「お前は一生を掛けて六眼を欺くんだ」って言われた件   作:赤福かき氷

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 とあるビルの3階に店を構える某有名珈琲店の窓際席に二人揃って腰掛ける。同行者は白髪に赤みのかかった髪が混じった見目の良い女性だ。己にとってそんなものは露ほどどうでも良いのだが。

 

 店内は未明から続く原因不明の電波障害のお陰で慌ただしい。人と物流の中心地たる東京は、当然高速道路を使用して足を運ぶ人間は山程いる。彼らは皆、インターネットという近代文明の叡智への接続を絶たれているため大騒ぎだ。

 

 

「羂索、これは一体何のつもりだ」

 

「死滅回遊の下見さ。結界内に閉じ込められた人間は電子世界から隔絶されることになるからね。彼らがどんな反応をするか見ておきたかったんだよ」

 

 

 日本各地に結界(コロニー)を展開すれば、勿論内部と外部では電子機器等の連絡が不可能となる。

 それらの有無で計画に何ら影響が出るとは考えられないが、実際にどのような騒ぎとなるのか実行前に見ておくのも悪くない。

 

「ま、だいたい想像通りだよね。あまり面白い結果にはならなかったかな」

 

 裏梅の表情には明らかな不満の色が現れる。

 ICに呪霊を取り憑かせ、荒川にも術の効力を上昇させるという作業。高専関係者に感取られないよう二重、三重に呪詛師を雇って実行するのはさぞ骨が折れただろう。

 

 

「機械一つ使えなくなった程度で軟弱な」

 

「私たちと一緒にしてはいけないよ。彼らには生まれた時から存在して当たり前の物だったんだから。それこそ我々にとっての呪術のようなものさ」

 

 2000年前後に起こったIT革命により現代社会におけるインターネットの普及は急速に進んだ。今では片手に収まる端末一つで生活の全てを賄うことができる。

 

「面白いだろう?電子世界から呪霊が生まれる時代になったんだよ」

 

「くだらん」

 

 

 インターネット発祥の怪異といえば"リゾートバイト"や"地下の丸穴"などが羅列される。

 あの"リョウメンスクナ"までがネットの海で怪異として語られていたのを目にした時は思わず笑ってしまった。無論実際の宿儺と比べて小指の爪の先程にすら及ばないものではあるが。

 

(はは、裏梅には言えないな)

 

 確か"姦姦蛇螺"といった呪霊が先日祓われたんだっけか。

 あの前身たる蛇呪霊には覚えがあった。いつの間にかインターネットでまことしやかに語られる怪異となっていたのだから驚きだ。

 

 

「宿儺様の件はまだ進まないのか」

 

「そんなに焦らないでくれ。まずは呪霊操術を手に入れるのが先だ」

 

「いつまでその身体を使い続けるつもりだ?さっさと夏油傑の身体を奪ってしまえば良いだろう」

 

 

 タイミングというものがあるのだ。虎杖香織の術式はそこそこ使えるが、身体自体の戦闘力はお世辞にも優れているとは言えない。流石に特級術師相手に無理は禁物だ。

 

 反重力機構(アンチグラビティシステム)で火力を出す為には反転術式の使用が必要となる上、効果範囲も狭い点に加えてインターバルすら必要となる。

 

 

 

(本当は"重力操術"の方が欲しかったんだけどなぁ。)

 

 

 

 虎杖香織のソレと異なり、強大な火力、自他の浮遊が可能で殆どインターバルも必要ない。一級最強の称号を冠するだけあって呪力量、身体能力共に非常に優れていた。

 

 

 上層部と手を組み、海外産の特級呪具まで持ち込んで嵌めたのだ。間藤白蓮の殺害自体は最高(最悪)の形で終わったのだが、その後が良くない。

 浄界は荒れるわ、死体は手に入らないわでとことん上手く行かなかった。

 

 

 

 

 

 

「"魔の三角地帯(バミューダトライアングル)"、入手するのは本当に骨が折れたんだけどね」

 

「何だそれは。呪具か?」

 

「君は平安の人間だもんね」

 

 時代遅れだと揶揄したのが伝わったのか、裏梅の陶器のような白い皮膚に怒りの色が現れる。

 

 フロリダ半島の先端と、大西洋にあるプエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域。それが魔の三角地帯とも称されるバミューダトライアングルだ。

