オーブ国防軍の白き流星   作:御簾

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推奨BGM『対決の刻』

今回も独自色やや強めです。
オルフェがおかしくなった理由の一端が明かされたり明かされなかったり。勘のいい読者様なら恐らくは……ね。

さぁ、いよいよ終盤ですよ



その17

 レイの合流によってシンのモチベーションがうなぎ登りした頃合のこと。エクスカリバーを投げ渡したアムロのZアストレイは、その機体スペックを遺憾無く発揮しながら戦場を駆け抜けていた。嫌な予感がするのだ、それも非常に悪い方向の。襲いかかってくるザクを数秒で叩き切りながら、アムロはメサイア墜落跡へと向かう。このまま進んでいては間に合うものも間に合わまい──いや、五分五分といったところか。このままのペースをキープできるのなら、あるいは。

 

「む、あれは……キャバリアー?」

『アムロさん!』

『レイ一佐!』

『アムロ一佐、御機嫌よう』

「ラクス!?何故ここに、しかもそれは……いや待て、アルバートだな?ドッキングするなら……ッ、キラ!先行する、君たちは後から来てくれ!キラが危ない!」

『キラが?……くそっ、俺も行く!』

『アスラン!』

 

 感じた先で、キラの呻く声が伝わってくる。強大な気配に挟まれ、どうすることも出来なくなっていた。減速した機体を一気に加速させ、Gによって押さえつけられる身体を強引に動かしながらアムロは進む。恐らくこれは、ブラックナイツの団長──そして、オルフェ。その隣にあるのはイングリッドだろうか。何故ここまで弱々しくなってしまったのか。舞踏会でのあの輝かしい気配は何処へ?いいや、違う。イングリッドは変わってなどいない。オルフェの気配が違うのだ。感じるこの気配は、何十年も前に感じたきりのもの。宇宙だからこそ感じ取れた、一人の執念とも言うべき思念の残滓と言うべきか。

 

「まさか……キラ、どうか耐えてくれ……!」

 

 

 Zアストレイが加速して向かう先、アムロの推測通りキラは随分と圧倒されていた。気持ちの面で負けているのでは無い、これは恐らく性能差。ただでさえ驚異的な近接戦闘能力のシヴァだけではなく、オルフェの操るドラグーン、そしてMSによる波状攻撃が厄介なのだ。さらにオマケとしてミサイルも放たれている、機体の反応だけではなく極小の接近反応にも気を配らなければならないとは。キラの精神はすり減っていく。

 

 ドラグーンを回避すれば、シヴァが襲いかかる。辛うじてサーベルをやり過ごしても死角からミサイルが着弾し、PS装甲の相転移に負荷をかけてくる。ヴォワチュール・リュミエールを展開したままビームシールドも使いつつ、さらに装甲やフレームへ回す電圧もある。いくら新型の核融合炉とはいえ、出力が足りなくなるまでに時間はあまり残されていない。

 有り体に言って、キラは焦っていた。シュラはどうだっていい、オルフェの尋常ならざる気迫が彼を飲み込もうとしている。運命の相手であるラクスを奪われたことだけではない。それ以上の何かがオルフェに宿っているような気がしてならないのだ。ドス黒い悪意と粘つくような気配は、自分に向けられているものでは無いが──しかし、キラもまた、アムロと同じくその気配を察知している。不利になる戦況と相まって、キラの精神もまた追い込まれつつあった。

 

「なぜお前が邪魔をする!何も出来ない失敗作のお前が!生まれてくるべきではなかったのだ!なのにのうのうと生きて愛されている、そんな資格も無いくせに!目障りな奴、キラ・ヤマト!今すぐ私の前から消えてしまえば良いというのに!」

 

 オルフェから向けられる感情に気圧されたか、フリーダムの動きに精彩が欠け始めた。対艦刀を防ぐはいいものの、入れ替わりでやって来たシヴァに腰部レールガンを切り落とされる。奴らとて、これが脅威と分かっているのだ。だからこそ近接戦に持ち込み、数的優位で押し潰そうと猛攻を仕掛けているのか。

 オルフェの怒りを受け続け、キラは戦いながらアムロの言葉を思い返す。思い詰めるな、深呼吸しろ。その場において、自分がすべきことを選択しろ。迫り来るミサイルを、腰と手持ちのレールガン二門で迎撃しながらキラはゆっくり心を落ち着かせていく。盗み聞きした形になるが、アスランへのアドバイスも役に立つ。認識を広げて、ミサイルの数と方向を大まかに感じ取る。レールガンの威力ならば、一度に数個の撃破も可能なはずだ。

 

「愛されることに──愛されることに、資格なんて必要ない!誰かを好きになることを強制されたりなんかするもんか!愛すると決めた人を愛する、それが僕の選ぶ世界だ!」

「ならばその愛を私に寄越せ!ラクスは私のものになるはずだったのだ!それを貴様が横取りして、あまつさえ自分の物にするなど!盗人猛々しい、貴様さえ居なければ私は!」

『キラ、片方は俺が受け持とう!』

「アムロさん!」

「アムロ・レイ、貴様が!」

 

