私たちに攻撃をしようとすれば、気が付けば私たちから逃げ出す。私は、どのような目的かわからない相手と戦っている。
「どこに逃げたんや」
「とにかく、エンジン音を……」
プリキュアになって足の速さが断然上がっているけれども、あのコアソウルを追いつくことができない。私たちは音を頼りに追いかけるが、どうしようもない。
コアソウルがちょうど私を追いかけて攻撃してくる時に、一気に倒すしかない。エンジン音が大きくなっている。あの曲がり角を曲がれば━━。
曲がった先にある光景に私は目を疑った。バイクに乗ったかぐや姫の前にやよいちゃんの姿がある。コアソウルは今にも攻撃しそう。
このままじゃ━━。
私は思わず足を動かした。無我夢中に、私がここで考えたところで何かいい変化が起こるなんて考えられない。なら私は気力ある限り体を動かすだけだ。
ドン!
爆発するような音とともに、排気口から黒いエネルギーが放出され━━。
「私は、みんなを助けるヒーローになるんだからーーーーーー」
やよいちゃんの声が聞こえた。同時に私はやよいちゃんを、エネルギーが出る軌跡から逸らそうと身を投げ出し、手を伸ばし、泣き叫ぶ彼女の肩に触れ━━━━。
バリリリリリリ。
━━雷鳴が聞こえた。
と思ったらあたりが光に包まれていた。
この感覚は━━、プリキュアだ。
「うわあああ」
まだこの感覚に慣れてなくて思わず声に出してしまった。
「その声は━━。でも、私、助けようとして━━。な、なにこれ」
目の前で、誰よりも優しい心と正義感を持つ少女が、涙ぐみながら目を開ける。まばゆいカナリア色に照らされながら、今起きていることに困惑している。
ああ。私が来る直前に、何かを助けようとしていたのか。もちろん怖いはず。逃げたかったはず。だけどやよいちゃんは、誰かのためならその恐怖に打ち勝てる強い子なんだよ。
すると、私の腰にあったソウルフルパクトが光る。一筋の黄金の輝きを飛ばす。一直線にやよいちゃんの目の前まで駆け抜け、弾けた。そして現れる。
「これは━━?」
「ソウルフルパクト。プリキュアになるための変身アイテムだよ」
「これで━━」
やよいちゃんは、ソウルフルパクトを両手で包むように手に取る。これを手に取り、「プリキュア・スマイルチャージ」と叫べば私たちと同じようにプリキュアになる。
だけど━━。
「やよいちゃん。一応はこれで変身できるけど」
「━━ううん。私。やるよ」
周りの光が消えていく。時間がない。
この状況が、やよいちゃんの変身を強要しているのかなと思った。
もちろん”なる”と言ってくれたことは嬉しいけど、それが理由ならば、止めなければならない。
だけど、私はやよいちゃんの顔を見ると、カナリア色の瞳は決意に溢れていた。
私はこれ以上何かを言う必要は無いと悟った。
光が完全に消えた。
コアソウルの放った光線は、今の光で消え去ってしまったのだろう。ついでに、コアソウルも飛ばされたのだろう。真っ黒のかぐや姫はバイクに乗ろうとしているので、一度転倒したらしい。しかし体勢を整えばすぐさま攻撃してくる━━と思う。逃げるかもだけど。
光を手にした彼女は、屋上で耳にした言葉を、決意とともに口にした。
プリキュア・スマイルチャージ!
開いたパクトから飛び出る二つのパフを、リズムよくシンバルのように叩く。そのたびに出てくる泡が弾けるたびに、ヒールがスカートが、コートが生まれていく。天から雷が落ちて。髪が大きなポニーテールとなる。くるりと一回転すると、帯が出てきて腰回りをつなぐ。
ピカピカピカりん じゃんけんぽん! キュアピース!