 海域に足を踏み入れた船舶や飛行機が悉く行方不明になるのだ。地球上で最も多くの行方不明事件が勃発する場所であり、その殆どが解明されていない。

 

 屈強な海の民や逞しい空の民すらも畏れをなすその海域が"オカルト事案"として世界的に有名になったのは、チャールズ・ベルリッツ著書『The Bermuda Triangle』を契機とする。

 

 長年に渡って魔海域を知る人間からの恐れに加え、世界中の人間がその場所を()()であると認識してしまったのだ。世間に浸透する遥か前から人間を飲み込み続けてきたその海域は、魔境たるべくとある呪物を作り出した。

 

 

 三本の楔で三角形を形作ることによって、楔の内部へ()()()足を踏み入れた人間の気配をこの世から消失させる。すれ違っても誰にも気が付かれないし、声を出したとて届くこともない。

 

 

「流石に六眼相手に完全消失は無理だよ。まぁそれを逆手にとったわけだけど」

 

「どういうことだ?」

 

 五条悟にとって、先輩と同じような術式を使用する()()()()()()()()()()。六眼のような異次元の能力を所持しておいて、まさか馴染みのある先輩の呪力を見落とすなど想像もしなかっただろう。

 

 懇切丁寧に説明してやると聡明な彼女は一度で理解したようだ。

 

「五条悟にその呪具を使えばよかっただろう」

 

「六眼自体を罠に嵌めるのは無理かな。だって彼、強すぎるもん」

 

 花御と似たり寄ったりの感想だ。

 

 そういえば、先日"メアリ・セレスト号"という海外産の呪霊が日本国内で出現したんだっけか。呪霊までグローバル化を果たすとは、本当に面白い時代になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 万が一呪霊操術の方が上手くいかなかったとしても、間藤白蓮の身体であれば「五条悟の封印」は恐らく上手くいく。所詮は保険に過ぎないが、だから彼が欲しかった。

 己の手で殺した筈の"先輩"が現れたらば、かの最強はどんな顔をしたのだろう。

 

 

(今の高専にも"重力操術"の術者がいたね。何の因果か、彼の弟とは)

 

 

 呪霊操術を手に入れるまでの繋ぎに丁度良いかもしれない。兄と比べて呪術師としての素質は大層劣るが、夏油傑の肉体を手に入れてしまえばどうでも良い。用があるのは術式だけだ。

 

 愚かな間藤白蓮の所為で"魔の三角地帯(バミューダトライアングル)"は回収し損ねた。今の時点で天元のお膝元へと侵入するのは到底不可能だろう。

 

 

(丁度いいレプリカもあるし、試してみようかな。折角だし弟のほうも巻き込んでしまおう)

 

 

 結局、どう転んでも自分が楽しければ構わないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真上に輝く太陽が地面に熱線を注ぐ。アスファルトは加熱され、木々は心なしか萎れているようにも見える。室外にもエアコンを設置してほしい気分だ。高専の制服は長袖しか所持していないため、上を脱いでシャツ一枚になって腕捲りをする。

 

 任務も授業も停止となったが、この1番熱い時間帯に外で訓練する気にはならなかったのだ。「どうせなら件のICまで行ってみようぜ」というノリになり、四人と一体で街へ繰り出してきた訳である。

 

「だから寮で寝てようぜって言ったんだ」

 

「寮だって慌ただしくて落ち着かねぇだろ」

 

 確かに。真希の言うことにも一理ある。寮にいて用事でも頼まれるくらいならば、外へ遊びに繰り出した方がマシである。

 

「ここが荒川であってるよね?」

 

「しゃけ」

 

 野球場や運動場だらけの河川敷へ足を踏み入れる。流石に"川を渡る"という本末転倒な行為に及ぶつもりは無いが、降りるくらいならば問題ないだろう。高架下付近で術師を見かけたので念の為離れた場所だ。

 

 水際の風は涼しくて気持ちいい。全員で靴を脱ぎ捨てて川に足を突っ込む。

 

 

「何か感知したヤツいる?いねぇよな?」

 

「おかか」

 

 

 満場一致で何も感知していないとのことだ。俺もこの場に特に何かを感じるわけでも無い為、とっくに呪霊はトンズラこいているのだろう。

 

 

「なぁ、何で川に呪術的な要素があんだよ」

 

