワー・シャイニング》。
その光と、サニーたち四人の光線が空中で激突する。
虹と闇。祈りと狂気。
二つの力は空中でぶつかり合い、炸裂する。
「っぐ……!」
サニーは歯を食いしばった。まるで腕の先から魂を引き剥がされるような感覚。それでも光は絶やさず、必死に踏ん張る。
「こんの……!!」
マーチが呻く。その声は、悔しさと恐怖に滲んでいた。
ビューティの震える声、ピースのうめき声も聞こえる。四人全員、力の限界をとうに超えていた。
──しかし押されている。
《ラステッド・テトラグラム》は確かに、魂の限りを注いだ最強の光だったはずだった。なのに今、闇に染まった《ハッピー・シャワー・シャイニング》に飲み込まれつつあった。
ぎりぎりの拮抗を保っていた光線の交点が、わずかに押し戻されている。
サニーは肩で息をしながら、それでも腕を前へ伸ばし続けていた。脚が震える。視界が霞む。喉が痛い。
──駄目や。もう、持たへん……。
心が、軋んだ。
それでも……それでも……!
「ッ!」
そのとき、脳裏に浮かんだ。
ハッピーとの思い出。
この世界に来たばかりて不安なみゆきと、転校したばかりの自分と重ね、バレーボールの練習をした。
ポスターコンクールは、したいこと、して欲しいことに付いての考えた。
時には家族の大切さ、失う強さと向き合い、
やりたいこととの出会いに付いて考えたこともあった。
そして、ハッピーが別世界から来たということを隠す本人と、隠された自分たち。不安や不信感、罪悪感に善意がぶつかり合った。
その先に見えたものとは、この世界がでの自分たち5人の絆だった。
花見では、もう一度その絆を確かめ合い、
夏に別世界の自分の存在について考え直し、
文化祭で協力して、全員で最高のものをつくりあげた。
しかし終わりが来る。
この日常は永遠には続かない。寂しいとかんじるのは当たり前だ。その事実をのみ込み、前に進もうとして、そして━━━。
この世界は消える。
ここで過ごした全てが無に帰す。
━━そんなことにはなってほしくない。
だって自分たちは生きているのだから。せめて、自分たちが生きた証を…………。コアソウルに、そして絶望に囚われたハッピーを解放する。
「ぐおおおおおおおおおおお」
その思いが全身を駆け巡る。
全身が、熱を取り戻していく。沈んだ体が浮き上がるように、全ての細胞が再び目を覚ます感覚。
「……うちらが、ハッピーを取り戻すんや!!」
サニーの叫びに、光が応える。
虹色の光が再び明滅する。
押し返されていた光が、じり……じりと前へ進みはじめる。
《プリキュア・ラステッド・テトラグラム》──その核に、過去から現在へと繋がる“絆”が注ぎ込まれた。
「絶対に負けない……!」
ピースの瞳が輝く。
「今、ここで──全部、取り戻す!」
マーチが強風のように吠える。
「私たちが、守る!」
ビューティが氷のように研ぎ澄まされた声で言い放つ。
「うちら、絶対、諦めへんで……!!」
サニーの言葉と共に、光が爆ぜる。
虹色が一瞬、白に近いまでに純化される。
それは──ただの力ではなかった。
祈りであり、誓いであり、存在そのものだった。
「いっけええええええええっ!!」
四人の雄叫びと共に、光が炸裂する。そして眩い虹が闇を貫いた。
光は、《コアソウル》の中心へ。