ここに3人目のプリキュア誕生した。
━━やっぱり可愛い~。
と、心の中で叫んだ。
二人の前にはバイクのカーソルが鳴り響く。
近くで見ていたジラはずれた眼鏡をすっと押し上げ戻す。
「いいでしょう。3人の相手をしてやりなさい」
グアアアアアアアア。
怪物が雄叫びを上げて、こちらエンジンを鳴らし始める。
「ちょっと待って」
ピースは後ろを向いた。
「どうしたの?」という瞬間に、彼女は変身前に誰かを守ろうとしていたことを思い出す。ここに誰かが、と思い、私たちは振り返る。しかし。誰もいない。
「おーーい」
少し遠くでサニーの声が聞こえた。そういえば、と思い顔をぐっとサニーのほうへ。すると橙色のお団子の後ろに誰かがいた。正確にはおぶられている。もしやあの人たちがやよいちゃんが助けようとしていた人。
よく見ると、というかプリキュアになって視力も上がるので目を凝らさなくてもはっきりと見えた。あれは、数日前に、やよいちゃんの人を悪く言った美術部の蘇我先輩だ。
あんな人まで身を挺してたすけようとしたのか。
私が感傷に浸っている間に、あかねちゃんはその先輩を安全な場所にうつした。私たちのほうへ親指を立てて、そして笑顔でこちらに合図を送った。
よーし。
これでこちらは、あのコアソウルに集中できる━━。
ちょうどコアソウルはひときわ大きいエンジン音を鳴らす。アクセル全開でこちら側で向かってくる。
突然止まり、前輪だけを地面につけて回転し、敵を側面から襲うというのは最初にサニーに、私にもあの方法を繰り出した。あの技のせいで、コアソウルを物理的に捕まえることが難しくなっていた。
しかし。横側から。
「どりゃああああ!」
と、サニーが飛んできて、コアソウルの横側を殴った。
かぐや姫の横っ腹にあたる。かぐや姫は横に飛ぶ。バイクはどうかというとがっしりとハンドルを掴まれているので、一緒に飛んでいく。学校の塀にぶつかり、バイクから崩れ落ちるように倒れた。
「今や!」
サニーは追撃しようとする。かぐや姫はまだ、バイクに乗ろうとしている。サニーは逃がさんというばかりに、右の拳を後ろに引く。浄化技《エレクトリュオネ・ノヴァ》をやろうとしたのだろう。
攻撃力はあの排気口からの黒い光線を除いてそこまで強そうにない。
━━と思っていた。
一閃。
何かがサニーのほうへ。
「なんや!?」
頭を横にずらす。直後に”それ”はサニーの頬の横を掠めるように通過した。
サニーはバランスを崩し、左膝を地面につける。技を打てない。
あれは━━。
私はコアソウルが何をしたのかを確かめる。
かぐや姫の周りには、かぐや姫本人が現れた時のような空間の歪みをしていた。半径5センチくらいだと思う。歪みはかぐや姫を囲むように、数十の歪みが。そこからゆっくりと、多分サニーを掠めそうになったものが。
竹やりだ。
半径2センチほどの管状のもの。
かぐや姫や暴走バイクとは何ら関係ないものが現れる。
そのうちの一本の周りの歪みが消える。かぐや姫がその一本を歪みから引き抜き、手にしたからだ。あれはもう私の知るかぐや姫ではない。私が読んだ数十の”かぐや姫”という物語、または原作にあたる竹取物語にもあんな姿は存在しない。
かぐや姫はエンジンを鳴らす。視線の向きは、私たちだ。
「ピース!」
一緒に戦おう、と声に出そうとする。
しかし、カナリア色のもみさげの下で、肩が震えている。
私は”前の世界”のことを思い出す。
初めて変身した、その世界のキュアピースは、アカンベエの前で一度逃走した。
バイクを走らせ、一直線へ私のほうへ走ってくる。
コアソウルを囲む竹やりは歪みから半分ほど出ている。いつ発射されてもおかしくはない。一つ一つがかぐや姫との位置関係が同じになるように、移動をしてくる。
色々と考えるなんて、私には無理だ。とにかく、動いてピースを少しでもコアソウルから離れさせる。
私は横へ走った。ピースから離れる。バイクは急カーブをして私のほうへ。
私は追いつかれる。
空気の温度が一気に上昇したのを感じた。
途端にかぐや姫が、持った竹やりを私の右肩のほうへ。
体を左側に寄せ、避ける。
するとコアソウルは私の周りで満月を描くように、竹やりを一回転させる。私の左肩のほうから細い槍身が来る。後ろに飛ぶ。
