「お前は一生を掛けて六眼を欺くんだ」って言われた件   作:赤福かき氷

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寄木細工の怪 下

 という訳で、やってきました長野県!

 

 特にイモトを探すイベントが発生するわけでもないがテンション上げなきゃやってけない。

 

 

 

 あの後寮を飛び出した俺たち二人はその足で東京駅へと向かった。元々休日だったので俺たちの行動が誰かに咎められることはない。JR北陸新幹線を利用し、そのまま長野県上田市の上田駅へ辿り着く

 360度何処を見回しても山岳地帯ばかりだ。

 

「秤先輩どこにいんの?」

 

「和合村を出て松本市のホテルに待機中だって!」

 

 上層部のクソ命令はしっかり無視して撤退したらしい。賢明な判断だ。

 

 携帯の位置情報をタクシーの運ちゃんに見せ、二人揃って後部座席に乗り込んだ。

 

 

「先輩ホントに良かったのか?他の術師に任せた方がまだマシだろ」

 

「さっきの伊地知さんの電話聞いたでしょ。睡みゃん言い出しっぺじゃん、そもそも半分ダメ元だし」

 

「ひっでぇ」

 

 

 別に俺たちが秤先輩のホテルへ押し掛けた所で何も起こらない。呪いに罹患していなかったとしたら完全に無駄足だが、寧ろそうであってほしいくらいだ。その他の術師がさっさと何とかしてくれたならばそれも良し。

 

 しかしながら、呪術界は肥溜めのような場所だ。大体最悪の予想ばかりが的中し、命すら吹けば飛ぶ様に軽い。予想の2割り増しで状況は悪いと腹を括ってやっとこさ釣り合いが取れる程だ。

 

「腹痛は?」

 

「治んないらしい」

 

「いよいよ駄目そうだな。今のうちにコトリバコ履修させとこうぜ」

 

 

 

 

 釣りは要らねえやと札を叩きつけた星先輩がホテルへと駆け込む。代わりに釣り銭を受け取り、少し古びたビジネスホテルの自動ドアが開くのを待つ。

 6階の角部屋だそうなので、エレベーターを待ちながら星先輩が携帯を起動させる。

 

『これ食あたりじゃねぇのか。マジで腹がやべぇ』

 

 だとしたら何食ったんだよ。トリカブトか?

 

『お前と一緒だな』

 

「俺って霊山でキノコ食うアホにみえんのか?」

 

 体外的には霊山で憂太をぶち殺しにかかった三条術師をはじめとする人間の襲撃はなかったことになっている。彼らの行方は未だに明らかになっていないのだから。

 

 つまり、俺の毒キノコ拾い食い冤罪も晴れることがないということだ。なんてこった。

 

 取り敢えず、先輩はほぼ黒である。本当に食あたりだったらもう笑うしかない。慌ただしい音と共に6階へと辿り着き、星先輩が半ば蹴破る様にしてドアを開ける。

 

 

 ()()()。臍の緒のような物が絡まりあった気味の悪い構築式。某ジブリ作品の祟り神のようにも見受けられるが、それをうっかり口に出すほど脳直ではない。

 

 

 今回の場合、箱を壊したとて解呪は叶わない。独立した術式として内臓に絡みついている。

 その道の専門家がいるならば話は別だが、一般的な呪術師ならばどうしようもない。呪霊が内臓に巣喰っている訳ではないため話は違ってくるのだ。

 

 星先輩が俺に困惑の色を含めた目線を送る。そりゃあ入学半年の初心者に何ができるとも思わないだろう。寧ろよく強行軍に着いてきたなと思うくらいだ。

 

 

 

「痛いのは胃袋と肝臓辺りだろ。今は右側の肺まで痛み始めてんな」

 

 

 何故わかると言わんばかりの顔は俺に正解を確信させた。やっぱり呪いの年齢制限は20歳だったようだ。

 見た目で判別しない辺り、肉体の経過年齢を感知する機能でも存在したのだろうか。まぁそこはどうでも良い。

 

