あの時はムラサメだから負けたんだ、ストライクならムウさんだって!
なんでもないです。
「艦長、用というのは」
「アムロ一佐、わざわざ御足労を」
「気にしないでくれ、この艦の艦長は君だ。気を使われてしまうと、俺はいよいよ立場がなくなってしまう。ただの兵士だよ、俺は」
「なるほど、では……アムロ一佐、君に依頼したいことがある。恐らく君にしか依頼できないから、そのつもりで話を聞いて欲しい」
●
『コンディションレッド発令、コンディションレッド。アフリカ共和国、オルドリン自治区へブルーコスモスと思われる攻撃部隊が侵攻』
コノエ艦長の依頼を受けた次の日のこと。いつものように格納庫へと向かう俺の脚が俄に速くなる。手に持ったタブレットに表示されているのはオルドリン自治区を見下ろす衛星から送られるもの。カナジ市街から進行しているブルーコスモス残党に、ザフトが果敢に防衛戦を繰り広げていた。入手先?聞かないでくれ。ハッキングなんてバレたら始末書じゃ済まない。
「ヤマト隊が発進するか!」
『ハーケン隊は待機だってよ、一佐殿』
「ならそれでいい。最悪の場合俺が出ることも考えたが……いや、そうか。ヤマト准将、俺も出る。物のついでだ、後から合流するから先行してくれ。被害を広げる訳にはいかない」
『レイ一佐!?でも、それは──』
「アムロでいい。アークエンジェルへの異動命令が出ているんだ。どうせ地上に降りるなら、同じタイミングで君たちの援護も出来る今が都合がいい。よろしいかな、コノエ艦長?」
『元よりそのつもりで。ご武運を』
「ああ」
俺もそのつもりだったから、もう既にパイロットスーツに身を包んでいる。白と黒、差し色に赤。搭乗機と同じカラーリングだ。オーブから出向しているということもあり、俺の機体はムラサメ改。可変機は扱いやすいし、俺は嫌いではない。
高級機とはいえ量産機であることから、パーツ供給も安定している。整備する側としては有難いだろう。無理を言って特別品質の高いパーツを回してもらっている訳だし、整備班とオーブには頭が上がらない。張り付いていた整備士に片手を上げて下がらせると、俺はコクピットへと収まった。
『続いてフリーダム、発進どうぞ!』
「おっと、間に合ったか」
『ブリーフィングはよろしいですかな?』
「もうその口調でいいのか。……ああ、ブリーフィングについては問題ない。こちらで全て聞いていた。中隊規模とはいえ、何が出てくるか分からない。気を引き締めていこう」
『キラ・ヤマト、フリーダム行きます!』
カタパルトへとせり上がっていくハンガー、その反対側から飛び出したのは青いMS。前大戦で伝説と謳われたフリーダム、その最新型に当たる機体── STTS-909、ライジングフリーダム。俺の機体とは比べ物にならないハイスペック機体だが、中身の方はまだ迷いがあるらしい。
今回も突っ込んでいくであろう彼の機体がミレニアムから離れるのを見送って、ヤマト隊に遅れること数秒。俺の機体もカタパルトへと固定される。各部チェック、異常なし。バリュートパックは切り離しも出来る。問題は無い。
『続いてムラサメ、発進どうぞ!』
「アムロ・レイ、ムラサメ発進する!」
ぐん、とシートに押し付けられる感覚。いよいよ戦場へと向かうのだと嫌でも思い知らされるこのGに耐えながら、俺は機体のスラスターを全開に持っていく。流石は優秀な整備班だ、この程度なら機体は何も音を立てない。高度が下がってきたところでバリュートパックを展開、大気圏へと突入していく。
断熱圧縮には良い思い出がないが、それはそれ。どこから狙われている訳でもなければ石ころを押し出す必要も無いが、気を抜けば一瞬で消し炭だ。揺れるコクピットの中で、遥か向こうに見えるフリーダムの推進光。レーダーにもしっかり映っているそれを見逃すまいと、各部を調整しながら俺とムラサメは地球へと舞い降りていく。
「作戦は大体把握しているが、果たして……」
『デストロイ!?』
『またこんなものを……!』
先行したヤマト隊の通信を受信。どうやらあの悪魔が出撃しているらしい。嘗てベルリンを焼き払った破壊の化身、デストロイ。いくら俺でも、この機体でデストロイの相手をするのは不可能だ。機体の方が持たないだろう。
