そんな頃合です。当然ながら執筆BGMは『自由を賭けた決戦』で。
本当に、感想欄の指摘や誤字訂正には感謝しっぱなしです。ありがとうございます。皆様の反応と鋭いご指摘のおかげでここまで走ってこられました。
では、どうぞ。
「私の子供たちが!」
グルヴェイグに座すアウラの、悲痛な叫びが木霊する。キラ・ヤマトでもない、ただのコーディネイター共に己の作り出したアコードが負けるだと?そんなことは有り得ない、だが現実はそう告げていた。まるで数日前の焼き直し、認められない己に対して現実は非情だった。自分の半生、いやもっと……ほぼアウラの全てと言ってもいいアコードたちが、こうも容易く撃破されるなど。
まるで自分の研究が無意味だと、そう見せつけられているかに思える。なぜこうも上手くいかない、なぜ、なぜだ?疑念は頭の中を渦巻いて、彼女の視界を狭めていく。高い金を注ぎ込み、パトロンを集めるためのアンチエイジングの研究でこのような姿になってまで彼らを作り出したのに。
「えぇい、オーブもプラントも、焼き払ってやる!!」
そう叫ぶアウラに向けて突進していくのはミレニアム。マリューの号令で放たれたタンホイザーは邪魔する艦を焼き払い、その進路に残骸だけを残す。もはや邪魔するものは何も無い、見通しの良くなった進路を駆け抜けて、ミレニアムが突き進む。
「今よ!両舷全速!」
「敵艦、主砲射程!ブラボーマーク31から65ッ!」
「目標、敵旗艦!ぶつけてでも落とす!」
が、まだ往生際の悪い奴も居るようだ。艦橋に響く接近警報、振り返ったマリューが見たのは、ミレニアムへ向けて特攻を仕掛けてくるザフト艦。クーデター派の首魁、ジャガンナートの艦だ。そうまでしてでも新しい世界を作りたいか!デスティニープランなど、行き着く先は見えているというのに!
だが、既に近づかれすぎた。ここから迎撃したとて、ミレニアムにぶつかることは確実だろう。ノイマンが進路を変更しようとしてみるが、もう遅い。撃ち込まれるビームにミレニアムがその船体を揺らす。
「忘れはせんぞ……死者の流した血を、恨みを!忘れることなど!」
『ミレニアムはやらせん!』
「アムロ一佐!?ダメよ、一機じゃ!」
このままでは直撃コース、だがそうは行かない。やらせるものか、そう叫びながら飛来したZアストレイが艦首へ取り付き、進路を変更させんと抵抗する。当然、MS一機と艦艇の推力には比べ物にならない差がある。いくら高性能とはいえ、アムロ一人でどうにかなるようなものではない。
「忘れてねぇよ……」
が、それは推進系が健在の時に限る。ジャガンナートの声に反応し、エンジンを破壊していくのはディアッカのバスター。四条の光とミサイルが直撃し、艦の機動力が次々と死んでいく。押し返す抵抗は弱々しいが、まだ足りない。アムロがこちらに向けられた砲を見て死を感じるが──
「だからこそ、こんな事はもう止めねばならんのだ」
噛み締めるように、イザーク。ミレニアムを背にして、守るように。大きく振りかぶったデュエルの右腕から発射されたランサーダートが、ジャガンナート諸共艦橋を破壊して沈黙させる。
そうだ、忘れることなど出来るものか。ニコルの死は、未だ彼らの脳裏に焼き付いて消えることなどない。それを為したキラ・ヤマトに思うところが無い筈がない。叶うことならこの手で殺してやりたいとも思った。だが、あれは戦争だった。死ぬ覚悟をもって戦っているはずだった。
飲み込んで、前に進むことしか出来ないのだ。過去は変えられない。未来は分からない。今を生きること、それこそが人間に与えられた唯一の権利なのだ。未来が分かってしまうのなら、生きる意味が無くなってしまう。もがき、苦しみ、それでも一歩踏み出すのが人間なのだから。
「ぐ、ぅ──!」
『アムロ一佐!無理です!下がって!』
「いいや、そんなことはない!無理なんてことは有り得ない!俺はあの時、人の可能性を見た!あの想いを忘れることなど、出来るものかよ!Zは──俺は!」
叫ぶ。押し返されていることは分かっているが、それでも。近づいてくるミレニアムの反応に諦めそうになるが、その時だった。操縦桿を握る両手に、強ばった肩に、背中に、誰かの手が添えられる。とても弱々しくて、直ぐに消えてしまいそうなものだけれど。
「アムロ一佐──」
ほんの一瞬だけ、彼の機体が虹に光る。波及していく鼓動はわずかに戦場を覆って消えていくが、その光は慣性のまま流れていく艦艇を押し出し方向を変える。到底一機のMSでは出来ないだろうに、どうして。アルバートが目を輝かせているが、それはそれ。結果としてミレニアムへの直撃は回避された。飛び去っていくミレニアム、その姿をライトニングバスターとデュエルブリッツが見送っていた。
