大人に叱られる経験ってのが不足したまま成長したシンデレラみたいな、変な方向に自己肯定感伸びあがった可哀想な女のコ。
ザフトアカデミー時代にアムロさんに出会ってたらどうなってたんでしょうね。シンとかレイとかルナマリアとかもそうですけど。
今話は長めです。
切るところわかんなくなっちゃったけど、お詫びとしてもう1話更新するから許してね!
ムウの捨て身にも見える作戦によってレクイエムの発射が妨害された後。発射口付近に艦艇が現れた。ミラージュコロイドステルスによって接近を偽装し近づいてきたのは、オーブ軍第一宇宙艦隊旗艦、クサナギ。レクイエムがオーブに向けられている、ということから彼らの士気は非常に高い。今回作戦に参加するのは、国を守るため志願した精鋭たち。
「偽装解除……目標はレクイエムの制圧、または完全破壊である。全機、武器使用自由!オーブに死の刃を向けた者を、決して許すな!」
『無論!負けるつもりはありませぬ!』
『我ら一同、アムロ隊長の訓練を受けております!』
『この程度の戦力差、訓練に比べれば!』
『隊長の仇、ここで討つ!』
『総員、散開!スリーマンセルにて敵を迎撃する!』
『『『了解!』』』
そう。かつてアムロに率いられ、タケミカヅチより脱出したムラサメ隊。その面々がそのまま志願しやって来ている。即応戦力としてそのまま対応出来たということもあるが、それ以上にアムロの死を伝えられた彼らが一人でも突っ込んでいきかねなかったのだ、それならば任務として正式に命令を出す方が良い。カガリはそう判断した。
アマギとて、アムロと長い付き合いだ。友と言えるかもしれない。彼を喪い義憤に燃える身体に力を込め、怒れる男は指示を出した。武器使用自由、即ち戦闘開始。襲いかかる敵機は徹底的に撃破せよ。作戦は要らない。彼らは各自、その場での判断によって行動する。三人一組にて敵を素早く撃破すれば敵も減る。正しいと言えば正しいのだが、それを実践できるパイロットがどれだけ居るだろうか。
『2番機、こちらは任せろ!』
『了解、ミサイルはクサナギが迎撃する!』
『抜かれた!対応を!』
『もうやってる』
「MS隊、射線軸より退避!」
ムラサメ改とはいえ、ザフトの数には太刀打ちできない。それは彼らも分かっている。撃墜や未帰還など覚悟の上だ。それを理解した上でここに居るのだから。クサナギへと襲いかかるザフトクーデター軍のMSに対して、彼らの動きは一糸乱れぬ統率されているかのように迎撃していく。背中をカバーし、その背中をカバーして。理論としては全員が全員の後ろを警戒していれば全方位が警戒できる、というあまりに脳筋じみたもの。
だが彼らは、それをやってのける。単調な動きではなく、簡略化されたマニューバを駆使して背後を取らせない。後ろに回り込まれた時は、別の機体が対応する。そうして繰り返し続けていけば敵も殲滅できる。アムロが淡々と説明していた時には正気を疑ったが、こうして完成されるとその言葉が嘘では無いことを証明できそうだ。
「ローエングリン、撃てぇ!」
アマギの号令よりも早く、ムラサメ隊がローエングリンの射線軸上へと敵を誘導する。可変と急制動を織り交ぜながらそれぞれが退避した後に残るのは、哀れにもおびき出されたザクやグフばかり。知ったことかとムラサメ隊は別方向へと展開し、放たれた陽電子砲が艦艇もろともMSを焼いていく。
『アムロ隊の扱きを舐めるなよ!』
『無駄口叩くな、散開!ミサイルが来る!』
『振り切れない!』
「こちらでも対応する!MS隊、前進せよ!」
物量に圧されるのが先か、それとも──アマギは一抹の危うさを感じながらも指示を出し続けていた。
●
「誘導砲、分離!トリスタン1番2番、クルヴェナール。目標、敵戦艦!撃てぇ!」
マリューの指示に淀みはない。アルバートの操る誘導砲にて迎撃手段を増やしながら、敵艦を沈めていく。襲い来る敵MSを切り裂いていたヒルダが何かに反応。振り向いてみれば、彼方からやってくる五機のMS達。何が起きたか、ファウンデーション側へと付いたアグネスにブラックナイツが四機。
「ブラックナイツが来るよ……!」
「ビームは通じない!ルナは援護だ!」
近づいてきたジンを一射で沈め、シンはアロンダイトを抜刀。迸るビームの勢いの如く、まるで彗星のように飛び出した。ルナマリアを守るためか、それとも決着をつけるためか。彼女に向けて後方支援を指示したシンだったが、ルナマリアとて伊達に赤服を身にまとっている訳では無い。
「対艦刀ならこっちにもあるわ。私だって……」
途絶える気配のない敵MS隊から飛来したミサイルを迎撃し、彼女はブラストシルエットをパージ。残りエネルギー量は半分ほど、これならまだ戦える。シルエットフライヤーが分離し、グレーになったインパルスへと合体するのは剣を背負った近接専用シルエット。
縦に二本背負ったエクスカリバーを大きく抜き放ち、連結。デスティニーと同じく対艦刀を構えたインパルスが、そのカメラアイを光らせて突撃。シンの後を追うものの、先に突撃した彼の方が早い。ヒルダはミレニアムから離れられない、それならば己が援護だろう。
──ほんっと学習しねぇバカ!お前ら俺達には勝てねぇんだよ!
