そうなるとシホさんも戦ってたんですかねー!
グフに乗ってるのかな、それともザクかな、なんて妄想が捗って止まりませんな。個人的にはザク・ディープアームズ的なワンオフカスタム機に乗ってても良いとは思いますが、果たして。
「今すぐ降伏しろ、ジャガンナート中佐!本国のクーデターも失敗した!無駄に兵を殺すな!」
クサナギに放たれるミサイルを迎撃し、イザークはクーデター派への説得を続けていた。副官たるディアッカは、何も言わない。ただ彼の成長を眩しく思い、それを眺めているだけだ。勿論攻撃されたのならやり返すし、クーデター派に容赦する義理も無いのだが。気難しい上官殿の命令だ、従ってやるのも悪くない。
昔を思えば、随分と変わったものだ。ナチュラルに対してひたすら蔑視を続けては聞く耳も持たなかった一兵士の彼が、今では情報省の中佐殿。なんやかんやで自分も長い付き合いになったものだ。四年前のイザークにこんな姿を見せたならどんな反応をするだろうか。偽物だとか騒ぎ出しそうだ。それだけ幼かったということであり、今の彼が大人になったという証左でもある。
「なぜ旧世界の住人に与する!このままでは、何も変わらんのだ!一部の者が富み、理不尽や非道が専横する世界は!」
旧世界の住人。ジャガンナートはそう称した。アコードの演説に心打たれた、という訳でもあるまい。元々、彼がコーディネイター優生思想に染まっていたことは知っている。オーブの『白い流星』アムロ・レイへの新機体配備に最も反対していたのもこの男だ。厄介なことばかり持ってくる!
イザークは眉間の皺を深くしながら、エンジン部分にビームを叩き込んで機関を停止させる。旗艦はともかくとして、説得している間に被害が拡がっては元も子も無い。今すぐにでも旗艦に突撃して拘束したい気持ちを抑えながら、彼は続けていた。が。
もう我慢の限界だ。
「時代錯誤のバカ者共が!」
「もう無理だイザーク、諦めろ!説得に応じるくらいなら、元々こんなことしねぇだろ!」
「くそぉ!ディアッカ、着いてこい!もう我慢ならん!奴を拘束して法廷に引きずり出してやる!」
「だと思ったよ!」
ミーティアとのドッキングを解除し、デュエルとバスターがジャガンナートの艦へと近づいていく。もちろんタダではやられないのがクーデター派の無駄に高い士気の影響で、接近するデュエル・バスターに対しての迎撃火線が集中する。どこまで無駄な抵抗を続ければ気が済むのか。イザークはビームトマホーク片手に突進してくるザクにアンカーを発射、機体のパワー任せに振り回して別の機体に叩き付ける。その背後から襲い来るグフはディアッカが撃破。キラのようにはいかないのだ。戦場は甘くない。
本国でのクーデター鎮圧には、あの『砂漠の虎』が動いたと聞いている。クソまずいコーヒーだけが記憶に残っているものの、彼の指揮に間違いは無い。クーデター派の素早い鎮圧は彼の手腕も大いにあるだろう、戦後にどんな褒賞が出るのやら。エターナルの護衛に置いてきた部下の事を思いながら、イザークは休暇申請でも出してやろうかと悪態をつく。
「いいんじゃないか?健全な関係を育むには長ぁーいお休みが必要だもんな、中佐殿?」
「ディアッカ貴様ァ……帰ったら覚悟しておけよ、お前にも強制的に休暇を与えてやるからな!」
「おま、ふざけんな!ミリィは関係ねぇだろ!」
「馬鹿者!ただの休暇に決まってるだろうが!一体何を想像しているんだ、この色ボケ野郎!」
「誘導尋問かよ!流石情報省の白服様は考えることが違うってね!──後ろだイザーク!」
「ムラサメ隊だと?……助かった!」
『クーデター首謀者はお任せしますよ!』
「言われずとも……!」
戦いは終わりが見えない。レクイエム発射口に向かいたいオーブ軍とザフト軍のエースはこの場において共闘関係となる。幸いにも首謀者たるジャガンナートもこの宙域に居る、ここで全て終わらせることも出来るが──しかし、手が足りない。膠着状態はまだ続きそうだ。
●
「本艦は敵艦隊を突破し、敵旗艦に突撃する!決戦よ!」
マリューの声で、ミレニアムに緊張が走る。クルーは当然の事ながら、緊張しがちなアーサーが唾を飲んだ。昔からそうだが、ラミアス艦長の戦略には驚かされるばかりだ。今回もとんでもない戦法を取るのだろうが、一体どんなものなのか想像も出来ない。だから余計に緊張してしまうが、それはそれとして彼が気になったのは別の事案──レジェンドのパイロットだ。
アムロはこちらに引き返して来ているが、彼の機体はオーブが新規で組み上げたテスト機体。核動力搭載機とはいえ、その実態はムラサメのテスト機だという。それで彼が満足するのかは別として、現に彼はその機体──Zアストレイを乗りこなしている。かといってパイロットは他に居らず、ならば一体誰が乗るのだろう。まさかこのまま誰も使わないまま、とは思えないが……まさか、コノエ副長が?