後ろから足音が聞こえた。
私は空にハートを描く。
同時に私を追い越すサニーが、視界の端から現れ、コアソウルに向かう。
「どりゃあ!」
かぐや姫が乗るバイクへ拳を入れようとする。
だが、もう一度竹やりが発射される。サニーは前に進む自身の体を止める。目の前にビィィィン、と竹やりが差し込まれる。
危険すぎる。さっきの私への攻撃は、手に持つ一本の竹やりを駆使したものだけだったけど、もしそこで発射されたら、危なかった。
だけど、ここで倒すことができれば。
「サニー!」
私の合図で、サニーは横に飛ぶ。
集めた桃色のエレルギーを発射させる。
「《プリキュア・ハッピー・シャワー・シャイニング》!」
渾身の力で打ち込んだ光線。当たれば間違いなく浄化できる━━。
そう確信をした。
その途端に。
コアソウルは後ろを向く。いや、正確にはバイクの後ろを向けた。
排気口が黒く染まっている。さっき感じた温度の上昇は、それだったのか。
やよいちゃんの周りに光が生まれる直前に発射しようとしていたもの。
それを今、私に向かって、《プリキュア・ハッピー・シャワー・シャイニング》とぶつけるように発射した。桃色と黒色の光がぶつかる。
エネルギー同士のぶつかり合い。私とコアソウルの真ん中には、桃色と黒色がぶつかるように巨大な球体が生まれる。ちょうど半球ずつなのは私とコアソウルの力が拮抗していることを意味する。
「ぐうううう」
私は歯をかみしめた。
こんなもの。バッドエンドハッピーとの戦いの時と比べたら。
もっと、もっと力を込める。その過程で、頭が下がり、目が閉じる。力いっぱい叫ぶ。
「うおおおおおおおお。気あ━━」
「ハッピー!」
サニーの声が聞こえた、私ははっとして瞼を開き、視線を前へ。
目の前には竹やり。
「あ━━━━」
一瞬、時が止まったようだった。
とっさに動いたのは頭だった。顔をよこにした。それにつられて体も動く。力も抜けた。
途端に私が放っていた光線の威力が弱まる。
そして黒い光線にかき消される。
私はその光線を直接浴びた。
***
爆発がハッピーに当たった瞬間から猛烈な爆発が生まれる。
追撃しようとしたサニーは爆風によって吹き飛ばされる。壁の塀にあたり、地面にうつぶせになるように倒れた。
「ぐうう」
まだプリキュアになって日が浅いからなのか、それとも変身してからの長さ故なのかわからない。サニーの自分の体がぐっと重くなったのを感じた。
あたりには砂ぼこりが舞う。
サニーは周りを見渡すが何がどうなっているのかわからない。
しかし、次第に砂は地面に落ちて、視界も明るくなっている。
まず見えたのは黒い巨体。コアソウルとコアソウルが乗るバイクだ。
そして、次に見えたのは。
地面に倒れるも、なんとか立ち上がろうとするハッピーの姿だった。
あれほどの攻撃を食らったのにも関わらず、完全に倒れていないのは流石というべきか。自分ならもう変身が解けているだろう。変身時間が同じで、あの黒い光線に直撃ではなく近くで巻き込まれただけの自分が、ハッピーと同じ状況なのだから。
バイクの音がする。
アクセルの音は小さい。
バイクは動き出す。
スピードは小さい。
だから一瞬、何をするのかわからなかったが、すぐに自分の背筋が冷えるのを感じた。
コアソウルはハッピーの前に立つ。
そしてコアソウルを囲む竹やりの角度が変わった。鋭端の先には、体を必死に動かそうとしている彼女の姿があった。
「逃げろ! ハッピー!」
自分も動けない。叫ぶ音しかできない。
竹やりは、すべて、発射された。ハッピーめがけて一直線に。
瞬間、雷の音がした。
***
視界が大きく横にズレた。私は私ではどうしようもない動きをした。同時に、誰かが私を助けてくれたことを理解した。
「ピース!」
私を抱く、キュアピースの姿がいた。
地面に着地する。
「だ、大丈夫……」
彼女の肩はまだ震えていた。
怖いに決まってる。どれだけ勇気を振り絞っても、恐怖は無限に溢れてくる。でも、やよいちゃんは誰よりも優しくて、人のために戦えることができる子なんだ。
「ピースが助けてくれたから平気だよ。だから、今度は私がピースを助けるよ」