「三途の川って聞いたことあるだろ?向こう側とこっち側を隔てる地獄の川だ。つまり、川を渡る時は死ぬ時だろ。」

 

「そう言うことね」

 

 

 川を渡れば"死後の世界"へ足を踏み入れたとみなされる。そんじょそこらの川でいちいち死後の世界案件になっていたら日本の死者は爆増しているはずなので、余程特殊な条件が必要なのだろう。それこそ今回のような。

 

 縁を切るという要素が「電子世界と縁を切る」という効果を乗算させることとなった、というのが今回のオチだろうか。よくわからん。

 

「喉乾いたな」

 

「そういや川の向こう側にローソンあったぜ。俺も新作のポケカ欲しいし買い出しいかねぇ?」

 

「でも荒川の向こう側だよ?」

 

 憂太の言うことも最もだが、現に高速道路の往来は今も続いている。第二波の被害も見られないし、何よりICには術師が張っている。呪霊の気配自体も感じられない。

 

 

 

 

 

 

 

 言い出しっぺの真希と俺とでローソンへ向かう。何事も無く向こう岸へ辿り着き、数分ほど歩くと目的地が目の前に現れる。

 

「アイツら何リクエストしてたっけ?」

 

「しゃあねぇな。聞いてやるか」

 

 言い訳をするならば、いつもと同じような会話と行動を繰り返し、異常事態であることを失念していた。加えて炎天下に判断力が鈍っていたのだ。涼しいコンビニ内であったらまた結果は違ったのかもしれない。

 

 住宅街に阻まれて気が付かなかったが、問題のICとローソンはほぼ一直線上に位置する。

 

 つまり、運が悪かったのだ。

 

 徐に真希が電話を取り出し呼び出しボタンを押す。そういや通じねぇんだった、ゲンナリとした表情を突き合わせる。しかしながら、真希の携帯から鳴り響いたのはコール音。

 繋がってしまったのだ。

 

 

『真希さん!もう電話できるようになったの?』

 

 

 電話の向こう側から憂太の声が響く。それと同時に呪霊の反応を感知した。

 縁の切られた世界から川を挟んで現世との繋がりを得た。期せずして、世界は繋がってしまったのだ。

 

 

「帳おろせ睡蓮!」

 

「だから出来ねぇって!」

 

「使えねぇな」

 

「おまいう」

 

 

 これは誰が悪いとかの話ではない。荒川を渡ってIC近辺を訪れた被呪者が、向こう側の河川敷にいる被呪者以外の人間に()()()()を感じてコンタクトを取ればこうなった筈だ。

 

(寧ろババ引いたのが俺らでマシまであるなコレ)

 

 文字コードのようなものが羅列し、身体を形作るかの如く渦巻いている。きさらぎ駅の際に会敵した黒もやのような実体の無い呪霊のようにも見えるが、本体の周りに文字コード擬きが無数に纏わりついているだけだ。不特定多数に呪いをばら撒くだけあって危険度はかなりのものである。

 

「、、、手練れだな」

 

「否定はできねぇな。術式の悪質性は特級だろコレ」

 

 携帯が使えないとか俺なら日常生活の8割が死ぬ。もういいじゃんコイツ特級で。

 

 しかしながら、件のIC付近の術師が駆け付けてくるのも時間の問題だろう。理由は定かでは無いが俺たちへ攻撃を仕掛ける様子はない。こちらを観察するように眺めている。

 

「市街地じゃ不味い、通り道にあった廃工場に誘導するぞ。睡蓮、誰かに連絡入れとけ!」

 

「もうやってるぜ」

 

 既にコール音を鳴らしていた携帯が繋がる。

 

『睡蓮か。どうした?』

 

「元凶の呪霊が出た。なんかめっちゃ近代的」

 

『、、何だと?』 

 

「ICに術師が張ってんだろ?廃工場まで誘導するからさっさと応援呼んでくれ!」

 

 呼ぶまでもなくすっ飛んで来るとは思うが念の為。

 

 危険性はイマイチわからないが、多少盛っといた方が緊迫感は伝わる。兄の後輩の様に過少申告で実力が足りないというパターンは非常に困るが、こちらの戦力が充実する分には問題ない。

 

『誘導など悠長なことをしている場合じゃないだろう。さっさと回避行動を取れ!』

 

 流石に市街地で戦闘は不味いと思う。

 