いやいや、流石にそんなことは無いだろう。そんな事、自分でもわかっている。二年前に消息不明になった『彼』でも居ない限りは、レジェンドはこのまま倉庫番を続けるだけだ。懸命に作業を続ける整備士たちからの報告では、いつでも発進が可能だという。だが、それはパイロットが居ればの話だ。現状、レジェンドにリソースを割く余裕は無い。
『艦長、私も出撃します。許可を』
「えっ、ラクスさん?」
『これをキラに届けること……それは、私がすべき事なのです。大切な彼を一人、危険な場所で戦わせる訳にはいきませんから。』
「クライン総裁……」
レジェンドの事から目を背けてみたら、今度はコンパス総裁自らが出撃しようとしていた。まさかレジェンドに、とも思ったが違う。ヤマト准将とハインライン、それにレイ一佐が調整を続けていたあれだろう。しかし、なぜ突然こんなことを。あまりの事に艦長も副長も困惑しているではないか。
そうやって考え込むアーサーは、元々ミレニアムの副長だ。リアクションこそ大きいが副長を任せられるだけの能力は備えている。それに比較的取っ付きやすい性格もあって、彼の人気は高い。特に若年層にはコノエ艦長よりも人気があるとかないとか噂が流れている。
そんな彼はラクスの言葉に顔を僅かに強ばらせた。以前、ファウンデーション王国での舞踏会の後で聞いた話だ。アグネスがラクスを引き合いに出して、キラに迫ったと。一部始終は流石に記録されては居なかったが、自分があの時知るところによれば、クライン総裁の言う通り。『自分だけ安全なところに居て、彼氏を危険に送り出す』ような女ではないとか云々。
何を言っているのかとその時は呆れたものだが、クライン総裁もまだ歳若い女性だ。気にするところもあったのだろう。流石に息子を放置して出奔するようになってしまっては困るのだが、今ならば、まだ。アーサーはマリューへの回線を開く。
「でも、それは……」
『お願いします、今回だけは行かせてください!』
「艦長、アーサーです。許可を出していただけませんか。これはきっと……総裁だけの問題じゃないと思うんです。自分が言うのもアレですが、これはプライドの問題もあると考えます」
「アーサー、あなたも?」
「総裁、アルバートです。機体は100%での性能で稼働出来ますが、ドッキングはマニュアルでの微調整が必要です。私が完璧に誘導致しますので、ご安心を」
「だが、仮にメサイア付近まで行くとして一体誰が護衛をすると言うのかな、アルバート」
『それについては、私とアスランさんで!』
『仕方ないか……』
困ったように笑うアスランと、メイリン。ここまでお膳立てされて、なおかつ珍しくアーサーがこちらに意見してきた。きっと彼らにも思うところがあるのだろう。マリューとて、艦内の出来事はある程度把握している。ラクスの今回の行動は、アグネスへの対抗意識からくるものだけだとは思えない。にっこりと笑う彼女がモニタ越しにこちらを見ていた。
こちらの負けだ。操艦の合間に見上げてきたノイマンの顔も苦笑していたし、きっと自分もそうだろう。自分とて彼女の気持ちは分かる。だがパイロットは常に危険と隣り合わせだ。ここで彼女を失っては今後のコンパスの活動に大きな影響が出るだろう。そんな想いもあるが、彼女のキラへの想いは本物だ。僅かに迷って、結局マリューは発進の許可を出す。
『──ただし!きちんと二人で帰ってくること!どんな形であれ、私たちに顔を見せてくださいね!』
『ありがとう!』
「ったく……」