 新種の鳥だとアホ発言を繰り返していたパチンコ先輩も、やっとこさ事情を把握したようだ。星先輩が無理矢理読ませたオカルト掲示板の内容を確認し、自分の腹に巣喰うナニカを察知したらしい。

 

 

「かわいい後輩が何とかしてやるよ。()()アリでな」

 

 

 条件はひとつ。日付けが変わった瞬間、この場の出来事を全て忘れること。

 それまでに外部に何かを漏らそうとする気配を察知した時点で、違反の対価は生命で支払ってもらうことになる。

 

 クソ野郎?何とでも言え。命があるだけマシと思っていただこう。

 

 

 秤先輩の腹に掌を当て、天眼で術式を確認する。呪いの構築式解析は完了した。

 

 

 生得術式は負の呪力を流し込むことによって発動する。通常効果を強化したものが"順転"だ。

 

 反転術式に代表されるような正の呪力を流し込むことによって発動するのが"術式反転"。大抵の場合、術式効果が180度ひっくり返る。重力操術を例としてあげるならば、「引き寄せる力」が「反発させる力」へと変化するのだ。

 

 

 式業呪法は術式を新たに構築して使用する能力。構築の反対は分解、つまり術式の構築式を分解するのだ。我ながらかなり無法な能力だと思う。術式の無効化に近しい性能だ。

 

 無下限呪術とて例外ではない。残念ながら"反転"で分解しながら"順転"で攻撃するなどということは不可能だが。

 反転から順転に切り替える間に分解した不可侵を張り直されるのが関の山だろう。だから、順転で()()する必要がある。

 

 俺は()()の先に生まれる「不可侵適応術式」が欲しいのだ。順転で生み出した術式はある程度までなら同時使用が可能であるから。

 

 

(そりゃ兄さんも焦るわな。)

 

 

 構築の反対は分解。五条悟一強の時代に"無下限分解"の可能性など洒落にならない。

 式業呪法がバレるくらいならば一生非術師の真似事をした方がマシ、そう判断した兄さんは間違ってはいないのだろう。

 

 ()()平安から続く"子取箱(蘆屋道満)"の亡霊に打ち勝ったのだ。たった200年かそこらの(コトリバコ)如きの呪いに対応できない筈がない。

 

 

「マジか。綺麗さっぱり消えちまったぜ」

 

 珍しく驚きの表情を浮かべた秤先輩が己の腹を撫で回している。臓腑に絡みつく臍の緒の如く術式は完全に霧散し、被呪者の命に手が掛かることもない。

 

「どうなってやがる。──お前の術式じゃねぇよな?」

 

「企業秘密だぜ。縛りもあるし、命が惜しけりゃ今のは忘れてくれ」

 

 秤先輩はただただ驚いていたが、事態の深刻さをよく知る星先輩の困惑度合いは更に上をいく。重力操作系統の術式と解呪系統の術式など領分が全く違うから当然のことだが。

 

 俺としては口外さえされなければ何でも良い。一晩眠れば忘れるのだから、今日一日黙っていればよいだけだ。

 

「俺とパチンコ行ってくれるヤツ先輩以外にいないじゃん」

 

「今から快気祝いしようぜ」

 

「二人ともやめて」

 

 過ぎたる知識は身を滅ぼす。世の中には知らない方が良いことなど山のように存在し、それを十分理解している先輩方は何も聞かないという決断を下したようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局アレは本物だったの?」

 

 元気一杯の秤先輩のケツを蹴り飛ばし、売店で大量の食料を買い込む。じゃがりこにポテチ、おにぎりにレジ横スナック等々は俺たちの夜ご飯代わりだ。

 

 窓の外は橙色に染まり、夕陽は山の背から少し顔を出す程度でしかない。あと数十分もしない内に辺りは黒に包まれるだろう。

 

 じゃがりこを齧りながら星先輩が首を傾げる。やむを得ない撤退から数時間、流石に術師の再編が行われ派遣された頃だろう。

 

 

「さっき読んだコトリバコの話には似てっけど呪霊が寄ってくるなんて効果はないはずだよな?──そもそも創作話が実在する時点で何でもアリだろうがよ」

 

