アビドス「ニセ」スナオオカミ   作:フドル

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安いもんだ……、3天井ぐらい……。
……やっぱ辛ぇわ。せめて1人ぐらい天井前に来て欲しかったよ…。
てなわけでホシノ達3人、致命傷でお迎え出来ました。

それと続きです。コメントとか高評価とかありがとうございます。


ん、トリニティ

「おぉ、ニセコちゃん。強盗はどうだった?」

「ん、バッチリ」

 

 下水道を通ってネルから無事に逃げ切ったニセコは、現在テストの手応えを聞くような気軽さで強盗の成果を聞いてきた顔馴染みの人たちにグッドサインを返しながらブラックマーケットを歩いていた。

 ニセコを知っているブラックマーケットの住民たちはパンパンに膨らんだボストンバッグから覗く札束に目を付け、既に連絡が届いていたのか早速と言わんばかりにスーツを着こなしているガタイの良いロボットが現れて揉み手をしながらニセコに近付き声をかける。

 

「こんにちはニセコさん。強盗の助けになりそうな武器を最近仕入れたのですが、見ていかれますか?」

「ん、見たい」

「そう言ってくれると思ってました。 おい、テメェら!」

 

 どんな商品でも強盗と言えばニセコが釣れるのはここでは周知の事実。自社の商品を売りつけようと続々と集まってくる周りの商人たちが先を越されたことに悔しそうな顔をするのを横目に見つつ、一番手を得た商人ロボは部下に声をかけて前もって準備していた商品を持って来させた。

 

「これは、無反動砲?」

「えぇ、最近開発された我が社のオリジナルです。従来のように着弾して爆発することはありませんが、その分貫通力に力を入れた一品ですよ」

「持っても?」

「どうぞ、心ゆくままに」

 

 商人から許可を取り、部下から差し出された無反動砲を手に取って砲身を構えたり持った際の重さなどを確かめていくニセコ。そして最後は空に銃口を向け、躊躇なく発砲した。

 

「うん、金庫を破るのに使えそう」

「では?」

「でも嵩張るから今回は見送らせて」

「……そうですか、残念です」

 

 空へ飛んでいく弾を見て大凡の威力を確認。使い道を考えたところ、役立つ場面はあるがそこまで持っていくのは大変という理由でニセコは商品を返品した。

 

「折り畳むことが出来たら購入したい」

「成程、わかりました」

「あとこの無反動砲みたいなやつで散弾を撃てるものはある? あるなら言い値で買いたい」

「散弾ですか?少しお待ちを。 ……ありますね。ニセコさんはお得意様ですし、8万円程度でどうでしょうか?」

「じゃあ予備も含めて5門、それから弾も30発くらい買う。これくらいあれば足りる?」

「これはこれは、毎度ありがとうございます。 商品はいつものところで?」

「うん、よろしく」

 

 ニセコから要求された武器を手持ちのタブレットで調べ、金額込みでそれをニセコに教えると、性能確認もせずに即決でニセコは購入を決定した。

 

 ニセコから必要金額より少し多めのお金を渡された商人はニセコに頭を下げた後、スッと下がっていつの間にか出来ていた集団の中に混じる。順番は早い者勝ちだが商品のPRは一回につき一つまで。余計な争いを起こしてお得意様であるニセコが離れないように決めた商人たちのルールである。

 俗に言う順番は守りましょう、だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ん、いっぱい買った」

 

 熱烈な商品PRを受け、金があるからといつものように沢山購入してしまったニセコ。しかしその顔に後悔は無く、むしろ満足したかのような表情で自宅の横にある宅配品置き場に業者さんがどんどん積み上げていく箱を眺めていた。

 

 全ての受け取り証明書にサインを済ませたニセコはお疲れ様という意を込めて適当に購入した飲み物を業者さんに渡した後、早速荷解きを始める。

 