最高の笑顔でピースの優しさに応えよう。
グアアアアアアアア。
コアソウルが竹やりをこちらに向け突き出してくる。
「どりゃあああ!」
しかし、サニーが私たちの前に現れ、それを受け止める。
すると、竹を掴んだ手が燃え始める。パキャッ! と竹の中の空気が弾ける音とともに割れた。
その途端にサニーは後ろに飛び、私の横側へ。サニーがさっきいた場所に地面には竹やりが刺さった。
「うちもや」
サニーは自分を親指で指差す。
私たちはみんなでプリキュアだ。
「いこう、3人なら怖くないよ」
「よっしゃー!」
サニーの返答の後、数秒。
「うん!」
ピースの恐怖を振り払う声が聞こえた。
コアソウルは一旦後ろに引いた。そしてコアソウルの周りで空間が歪む。
竹やりの発射体勢を整えた。また排気口から音が聞こえる。
また黒い光線を発射される準備をしている。
「なあ。二人とも」
するとサニーが私たちに語り掛ける。
「正直、うちはあいつを浄化させるほどの攻撃ができるくらいの体力は残ってないと思う」
「ごめん。多分、私も」
肩で息をするサニーにつられて、私も答えた。思えば、私も息切れをしている。
「だから、あいつを倒すのなら、多分ピースの浄化技でしか無理ってことやな」
「え━━」
ピースは困惑した声を出すもすぐに、
「わかった」
と、頼もしい声を出してくれた。
コアソウルはエンジンを大きく鳴らせた。
仕掛けてくる。
「━━せて」
右から声がする。
「え━━」
視線を向ける。眉をひそめながらピースがいた。
「任せて」
だけど、その中には確かな自信も見えていた。
「わかった」
私は頷く。信じよう。
「りょーかい」
サニーも今の言葉が聞こえたようだ。
「あと、あいつの直進攻撃には注意な。目の前で止まって横から攻撃してくるから」
忠告したのち、サニーはピースから左のほうへ離れていく。
「浄化技はソウルフルパクトへ気合いを込めて!」
わたしは右のほうへ離れる。
直後、コアソウルは直進を始めた。今サニーの言った通り、”例の攻撃”が来る。
「ピース!」
サニーは「その攻撃や」というように彼女の名を叫ぶ。
かぐや姫は両手を握りしめ、激しい音とともにバイクの後輪を浮かせる。そのままマシンのボディを回して側面からピースを攻撃。その途端。
バリイイイイイイ。
稲光が走った。
地面にいたはずのピースは空に浮き、バイクの回転に反するように、かぐや姫の頬へ右足をめり込ませていた。
何も見えなかった。
かぐや姫はすぐ空から半分出ている竹やりを”二本”とった。
右手左手に一本ずつ、ピースに向かって攻撃する。
だが、バリリ! とこれまた稲光の音とともに避ける。また攻撃が来る。それもまた同じように避ける。たった一本の竹やりでも、後ろに避けるしかなかった攻撃を避け続ける。
しびれを切らしたのか、竹やりが発射される。
それもピースは避けた。
「ハッピー!」
遠くでサニーの声がした。
「何!?」
雷鳴が轟く中、私たちは大声で会話する。
「あの浮かんでる竹やりがなくなったら勝負や! バイクを破壊しろ」
「わかった!」
私たちを悩ませたあの竹やり。あれを今、ピースが一人で受けてくれている。それがなくなった時がチャンスだ。
竹やりの発射攻撃は次第に激しくなる。そのたびにピースは雷鳴を響かせ避け続ける。コアソウルは竹やりがなくなるごとに空間を歪ませ、竹やりを補充する。とすれば、一気に放出するほどの攻撃をあの近距離から受けなればならない。私はそれを考え、加勢に行くことを考える。
━━任せて。
彼女の言葉が頭の中で反響した。
ずっと機会を伺う。
数十秒もすれば、コアソウルとピースの攻防がうまく見えなくなる。
今ピースはどこに動いたのか。コアソウルはどう発射したのか。
だったら。じっと竹やりの数を見よう。
それもピースを信じることにつながる。
サニーだって、手に炎を宿している。彼女も機を伺おうとしているのだ。
歪んだ空間で待機する竹やりの数を見る。
確実に減っていく。5本、3本、そして。
━━0本。
つまり、コアソウルが一度に用意できる竹やりをすべて発射したということだ。
「今や!」
サニーが叫ぶ。
「うん!」
私は走り出す。
━━気合いだ!