「秤先輩そっちのポッキー取ってくれ。、、どっかのイかれた呪詛師集団がアレを量産したんだろ。んで、故意か不本意かはともかく、そん中の誰かが作り方をネットの海にばら撒いたってとこじゃね?」

 

 

 掲示板の話が本当ならば効力の異なる箱呪物が一定数存在することになる。話の中では最強格の箱を除き残らず処分されたという結末だが、その真偽を確かめる術はない。

 

 何を思って掲示板にばら撒いたかまでは判別できないが、箱作成の言い出しっぺは呪術師で間違いないだろう。150年くらい前の加茂家にも"やらかしちゃった系"の呪術師が居るという話なので説得力がありすぎる。

 マジでやべぇよなこの界隈。

 

「何であんな田舎村に置いてあったんだろ」

 

「誰かが持ち込んだんだろたぶん」

 

 先ほども言ったが、倉庫の肥やしにできるような威力のブツじゃない。置いてあるだけで惨劇を生み出すトンデモ糞呪物だ。

 

 Twitterを立ち上げ和合村で検索をかける。「近世最悪の熊事件」として話題のトップを掻っ攫っていた。 

 流石に熊の所為で村ひとつ壊滅は無理があんだろ。上はこれをいいことに熊の仕業として隠蔽する気かね。

 

(誰が何のためにあんなもん持ち込んだ。──そもそも、アレを所持できている時点でマトモな相手じゃねぇな)

 

 呪詛師の仕業ならば犯人を処理して終わりだが、最強格のコトリバコなんぞという呪物の居場所を上が把握していないとは思えない。呪物そのものの効力はともかく、漏れ出た瘴気が呪霊を呼び寄せるという点において、ある意味広範囲の殺傷能力を持つのだ。

 

 笑えないのは()()()の仕業だった場合だ。呪詛師と通じたのか何なのかは知らんが、やっぱり加茂家の例のような可能性もある。

 

 

 悟くん曰く「腐ったミカン」の思惑などわからないが、"乙骨憂太"という全てを納得させる切り札がこちらにはあるのだ。悟くんの圧に負けて憂太の処刑を保留にしていることも、何とか目を盗んで憂太を処分したがっていることも知っている。

 

 正面突破は不可能であることを飛騨霊山で悟ったのだろう。ホントは俺がやったんだけど。

 絡め手で里香のガードを潜り抜け、乙骨憂太本体を狙う方法でも模索していたのだろうか。秤先輩がその"調整"のとばっちりを喰らうところだったのかもしれない。

 

(完全に妄想でしかないけどな。)

 

 俺を()()()子取箱も今回のコトリバコも、どっちも碌なもんじゃない。

 

 

 

 

 

 

『秤君、今どちらにいらっしゃいますか?一度退却なさったとの連絡は受けていますが』

 

 ぼりぼりとスナック菓子を齧る音に混じって携帯の音が響く。電話の主は伊地知さんだ。念の為撤退するということは伝わっていたようだが、術師の再編に追われてその後の対応が追いつかなかったようだ。

 

 こりゃいけねぇやと事態を学長に報告し、高専の所属の術師をかき集めたとか何とか。割と洒落にならない事案であったため、早い段階である程度の人数は集まったそうだ。モノがモノであるため派遣には慎重にならざるを得なかったようだが。

 

 

「松本だな。補助監督の方も問題ねえしこっちは気にすんな」

 

『それはよかった。、、それと秤君、これは何の音ですか?』

 

 

 星先輩と俺がぼりぼりとスナックを齧る音である。長野限定のじゃがりこ野沢菜昆布味がなかなかに美味しい。イチオシはたらこバターだが偶には期間限定も悪くない。

 

「睡ちゃん、これ私たちがいるのバレたら色々とマズイやつ?」

 

「ちゃんと言い訳できりゃ問題ねぇはずだ。もしかしたら新幹線が経費で落ちるかも」

 

 伊地知さんもまさか俺たちがこんなところに居るとは思わないだろう。案の定電話口から聞こえた俺たちの声に驚いていた。

 

