感想、ありがとうございます。
全て目を通しております。
私がイメージする『アムロ・レイ』が皆様に伝えられるか
心配だ……けれど、それよりもずっと(この後の展開が)楽しみです
「さて……この被害、どうするべきか」
『アムロ一佐!』
「来たか。自治区の守備軍は瓦礫の撤去中だ。行方不明者が多い、何時どこから現れるとも分からないから注意しろ。センサーの感度は常に最大、特に生体反応については大小問わずに報告、いいな?」
『了解!』
返事と共に作業に移るムラサメ隊を見送って、シートに深く身を沈めヘルメットを脱いで息を吐く。俺も流石に疲労を隠しきれない。想定よりも長い時間の拘束だ、妥当と言えば妥当だろうか。少なくとも楽ではないことは確かだ。事後処理までこちらが担当しているのだから。
そうしてコクピットでほんの僅かな休息を取っていると、レーダーが接近警報を鳴らす。確認すると、アークエンジェルが近くまで迫っていたようだ。これに気づかないとは相当だな、と自嘲しながら本来の目的を果たすべく回線をアクティブに。
「アークエンジェル、マリュー・ラミアス艦長、聞こえるか。こちらはアムロ・レイ一佐。ミレニアム、アレクセイ・コノエ艦長からの命を受け、貴艦への異動となった。データを送るので確認されたし」
『アムロ・レイ一佐、確認しました。アークエンジェルへの搭乗も許可しますので、一度帰艦してください。機体の各種補給を行いますし、艦長への報告もお願いします』
「助かる」
●
「改めて、アムロ・レイ一佐。本日付でアークエンジェルへ異動となりました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、アムロ一佐。早速報告を……といきたいのだけれど、その前に一休みしてきては?早朝からの出撃でお疲れでしょう。ヤマト准将も今は一息ついているはずです」
「有難う、ラミアス艦長。それではお言葉に甘えさせてもらおうかな。天使湯も久々だ、文字通り羽を伸ばさせていただくよ」
にっこりと笑いながら敬礼を返すアムロ一佐に返礼し、マリューは再び艦長席に座り直す。コノエ艦長から連絡が来た時は何事かと思ったが、まさか彼をアークエンジェル所属に変更するとは。受け取ったデータの中にはミレニアム内での彼の評価が記載されていたが、やはり彼の評価は高い。
アムロはコミュニケーション、操縦技術、また整備関連知識まで幅広く備えている。あの偏屈なアルバート・ハインラインですらも彼には心を許していると専らの噂だ。当の本人が手隙に作ったマグネット・アンカー(胸部装着型)に謎の関心を示したところからアルバートとの関わりが始まったとか。
「C.E.45年にオーブで生まれる……」
読み上げるデータに嘘は無い。ターミナルからも太鼓判を押されているし、アスランも彼には謎の信頼を寄せている。というのも、ファーストコンタクトで襲いかかったアスランがアムロに一方的にぶん投げられた(比喩表現に在らず)からなのだが。
「オーブ国防軍入隊は4年前ですって?」
初耳だった。オーブ国防軍出身とは聞いていたし、マリューも何度か話したことはある。が、まさかあの年とは思わなかった。表示されている入隊理由は『そうするべきと思ったから』。随分とアバウトだが、国を守るという想いの下で入隊したのだろう。
その後の彼はオーブ国防軍のMSパイロットやメカニックとして頭角を現し、今では教導隊や整備士として名を馳せているとか。確かに名前は聞いていた。アムロ・レイ。彼の搭乗する機体は極めて特殊なマニューバを発揮し、その姿はまるで『白い流星』のようだったと。
「そんなビッグネームがこの艦に居るなんて……」
「何の話だ?」
「アムロ一佐の事よ」
「ほう、彼がねぇ……って、ナチュラルだと?」
「そうよ、それが何か?」
入室してきた恋人にデータを見せると、彼──ムウ・ラ・フラガは目を見開いた。経歴や技能としての部分に驚いた訳ではなく、彼がナチュラルであることが信じられないらしい。陽電子砲を二度も防いで生還したエンデュミオンの鷹も大概だと思う。
「アイツ、人の気配やら感情やらを察知するのが異常に上手いんだよ。なんでか分かんないが、それにしたってナチュラルは無いだろう。この前なんかシミュレータで、後ろ向きにライフル構えられて負けたんだぜ?もうどうなってんだよ未来予知か?」
「貴方だってそうでしょうに」
「でもなぁ」
一方その頃、格納庫。
