ホシノに相棒がいたらいいよねっていう話。 作:ぱんだひーろー
生徒会の平和な?日常
遅い。遅すぎる。
登校時間から既に2時間が経過している。まさか、どこかで戦闘をしているのだろうか?それとも、あのうっかりやな先輩のことだから迷ってしまったのだろうか?ならば今すぐにでもいかなければ。
椅子から立ち、ショットガンの動作確認をし、ドアノブに手をかける。すると、後ろから声がかかる。
「ねーねー、もーちょっと待ってもいいんじゃない?」
「...なんでそんなにも楽観的なの?」
怨念を言葉に込めながら振り向くと、ソファの上で苦笑いしている姿が目に入る。
短く白い髪。黒い目と、目のようでスコープのような、絶妙なバランスの青いヘイロー。一瞬男を疑う中性的な見た目。(一応)バディである打見マナだ。
「だってさすがにあの先輩でも報連相はしっかりしてるけどねー?戦闘音も聞こえないし。」
「えー、でも...あの先輩のことだし...」
そうやって10分ほど話をしていた。
だが心配するほうが本能的に勝るものなのだ。
とうとうマナのほうが根折れし、探しに行くこととなった。
「じゃ、マナは待機で。」
そう言った途端、露骨に機嫌が悪くなる。
「え?なんでよ。一応僕も行くよ。流石にすれ違っても先輩がメールしてくれるだろうし。」
そうして、生徒全員による生徒会長探しが始まった。
ー案外すぐに見つかった。
大人のロボと話している状態で、という条件つきで。
スコープ越しにビルを覗いて見つけたときは、二人して「何やってんだァ!」と大声を出しかけたが、何とか抑えて潜伏状態に移行。
ホシノは愛銃「Eye Of Horus」の弾薬を確認、マナは背中に担いでいたスナイパーライフル「The Smiter」のスコープ調整を行う。
なんということだろうか、彼女らには「保守的に取り戻す」という2文字はないのだ。
3,2,1,0.
合図とともに神秘を最大限込めたスナイパーで広範囲の窓ガラスを粉々に砕く。そこへホシノがおよそ人ではない跳躍力で突っ込み、ユメ先輩を奪還。あとはマナのほうからスモークグレネードを投げて行方をくらました。この間わずか3秒。
そして学校に帰る道中。
時刻は11時。登校時間からは既に3時間が経過した。
まだ日が昇り切っていない砂に埋もれた道の中、ユメ先輩はホシノからこっぴどく叱られていた。
「また大人に騙されたんですか!?いい加減にしてくださいよ!」
「ひぃん...面目ないよぅ......」
「いいですか、大人は私達を食い物にする存在なんですから、危機感を持ってください!」
ユメ先輩はいくら何でもいい人過ぎて困る。だからといってホシノのようにすべてを疑ってしまうのもなかなか生きづらいものなのだが……。どうしてなかなか、キヴォトスには常識をもつ人(つまりは程々にちょうどいい人)が少ないのだ。
そうこうしてキヴォトスの未来を憂いている間に、ホシノの説教は終わったらしく、緊張感も抜けていく。すると途端に空腹感を覚える。そうだった、まだお昼食べてないんだった、などと考えながら左腕の時計を見ると、すでに短針が12の文字を指している。
「おなかすいた~。2人も一緒にご飯食べようよ~。」
さっきまであんな目にあっていたのに、呑気なものである。ま、いいか。ホシノもおなかがすいてきた頃合いだろう。
「仕方ないですね、行きましょうか」
「そうだね、どこにしようか?」
「柴関でいいんじゃないですか?」
「それもそうだね、じゃ、行こうか!」
一つ、恐ろしいことに気付く。さっきからホシノの反応がない。しかしこの異常事態には先輩は気づいていないようで。
「ね?ホシノちゃんも行こうよ」
あ。やらかした。そう気づくにはそう時間はかからなかった。なにせホシノはわなわなと体を震わせ何かぶつぶつと話していたのである。
「......てください」
「なんて?聞こえないよ」
「...いい加減にしてください!」
残念ながら今日はお昼抜きみたいだった。
その後アビドスについた瞬間ホシノの説教(さながらマシンガンのようだった)をたっぷり1時間受け今度柴関を奢ることで機嫌を持ち直した時には既に時刻は2時。そのまま連邦生徒会に提出する書類をまとめ、BDをみて学習し...などとしているうちにも時計の針は回り続け、あっという間に下校時刻になってしまった。
「ホシノちゃん、マナ君!また明日ね!」
「明日はちゃんと登校してくださいねー?」
そうして今日のところは解散。しかしマナにはまだやるべきことが残っている。
見慣れた道から見慣れた道へ。普段とは異なる道路を通り、一つのビルの前にたどり着く。中に入り、エレベータに乗り、最上階へ。エレベータの壁は一部ガラス張りになっており、ここからでもよくサンクトゥムタワーが見える。皮肉か何かかよくわからないが、これから起こることが連邦生徒会にとって黙認すべきことではないことは確かだ。
ベルが鳴り、ドアが開くと暗いホールの中にぽつんと一つ、禍々しい空気を放ったドアが半開きになっている。どうしようもないほどに大きい溜息をついてドアの中に入る。
「おや、予定よりもずいぶんとお早いではないですか。」
「女性のプライベートをそうずかずかと聞くなよ」
ひび割れた黒い顔と体。「黒服」と呼ばれている、わけのわからない奴である。見ただけでソファがオーダーメイドであることはわかるが、今は一刻も早くここから帰りたい。それぐらい目の前の奴が僕は大嫌いであった。
「熱烈なアプローチどうも。しつこいんだよ」
「貴方が折れるまでアプローチは続けますよ」
「...ストーカーがよ」
やはり気分が悪いものだ。とっとと終わらせてしまおう。
「で、呼び出した理由っていつもの?」
「ええ、貴方の予想通りですよ。」
黒服は饒舌に話し出す。
「本当は他の生徒で研究をしたかったのですが、散々拒絶されてしまいましてね。貴方はその生徒と比べれば神秘の質や量は劣りますが、それでも十分上澄みの神秘であることに変わりはありません。」
「つまり体のいい代替案、ってことでいいの?」
「ええ、その考え方で問題はないかと。」
「ふざけるなよ」
正直こんな奴に関わりたくはない。とっととおさらばさせていただこう。そうしてドアノブに手をかける。
「お待ちください」
「何?暇じゃないんだけど。」
そうやって振り向くと、心底気味が悪い笑顔を浮かべてこちらを見ている。
「砂漠に行くときは、お気をつけて。」
何も言わず、僕はドアノブを回した。
とうとうマナ君のデータが出てきましたね。女だったんかワレェ...
あと黒服が当たり強すぎて泣いてるよ、あーあ、どうすんだよこれ。
ホシノおじさんていいよね。幸福にもできるし、不幸にもできる。筆者の心は今、幸福の振り子の上に居ます。