オーブ国防軍の白き流星   作:御簾

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いい加減前書きのネタが切れてきました。
とりあえずアムロさんの介入する場面も増えてきましたし、この調子でドンドン進めていきたいですね。え、味方が強すぎるって?
いやいや、まぁ。
だってモルゲンレーテだし。

今更ですが、投稿してる話は大体5日前に予約セットしてます。
ストック的にはもう結構進んでるので……
感想見てニヤニヤしてますよ、本当に。

薄味なので同日2話目投稿です。



その9

 まだ夜も明けない内、オーブに停泊中のミレニアムに近づく影。海の中から現れたそれらが使うのは、片手で持てるサイズのマグネット・アンカー。吸盤タイプと選んだ結果、こちらの方が強度が高いとの結果が出たらしい。船体に張りついたアンカーに身体を任せ、ゆるりと水から上がっていく複数の人影があった。

 

 統率された動きでミレニアムに取り付いたそれらは、取り出した機器をメンテナンスハッチの中にセット。遠隔地からのハッキングを可能とするそれは瞬く間にミレニアムの制御系統を乗っ取っていく。その手際はあまりに素早く鮮やかで、気付けたのはハインラインただ一人。艦がハッキングを受けているにも関わらず慌てることなく、艦長へ報告する。

 

「艦長、インジェクションアタックです」

「──そう、か」

 

 諦めたのか、それとも安堵か。どちらにせよ彼が肩の力を抜いたのは明らかだ。露骨な反応は彼の予想が的中したことをこれ以上なく示している。だがまぁ、ミレニアムがハイジャックされようとしているのは事実である。どんな形であれ、乗組員を退艦させる必要があるだろう。

 

『乗組員は速やかに退艦して下さい!繰り返す!緊急警報!緊急警報!艦内Bデッキに有毒ガス発生!』

「何なの!?」

 

 警報に慌てて飛び出したルナマリア、その片手にはサブマシンガンが握られている。射撃が苦手と言っているものの、それはあくまで赤服基準。一般の兵士に比べるならば非常に高い練度である。ましてやこんな非常事態、並のテロリストでは彼女の相手が務まるだろうか?

 

 どんな相手なのか分からないが、これ以上ミレニアムに被害を与える訳にはいかない。シンもキラも、ましてやアムロも居ない中でパイロットは自分一人。乗組員を守らなければ。誰かを殺すことに今更抵抗感などないが、責任は感じているのだから。

 

「動くな」

「ッ、は……!」

「手をあげて、銃を捨てろ」

 

 後ろからテロリスト。聞き覚えのあるような無いような声だが、こちらに銃を突きつけている以上交渉の余地があるようには思えない。一瞬の油断が命取りになる。アムロが言っていた言葉を思い出し、身構えている己には死神など来るはずもない。そう言い聞かせてテロリストが己の銃に伸ばした手を握る。

 

 驚いたように声を出すテロリストの身体を捻って、ルナマリアはそのまま彼を投げ飛ばした。アムロの指導が役に立った、まさか彼の『柔道』なる技がこんなにやりやすいものだとは。そうやって投げる間に相手から銃を奪い取り、逆に抑え込んでサブマシンガンを突きつけてやる。

 

「うわぁ、ルナ!俺!俺だって!」

「シン!?」

 

 すると投げ飛ばされたテロリストが大袈裟に怯えてマスクを取り始めた。中から出てきたのは、もう死んだのかと思っていた想い人。傷一つなく、とても元気そうにこちらを見上げていた。リアクションだけは大きく痛がっているが、受け身を取れなかったそちらのミスだろうに。

 

 でも、生きていてくれた。緊急時であることも忘れて、ルナマリアの目には涙が浮かぶ。あの時は変なすれ違いで微妙な距離感になったまま、もう二度と会えないかとまで思っていたのに。核ミサイルの爆心地の近くに居たのに。こうやって、自分の前に帰ってきてくれるとは。

 

「シン!」

「うわっ……ルナ……」

「バカ!バカ!バカバカバカ!シンのバカ!生きてたのから連絡ぐらいしなさいよ!なんで、なんでおしえてくれないのよ、ばかぁ……!」

「──ごめん、ルナ」

「うぅ、あぁぁ!」

 

 ヒルダが見に来ると、そこには頬を腫らしたシンと彼に抱きついて号泣するルナマリアの姿があった。このまま良い雰囲気にまでなりそうだ。大人なヒルダは静かにその場所を後にした。邪魔する奴は蹴っ飛ばしても構わないだろうな、なんて若者たちの声を背中に歩いていく。

 

「有毒ガス?ここに?」

「何を言ってる?」

 