 包装を解いた銃器を軽く目視で点検した後、ドローンに乗せて地下の武器置き場へ搬送。ここで購入品に欠陥があるなどとニセコは一切疑っていない。企業がお得意様であるニセコに欠陥品を送ってしまい、次から購入拒否をされないようにしっかり確認しているのを知っているからだ。

 キチンと購入品は用途ごとに分けているので後でどういった用途で使うつもりだったのか悩む必要もない。ぶっちゃけ役割が被った武器は多々あるが、様々な状況を考慮するとどの武器種も完璧な上位互換はないため持っておいて損はない。

 

 今回の個人的な目玉商品は、やはり最初に買った散弾型無反動砲だろう。これはネルみたいなスピードが速い生徒と対峙した際、役に立つとニセコが考えたからだ。

 

 散弾による面制圧。これがスピード重視の生徒に対するニセコの解答で、いかに速かろうとも進む範囲全てに弾をばら撒けば当たるやろ理論だ。しかし肝心の相手が当たってもピンピンしている可能性は考慮外とする。

 

 とは言ったものの、ネルみたいに走っている間は狙いをつけられないレベルのスピードを出す生徒はそういない。折角買ったけど、これは次のミレニアム銀行強盗までお預けだとニセコは大切に無反動砲を仕舞い込んだ。

 

 その後も次々とニセコは商品を自宅に運ぶ。ニセコの自宅は二階建てに地下室ありという構成で、ニセコの居住スペースが一階、銃器などが地下、ピッキングなどのツール類やピッキングの練習に使う錠などが2階という配分だ。一時はスケバンたちも一緒に暮らしていたのだが、このままだと快適な暮らしであたしたちはダメになっちまうという理由で離れたので今は一人暮らしだ。

 

「ん、終わった」

 

 ニセコが商品を全て運んだ頃には既に夕暮れになっていた。いい時間だしそろそろご飯にしようと凝った身体を伸ばしながらニセコは考え、そんなニセコの考えを予想していたかのようにスケバンからモモトークでご飯の誘いが送られてくる。

 

 それを見たニセコは大喜びですぐに行くと返信し、札束を握って指定された飯屋へ突撃するのだった。

 

 ちなみにスケバンは奢って欲しくて呼んだんじゃないと叫んだが、ニセコの計算された角度から繰り出される上目遣いをモロに受けて敗北…! あえなくご馳走になった。

 あとこの時刻あたりでニセコによる被害報告と復旧に必要な想定金額の統計を見たセミナー所属のとある人が寝込んだらしい。お労しいね。

 

 

 

 

 

 

 

 ご飯を食べながらスケバンたちに今日あった出来事を親に話す子どものようなテンションで銀行強盗の話をした次の日、ニセコは再びミレニアムへやって来ていた。目的は今回使用せずに放置した武器の回収である。

 

 とはいえ全てを回収するわけではない。次の強盗にそのまま使えそうなものは軽く点検して放置し、絶対に使わないものだけ持って帰る。別に放棄でも構わないのに、使わないまま捨てるのは勿体無いという変なところで前世の影響が出ているニセコである。

 ちなみにニセコが武器の回収を元からしなかった場合、今頃ニセコの強盗被害があった自治区は適当なロッカーを破壊したりゴミ箱を開ければ爆発物が出てくる魔境になっていたりする。

 

 とはいえ使わないものを全て回収するのは流石に数が多くて無理なので、今回はロケラン系の大きめなものと地雷などの爆発物を幾つか持って帰る予定だ。怪しまれないようにある程度の数しか一度に持っていけないのでこの作業は何日もかけて行うし、ニセコも出来たら回収しよう程度なので途中で銀行強盗をやりたくなったらそちらの下見などに予定が変更されることも多々ある。

 

 ミレニアムの自治区を歩き、途中でニセコが捜査網を混乱させるために爆破した箇所を復旧している業者さんにつっかかる太ももが他の生徒よりも比較的太い生徒を横目に見ながらニセコは武器の回収を黙々と済ませる。