 迫り来る機影に対して、ドラグーンがあらゆる方向から牙を剥く。瞬時にMS形態へと姿を変えた彼の機体が、足を振り回して急旋回。PS装甲による高い機体剛性を見せつけながら、無傷で火線を潜り抜けて見せた。あまつさえドラグーンを二基撃墜し、その数を半分へと減らす。機体自体はブラックナイツよりも遥かに劣るというのに、この技術。

 オルフェのターゲットが、キラからアムロへと移る。ミサイルの照準は未だにフリーダムなれど、ドラグーンと機体の攻撃はZアストレイへと向けられたのだ。思考が読めるアコードの特性をかなぐり捨て、オルフェはアムロに向けて猛攻撃を仕掛ける。

 

「旧人類でありながら、我々のことを見下して!貴様は一体、どの立場で物事を見ているのだ!コーディネイターをも部下にして、神にでもなったつもりか!時代遅れの野蛮人め、貴様のようなイレギュラーを生かしておく理由は無い!」

「ナチュラルで優れたパイロットが気に入らないから排斥するのか、アコードとかいう支配者は!図に乗るなよ!貴様のやっていることこそ暴君そのものだろうが!より優れた者を残したいと宣りながら、その実優れたナチュラルを認めようとはしない!二律背反か、大した支配者だな貴様は!」

「黙れ、黙れ黙れ、黙れぇ!」

「オルフェ、落ち着いて──」

「イングリッド、お前はフリーダムに火力を集中させろ!余計なことを考えるな!お前は私の……」

「その先は言わせん!」

 

 対艦刀を両手に握りしめ、激情に駆られたオルフェがアムロへと襲いかかる。何故ここまで彼に対して苛立つのか、実はオルフェ自身も理解出来ていない。ただ少し前、計画を実行に移した頃から何かが変わったと自覚だけはしている。本来ならば気にも留めなかったハズのナチュラル一人に、何故こうも固執する?イングリッドも同じだ、彼がここまで怒る理由が分からない。

 赤い粒子を撒き散らしながら、オルフェは機体を全力で駆動させる。その姿にはフリーダムを追い込んでいた時のような流麗さなど無く、どちらかと言えば気に入らないものを排斥しようとする駄々っ子のような印象を受けるお粗末なもの。

 

「ハッキリ言ってやる、アコードとしての存在意義がどうかなど俺には知ったことではない!だがな、人として最も優れているとするのなら、それはお前の後ろに居るイングリッドだ!親から託されたものだけではなく、自分の気持ちに気づきながら苦しんでいる……それに対してお前は何だ!子供のような癇癪を起こして、お前は一体何がしたいと言うんだ!」

「貴様を殺し、計画を……デスティニープランを施行する!キラ・ヤマトも貴様も、目障りな者は消さなくてはならないんだ!それを分かるんだよ!アムロ・レイ!」

「知ったような口を!」

 

 残念ながら、Zアストレイに防御のための装備は備わっていない。元々テスト機であることもさることながら、左手の盾は防御用兵装ではなく可変時の機首となる大切なパーツのひとつだ。これを使うのは最後の最後にしておきたい。

 だから、アムロはムラサメで出来なかったことをやってのける。振り回されるサーベルの太刀筋を読むことで機体の動きを最小限に抑えながら、振り下ろした瞬間を狙って蹴りを叩き込む。両手で武器を持っていても、同時に振ろうが別々で扱おうが彼には関係の無い話なのだ。振り上げた腕を抑え、下段に構えた腕を蹴り飛ばす。その間、ドラグーンが攻撃してくることは無かった。

 

「どうした、ドラグーンの制御がお粗末だぞ。究極のコーディネイター様は一人でドラグーンも扱えないか?大した腕前だな!後ろにイングリッドを乗せながら、シュラと三人がかりでもキラを落としきれないとは!アコードの名前が聞いて呆れる!」

「き、さまぁ──貴様!アムロ・レイ!ナチュラルの分際でここまで私を愚弄してぇ!」

「オルフェ!」

 

──隙を見せたな!

 

「キラ!」

「油断したな!」

「ちぃ!」

 

 ちらりと視線を向けた先では、ミサイルを回避し損ねたフリーダムがフェイズシフトダウンする光景が広がっていた。ウイングも大破し、ドラグーンも残っていない。対応出来るアムロはライフルを失い、オルフェの攻撃を回避し続けることしか出来ない。この機体であっても無理か──彼は自分の衰えに苛立ちながら、フリーダムの前に降り立ったシヴァを見る。

 報告では、あの機体の胸部には短針砲が仕込まれているはずだ。PS装甲が健在だったライジングフリーダムでも大破したのだ。装甲がダウンした今のフリーダムが食らえば絶体絶命、今度こそキラの命は無いだろう。余所見をしたことで注意が逸れ、アムロの機体が蹴り落とされる。勝ち誇ったようにフリーダムへと向き直ったオルフェと、胸部カバーを開いたシュラ。