 電磁浮遊しながら呪霊は小走りと同じくらいのスピードで着いてくる。幸いにも廃工場はほぼ隣と言って差し支えない距離だったので、腐り落ちたドアを躊躇なく蹴り飛ばした真希に続いて侵入する。

 

 

「俺ら肝据わってんな」

 

「里香のせいだろ」

 

 

 俺はともかく、真希の肝の据わり様は正直凄いと思う。担任は五条悟、同級生は特級化過呪怨霊つきという禁足地よりもヤバい状況に感覚が麻痺しているだけという可能性もあるが。 

 

「何で攻撃してこねぇんだ?」

 

 首を傾げる真希の横で天眼を使う。

 

 既に術式は発動していた。今朝、真希とパンダに巻きついていたサイバースペースを具現化したかの様な構築式だ。真希にも現在進行形で巻き付いている。

 

 電子系統の構築式など目にするのは始めてと言っても過言ではない。電気系統とはまた異なる式だ。

 

 

『睡蓮、そちらの状況は?』

 

「アイツ全然攻撃してくる気配ねぇんだけど。今はお見合い状態だぜ」

 

『、、そうか。待機していた術師に事情は説明した。そろそろ誰かが辿り着く頃合いだろう。さっさと撤退しろ、いいな』

 

 

 携帯を耳から離す。画面に12:02と表示が出ている。さっき電話を掛けた際、真希の携帯の時間は11:56と表示されていた筈だ。僅か6分でここまで状況が悪化することなど早々ないはずだ。

 

 ふと、7という区切りが頭を過ぎる。「三途の川を渡るのは死後7日目」とパンダも言っていた。7日と7分は全く異なる筈なのだが、今回ばかりはそう思えない。

 

 7を過ぎたら死後の世界。画面の数字は一つ刻み、12:03の時刻が示される。

 

 

 

 

 呪霊に巻き付いていた電子コード擬きが解かれ、廃工場内を蹂躙する。

 

 呪いの効果的に攻撃系統の術式ではない筈だ。つるのムチ的なノリで考えて大丈夫だろう。状況は全く大丈夫とは言えないが。

 

(ホントに変わった構築式だな。───()()())

 

 物理攻撃ならば真希の得意分野だ。多少は掠った様だが目立った傷はない。眼前の敵を見据えて大刀を構え直した。

 

 呪霊は文字コード擬きを再び展開した為、敵を中心に半径1メートルの重力を出力する。細長い紐状のそれは地面に縫い付けられ、不発に終わった。

 

 そのまま場に倒れ伏した呪霊を押し潰そうと試みるが、やはりそれなりの呪霊を一撃で圧殺するのは無理がある。

 

 飛騨霊山山脈の時の己の術式を伸び伸びと使用する開放感を思い出す。呪力量制限も常時発動中の隠匿術式を解除したのも久方ぶりだ。

 

 残念なことに、人前で一度でもやらかせば俺の人生計画は台無しだ。勿論、生者相手にやらかした場合に限るが。

 

「そっち行ったぞ!」

 

 大丈夫だろうとは思いつつも声を掛ける。

 毎日のように重力操術アリの訓練に付き合わされているのだ。加重地帯で動き回る不便な感覚に比べ、地上では地面に押さえつける力に抗う事なく戦える。相手に攻撃術式など無いならば尚のこと。

 

 彼女は身体を捻ってあっさりと躱し、お返しと言わんばかりに大刀を叩き込んだ。やはり呪霊の強度は相当のもので致命傷には程遠い。

 

 回避行動により生じた隙は、大きめの瓦礫を複数飛ばして妨害する。発動可能範囲に呪霊がいないと効果はない重力操作と比べ、浮遊はある程度遠くの敵にもダメージが入る。ダメージ量は浮遊物次第だが。

 

 

 

 今でこそ善戦しているが、いつ均衡が崩れるか定かではないのでさっさと応援をよこして欲しい。

 外に意識を向けると、廃工場に向かって駆けてくる呪力が二つ。片方は比較的強そうな雰囲気なので一級辺りだと予想をつけた。

 

 先程真希が蹴破った入り口に二人分の人影が現れる。金髪にスーツを着込んだサラリーマンのような風貌の男と目出し帽を被った男だ。

 