──また落としてあげる!あははははは!
伝わる思念は、やはりこちらを侮るものばかり。四機が続けてこちらにやってくる、教科書通りの連携攻撃。お互いに思考が読めるからこそできる連続攻撃を仕掛けるつもりだったのだろうが、デスティニーには通用しない。まるでアムロかのように、シンはデスティニーを身軽に動かし全てを回避。ブラックナイツへと対艦刀を向ける。
『ミレニアムには近づけさせないよ、シン!任せる!』
「勿論!」
四機がかりで襲い来るブラックナイツ。彼らの素早い連携攻撃全てに対し、シンは反応してみせる。対艦刀による接近戦はギリギリまで引き付けてから回避、ビームライフルはそもそも高速機動にて使わせない。受け身で戦うからダメなんだ。彼は脳内でこちらにアドバイスしてくる友人の導くまま、右手のアロンダイトを使って近接戦を挑む。
「なんだコイツ……!?」
ブラックナイツは、その全てに対応出来ない。ただ為されるがまま、シンの無双を一身に受け続けるしか無かった。彼らにしてみれば気味の悪い感覚だっただろう。前回は楽にやれたはずの格下にここまで粘られるとは。リューとダニエルは特に苛立っていた。自分たちの存在意義が無くなるではないか。
「この間はジャスティスだったから負けたんだ!」
対艦刀には対艦刀を、切り結びは最低限の時間で終わらせて、機体を蹴り飛ばし移動。反対側の敵へ斬りかかり、デスティニーのパワーにものを言わせて体勢を崩す。立て直される前にレールガンで武装を破壊、近づいてくる別機体にもレールガンで牽制。2回目の対艦刀はアロンダイトで切り上げてから、射撃で破壊。
「デスティニーなら、お前らなんかに!」
シンの動きが、より鋭くなる。レールガンを腰にマウント、アロンダイトを両手で握り背部ウイングを展開。出力上昇の後展開されるのは、虹色に輝く翼──ヴォワチュール・リュミエール。思考がクリアに、などとそんな表現では生温い。光の翼を展開したデスティニーは、ブラックナイツの想定を遥かに上回るスピードをもって斬り掛かる。
ビームは幻惑機能と速度で回避し、構えられた盾に対しては五回にも渡る連続攻撃を叩き込み耐久限界まで負荷をかけ切断。見えていないはずの後ろからの対艦刀を難なく回避し、左手を光らせながら腕ごと破壊する。アムロの言う通りだ。
「思考が見えない!」
「こいつ、考えていないのか!」
デスティニーの奮戦を察し、シンの援護へ向かうルナマリア。インパルスのモニターに映る型式番号は同僚のものだった。段々と大きくなるそのMSは、あの時行方不明になったと思っていたアグネスのギャン。
アグネスからしてみれば、懐かしいMSという印象。まさかあの機体を引っ張り出してくるとは思わなかったが、デスティニーが居るというのならパイロットも特定出来る。
「アグネス、なんで?」
「インパルス……まさか、ルナマリア?」
向かい合い、ゆっくりと旋回する二機。
「アグネス、生きてたのね!」
「シュラだけが私の価値を分かってくれた!」
安堵の声を上げるルナマリアが無防備に通信を繋げるが、アグネスの答えは一方的。会話のキャッチボールがピッチング練習になったのかと錯覚するほど、彼女達の会話は噛み合わない。何を言い出すのかと怪訝な顔をするルナマリアだが、ロックオンアラートに対しては体が反射的に動いていた。
シールドを展開し、ギャンの胸部ガトリングを防御する。こちらに攻撃してきたというのなら、おそらく彼女も洗脳されているのか。そう結論づけてルナマリアはエクスカリバーを振り下ろし、ギャンとの鍔迫り合いに持ち込んだ。こうでもしなければ話も出来やしない。跳ねっ返りで距離を置き、アグネスを説得しようと言葉を続けた。
「利用されてるだけよ、なんで分からないの?」