だからこそ、俺の役目は遊撃。准将──キラの様子を見ながら部隊の援護だ。役目を終えたバリュートパックを切り離し、脚部の負担をチェック。戦闘に支障は無いが、やはりアブソーバーに負荷をかけることになるのはこのシステムの悪いところだ。
改良型を作ってやろうと心に決めながら、赤熱化したセンサーが元の温度に戻ったことを確認して俺は操縦桿を握り直す。急いでしまったからか、戦場からやや離れた場所に突入してしまった。脚部負荷の理由を察した俺は、すぐさま機体を空へと躍らせた。
●
地獄。シンが見た街は燃え盛り、うねる炎は市民を飲み込み焼いていく。接近するミサイルを撃ち落としながら、近づいてくるダガーにサーベルを一閃。しかしやはり慣れない動きになってしまうのは、シンの心を写しているからだろうか。
ぎこちない動きと共にサーベルを振るい、そして生まれた隙を見逃す敵は居ない。コクピットに鳴り響くロックオンアラートは、シンの意識を研ぎ澄ましていく。それならば盾で何とかなる。そう思った時、地面に突き立てた盾とそれに守られる家族を見た。
『シン、ルナマリア、そのまま市民を守れ。アグネスは敵機を迎撃、撃ち漏らした敵は俺がやる』
「アムロさん!」
『ジャスティスには慣れないようだな、シン』
結果的にシンにビームは放たれず、代わりに天から降り注ぐビームによってダガーは撃ち抜かれて爆散する。見上げたそこから舞い降りるのは、オーブの新型量産機であるムラサメ改。赤いパーソナルマークが特徴的な彼の機体はMSへと変形し、サーベルを抜刀。
バルカンで敵のメインセンサーを的確に潰し、その隙に右腕がダガーを両断する。そこから彼は止まることなく、次の機体へと向かっていく。空ではフリーダムがデストロイとやり合っている。ならば己の役目を果たせ、と自らに言い聞かせるように彼は機体を変形させて空へと躍り出た。
『敵も減っている、無理はするな』
「は、はい!」
自分の機体よりも劣る量産機に乗りながら、しかし彼の動きは鋭く迷いがない。デストロイの攻撃に巻き込まれることはないが、しかし空にはウィンダムが居る。放たれるミサイルを低空飛行で回避して、ムラサメがサーベルを光らせ敵機を切り裂いた。
『アグネス、ルナマリアの援護だ』
『分かってます!』
『ルナマリア、あの程度の敵を相手に射撃を外すな。その分はシンが片付けると思え』
『でも、この状況、じゃ!』
『それを何とかするのがシン、お前だ。キラが信じたお前の実力はそんな物なのか?ジャスティスの力を見せてみろ』
「──ッ、くそぉ!」
だから、自分と比べて悔しくなる。彼はオーブの出身だと聞く。2年前のことを忘れた訳では無いのは彼も同じ。その時彼もオーブ国防軍として戦っていたと聞く。祖国を焼こうとした己にああも背中を任せるなど、どうして──
疑問は尽きない。だが、頼られているのもまた事実。その証拠に彼は振り向かない。後ろにも目をつけているのか、と言わんばかりにこちらへのアドバイスを送ってくるのにも関わらずだ。彼の背中に躍りかかったウィンダムを切り裂いて、己はビームブーメランを投擲。見ると、デストロイは既に無力化された後だった。
「くそっ、出る幕無いじゃん……」
そんな言葉は、誰にも届かない。
●
「粗方片付いたか。准将、アークエンジェルの到着を待って救助活動を始める──何っ!」
戦闘は終了した。撤退していくブルーコスモス残党を眺めながら、俺は機体を地面へと下ろす。大破したジンの歪んだコクピットハッチをこじ開けてやると、中から這い出たパイロットがサムズアップ。どうやら軽傷であるらしいので、彼が仲間に救助されるのを見届けてから別の場所へ。
キラへと通信を繋げようとしたところで、ザフト軍が防衛から一転。後退し体勢を立て直すつもりらしい残党へ、苛烈な攻撃を仕掛けていく。重斬刀に叩き切られるダガーの中から聞こえる声に顔を顰め、俺はムラサメを変形させて空を飛ぶ。
『この戦闘の裏にはミケールが居る!繰り返す、この戦闘の裏にはミケールが居る!奴を見つけて戦場へ引きずり出せ!』