 、、アレで市街地を歩いてきたならば通報待ったなしだろう。俺なら110番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 増援がきたならばこれ以上居座る必要はない。金髪の術師が背中の鉈を振りおろすのを尻目に、目出し帽の術師に軽く事情を説明する。

 

「それはまた災難な」

 

「だよな。恐るべしローソン」

 

「ローソン関係ねぇよ。風評被害だろ」

 

 比較的善戦したとはいえ4級2人が居座り続けるなど分不相応だ。真希は若干不服であるようだが、俺たちが戦闘継続によって負った怪我は絆創膏程度じゃ済まない。

 

 鈍い打撃音の響き渡る廃工場を後にし、現場に駆けつけてきた補助監督(パパ)と合流して簡単な手当を受ける。

 

(眉間に皺よってんじゃん、おっかねぇよ顔が)

 

 人民の避難は完了していたが、帳は降りていない。呪霊の効力が効力だけに、連絡手段の断絶を否としたようだ。

 

「周辺の避難は"廃工場のガス漏れ"が原因ということになった。、、英断だったな、2人とも」

 

「パパさっきキレてたじゃねぇか」

 

「今回は無事に済んだから良かったものの、毎度毎度上手くいくとは限らない。頼むから用心してくれ」

 

 廃工場への誘導を選んだのは正解だったのだろう。人目さえなけりゃ幾らでも言い訳が効く。取り敢えず詳しい話は高専で、とのことで車に乗り込む。 

 

 

 

 

 廃工場の呪力がひとつ消えた。恐らく金髪スーツの術師が討伐に成功したのだろう。ならば、真希の電波障害も回復する頃合いだろう。

 

「憂太たちに事情説明しといた方がいいよな。さっきの電話は切れちったし」

 

「そうだな。睡蓮お前電話掛けとけ」

 

「たぶん真希のスマホ、復活してるぜ」

 

 怪訝な顔をした真希が携帯の画面に目を向ける。半日ぶりに電波が4本立っているのを確認して首を傾げている。数巡し、呪霊が祓われたことを察したのだろう。

 慌てる電話の向こう側を宥めていると、いつの間にかエンジンが掛かっていたらしい車は高専へと発進する。

 

  

 

 

 

 

 

 

「五条先生どこ行ってたんだ?」

 

「連絡不能で任務がまともに組まれなかったからそれの尻拭い。いやぁ大変だったね」

 

 もう今日は限界だよ、と白々しく語る悟くんに心の中で「嘘つけ」と述べる。一部の等級報告が上手く為されず、階級に見合わない任務を斡旋された術師が存在した。任務の一律停止が通達される前に仕事へ出掛けてしまっていた術師らだ。

 

 それらの理由が重なり、例え特級が出たとて何ら問題のない悟くんが派遣されたのだろう。

 

「結構強かったんでしょ?二人とも優秀だね」

 

「まぁ攻撃力ほぼ無かったしな。金髪サラリーマンが来たらすぐ片付いたぞ。あとほら、目出し帽の、、」

 

 通報されなかったのか、と呟くと眼前の担任は大笑いしていた。

 

「404って偶然?」

 

「運悪くICに居着いちゃったってのが見解だね。僕は若干不自然だと思うけど」

 

「裏に誰か居るってことか?」

 

「さぁ?そこまではわからないかな」

 

 一日とたたず終結した「404」は、インターネット上で何らかのウイルスが撒き散らされたという結論でカタがついたそうだ。まことしやかに陰謀論が囁かれたが、夕方頃には普段と何ら変わらない様子に戻ったのだ。次第に下火になるだろう。

 

「コレで時代錯誤のお爺ちゃんたちもアップデートしてくれるといいんだけどねぇ」

 

「無理だろ。やってて精々ファミコンだぜ」

 

 御三家のような名門連中がゲーム類に手を出すとは到底思えないが。

 

「古いね。僕が子供の頃はゲームボーイだったよ」

 

「俺ん時はDSだぞ。俺からすりゃ先生も大概だよ」

 

 コレがジェネレーションギャップかと溜息をつく27歳。残念ながら、つい最近任天堂からswitchが発売されたばかりだ。そのうち俺ですら「DS世代」と呼ばれる時代が来るのだろう。

 

 2018年の秋にはポケモン初代のリメイクが発売されるそうだ。俺はソレで遊ぶことは恐らく叶わないのだろうけれど。




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