望まぬ権能、望まれぬ忌み子 作:虚飾の大罪司教
俺は世界に嫌われている。
俺は《愛》を望んだ...
《悲恋の加護》
俺は《力》を望んだ...
《常敗の加護》
俺は《終わり》を望んだ...
《輪廻の加護》
俺は真実を理解したくなかった...
《探究の加護》
理解させられた。
俺は、
今度の生は女に生まれた様だった。
世界は私の望む事象と真逆の運命を定める加護を私に与える。
私は幾度死に逝き、その度に《輪廻の加護》で生まれ変わった。
幾度となく人を愛し、《悲恋の加護》に二人の運命は分たれた。
《探究の加護》により真実への歩みを止めることが出来ず。
《常敗の加護》により命は散りゆく。
嘆けど届かず、望むも許されず、然れども止まれず。
ただ生物としての本能と加護に命じられた運命を歩むだけの生涯を送り、そこに転機が訪れた。
花々に囲まれた草原の上、漂う香りに導かれるまま、私は少女に出会った
「まさか貴方にお会いできるとは、会えて光栄ですよ。神に愛されない者よ」
どうやら少女は私の体質について知っているらしい。
白い少女は自然体なままの美しい所作でティーカップを傾け喉を鳴らす。
少女は椅子に腰掛け、テーブルにはティーセットが並べられている。
少女の対面には、まるで誰かが来る予定があるように一つ空席が置かれていた。
「どうぞ。腰掛けて下さい」
促されるが儘に席に着く。
対面する少女がこちらを見つめる。しかしその視線はどこを指すでもなく、まるで私の魂が見透かされる様だった。
「自己紹介が送れましたね。私の名はパンドラ、貴方を理解する者と思って頂いても構いません」
「私は...元の名は忘れた。今世の名はリーン、ただのリーンだ」
「ええ、貴方の本来の名は私が理解しています。貴方が望むのならばそれをお教え致しますが、しかし貴方はそれを望みはしないのでしょう?」
見透かされている。
それだけではない、言葉や行動の節々に居心地の悪さを感じさせる。
しかしどこか離れ難さを感じさせろ。
それをするには惜しい、と心が足を止めさせる。
「ふふ、そう居心地を悪そうにしないでください。まだお茶会は始まったばかりなのですから。ゆっくりと楽しみましょう?」
蟲が身体を這う様な悪寒と首筋を愛子に撫でられるような幸福感が同時にやってくる。
その奇妙な感覚に恐れを抱いていると彼女が口を開いた。
他愛もない話だった。
趣味の話や身内の話、習慣の話に友達の話、過去の思い出から未来の展望までをじっくりと話した。
どれも大それたものではなく、長い生の中でもこれだけ話し込んだのは初めてだった。
気が付けば黄昏時であり、周囲は茜色に染まっていた。
「今日はこの辺りでお開きに致しましょう」
「そうか、もう終わりか...」
「ふふ、随分と楽しんで頂けたようですね?」
「そ、そんなわけはない。ただ私の事情を知っている者と話したのが初めてだったから...」
「心配しなくとも、またすぐにお会いできますよ。次のお茶会では私のお気に入りの茶葉を持ってきましょう」
「そうか、それは楽しみ...だな」
少女は気付けば私の前から消えていた。
少女が消えた後に私は自分が言った言葉に気付き顔が熱くなった。
いつからこんなにチョロくなったんだ私は...
だが心の中で未だにパンドラという少女への苦手意識があるのも事実。
本当に心の底から再び会い見えることを望んだならば加護がそれを阻んでいるだろう。
そしてそれは逆も同じ、私は彼女を本気で拒絶してはいない。
彼女へ抱く心は全て錯綜しているが故に神に阻まれることがない。
それは私が彼女を心の拠り所とするのに十分な理由となり得てしまった。
パンドラ書くの難しい