 その頃、Bデッキに居た乗組員は首を傾げた。有毒ガスが発生だと?何を言っているのか。我々はこんなに元気じゃないか。一部のベテランたちは何かに気がついたのか、すぐさまデッキから走り去っていく。後で判明したのだが、この時走ったのはオーブから出向してきた連中。

 

 つまり、アムロと長い付き合いの奴らだ。

 

「やべぇ、アムロ一佐のアレだ!」

「今すぐ安全なところに!」

「もう遅いぞ」

 

 そんな彼らだったが、後ろから聞こえた声に振り返ることもなくデッキ内へと投げ飛ばされた。もうこうなっては手遅れと分かっているのか、諦めたようにヤケクソ声を上げながら通路をゴロゴロ転がっていく。何事かと振り返った他のクルーは、床に倒れる仲間を見て騒ぎ始める。

 

「何事だ!」

「へへ、お前らも味わえよ……」

「オーブの白い流星はスパルタだぜ……」

「は?」

「やあ」

 

 これはシンとルナマリアが再会し、艦橋に突入したマリューやキラが、整っている出航準備に目を丸くしている頃合いの話だった。全てを明かし明かされた艦橋組はこの後すぐさま作戦会議を開始していた。よって彼らが知る由もないのだが、後にBデッキ勤務の乗組員はこう語ったという。

 

『今度から警報が鳴ったらすぐ逃げます』

 

と。

 

 

「さて、全員が帰ってきたことですからそろそろ作戦会議を始めようじゃありませんか?アムロ一佐の姿が無いのが気になりますが……」

「別行動中です。概要のみ纏めて頂ければ後に目を通して頂けるでしょう。気にせず始めましょう」

 

 服を着替えた彼らが集まり、作戦会議が開始される。ミレニアムがハイジャックされたとの報告は、既にプラント・オーブ・連合全てに通達されている。暫くの時間稼ぎは出来るだろうが、果たして。ファウンデーション王国に一泡吹かせるだけの時間的余裕があるかと言われると、微妙なラインだ。すぐさまレクイエムを放たれる可能性もあるが、それは低いとの予想もある。あくまでハイジャックされただけなのだから。

 

 作戦概要は、C.E.71年のアルテミス要塞攻略法と同じ戦術だ。アスランの説得(物理)と皆のサポートでメンタルは上々、キラが主導となって作戦を立てていく。といっても、ほとんど完成しているので確認するだけなのだが。

 

「キサカ一佐をはじめとして、僕らはアルテミス要塞に潜入してラクスを救出します」

「ミラージュコロイドを使って敵の探知を潜り接近する……ニコルの戦術だな。まさかまた、あの戦術を自分がやるとは思わなかった」

 

 懐かしそうに笑うアスラン。友を失ったことは忘れない。それをやったのが、隣に立つ幼馴染だということも。だが過去に拘ることはしない。思い返しこそしても振り返りはしない。だってそれは変えられないことだから。

 

 ニコルの作戦を使うことに懐かしさを感じるのは、それだけ時間が過ぎたからか。まだ幼かったあの頃、もしニコルがミラージュコロイドを使っていなければ今こうして作戦を立てることも叶わなかっただろう。彼のアイデアと実行力は、彼が紛れもなく赤服の一人であったことを示していた。今も見守ってくれているであろう彼に感謝しながら、アスランは話を続けていく。

 

「我々は別働隊として潜入します」

「ミレニアムは、主力艦隊を突破して月へ……」

「囮になる、ということね」

「こちらの素性が知れれば、奴らは直ぐにオーブを襲う。その前にレクイエムを無力化します。レクイエム本体はシールドで覆われ通常火力による破壊は不可能、ビーム中継ポイントはミラージュコロイドで偽装されていて発射されるまではどこに存在するのか予想できない……ただ、一箇所を除いて!」

 

 片手間にMSの積み込み作業の確認を行いながら、アルバートが示すのはレクイエムと地球の概略図。彼の言うとおり、屈折点のビーム中継ポイントの存在箇所は不明だ。ゲシュマイデッヒ・パンツァーだけではない。ミラージュコロイドすらも装備した中継ポイントを見つけるのは至難の業だ。が、そんなレクイエムにも弱点がある。確実に見つかるだろう第一中継ポイントだ。

 

「必ずレクイエムの真上、射線軸上にあります。発射直前であれば確実に破壊が可能でしょう。アスハ代表からも密命がありましたので、フラガ大佐が果たしてくれるはずです」

「それについては、俺からも補足がある」

 

 肩を回しながら、制服を引っ掛けてやって来たのは少し汗ばんだアムロだ。まるで激しい運動をしてきたかにも見える彼を見ると、アルバートが満足気に頷いた。どうやら、この作戦にはまだ追加要素があるらしい。首を傾げるマリュー達に二人は悪い笑みを見せた。

