オーブ国防軍の白き流星   作:御簾

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さて、今回は賛否が分かれる回だと自覚しています。
が、全て承知の上で投稿させて頂きます。
これは僕が作り出した物語ですから。

貴方の解釈があるのなら、貴方にも是非書いて頂きたい。この設定を使い回して頂いて構いません。この物語は、『アムロ・レイ』という1人のMSパイロットが生み出した歴史のうねり。その中で生まれ出た有り得ざる可能性なのです。

それはそれとして、アムロ一佐はズゴックのこと見てないんですよね。対面した時にどんな反応してくれるんでしょうか。誰が設計したのかも気になるところです。



その8

「……ン、ここは」

 

 目が覚めると、そこには知らない天井が広がっていた……とはいかなかった。皮肉にもここは見慣れたオーブの病院、のはずだ。天井や周囲の気配はオーブだと告げているし、間違いは無いだろう。だがなぜ俺はここに居る?あの時ミサイルを防いでから、俺の機体は為す術なく撃墜されたはずだというのに。

 

「無茶をさせすぎたか……済まない」

 

 最後の最後まで戦い抜いてくれたムラサメに感謝を。ブラックナイツとの戦いで力みすぎて、別の機体のように扱ってしまうとは。多かれ少なかれ、奴らの気配に充てられていたのだろうか。それとも俺が衰えているのか……前者だと思いたいが、まさかな。

 

「今は……何時だ」

 

 すっかり意識を失って今まで眠り続けていたようだ。なんとか時間を確認できるようなものはあるだろうか。部屋を見回せば、そこにはシンプルな電子時計が壁掛けされていた。示す時間は差し込む陽の光と共に早朝を示している。身体はなんとか動きそうだ。早く俺の生存を知らせなければ。

 

「おや、起きたかね」

「────ッ!」

「経過は良好、といったところか。名前や記憶に混乱があるなら、早めに教えて欲しい。小さな見落としが大きなミスを呼ぶのだから」

「ああ、特に異常は、無い」

「それは良かった」

 

 腕に力を込め、身を起こしたところで病室の扉が開く。聞こえた声に俺は身体を硬直させた。二度、その声は聞いている。一度目は宿命のライバルとして。そして二度目は、この国を撃たんとする陰謀の全ての元凶として。忘れるはずなどない。忘れられるものか。

 

 白衣に身を包み、短い金髪に眼鏡を掛けた壮年の男は俺の反応を見て満足気にやって来た。後ろに控える看護師には下がるよう指示して、彼はベッドサイドの椅子へ腰掛ける。その顔には今までとは違うような、どこか迷いのある表情があった。

 

「さて……どこから話したものかな、アムロ・レイ。君()がここまでやって来たことか、それとも──私が誰かに似ていることか」

「ギルバート・デュランダル……」

「はて、それはプラントの議長ではなかったかな?私には、エドワウ・マスという名前がある。仮に私が誰かに似ているとするなら、それは他人の空似と言うべきではないだろうか」

「そうかい」

 

 力を抜いて、ベッドへ倒れ込む。彼の顔を見て一気に疲れてしまった。まさかあれだけ苦労して倒したはずの黒幕が、こうやって生きて病院で勤務しているとは。キラやアスランが見たらどんな反応をするのか、堪ったものじゃない。ろくでもないことが起きそうだ。

 

 しかし、向かい合う彼の顔に嘗てほどの余裕は無い。むしろどこか焦っているような……自分を責めているような、そんな気配がある。いくつかの問診の後異常なしと判断され、そして彼は深いため息をひとつ。ややぎこちない動きの右腕でカルテをベッドサイドへ置くとこちらを見る。

 

「時々思うんだ。こうして医者をしているとね、なぜコーディネイターでもないナチュラルの中にも、回復が早い者がいるのかと。疾病に強くあれ、とコーディネイトされた者もいるだろうに。彼らよりもずっと早く退院していく者だって居る。例えば、君のように。それを見る度、ギルバート・デュランダルの研究は何だったのかと思い返してしまうんだよ」

「少なくとも、デュランダル議長の掲げたプランは間違っていたものだとは言えるさ。全ての人間が平等に生きられる社会などあるはずが無い。例え一時の平等が訪れても、人はまた繰り返す。同じ過ち、同じ差別を。彼のプランにはその『もしも』が無かったんだ」

「遺伝子だけを見て判断するのは、余りにも早計だった……そう言いたいのかな、君は。コーディネイターの存在も否定しかねない発言だね」

「そうは言っていない。だが、コーディネイターやクローンが横行するこの世界で完全管理社会の実現など不可能だという話をしているんだ。いくら平和を願おうとも、人はその願いを踏みにじる……全く!」

 

 そう、それだ。彼──エドワウは手を打ってモニタにニュースを映し出す。そこには破壊され無惨な姿になったファウンデーション王国があった。あまりにも酷い。言葉が出ないとはこのことを言うのだろう。母親を探して泣き叫ぶ女児の映像を見ながら、被害の規模、そして俺の記憶を照らし合わせて出た結論。