 和合村事態に侵入したわけでもなければ、任務をほっぽり出したわけでもない。「金ちゃんが心配だったんですぅ」と峰不二子ばりの演技力で誤魔化すと、首こそ傾げられたようだが特に疑われることもなかった。実際上層部との不穏すぎるやり取りがあったわけだし。

 

 

『本当に体調に変化はありませんか?こちらは箱に引き寄せられた呪霊は勿論ですが、それ以上に箱自体の呪いに手を焼いていまして。取り敢えず成人男性に限定して村へ入っていただく予定です。ただ、未成年の男性術師もいらっしゃるので彼らを参加させるかどうか、、、』

 

 

 どうやら向こうも"コトリバコ"であると仮定して対処にあたるそうだ。術師編成にはどうやら秤先輩とおんなじような年齢の男性もいるようだ。先輩の実年齢知らんけど。

 

()()何ともなかったぜ。そんでも念には念を入れんなら、参加は見送るべきだろ」

 

 俺はやめといた方がいいと思う。

 法律認識によって基準の曲げられたあの箱は、恐らく20歳以下の人間は無差別に殺しにかかってくる。

 

『助言ありがとうございます。念の為彼には待機していただきましょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秤君の無事が確認できたことに胸を撫で下ろす。上層部の思惑に巻き込まれて学生が不利益を被るなど、絶対にあってはならないのだから。

 

 念には念をと年若い呪術師には待機してもらい、年配の呪術師中心で編成が組まれる。待機となった未成年の特別準1級術師を始めとした数人は不満気だが、先立の手前大人しくしているようだ。

 

 モノがモノであるために高専所属の術師の他に御三家関連の特別呪術師らも派遣されていた。本当に"コトリバコ"であった場合、回収するにしろ封印するにしろ話がかなりややこしくなる。

 

 何処の家から流出したのか──あり体に言えば「誰がやらかしたのか」である。責任の回避、あわよくば他家に責任をおっ被せてやろうと不穏な思惑が渦巻いているようだ。

 

(私の出る幕はありませんね、、)

 

 家系問題に首を突っ込んでも碌なことにならないのは決して長くはない人生で嫌というほど知っている。労基に訴えたらギリ勝てそうな傍若無尽に思える五条さんとて、"まだマシ"な部類に入るのだ。

 

 

「新田さん、承知の上だとは思いますが念の為もう一度。絶対に村へ近付かないでくださいね」

 

「流石にわかってるっすよ!んでも、あんなもんどうやって回収するんすか?」

 

 

 首を傾げる新田の疑問も尤もだ。中身の漏れ出した箱など際限なく呪霊を引き寄せるため、安易に動かすことは出来ない。

 

 俄かに辺りが騒がしくなり、喧騒の中心へと視線を向ける。報告を受けた年嵩の呪術師が額に青筋を立てて拳を震わせていた。宜しくないであろう知らせを告げた呪術師も困惑顔で携帯に向かって何やら喚いている。

 

「あれって三条特別1級ですよね?一体何がどうなって、、、」

 

 報告を入れた呪術師も三条一派の人間なのだろう、三条特別1級と共に最前線を離れて端にいた補助監督に何やら話しかけている。暗がりで表情までは窺えなかったが、彼らはそのまま現場から姿を眩ましてしまった。

 

 特別1級の離脱に周囲の反応は緊張半分と興味半分だ。半笑いで眺める嗅覚の鋭い幾人かは、彼らに起こった事象にある程度心当たりがあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伊地知さん!さっきのことなんすけど、、もうビックリですよ!」

 

 呪術師が帳の下りた和合村へ侵入してから幾分か時間の経過した頃、新田さんが興奮冷めやらぬ顔で突撃してきたのだ。先程まで姿が見えないと思っていたら、三条特別1級らと共にいた補助監督と話し込んでいたそうだ。

 

「一応任務中ですが、、」

 

「それはすみません、どうしても気になっちゃって、、。もちろん仕事はちゃんとしたっすよ!」

 

 三条家の抱える特別1級が先程息を引きとったそうだ。このような状況だから露見するのも時間の問題だと教えてもらえたようだが、笑い事にならない死に様だということだ。

 