「あんただってコーディネイターでしょ?なんでそっちの味方するの?馬鹿な男の影響で、頭煮えちゃったの?」
訂正、彼女は至って正常だ。頭の中身も含めて。今こんな時であってもまだその話題を続けているのか、とウンザリしたルナマリア。目の敵にされているのかは知らないが、延々と彼氏にちょっかいを掛けられてきた身だ。いい加減呆れもするし、そろそろ実力行使で分からせてやる必要があるかもしれない。その前に一言。
「シンは関係ないでしょ。アグネスこそ、隊長たちに相手にされないからってこんなこと!」
「黙れぇぇぇぇ!」
図星だったらしい。反撃として振るわれたスレイヤーウィップは連結したエクスカリバーを吹き飛ばしていくが、ルナマリアもタダでは終わらない。背中に装備したビームブーメランを投擲し、ウィップとビームアックスを機能不全に至らしめる。会話の内容こそ痴話喧嘩のようなものだが、交わされる応酬はエースらしい高度なもの。一般兵では太刀打ちも出来まい。
『ルナマリア!』
「え、アムロさん!?」
「はぁ?あの人がなんで……」
『ここは俺がやろう、君はブラックナイツへ!思考が読めるとはいえ技量は大したことの無い連中だ、シンを援護してやれ!』
女同士の戦いに割り込むようだが、これも作戦だ。悪く思うなよ、との言葉を飲み込んで、彼はフットペダルに置いた足から力を抜く。変形しビームライフルを放つ機体から聞こえるのは間違いなくアムロの声。一見すればムラサメにも見えるその機体は、ギャンの盾を的確に撃ち抜いてくる。インパルスを庇うように立ち塞がった彼の機体は見覚えのない新型だが、アグネスにとってもうそんな事はどうでもよかった。
「アムロ隊長、生きて……」
「話は後だ。何故君が離反したのかは聞かないでおいてやる。今なら戻れる、帰ってこい」
「隊長……」
「ルナマリア、命令だ」
「了解」
アグネスは喜んだ。ルナマリアではなく、アムロは己を選んだのだ。ソードからフォースに換装するインパルスを撃とうかと思ったが、時間の無駄。むしろ目の前にいる総隊長を相手する方が大切だ。あんなバカで盲目なルナマリアには分からず終いだったのだろうが、彼は間違いなくコーディネイターだ。彼女には確信があった。そうでなければここまでの地位に居られるはずが無い。
アグネスは考える。キラは
「隊長、私……変な感じだったんです。ブラックナイツに操られてるような、心を揺さぶられてたようなそんな感じで……」
「アグネス……」
悲劇のヒロイン。これが彼には刺さるはずだ。キャラクターを演じ、使い分け、相手の男をモノにする。昔からそうだ、続けてきたから慣れている。心を偽ることは出来ない。だから『そうなのだ』と思い込む。アコードのように心を読む相手でも見抜けないほどに、彼女のキャラクター作りは手が込んでいた。
「人を弄ぶのも、そこまでにしておけ」
「え──」
だからこそ、通信に映るアムロの顔がとても冷酷で、こちらを蔑むような視線だったことに驚いた。いや、受け入れられなかった。何故ここまでしたのに彼の心は動かない?アグネスは自問自答を繰り返す。今まで彼に叱られることはあったが、酷い悪印象を植え付けるような事は一切なかった筈。
これまで私がこうすることで喜ばない男は居なかった。私ほどの女だというのに、何故──アグネスの動揺が如実に感じられてアムロは大きくため息。自分の価値、他人の価値、それを勝手に設定して格付けするなど、そんな事ができる人間はこの世界に存在しない。それが彼女の傲慢さの表れであると指摘する者は居なかったのだろうか。
「バカ娘はここで説教してやらなくちゃな、アグネス。お前がやってきたこと全て、それはお前のエゴだよ。独善的で自己中心的な、可哀想なお嬢様?」
「──す」
「フッ」