こうと決めた時のラクスは強情だ、許可されなくてもコンパス総裁の地位を利用して無理矢理にでも発進していただろう。それをされるぐらいならば、己が護衛した方がまだ安全だ。呆れたように発進準備を進めるアスランだが、メイリンは何故か楽しそうだ。笑っている場合ではない、と窘めてもこちら側が笑われる番だった。
「いいじゃないですか、見ているだけの方がよっぽど辛いってこともあるんですよ?アスランさんもそうだったじゃないですか、ねぇ?」
「それはそうだが……」
「それなら、仕方ありませんよね?」
にっこりと笑って、メイリンが言う。外堀は完全に埋まったし、仕方あるまい。メイリンが明らかにした敵の機体も気になる。キラの援護に行かねば、二対一……いや、三対一で嬲り殺しにされかねない。行きがてら、ということもある。アスランは腹を括ることにした。
「キャバリアー、テイクオフ!」
「アスラン・ザラ、ズゴック、出る!」
ズゴックとキャバリアーが飛び出して、メサイアへと向かっていく。あっという間に小さくなったその姿を確認し、アビーは次の機体の発進へ移る。左舷カタパルトハッチオープン、進路クリアー。
『ディフェンダー、発進どうぞ!』
「ラクス・クライン、行きます!」
白と金の、戦闘機にも似たシルエットがキャバリアーの後を追って飛翔する。操縦システムそのものはバイクにも似て、アスランの先導に従いラクスが操縦していた。襲いかかる敵機はキャバリアーが露払いし、注意を引いてはその後方からディフェンダーが駆け抜ける。
そしてもう一機。
『行けるかしら』
「勿論です」
『え、えぇぇ!?何で!?』
「お久しぶりです、
『病み上がりと聞いているけれど、あまり無理はしないで。危険だと思ったら直ぐ撤退を』
「ご心配なく。──今の俺は、絶好調ですよ」
白いパイロットスーツに身を包むのは、一年ぶりか。勘が鈍っていないことは、待機中の慣らしで実証済だ。全天周囲モニターへ改装されたコクピットは昔よりも広く感じられるし、機体そのものの出力も上がっているようだ。反応速度やユーザーインターフェースは昔のままで、ほとんどがあの時のままの感覚で扱える。
設定は弄っていないという話だから、アムロは彼自身の設定で戦った訳では無いのだろう。ドラグーンの扱いは彼の方が優れているだろうに、何故なのか。移動するハンガーの衝撃を感じながら、揺れる金の髪を一つにまとめてヘルメットに押し込んだ。長い髪も悪くは無いが、やはりバッサリ切るのも有りかもしれない。そうなったら彼は己に気付いてくれるだろうか。戦後を考えていることに気がついて、笑う。
そうか、これが未来を選んだ結果だということか。あの時、メサイアから死に物狂いで脱出したことも、未知の治験に名乗り出たことも、全てはこの瞬間のためにあったのかもしれない。諦めそうになった時もあったし、自分が生きている意味を見失いそうにもなった。だが自分は今、生きてここにいる。それだけで十分だ。
カタパルトデッキに上がると、懐かしい景色が広がっていた。脇を見れば、MSの名前が表示されていた。SpecII、改修型。大破した機体を修復し、あまつさえ新型装備の実験と称して有事に備えるべく改修するとは。あのオーブの代表がここまで成長する姿を見られたのも、ここまで生きていたからか。帰ったら感謝の意を伝えよう。そう考えて、バイザーを下ろす。
『右舷カタパルト、進路クリアー』
『レジェンド、発進どうぞ!』
「レイ・ザ・バレル、レジェンド!発進する!」
へへっ。
欲望に従っちまったぜ。
また次回。
アフターストーリーは
-
欲しい
-
要らない
-
SEED新作書け