 三条邸の敷地内で内臓を微塵に捻じ切られて亡くなっていたらしい。勿論他殺が疑われたが、侵入者の形跡も残穢も発見されなかった。

 

 内臓を捻じ切られるなど、まさに"コトリバコ"その物ではないか。通常の条件であれば、成人男性が呪いに罹患することはまずない。考えられるのは呪いの変質かーーー呪い返しによる影響か。

 

「『穴二つ』案件だったらしくて、、。それで三条特別1級が怒り狂ってるらしいっす」

 

「、、、それは無理もありませんね。他の呪いが原因とも考えられますが、このタイミングでしたら間違いないでしょう」

 

 これだから呪術界は物騒で嫌になる。

 

 コトリバコによる"呪殺"の失敗。コトリバコの呪いが三条家の呪術師へ還ったということは、件の術師が今回の騒ぎの元凶とみて概ね間違いないだろう。

 三条特別1級の様子では、知らぬ間の身内の暴挙に怒り心頭か計画の破綻に怒り心頭か、どちらのパターンも考え得る。

 

 特別1級を呪殺など相当だが、今回の惨状を見るに呪いの効力は納得だ。

 

(一体誰が呪いを、、)

 

 今回のコトリバコの呪いの効力は迅速かつ凶悪だ。"女子供にのみ効力を発揮する"という要素が縛りのように作用しているのだろう。加えて掲示板で不特定多数の恐怖を吸収した結果、作成当初よりも効力は幾分か上昇していると考えられる。

 

 とてもじゃないが、1人の術師が制御してしまうにはオーバースペックだ。粗方縛りなりでどうにかし、何らかの事情でペナルティを喰らったのだろう。

 

 

 ならば、何処かの呪われた第三者が己の呪いをどうにかしてしまったことになる。呪いは反転術式の類などでは対処不可能なものが多く、そもそも反転術式を使用できる呪術師など数える程しか存在しない。

 

 

 「因果応報っすねぇ。おっかないっす」と二の腕を摩る新田さんは知らぬことだが、己の背中にひんやりと冷たいものが走る。

 

 何故三条家の術師がこの様な凶行に及んだのか、穴二つ案件ならば誰のどの様な行為によるものか。

 

 そこまで考えて首を振る。「知りたがらない」ということは呪術界においてある意味1番大切な能力だ。好奇心は猫を殺す、というがこの場合死ぬのは人であり殺すのもまた人である。

 

 

「そういえば、ちょっと前にも三条家の1級呪術師が失踪したって噂なんスけど、、。流石に今回のには関係ないか」

 

 何気なく問いかけてくる新田の言葉に思わず頭を抱えたくなった。

 

 

 

 それなりの補助監督歴を持つ己の元へ舞い込んできた不穏な噂。呪術界の行方不明事案など9割方死亡案件とみて問題ない。立て続けに三条の抱える強者が消え去るなど、中々に穏やかでない。

 

 結果次第では三条家の負う傷は中々のものになるはずだ。家々の隆盛激しい呪術界、一歩間違えたならば待つのは没落のみ。だからこそ、平安から生き残ってきた御三家は絶対的な権力を保持するのだ。例えば、一般家庭出身の呪術師との揉め事などあっさりと握り潰せてしまう程に。

 

 やめておこう。五条さんも何も言わない上に本人も気がついている様子はない為、敢えて()の事情は知ることの無いようにしている。

 

 

 

『補助監督を目指すことにしたんだな。俺の父さんも補助監督だし、よかったら紹介しようか?』

 

 お前と一緒に任務に行けたら安心だな、と声を掛けてくれた先輩の姿が記憶の淵を過ぎる。入学1年目の新人と卒業間近の"1級最強"、関わる機会など無いと思っていたのだが意外にも彼は人好きな性質だった。

 

 五条さんの無茶振り(パワハラ)に鉄拳を落としつつ、眉を下げてコーヒーを差し入れてくれていた日常が今では懐かしい。あの五条さんが大人しく()()()()いたのも信じられないが。

 

 

 

 だから、あの日何があったのかを伊地知潔高は知ってしまわぬように心掛けている。




次回 過去編的なアレ デュエルスタンバイ!!

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