 

「あるジャンク屋からの提供で、ミラージュコロイドを見抜く技術を持っている。あくまで俺個人、オーブのアムロ一佐ではなく私人としてだがな」

「ミラージュコロイド・デテクターですね。まさかアムロ一佐がこの土壇場であれを持ち出してくるとは思いませんでしたが、アカツキに搭載していたとは」

「アスハ代表の機転だ。事後報告で済まないとは謝罪されたが、この国を守るためなら仕方ないだろうよ」

 

 サラッととんでもない会話が為されている気がしたが、それはともあれ出航準備だ。各種装備の積み込みは完了しており、後はチェックを待つだけ。各パイロットがそれぞれ散っていく中、アムロは格納庫へと足を運んでいた。艦長を譲られたマリュー、操舵手になったノイマンを見て嫌な予感がしたからだ。

 

「マードック整備長、荷物の固定は?」

「当たり前ですよ、バレルロールなんかやられちゃ格納庫が大惨事になる。今度やられたらどんなことになるか……新入りが吹っ飛んじまう」

「流石だな、伊達にアークエンジェルの頃からの付き合いでは無いということか。機体の方は初見が多いだろうが、調整は終わりそうか?」

「大半は終わってまさぁ。しかし、良いんですかい?アムロ一佐の方にはレールガン持たせなくて。フェムテク装甲相手なら、この機体の武器は殆ど通用しませんぜ」

 

 見上げる機体は、デスティニーとは違いビームで固められた対多数を想定したMSだ。核動力搭載のハイエンド機とはいえ、相手はブラックナイツ。デスティニーやストライクフリーダムですら旧式に見えるほどの超高性能機なのだが。やや不安げなマードックに、アムロは自信ありげな表情を向けた。

 

「俺が使う分には重くて邪魔になる。作戦通りに進むならレールガンを使わずとも戦えるからな。俺も『レイ』なんだ……彼があれを扱えるのなら、俺だってやってみせるさ。そうでなければこの機体を預けられた意味が無い」

『総員、三分後に発進します!速やかに作業を終え、所定の位置で待機してください!繰り返します、ミレニアムは三分後に発進します!』

「……行こうか。囚われのお姫様を助けるために」

 

 徐々に唸りをあげるエンジンは、アプリリウス入港時に全面点検され異常なしの太鼓判を押されている。調子は上々、今ならバレルロールだって出来そうだ。やられた側はたまったものではないが。だがもう今更何が起こっても、後は突き進むだけ。パイロットスーツに身を包んだアムロが待機室に入ると、シンが目を剥いた。

 

「あの機体に乗るなら、この色だろうと言われたよ。まさしくオーブの白い流星になってしまいそうだな」

「アムロさん……」

「今度はしくじらない。守りきってみせるさ、この艦と君たちのことを。その後は君たちの役目だがね」

 

 ウインクしながらモニタに映像を映す。そこにはこちらに向けて迫る護衛艦の数々があった。それを知っても尚、港から発進したミレニアムは徐々に速度を上げていく。停船命令が出ているが、それに対しては俺が出ようと思う。せっかくだ、盛大な船出といこうじゃないか。

 

『停船せよ!ミレニアム、直ちに停船せよ!』

「ここは俺が。──こちらはミレニアム、アムロ・レイ。オーブ国防軍に告げる。直ちに軍を引き、撤退してくれ。我々としても君たちと戦う意思はない」

『アムロ・レイだと?既に彼は死亡したとの報告を受け取っている、あれはアムロの名を騙る偽物だ。そのような卑劣な手を使うのならば、こちらも対抗手段を取る!』

「良かったんですかアムロさん!あれじゃ!」

「忘れたのか?前もあっただろう、こんなこと」

「え……?」

「あぁ、あの時の」

 

 何かを思い出したのか、ルナマリアが手を打った。まぁ、ミネルバだけではない。オーブ軍にはアークエンジェルもお世話になっている。艦に損傷を与えず、しかし対外的には攻撃したと見せかける……トダカ海将仕込みの百発百外し、見せてもらったよ。流石はオーブ軍、素晴らしい腕前だ。見えていないとわかっているが、映像越しに敬礼を向ける。これでファウンデーションが騙されてくれるといいが、そうもいかないだろうな。

 

「さて、どう出る……ファウンデーション」




※この後オーブ軍は普通に喜んで万歳三唱してました。憧れの人が生きててよかったね!

アムロさん、生身での格闘戦もある程度やれるそうです。何者なのよ本当に。ツッコミは無しってことでね。

待て次回。

アフターストーリーは

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