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また、こちらでも。月面で繰り広げられる超高速での近接戦闘は、ほぼ互角の展開を見せていた。互いに武装は同じ。両手、両足、背中のビームを直撃せぬように回避、迎撃しながらの応酬。ブラックナイツ団長、シュラ・サーペンタイン。やはり強敵、甘くはない。
「お前は強いな、アスラン・ザラ」
「くっ……」
「だが、やはり俺の敵ではない。勝つことが俺に与えられた役目……それが俺の存在する意味だ!」
このままでは埒が明かない。互いにそう判断し、次の一撃で決着をつけんと向かい合う。シュラの戦意は高い、アスランですら気圧されている。この世界で最も強いであろうパイロットを前にして、シュラは高揚していた。アスラン・ザラ、そしてジャスティス。奴らを撃破し討ち取ることで、自身の存在価値はより高まる。役目を果たし、そして……
そして?ふと、思い至った。だがそれは戦いに無用な思考。邪念が交じると、こちらが負ける。今この瞬間こそ、自身が恋焦がれ待ち望んだ戦いなのだ。キラ・ヤマトでは物足りず、あの奇っ怪な機体のアスラン・ザラでも足りない。彼がジャスティスに乗り、真っ向から戦うこと。それがシュラの望みであった。
「無駄だ!思考を閉ざすことはできん!ん?」
相手の思考は全て読んでいる、次にどの武器がどの方向から、どれほどの勢いでやってくるのかが全て理解出来ている。後はそれを迎撃し、反撃すれば自ずと決着は着く。奴は、自分たちの力に気づいている。思考を読まれているのなら、読めないように閉ざすだと?
馬鹿な抵抗だ、そんなことが出来る者はいない。誰であっても、思考することを止めることはできない。そんなことが出来るのなら、それは野生動物か何かだろう。思考し、動く。人間がそう創られている以上、アコードに勝つことは無い。一部から反証が飛んできそうな根拠と共に、シュラは目を閉じたらしいアスランの思考を読む──が。
──カガリ!
伝わってきたのはオーブ国家元首のあられもない姿だった。シュラに対してではない、恐らくこれはアスランに対して、全裸でキスを迫ってきていた。彼女の艶かしい肉体と、艶のある唇が向けられている。近づくと共に漂う香りまで緻密に再現されていた。この香りは一体……?
当然、シュラに女性経験は一切ない。あの日、アグネスと踊ったことはあれどそこ止まり。手を繋いだ程度、ハイスクールの恋愛未満の関係性しか経験したことのない彼にとって、アスランから伝わった妄想は生々しく刺激が強すぎた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!貴様ぁ、し、神聖な戦いの場で……何という、何というハレンチな妄想をッ!仮にも相手はオーブ国家元首だろう!」
「──フッ」
──見えた!
動揺は隠せないが、操縦技術には何の影響も与えない。怒りに任せて突進するシュラは、しかしアスランの次の行動を読んでいた。右への回避。それならば十分に対応出来る、先程の妄想でこちらのペースを乱すつもりだったか。その程度の小手先でこちらに勝とうなどと、随分と侮られたものだ!
が、勝ちを確信したシュラの一撃は軽々と回避される。左の一撃は空を切るに留まったのだ。再び動揺するシュラに対して、右に握っていたサーベルを左にくるりと移し、ジャスティスは反対方向へと飛ぶ。がら空きになったシヴァの背中には、至近距離からのレールガンが放たれる。
「何っ──ぐっ!馬鹿な、何故だ!」
「本当に使えないな」
右の腕とウイングを失い、衝撃にて叩きつけられるシヴァ。そのコクピットの中でジャスティスを睨むシュラは、また再び嘲るような見下すような、アスランの思考を読み取った。だがそんなことは些細な問題、本当に必要なのはなぜ奴が回避出来たのか──
読み取っていく思考の中で、アスランがコクピットの機器を操作しているのが感じ取れた。操作の切り替え、だと?ジャスティスの背後に回り込むユニットと、彼の操作。それらを統合して至った結論は。
「リモート操作か!」
レールガンを投げ捨て、ビームサーベルを握り直すジャスティス。そして背後に漂うユニットの、さらに向こう。月から遠く離れたその場所の名前は地球であり、オーブ。ムラサメに護衛されたキャバリアーの中、ストライクルージュのコクピットに座るカガリが聞こえてくる通信に首を傾げた。
破廉恥な妄想?何の話をしているのだ、この相手は。立ち上がって飛び込んでくる機影に対し、アスランへと操作を返したカガリは思い至る。そうだ、アコードはアスランの思考が読めるのだ。リモート操作へ切り替える隙を作る必要があったとはいえ、まさかあの男は知らない相手に自分を使ったエロ妄想をぶつけたというのか!?