「あの、アムロ一佐の機体なんですけど関節の消耗がとんでもない事になってます。整備記録では昨日完全整備したはずなのに、このペースだと次の出撃ではフレームから取り替えた方が早いレベルですよ?」
「あの人はいつもそうだから気にすんな。むしろなんでムラサメ改でここまでやれるのか不思議なくらいだ。OSがコーディネイターと同じものに換装されてるから、だけじゃ理由にならんぞ」
「マードックさん」
声をかけてきたキラに片手を上げつつ、マードックはタブレットから視線を外さない。整備士の言う通り、アムロのムラサメ改は次回出撃後にオーバーホールする必要がありそうだ。ムウとは違い、アムロの場合は容赦なく機体を振り回しながら限界以上の性能を引き出してくる。データを取るような機体ならいざ知らず、正式量産機でそんなことをやられては整備士が悲鳴をあげてしまう。
「うわぁ!?肩のアクチュエータが死んでる!」
「回路が消し炭だ!よく帰ってこられたなこれ!」
「……まぁ、うん。理由にはならないだけで現実は襲いかかってくるってことだな。いっそアムロ一佐に新型を渡して欲しいくらいなんだが」
「オーブの中でも、あの人の挙動についていけるMSなんてほとんど無いと思いますよ。M1タイプのプロト機ならもしかすると追従できるかもしれませんが、ストライクじゃもう無理でしょうね」
「坊主にそう言われるならストライクも形なしだぁな。あんな傑作機など居ないだろうに……おっと、今は准将閣下だったか」
おどけたように目を瞑り、マードックがキラにタブレットを手渡した。宇宙へ帰還する手順はいつも通りで、出立は明日。まだゆっくり休めそうだ。天使湯を勧められるもキラは固辞、頑なに整備に加わろうとして無理やりムウに引きずられていくのであった。
●
「キラにムウ、それにシン……コンパスの男パイロットが目白押しと言ったところだな?」
「毎度毎度、いつもの事ながらなんでお前は分かるんだよ……まぁ正解だ。ほら、なんでそんな所に突っ立ってんだ行くぞ」
「うぇっ」
「はい」
背中を押されて歩いているのはシンとキラだろう。湯に浸かりながらそう推測して、俺は体の力を抜いた。生き返る、とはこの事だろうか。最新式らしいミレニアムも良いが、アークエンジェルにも思い入れはある。特に温泉や食堂など、極東式の文化を取り入れているのが素晴らしい。
アークエンジェルとの記憶を掘り起こしている俺だったが、気づけば全員が湯船に浸かっていた。慣れていないであろうシンですら息を吐く、絶妙な温度調整。これは拘っている奴がいるな。何人かの顔を思い浮かべていると、水音に紛れてシンが口を開いた。内容は想像がつく。
「あの……アムロさんって」
「オーブ生まれ、オーブ育ちのナチュラルだ。当然、オーブ防衛戦にも参加していたよ。ムラサメでよく生きて帰ってこられたもんだ」
「よく言うぜ、アムロ隊はオーブ国防軍の中でも一番のエースだって専らの噂だぞ?あの時だってジブリールの存在にいち早く気づいたのはお前じゃないか」
「ただの偶然だよ、大したことじゃない。それに、奴を逃がしてしまったのは俺たちのミスだ」
シンと俺には奇妙な縁がある。始まりはC.E.71年からだ。あの時、トダカ一佐……今は海将か?に彼を預けたことから続いているのだが、まさか2年後にパイロットになっているとは思わなかった。連絡を取りあっていなければ分からなかったよ。
だから、俺は彼の機体から逃げた。操縦技術として見るなら彼に勝てただろうが、機体性能が段違いすぎたんだ。ザフトの新型ワンオフ機にオーブの量産機程度が勝てるわけも無い。まぁ、結果として俺たちがジブリールの存在を感知する理由にも繋がったから何とも皮肉な話だ。
「あの時、お互いにお互いの所属を知らなかったのは悲しいすれ違いだったな。まさかシンに殺されかけるとは思わなかった。」
「それは、その……あの時は俺も必死で」
「分かっているさ。お前が置かれていた状況も、取り巻く環境も、お前にとっては全てが厳しいものだっただろう。トダカ海将は……いや、あの人もあの人だ。退艦しろと言うのに残るからああなる」
「──俺が殺した、俺の恩人ですよね」
そうだ。言葉にしなくとも、首を動かせば返事になる。話は既に変わっており、オーブを守る戦いでは無いが、あの時俺もタケミカヅチに居た。襲いかかってくるインパルスの戦いぶりに気圧されたのは事実だ。そのパイロットがシンでなければ、という言葉が抜けているが。