 

 それは余りにも残酷すぎるものだった。

 

「まさか、核ミサイルが?」

「そのまさかだよ、アムロ君。君が眠っていたのは数時間だが、その間にファウンデーション王国とユーラシア・ファウンデーション間の軍事緩衝地帯に核ミサイルが撃ち込まれた。いや、君たちコンパスの作戦行動中に……かな。アークエンジェルを始めMS隊の生存は絶望的と言われている。君の死も軍に伝わったようだ」

「なんだと?なら今すぐ連絡を──」

「ダメだ。彼らはもう止まらない。ファウンデーション王国の真の計画はここから始まる。君にはそれを……止めてもらいたい。アムロ・レイ。コーディネイターを超えるナチュラル、ニュータイプの青年よ」

 

 

「つまり、デュランダル議長がアウラと共に作り上げたようなものということか。巫山戯るのも大概にしろ、そんな厄ネタを放置したままデスティニープランを進めていたというのか?」

「むしろデスティニープランが施行されていれば、彼らが出てくることもなかった。ファウンデーション王国でそのまま燻っていた……はずだ。まさかアウラ自身が女帝になっているとは思わなかっただろうよ」

「デュランダル、お前という奴は……」

 

 聞かされた事実に思わず頭を抑えてしまう。コーディネイターを超える究極の存在、アコード。そしてその一員にラクス・クラインが居ること。オルフェ・ラム・タオはラクスの対となる存在だということ。彼らの野望が、デスティニープランの全世界実行であること。

 

 とんでもない厄ネタだが、過ぎ去ったことはどうしようもないのもまた事実。他人事のように笑うエドワウの頭に拳を突き落としてから放送を見ていると、たった今話した内容と同じものをオルフェ自身が全世界に向けて演説していた。

 

「何がナチュラルの放った憎しみの核、だ。キラを目の敵にしていたくせに、自国ごと消し飛ばして満足か?コーディネイターを超える種族だと?バカバカしい。自作自演、優生思想の塊じゃないか。まだ失敗を知らないガキのくせに何を考えてる」

「……私にも刺さる言葉だね」

「知らん」

 

 ガックリと項垂れる彼だが、まさか数十年前の同僚が若返って国王になっているとは想像できまい。それについてだけは同情する。どう見ても幼女だったからな、あれは。そう思い返していると、彼の持つ端末に着信があった。

 

 相手が誰なのかは分からないが、ひとしきり話すうちに彼の顔が曇っていく。遂には苦虫を百匹噛み潰したようなしかめっ面で通話を切った。昔よりも遥かに表情豊かになった彼の反応を見るのは面白い。が、それとは別に彼がこんなにも感情を顕にすることへの警戒心が浮かび上がってくる。

 

「たった今、放送のすぐ直前だ。ユーラシアの首都にレクイエムが叩き込まれたらしい。放送の内容は嘘ではなかったということだろう。アウラめ、自身の手駒に何をやらせているのか」

「貴様の行為の焼き直しじゃないか!」

「そうとも言えるな。クソ、まさかここまで酷いとは私の想定外だったよ。彼らアコードは純粋だ、適切な教育を施せば真に国家を導く存在にだってなれるというのに!」

「……エドワウ、俺に止めて欲しいと言っていたな。何か手段がある、という認識で構わないか?」

 

 その言葉に彼は目を丸くした。まさか俺が受けるとは思っていなかったようだが、何を勘違いしているのだろうか。俺は別に平穏な生活を求めている訳じゃない。元々俺は、オーブを守りたくて軍人になった身だ。今更戦いを忌避したりしない。恐らくだが、彼らも。

 

「教えろ。俺にも何か、出来ることがあるはずだ。そしてお前はその手段を持っている。違うか?」

「──君には勝てないな」

 

 

「ここからどこへ向かうんだ!」

「アカツキ島です。貴方を送り届けることが僕の役目ですから」

「俺達を助けてくれたそうだな。ありがとう。君のおかげで俺は戦える。この国を、世界を守るために」

「……眩しいですね、貴方は」

「やるべき事を見つけただけさ。褒められるようなものじゃない。君にもあるんじゃないか?そういうのがさ」

「それは──」

「案外、身近にあるものだ。目的というのは自分が歩く先に広がっているかもしれないし、そこには無いかもしれない。ただ、遅かれ早かれ見つかるはずだよ。選択とは困難の連続だ。だからこそ、何にも流されずに掴み取った未来が最も尊いんだ」

「俺にも出来るでしょうか。貴方のように」

「まぁ、あと30年は必要だろうな」

「30年……?」

「すぐに分かる」

 

 オーブ本島から、小さなモーターボートでアカツキ島まで移動している最中。案内役の彼は俺を眩しそうに見つめていたのを覚えている。彼らによろしく伝えておいてくれ──そう言って、エドワウの使いだという彼は去って行った。俺をあの場から救出したのも彼だそうだが、一つだけ。挨拶するなら自分の言葉で伝えるといい。そう言って彼を見送り、こちらに手を振るメイリンに片手を上げて、俺はゆっくりと歩き出す。