「アスラン……帰ってきたら覚悟しろよ!」
「卑怯者めがぁぁ!」
怒りに任せ、シュラがその名のごとく切りかかる。右腕を失ったとは思えないほどの凄まじい攻撃は、損傷のないアスランですら防戦一方になるほど。脚部ビームサーベルを使った絶え間ない連撃に圧され、大きな隙を晒すジャスティス。蹴り上げられるサーベルと振り下ろすサーベル、僅かに早かったシヴァがジャスティスの右腕を切り飛ばし、シュラが勝利を確信する。
「やはり俺の方が上だ!」
「強さは力じゃない!生きる意志だ!」
勝ち誇ったように叫ぶシュラに対して、アスランはそれを否定する。人間の強さとは、ただ戦う力で決められるものではない。戦う力だけならば強い者はごまんといるだろう。アコードだけでなくブーステッドマンやエクステンデッド、果てにはオーブの五大氏長の中にも居る。ましてやそれだけが存在理由になる訳もない。
だがアスランの知る限り、強い者とは意志の強い者。未来を願い、その為に戦う者こそが真に強者たりえるのだ。キラや、ラクス。それにカガリも。皆それぞれに意志がある。強さがある。ただ戦うためだけに生み出され、その存在理由に疑問を持たない者と比べるなど──彼らに対する冒涜だ!
「何、だとぉ──!」
アスランの気迫は、シュラをも凌駕し圧倒する。シヴァの左腕が向けられるよりも早く、ジャスティスの頭部が輝いた。驚いたシュラが見たのは、頭頂部から長大なビームサーベルを発振し振り下ろすジャスティスの姿だった。まさか、この最後に隠し武器だと!
「お、俺が──負ける──!」
肩口から両断されていくシヴァのコクピットで、シュラはそれでも現実を認めようとはしなかった。最後の最後まで、彼は戦いにのみ生きたのだ。最大出力にて振るわれた頭部ビームサーベルはシヴァに止めを刺し、ブラックナイツの最後の一人を討ち取った。
過負荷に耐えきれずアラートの鳴り響くコクピット。それでもアスランは飛来したキャバリアーへと飛び乗って、レクイエムへと向かっていく。シュラのことは残念とは思わない。彼はきっと、『そうあれかし』と創られたのだ。歪み切った思想の下生み出されたアコードの中でも、ただ一人並ぶ者が居なかった──戦いより他に寄る辺のなかった、寂しい戦士。
「違う出会いがあったのなら、君も……」
『アスランさん……』
「彼らもまた、デスティニープランに翻弄された命のひとつなんだ。メイリン、行こう。まだ戦いは終わっていないんだから」
思うところが、無い訳では無い。ノイズの走るメインカメラから、センサーをキャバリアーへと同期させてレクイエムへ。キラのことは、振り返らない。オルフェの機体は確かに強い。だが、自分たちが繋いできた想いが彼を守るだろう。胸元の守り石のように。
「負けるなよ、キラ!」
『彼なら大丈夫だ。今度こそ、しっかりと決着をつけられるさ。負けるハズはない、なぜなら彼は──』
そう願いながら、アスランとメイリンは戦場へと舞い戻っていく。その途中、並んできたアムロは笑っていた。懐かしいものを見たかのような、少し照れたようなそんな顔だった。
『彼らには愛があるからな。誰かを大切に想う気持ちが負けるはずなどない。人の想いは、どんな困難だって跳ね除けられる力があるんだから』
光芒の向こう側、とてもとても遠い場所を眺めながら呟いた。終盤へと向かっていく戦いに、今度こそ終止符を打とう。
※Zアストレイにサイコフレームは搭載していません。あの機体は純粋純正なC.E製MSです。なんでこんな事になったかって?分かんないですね……
エロ妄想の描写はキツイ。
温度差で風邪ひきそうです。もうひいてたか。
本当に謎技術、遠隔操作。超超距離のタイムラグなし通信なんて、一体どうやってやるのやら。流石は謎技術超大国、オーブ。
次回、最終回!多分!なるかな!
アフターストーリーは
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欲しい
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要らない
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SEED新作書け