「戦後だったか、俺たちが敵同士だったと知ったのは。あの時の君の憔悴は目も当てられない程だった」
「はい……」
「俺のせいだな。連絡は出来たのに、忙しさにかまけてそれから逃げていた。あの人の死を伝えておくべきか、それとも伝えないべきか。多感な時期の君にこれ以上ストレスを与えたくはなかったんだが」
「まぁ、もっと早くに聞きたかったっていう気持ちはありますけど……でも2年経ってますから。あの時……オーブでアムロさんに言われた通りです」
「『過去も未来も、俺達には変えられない。変えられるのは今、この瞬間だけだ』……あれ、本当にそういう意味で言ったのか?実体験とかじゃないよな」
ムウめ、時々鋭いことを言う。事実でもあり嘘でもあるが、それへの返事は肩をすくめることにする。俺に出来るのは特段難しいことじゃない。人の話を聞き、感情を読み取り、そして俺の考えを述べる。たったこれだけだ。案外、コミュニケーションは難しい。
「ともあれ、オーブから来ている理由だろう?シンが聞きたかったのは。それなら答えられるぞ──ミレニアムに乗るためだ。ザフトの開発した新型戦艦に乗る機会なんて今後二度とないかもしれないんだぞ、逃す手は無い」
「……アムロ一佐は、強いんですね」
「強くないさ。それを言うなら、キラの方がずっと強い。前が見えなくても、自分だけが戦える時でも、逃げずに戦い続けたんだからな」
「隊長……俺、やっぱり隊長みたいに!」
「お前はもう少し自信を持てって。ジャスティス任されてる理由、分かってないわけじゃないんだろ?な、キラ?」
俺とムウで言い切った。少し語調が強くなってしまったが、そんなことを気にする必要などない。本当に必要なのはシンとキラのメンタルケアだろう。特にその2人は未だに前大戦からの蟠りを引きずっている。
「俺だって悩むし、迷う。ただその場その場で、本当に自分が為すべきことを選んでいるだけだ。だから本来、変えられない過去を思い返すなんて必要ないんだが……まぁ、君たちの為にもなる」
「僕、たちの?」
「要するに、そんなに難しく考えなくてもいいってことだ。それより、他の奴がーとか考えてる余裕あんのか?自分のことなんかろくすっぽ管理できやしないのに、総裁やルナマリアの事を考えるなんてよ」
「「ギクッ」」
図星か。
「はぁ……君たちはまだ若いんだ。悩んで、誰かと話して、迷って答えを得ることだって出来るはずなんだから。な?だからまずは自分の想い人と腹を割って話してみろ」
「えっと、ラクスは……その、えっと」
「ルナは関係無いじゃないですか!」
「ほー、そうだったのか。てっきり二人とも脈ナシなのかと思ってたぜ。んで、どこまで進んでるんだ?俺とマリューには及ばないだろうがな!」
「ムウ、お前は先に出ていろ」
このスケベオヤジをこの空間に置いておくとロクなことになりそうにない。じろりと睨みつけてやると、軽く笑って出ていった。アイツなりに空気を和まそうとしたのだろう。視線を戻せば、20にもならない少年たちは顔を真っ赤にして俯いていた。
こういう時は年齢相応の反応を見せるのだな。どんな妄想をしているのかは知らないが、この反応を見るにそこまで深い関係には至っていないのだろう。特にシンとルナマリアの関係性は共依存に近かった。それが健全な関係になれるのだろうか。天井を見上げ、ふと気が付いたから呼びかけてみた。
「ルナマリアはどう思う?」
『へぶぁ!?』
「え、ルナ!?」
「ははは、気づかないとでも思ったのか?……キラもシンも、ルナマリアも。君たちはまだ子供なんだ。悩んでいることがあるのなら俺たちに相談してくれ。俺たちはそんなに頼りないか?」
笑いかけてやるが、キラの顔は晴れない。
根の深い問題になっていそうな予感がする。
※アムロだって冗談を言う
次回はちゃんと時系列進めます。進めたいです(願望)
皆さんの反応が楽しいので、是非感想に。
今回はビミョーな内容ですが、メンタルケアもしっかりできる大人なアムロな回でございました。
待て次回
良くも悪くもガンダムSEEDシリーズのテイストを
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出して欲しい
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出さなくて良い
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モルゲンレーテでムウ・ラ・フラガ