「殺す!殺してやる!私の価値を理解しようとしない男なんてこの世界に必要ないのよ!アンタを選ぼうとしたのも間違いだったわ!こんなことなら、シュラと一緒に──」
「そういう所だよ、アグネス」
勢いのままビームサーベルで切りかかってくるアグネスに対して、アムロも翼に追加装備されたビームサーベルを抜刀。直情的な攻撃だ、よっぽどプライドが高く他人を認められない性格なのだろう。ここまでこき下ろされて頭に来たのか、その攻撃は今までで一番杜撰な大振りだった。
月光のワルキューレとやらもこの程度か。鼻で笑って、アムロはギャンの右腕を切断した。呆然とするアグネスだが、やった事そのものは非常に単純なもの、回避運動は右へのバレルロールを選択。軋み一つ上げない機体に満足しながら、彼は通り抜けざまにサーベルを振るったのだ。ただその動きが直撃する寸前だったというだけで。
「アンタもコーディネイターだってのに、なんで私の価値がわかんないのよ!どいつもこいつも馬鹿ばっかり!愛するべき人を分からないコーディネイターなんてみんなナチュラルと同じよ!」
「俺はナチュラルだよ、このバカ者!お前のような奴がいるから、人間は分かり合えない!お互いに知ろうとしないから争いが生まれ、戦いが続くんだ!歩み寄るということがどれだけ大切か──!」
「知ったこっちゃないわよ!分かり合うですって?そんなの時間の無駄よ!一々話してばっかりじゃ長ったらしくて欠伸が出るわ、アンタが私を理解すればそれでいいの……あぁっ!」
アムロの動きは軽い。レジェンドのドラグーンはファンネルと違う。やや硬い手応えがあったし、何より機体が重かった。悪くない、むしろ良い機体だとは思うのだが自分にはこういう機体の方が合っている。水を得た魚のように、胸部ガトリングを回避した彼はアグネスを叱りつけながらギャンを蹴り飛ばす。
辛うじて盾で防いだようだが、既に彼女の機体は防戦一方。右腕が無いことはアムロに対する上で重大なハンディになるのだ。大きく体勢を崩しながらも盾を投擲したギャン。ビームを発振しながら接近するそれは、アムロの知らないとある兵器にそっくりだった。
「甘ったれるな!自分が自分がばっかりで、他人のことなんて考えちゃいない!ジュニアスクールのガキじゃないだろうに!変化には痛みが伴う、成長には時間がかかる!それを分からないから、お前は!」
「説教垂れてばっかで、鬱陶しいのよ!恋愛の一つもしたことないくせに!私に偉そうな口聞かないでよね!」
「──そこがお前の限界だ、アグネス」
シールドは撃ち抜かれ、サーベルを持つ右手もなく、苦し紛れのガトリングは背後に回り込まれて意味を成さず、メインカメラも破壊された。最早死に体と言っても過言では無いギャンが動きを止めるまで、アムロの言葉は止まらなかった。
「他人を知ることから始まるんだよ、人は。赤ん坊だってそうだ。誰かを知り、己を知り、成長してこそ恋愛が出来るんだ。人は誰かを変えるなんてことは出来ない。愛されたいと、その価値があると思うのなら君自身が変わらなければならない。アグネス。確かに君は綺麗だが、中身までは磨き上げられなかったんだな」
「なんでよ、私は……赤服で……アカデミーでも……それなのに、なんでアンタが私よりも……」
「……しばらく、頭を冷やしていろ」
スラスターにビームライフルを撃ち込んで破壊し、アムロが機体を変形させて飛び去っていく。衝撃で月面へと落下するギャンのコクピットの中、アグネスは呆然としながらその姿を眺めていた。
「──そうね、そうよね。流れ星なんて、私なんかに捕まえられる物じゃないに決まってるわ」
※こんだけやっても変わるかは分からないってのがアグネスクオリティ。性根を叩き壊して放心状態にしても無理ってどうなってんだよ君。
さらばアグネス。
また次回。
アフターストーリーは
-
欲しい
-
要らない
-
SEED新作書け