『攻撃を中止してください!この戦場にミケールは居ません!』
「もうやめろ、これ以上の攻撃は無意味だ!……っ、止まれ!そんな機体で何が出来ると言うんだ!」
『オーブの白い流星!?いや、そこを退け!日和見主義の腰抜けに、我らの怒りが理解出来ようか!アイツらは俺の妻を殺したんだ!』
「だからといって、復讐を繰り返すつもりか!お前は!」
掲げたマニピュレーターでジンの腕を受け止める。握られた重斬刀が振り下ろされるのはブルーコスモスではなく自分。コンパスと言えどもこちらに襲いかかられては堪ったものではない。引き抜いたサーベルで脚部を焼き切り無力化する。
「三人はそのまま現状を維持、記録しろっ!再度の攻撃があるかも分からん、油断はするな……っ!」
『アムロ一佐!』
「動くなルナマリア!キラが突っ込んでいる以上、もう既に手遅れとは思うが……コンパスからの攻撃は本来認められるものではない!」
口では部下を制止しながら、俺は遥か前方でジンとダガーを切り刻むフリーダムをカメラで捉えた。鬼神の如き剣さばき、脇目も振らず機体を無力化していく様は強迫観念に駆られているようにも見える。それは戦争を止めることが出来ない自分への怒りなのか、それとも──
「復讐して、何かが変わるものかよ……!」
『なんだ、こいつは!』
「こちらはコンパス所属、アムロ・レイ一佐だ!救助活動中につき、攻撃してくるMSに対しては実力をもって反撃させていただく!」
『そんな言葉で止まれるかぁ!』
舌打ちを一つ、操縦桿のトリガーを引いてビームを二射放ち、ジンの両腕を破壊する。それでも歩みを止めないジンを蹴り飛ばしながら、人間の愚かさに諦めてしまった、奴の言葉を思い出す。いや、諦めていた訳ではないがしかし彼もウンザリしていたんだろう。こうも目の前で暴れ回るジンを見せられてはそう思ってしまうというものだ。
巻き込まれそうになる避難民を機体でカバーして破片から守り、マニピュレーターに包んでから安全な場所へと避難させる。手を振ってくる子供が居た。安堵で涙を流す母親が居た。返事としてこちらも片腕を掲げ、そして俺は飛び出した。
「ミケール大佐め、一体何が目的だ」
『アムロ一佐、避難民は私たちが!』
「ならこの地域は任せるぞ。一体どこに生存者が潜んでいるか分からない、MSは戦い以外にも使えるということを証明するんだ」
『了解!』
「アグネス、シン、お前たちもだ。特にジャスティスは昔からセンサー系が強化されている。一人でも多くの市民を救助し、その命を救うんだ。いいな?」
『りょーかいです』
『分かり、ました』
「アグネス、お前には後で話がある」
『え゛っ』
戻ってみると、倒れ伏すMS達の真ん中にフリーダムが居る。空を駆け巡っていたシールドを受け取り、これ以上の戦闘は無意味だと改めて知らしめるようにカメラアイを光らせた。
「キラ、一度休め。ここの指揮は俺が引き継ごう。隊を連れてアークエンジェルに先行して報告を頼みたい。三人には今回の一連の流れを記録させてある、それも併せてな」
『はぁっ、はぁっ……はい、分かり、ました』
「落ち着け、深呼吸しろ。呼吸が浅くなればそれだけ視界も狭くなる。まずは休息を取ることも必要だからな、無理はするな」
『はい……すみません』
そう言って空へと舞い上がるフリーダム。やはり彼の迷いのせいだろうか、その翼は
※この世界線のアムロさんはザフトで言うと赤服級です
感想も評価もありがとうございます。
ラクスの手料理ぐらいの量があれば完結まで行けるかもなぁチラッチラッ
まぁそんな冗談は置いておいて、宜しくお願いします。
モチベになります。
良くも悪くもガンダムSEEDシリーズのテイストを
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出して欲しい
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出さなくて良い
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モルゲンレーテでムウ・ラ・フラガ