ホシノに相棒がいたらいいよねっていう話。   作:ぱんだひーろー

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大人になること。

居ない。どこを探しても見当たらない。

 

きっかけは、些細な喧嘩だった。また先輩が馬鹿をやって、それを私が過剰に突き放して。そうしてユメ先輩が機嫌を損ねてどこかへ行く。ただの日常のはずだった。

 

連絡が取れない。その事実に気付いたときには手遅れだった。アビドス中を探しても見つからない。柴関を探した。旧校舎を探した。倉庫を、いつも先輩が昼寝をしている屋上も。見当たらない。

 

電池残量の少ないスマホから音が鳴る。...マナだ。

 

「...何」

「...見つかった」

「本当に!?」

 

謝りたい。この日常は何にも代えがたいものだったことに今更気づいたことを懺悔したい。早く会って輝くような笑顔を見たい。

 

「今どこにいる?早く会いたいの」

 

ずいぶんと早口になった私に対してマナは、

 

「...病院で待ってる」

 

とだけだった。

 

太陽が沈んだ後、広大なアビドスの総合病院についた私は、早歩きで指定された病室に足を運び、ドアを開く。

 

立ち尽くした。

 

長い沈黙の末、かろうじて口を開く。

 

「......は?」

 

ユメ先輩はいた。安らかな笑顔である。

機械は一つもついていない。それではまるで、"その必要がない"と言われているみたいだった。

 

「来たのか」

 

いつの間に後ろにきていたマナがたった一言呟く。

 

「...こういうことだ」

 

だめ、でした。私は選択を間違えました。ごめんなさい。

 

__________

 

最近、ホシノの様子がおかしい。

情緒が不安定になった気がする。

 

「...ホシノ?」

「...何かな」

「最近おかしいよ、少し休んだ方がいいんじゃない?」

「だって、だって、わた、わたしのせいで...ぅ」

「大丈夫、大丈夫だ...ホシノのせいじゃないよ」

「でも、でも......うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

はぁ。随分とこの部室も暗くなったものだ。笑い声一つも聞こえない。こんな自分でも、先輩を覚ます為に、アビドスの為にできることは何だろうか。

 

それを考えてばかりいた。結果、まずはホシノのセラピーをするべき、という結論に至った。だからといって、身内が寿命以外でこんな状況になる、なんてことはキヴォトスでは珍しい。セラピストも匙を投げるだろう。じゃあ、どうする?

こればかりは僕がやるしかないだろう。幸いにも、ホシノのことはよく知っている(はず)。やるしかないのだ。連邦生徒会も、大人もクソの役にも立たないことはよくわかっている。責任もあるのだし、これは僕の仕事だ。

 

それから僕は、ホシノのセラピーに努めた。途中首吊りしかけているときは血の気が引いたが、先輩はそんなことは望んでいない、といったらこれ以降そのようなことをすることはなくなった。その後も根気よく続けた結果、若干ホシノの目も光を取り戻したように感じる。

 

そんな状態であったから、利子を返すので精一杯。未来ある後輩の為のお金なんて貯めれやしない。どうしようか。ユメ先輩の為に、ホシノの為に、アビドスの為に。その為なら喜んで全て捧げよう。もちろん、来るべき後輩の為にも。

 

そうやって悩んでいるうちにも、時間は待ってくれないものだ。

雪が解ける時期になった。ホシノも、他の人たちと会話ができるようにまで回復したし、僕はそろそろ未来のための犠牲になるべきタイミングだろうか。残念ながら、平和に犠牲はつきものなのだ。ユメ先輩がああなってしまったのは、間違いなく僕のせいなのだ。安寧を受ける権利は、もう消えた。代わりに2人が、安寧を受けるべきなのだ。

 

__________

 

「ホシノ、一旦お別れだ」

 

唐突にマナは言い放つ。理解が追いつかない。ずっとそばにいて、支えてくれるものだと考えていた。

 

「ぇ......なん......」

「卒業するまでには必ず帰ってくる。だから待っていて。」

 

失いたくない。ずっとそばに居て欲しい。動揺で言葉が出ない。

 

「一緒にいてくれてありがとう。僕の分も、後輩達を守ってくれないか。」

「ホシノ、もっと頼ってね。じゃあ、さようなら。」

「マナ!ちょっと待って」

「大丈夫だって。」

 

そういうと、悲しげな笑みを浮かべて、

 

「生きて帰るさ」

 

ドアは閉まる。アビドスとホシノを残して、彼女は往ってしまった。

 

それから、誰もいない静かになった生徒会室でただひたすらに借金を返した。そうでもしないと、罪悪感で押しつぶされてしまいそうだったから。それのせいで、いつしか一人で解決するようになってしまっていた。

 

彼女から頼まれたそれは、いつしか呪いとなってしまって。それが私の生きる理由になってしまった。そんな気がする。

 

状況は最悪だ。毎日のように訪れる襲撃、減らない借金、底をつく物資。匿名で送られてくる物資はあるものの、いつなくなるかもわかったものじゃない。

 

でも、この場所だけは捨てたくない。

ここが、ここだけが私の居場所であり、2人との思い出の場所であり、託された思いだから。

守り切るしかない。

 

「...おじさんにできるかなー?」

「ホシノ先輩、どうしたの?考え事?」

「大丈夫だよ、シロコちゃん。」

 

そのままスマホの電源をつけ、ニュースでも見ようと検索エンジンを開く。

『シャーレに先生来訪!?シャーレの全貌に迫る!』

 

...いつ帰ってくるかなぁ。




待っていました。

やはりあなたは責任を負うのですね。

悪いことだとは言いません。

それはあなたの生き方という芸術に対する冒涜ですから。

そんなに焦らないでください。

■■よ。

どうか、忘れないでください。

永遠などは、何においても存在しません。

あなたの力を使えば、大事な方々は安寧を手に入れます。

しかし、彼女らにとっては、それは安寧ではないのですよ。

つまり。

貴方がいることが、安寧であり、また苦しみでもある。

それでも、この地で生きるのですか?

...そうですか。
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