 

「あの機体、使えるんですか?ムラサメなんか比じゃないぐらいの機体ですけど……割とクセありますし、今のうちに習熟訓練でもしておきます?」

「問題ない。むしろ、あちらの方が扱いやすい。……それに、託されたものもある。随分と変わったようだが、それだけキラの選択が大きかったのだろう」

「覚悟、決めてますからねぇ」

「そうだな……で、作戦の状況を当ててやろうか。クライン総裁……いや、あえてラクスと呼ぼう。彼女の場所も特定しているし、後は艦だけとかそういう状況じゃないか?ラミアス艦長のことだ、ちょっと荒っぽいやり方でなんて言いそうだ」

「すごい、ほとんど正解です」

 

 おどけたように笑うメイリンに先導されながら、俺はどんどんと地下へと歩いていく。アカツキ島の地下にこんな施設があったとは驚きだが、この設備のおかげで俺たちの反撃が可能になる。あのカガリが腹芸も出来るようになって、随分と成長したのだな。

 

 さて、彼らは俺が死んだと思っているだろうか。それとも生きていると信じているだろうか。恐らく後者だろうが、どちらにせよ悪くない気分だ。ブラックナイツに手も足も出ず一方的に攻撃されていたあの時とは違う。キラもアスランも、彼らなりに問題を解決したのだろう。

 

「そうそう、あの二人。泣き言言ってるキラさんをアスランさんが殴り飛ばしてましたよ。『下らない泣き言はやめろぅ!』って怒鳴ってました」

「ははは、そうかそうか……え?アイツら、自分なりに答えを見つけられたのか?それならそれは、うん。良い事だ。後でじっくり聞かせてもらおうかな」

 

 そんな会話と共に辿り着いた、秘密の格納庫。ちょうど噂の人物達が中に入るタイミングだったし、俺達も入れてもらうとしよう。ちょうど、ラミアス艦長は気づいているようだからな。

 

 

「アスハ代表から預かって、新型融合炉と新装備の性能評価実験に使っていたの。こういう事態を想定してた訳じゃないんだけど。……駆動系と武装は昔のままだけど、コントロールシステムは最新のものにアップデートしてあるわ。ブラックナイツに対抗するには、心もとないでしょうけど」

「デスティニー!」

「フリーダム……」

 

 エリカの声と共にライトアップされるのは、嘗ての大戦を駆け抜けた伝説の機体たち。インパルス、デスティニー、そしてストライクフリーダム。各種改装を施されたそれらを見て、シンとキラが声を上げた。多少改修されているものの、間違いなくあの頃の愛機だ。

 

 インパルスまで視線を移したところで、シンの顔が喜色に染まった。これでルナマリアも一緒に戦える。そうやって拳を握ったところで、その隣に不自然な空間が見受けられた。そこだけがライトを落とされているが、()()()()M()S()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あの、これって?」

「えーっと、そろそろかしら。今さっきまで整備していたから、もうすぐ幕が開くはずよ。あ、来た来た。良いわよ、開けて!」

 

 エリカの声に応じて幕が開かれる様は正しくカーテンコールのよう。そして徐々に明らかになっていくその機体の全貌は、伝説の再臨を知らしめるに十分すぎるほどの衝撃を与えることになった。まずはアスラン。それは彼にすら明かされていなかったから。次にキラ。彼との戦いを忘れられるはずもないから。

 

 そして、シン。

 

「そんな、これは……!」

「俺の機体だ」

「アムロさん!?」

「アムロ一佐、無事だったんですね」

「ああ、待たせた。親切な青年と、お節介な男が俺の事を助けてくれたよ」

 

 

 

「アムロさん、ですよね」

「ああ」

「生きてたんですね」

「ああ」

 

 

 

 アムロは、何も言わない。ただシンの言葉に返しながら、彼の横へと並び立つ。なにか思うところがあるのか、アムロもまた、その機体を見上げていた。

 

 

 

「乗るんですか」

「ああ」

「生きて、る……んですか」

「それはお前が確かめてやれ」

 

 

 

 愛機との再会、それによる喜びも束の間。シンが見上げるその場所に、忘れることの出来ない親友の影が見えた。必ず生きて、オーブに帰る。その理由ができてしまった。勿論、ルナマリアとアーサーと、沢山のクルーと一緒に。

 

 

 

「はい……、はい!俺、絶対に負けません!デスティニーと、インパルスと……ルナと一緒に、絶対帰ってきますから!」

「──その意気だ、シン」

 

 

 

 まだ小さな背中に漲るのは、無限の闘志。シンにだけではない、この場にいる全員に宿っている。2年前、シンと共に戦った彼のように戦えるだろうか。そんな心配だけがある。だが、負けるつもりは無い。無様な戦いぶりを見せることもしない。

 

 

 

「今度は勝つぞ、ファウンデーション」

 

 





ここが書きたかった。それだけです。
それではまた。

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