ホシノに相棒がいたらいいよねっていう話。 作:ぱんだひーろー
「ふむ......」
アビドスのビル群、その中のオフィス。黒服はたった今出て行った打見マナについて解釈をしていた。
「小鳥遊ホシノに負けず劣らずの神秘、狙撃体制になったときに垂直に移行し視野を拡張する目の形状をしたヘイロー...これは今まででも類を見ないものですね...興味がわいてきます。小鳥遊ホシノと同レベルまで優先順位を引き上げるべきでしょうか...いえ、それとも。」
どうやらこれは解決が難しい難題のようだった。それこそ、キヴォトスの7つの古則と比べてもなんら遜色がないレベルで。
「やはり結論付けるには時期尚早、ということですか...ならば、観察を続けるといたしましょう。何、手札はまだありますからね。」
そうやって暗い夜は更けていく。
「クックック、クックックックック......!」
~~~~~
「2人とも!今日は少し砂漠に行ってこようと思うんだ!」
声を高らかに突然叫びだした先輩。隣のホシノを見ると、「は?」といった表情で見つめている。
「えーっと...ちなみになんでですか...?」
恐る恐る、といった調子で尋ねる。
「それはねー...」
「宝探しのためだよー!」
えー...と思わず声が出てしまいそうになるのを抑える。これ絶対やばいじゃん、ホシノの収拾どうやってつけるんだよ、などと考えながら隣を見つめると。
「一攫千金ですか!?こんなことしてる場合じゃありません!」
ほらやっぱり、大変なことに「うへへ!今すぐ出発です!」......どうやらさっきの表情は「は?」ではなく「え?まじで?」だったようだ。隣を見ると、ぺかーという擬音が聞こえるような笑顔を浮かべている。
「ほら!マナも!早く準備してよ!」
...はいはい。
そんな理由もあって(ユメ先輩曰く)宝の地図にあった印の通りの場所に来た。あとは掘るだけ...なのだが...
「ユメ先輩、なんで水着なの?」
そう、ユメ先輩はついたかと思えばいそいそと衣服を脱ぎだし、なんと下には水着を着ていたのだ。ほんっっっっっとになにやってんのこの人。
「だって、これなら汚れても大丈夫でしょ?」
えぇ...(ドン引き)。もう少し他の衣服は用意していないのか、と考えたが元より抜けている先輩だ。この疑問は野暮、といったところだろう。
「じゃ、とっとと掘り出そうか。」
...全く、スコップを3本も持たされ続けたこちらの気持ちも...話聞いてる?
~1時間後
「まだ出てこないね...」
「きっと深い場所にあるだけじゃない?」
~2時間後
「結構ほったよね...」
「もう少し!もう少し頑張りましょう!」
~3時間後
このころになると、僕ら3人は既に疲れ果て活気をなくし、最早機械的に穴を掘っていた。ユメ先輩はしおっしおになり、ホシノはアホ毛がしなびていた。かく言う僕も、汗でびっしょりになって砂漠に横たわっていた。
ガツン。
突然先輩のスコップから重たい音が鳴り響く。
「お?」
「これはもしかして...」
「当たりだー!」
どこから湧いてきたのかいきなり調子を取り戻したユメ先輩のあとを追う形で掘り続ける。そのうち詳しい形状が見えてくる。箱型できらびやかな「それ」は、まるで宝箱のようで。夢中になるのも無理はなかった。
「とれた!」
漸くとれたものはどこをどう見ても宝箱としか思えない見た目をしていた。やっと、やっとである。一体何時間かかったと思っているのか。まあそんな些細な事はどうでもいい。はやく、はやく中身をみせてほしい。
「どこから開けるんだろ、これ?」
「ここからじゃ...って、鍵穴?」
どうやら鍵が必要みたいだ。...面倒くさいな。
隣を見ると、ユメ先輩は「鍵ってどこだっけ?」と意欲たっぷり、ホシノは「え~...だる」といった表情であった。鍵を探すか、諦めるか。だがその考えはナンセンス。僕には「第3の選択肢」が見えているのだ...!
「2人とも、離れてください」
「え?マナ君何する気なの?」
「...あー。そういうことね」
そういって2人が離れた瞬間に、愛銃を取り出し箱の鍵部分を粉々にすることで解錠。隣からは「ロマンがないよ!」とブーイングの声が聞こえるが、それには耳を貸さずに箱を開く。
「...アビドスのペンダント?」
中に入っていたのは、手の平よりも小さいくらいの大きさの、アビドスの校章の形をかたどった鉄製のペンダントだった。中身はきっちり3人分。鉄製だけあって、持つとずっしりとした重みを感じる。
おそらく、栄えていたころのアビドスでの砂祭りで、宝探しのイベントでもあったんだろう。しかしそれがいつしか忘れ去られて...といったところか。ユメ先輩が地図を持っていたのは、そもそも地図がないと成り立たないから。
「ちょうど3人分あるし...みんなで分けましょうか。」
「そうだね!なんだか戦隊物みたい!」
「うーん...そう...かも?でも、おそろいですね...うへへ。」
夕日を反射したアビドスのエンブレムが、今はどこか青春のように思えた。
ーーー
「おお、そこの白髪の嬢ちゃん、このネックレスをつけると運気があがるんだぜ?」
「ほんとですか!?1つもらっておきます!」
「おう!代金は1万と八千円だ!」
「ぐぬぬ高い...でも買っちゃおう」
ところ変わってアビドス。
「マナ君遅いねぇ」
「遅いですね」
「また何かやらかしてるのかな」
「でしょうね」
ホシノとユメは登校時間を過ぎてもこないマナのことを待ちわびていた。ちなみに感情は「大丈夫だろうか」という心配が半分、「またなにか面倒ごとに足を突っ込んでいるんじゃないだろうな」という呆れが半分である。
「ごめーん!おそくなりました!」
噂をすればなんとやら、である。途端に2人の顔は安心に変わった、がそれもつかの間、首元にかかっているネックレスを見て呆れ半分怒り半分に変化した。
「その首元のはなに?」
ホシノが怒気のこもった口調で「それ」について触れる。そんなことにも気づかずマナは。
「あーこれ?つけてると運気が上がるんだって!」
「「は?????」」
残念、マナは地雷を踏んだ。ここからでもはいれる保険は残念ながらない。
「ご慈悲を...」
そうしてこってりと絞られたマナであったが、流石バカの一つ覚えというべきか、その3日後にはリングを買い、今度は雑巾のようになるまで絞られるのだが、またそれは別のお話。
そろそろ壊そうぜ、「日常」。
物語には起承転結が必要だよなァ!?