走りながらもう一度、私は空に桃色に描く。
桃色の軌跡を集める。これで撃つのが、私の勝負になる。
目の前では、ピースがバイクのボディに拳を入れていた。竹やりがなくなって余裕ができたのだろう。しかしその攻撃は弱かった。マシンはぴくりとも動かない。そればかりか、かぐや姫はマシンを回し、ピースは弾きとばした。
びっくりして避けようとも出来なかったのかもしれない。
ピースは地面に激突する。
その直後、バイクはピースに向けて背中を向けた。それが意味するのはたった一つ。あの黒い光線を撃つためだ。
「だめええええええええ!!」
私は力の限り叫んだ。かぐや姫はこちらを向く。私の手元の輝きを見たのか、排気口を私に向けなおした。そのなかでちらりと見えたのが、空間の歪み。
光線をよける時間は無い。
その思考をした瞬間、発射される黒色のエネルギー。
私は反射的に体を回転させるように前に跳んだ。ちょうど仰向けになるように地に着く。背中が地面にすれ、滑り始める。その真上を光線が飛ぶ。
地面と擦れる背中だけじゃない。上側にある体の前側が焼けそうだ。だけど、この先には。
視線を頭のほうへ向ける。黒い光線の発射地点、バイクの排気口が見えてきた。その下へもぐりこむ。
━━今だ。
「《プリキュア・ハッピー・シャワー》!」
持てるの力をすべて出し切るかのように、私は真上の排気口に向けて発射した。
排気口にゼロ距離からあたり、そして、爆発した。
私はその爆発をすべて受けた。
ダメージで体が動かない。滑りも止まり地面で仰向けで倒れる。上を見る。
煙と土煙でなにも見えない。
***
ハッピーが起こした爆発で、コアソウルは上へ吹き飛んだ。
サニーは見上げる。上空にはバイクに乗っていないコアソウルの姿があった。
だが。竹やりの準備はできていた。ここは自分の出番だ。ハッピーにバイクの力は無効化してもらった。だったら、自分はあの竹やりを何とかしなければ。
「《プリキュア! エレクトリュオネ・ノヴァ》!」
拳を突き出す。用意していた炎を放つ。
炎は空に浮き自分の位置を思うように変えられないコアソウルの周りにと飛んでいく。
その炎は、コアソウルを浄化できるほどの力はないだろう。
しかし。
パキパキパキパキ。
音を立てて燃えた。
落下で生まれた風で炎は消えるが、一度竹の中の空気が炎の熱で膨張すれば、竹は割れてしまう。
もちろんサニーにそんな原理はわからないが。
「いまだああああ!!」
サニーは叫ぶ。
ピースのウルトラパクトが光り出す。
そしてピースの周りにはバリバリと放電が。
「うわー!?」っと、自身に起きていることに対して驚きの声を上げる。
ハッピーがよく知るピースの技は《ピース・サンダー》だ。放つときにほぼ毎回驚きの声を上げる姿を見せる。
ピースは自分に帯電している雷の力を保ったまま、両手の人差し指と中指を伸ばし両手を合わせる。伸ばされた四本の指。指の先は当然。上空のコアソウル。
「《プリキュア・アストラル・ド・ブリッツ》!」
空を切り裂く雷が現れ、コアソウルの身体を貫いた。
そしてコアソウルの身体は黒く染まり霧散する。地面に落ちた黒い液体が蒸発する。すると赤色のふわふわした霊魂のようなものが現れ、姿を消した。
そして、学校もいつの間にか元通りになっていた。
***
気合いで何とか立ち上がる。
ピースの技でコアソウルが浄化された姿が、薄まる土煙を通過してなんとか見えた。
私はジラに意識を向けた。
「どうしてこんなことをするの……」
学校の塀の上に立ち、私を見つめるジラ。だが何も言わない。
すると彼の後ろに空間から何かが現れた。いや違う、何かが開いた。
黒い空間が見えた。ジラはその中に入り姿を消そうとする。
「待って━━」
私はよろけながらも走りだす。彼を追いかけようとした。
しかしジラの姿は闇に消えるように、完全に見えなくなった。直後、開いた空間の枠は、中心に収束していくように縮み、閉じる。さっきまでジラがいた塀の上を見上げた。
「ーーーーっ!」
私は口をつぐむ。私たちが閉じ込められたようだった。
彼らがどういう存在なのかは知らない。目的もしらない。コアソウルという怪物も。━━何も知らない。
キャンディもポップもいないのだから、私たちだけでやるしかないのだろうか。
そんな疑問を抱きながら変身を解いた。
「ん━━?」
誰かの声がした。美術部の蘇我君と、その取り巻きの人たちが倒れて目覚めそうだ。
「あれ、ここは━━」
記憶が飛んだのか、サニーに移動されたからなのか。周りを確かめようとする男子生徒5人。
「ここは何も言わんと離れようや」
あかねちゃんが口を切る。
「そうだね」
私は頷いた。彼らにこれ以上なにかする必要はこちらからは無い。私は、あかねちゃんと、やよいちゃんとその場を離れようとする。
私はキュアピースとなった彼女の手を取る。
「いこう。やよいちゃん」
彼女は私を見つめながら笑顔で返した。
「もちろんだよ。みゆきちゃん」
まだ何もわからないことだらけ。このおかしな世界に閉じ込められ、苦しい思いをした。だけど仲間が、友達ができた。それは嬉しかった。わたしの孤独を溶かしてくれた。それはあかねちゃんも。そして、あのふたりも。
やよいちゃんの笑顔は、私を救ってくれると思った。
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