 

「くそ!」

「終わりだ、フリーダム!」

「キラ──!」

「「アスラン!」」

「くっ……」

 

 岩肌から機体を剥がしたアムロが見たのは、フリーダムの前に立ち塞がり短針砲を受け止めたズゴックの姿だった。かつて敵だったあのMSが、今回は味方となって共に戦う。そんな状況に嬉しさを感じていたのは事実だが、それにしても短針砲で自らを犠牲にするなど。

 重なった声は、キラとアムロ。次々と打ち込まれる針をクロスさせた腕を初めとした装甲で受け止め、アスランはしかし焦るだけで叫ばない。まさか、本当に。最悪が頭をよぎるアムロだったが、ズゴックの機体の割れ目から漏れ出る光を見た。すわ、不安が的中したのかとコンソールに拳を叩きつけ──そして、目を見開いた。

 

 爆発四散し飛び散る破片。その中から勢いよく飛び出して現れたのは、もう一機のMS。アムロもキラも、おかしいとは思っていた。オーブの地下で並んでいたMSの中に、あの機体だけ存在しなかった。失われたということは無いが、アスランはズゴックに乗っている。想定などできなかった。まさかこんな場所──ズゴックの内部から現れるなんて。

 煙の中を突っ切って、現れたMS──インフィニットジャスティスは飛来したバックパックを装備し機体を色付ける。独特な色合いの赤に染められ、リフターも合わせて9本ものビームを発振しながらシヴァへと斬りかかり、大きく後退させる。

 

「キラ、大丈夫か!」

「アスラン……」

『キラ!』

「ラクス!」

「──アスラン!キラを援護するぞ!」

「無論です!」

 

 ジャスティスに守られるような構図で膝を着いた体勢から飛び上がり、フリーダムがバックパックをパージする。何をするつもりかは知らないが、そうされる前にここで落とす。駆け出したシヴァのサーベルはジャスティスが留め、オルフェのMS──カルラというらしい白と金のMSにはZアストレイが対応。目の敵にされていることすら利用して、アムロが注意を引いていく。

 接近するディフェンダーとの合流、合体を邪魔させる訳にはいかない。近寄ってしまえばドラグーンも使えまい。そう判断し、アムロは自ら機体を組み付かせる。逆手に握ったサーベルを振るうも、パワーの差で振りほどかれてドラグーンを展開される。その刹那。

 

「──馬鹿め」

「があ!?」

「ドラグーンが破壊された、一体なぜ!」

「心を読めるんだったか?まぁ、表層程度で読んだ気になっているならお笑い草だが。こうしてドラグーンを失っている訳だから、な!」

「──イングリッド!」

 

 思考が読めるのなら、()()()()()()()()()()()()()()()。本命は反射的、染み付いた身体の動きに任せることで攻撃を予測させない。そもそも読まれるような思考を戦闘中に垂れ流している段階で二流だ。その点シンは非常に優秀なパイロットとも言える。

 アムロがやったのは至ってシンプル。組み付いた段階で、時限信管式のグレネード弾頭を盾からパージしただけだ。オルフェの性格と機体特性をアムロなりに予測した上での行動だったが、まさかこんなに綺麗に引っかかるとは。

 

「ダメ、フリーダムは!」

「──ッ、お前はフリーダムに全火力を集中させろ!私がこいつを──アムロ・レイを落とす!」

「本当にそれでいいとでも?」

「何っ!」

『ドッキングを』

『相対速度プラス1コンマ2、軸線修正プラス3、接続』

『エンゲージ!』

 

 彼らが刃を交えるその上で、ラクスの声が高らかに響く。アルバートの完璧なサポートによって果たされた、ディフェンダーとフリーダムのドッキング。供給されたエネルギーは瞬く間にフリーダムの装甲を色付かせ、放出された粒子によってその姿を照らし出す。

 だがそんな物に気を取られるような状況ではない。アスランはシュラと、アムロはオルフェと交戦中の身だ。ジグラートを操るイングリッドが言われるままにフリーダムへと照準を合わせ、文字通り全ての火力を叩き込む。残ったドラグーンも合わせて、だ。ミサイルの着弾に加え、ビームが次々と直撃してフリーダムの姿が覆われていく。

 

「キラ!」

「くっ……」

「ふ、はははは!見ろ、これがフリーダムの末路だ!時間を稼ごうと努力したのはいいが……貴様らの頑張りすぎだったようだな!徒労とはこの事……何?」

 

 そして、その全貌が明らかになる。





※この世界にシャア・アズナブル、キャスバル・レム・ダイクンは存在していません。アムロさんのように転生している訳でもないのです。

じゃあ何でこんなことに、だって?
いや何これ知らん……こわ……

ではまた。
次回は初っ端からMeteor流しながら行きますか。

アフターストーリーは

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