 

「だ・か・ら‼︎ ただ復旧させるわけじゃなくて対策するのよ‼︎ 電磁パルスによるものなんでしょう⁉︎」

「ですからそのために必要な費用がないんです! それに必要無いってそちらから匿名の指示も‼︎」

「誰よ‼︎そんな指示を出した人は⁉︎」

「ユ、ユウカちゃん落ち着いて……」

 

 血走った恐ろしい目をしながら修理に来たであろう獣人業者の胸ぐらを掴んでぐわんぐわんと振り回す生徒に荒れてるなぁなどと自分が原因なのに他人事のように考えながら武器の回収を済ませたニセコはその場を後にした。あの気迫は誰だって怖いのである。巻き込まれたくないともいう。

 

 

 

 

 

 さて、そんな感じで数日かけてミレニアムに置いた武器の回収を済ませたニセコは改めて銀行強盗を実行した。場所はネルに追いかけられる前に考えていたニセコが初めて銀行強盗をしたトリニティの木端な銀行だ。

 タイムもしっかりと計っており、なんと初めての時よりも5分短縮出来た。初めてでは手こずっていた職員や生徒たちの制圧とお金の詰め込みもスムーズに終わり、大変満足な結果だ。

 

 しかしトリニティ側も対策をしているのか正義実現委員会の到着がだんだんと早くなっている。キチンと組織として部隊を展開され、狙撃手によって遠距離から頭を狙撃されたことはニセコの強盗生活でも初めてのことだった。

 

 それでもこれこそ銀行強盗とニセコのテンションがハイになったことで初撃以外の狙撃は全て回避。結果としては無事に逃げ切ることは出来たが、ここにニセコ調べの要注意人物である剣先ツルギがいれば捕まっていたかもしれない。

 

 今まで実行した強盗のなかでも上位にあたる程の危険な場面だったわけだが、ニセコの感想は「銀行強盗らしくてとっても楽しかった」だった。狙撃を躱しつつ数で押してくる部隊を切り抜けた時の興奮がなかなか収まらず、是非この感情を共有したいとハイテンションのままふんすふんすしながら狙撃によって出来た青痣をそのままにしてスケバンたちに今回のことを話せば、無茶するなと拳骨が降ってきて強制的に鎮静化されたが。

 

 そんなニセコだったが、彼女は現在悩みに悩んでいた。その内容はそろそろ強盗のスタイルを変えた方がいいのではないか?という本人からすると真剣だが他人からすると知らんがなみたいな内容だ。

 

 スタイルを変えるなんて言っているが、ニセコは永続的にスタイルを変更するつもりはない。これは謂わば味変。楽しい銀行強盗をマンネリ化させずに楽しめるように敢えてのスタイル変更…! 今までの銀行強盗とは一転して夜中に誰にも気付かれずに侵入してお金を奪う…!

 

 では何故ただのスタイル変更に数時間もニセコがシスターフッド所属のリーダーみたいなぐぬぬ顔を披露しているのかだが、ニセコはこれを銀行強盗に対する冒涜なのでは?と考えているからだ。

 

 正面から制圧してお金を周りが見ているなかで堂々と入手するのが強盗であって、こそこそと銀行に侵入してお金を持って帰るのはただの銀行窃盗なのではないかとニセコは悩んでいるのだ。銀行強盗のプロを自認している自分は強盗にこだわるべきではないか?そもそもシロコがやったのは銀行強盗なのでやっぱりこれは違うのではないか?と。

 

 腕を組んでうーんと悩んでみるが結局ニセコだけでは答えを出せず、周りに聞いて回ることに。その結果、ヘルメット団たちはお金を奪うなら一緒では?と言い、ブラックマーケットの大人たちは窃盗の方がお金を多く奪えそうなのでお金を運ぶ用の車と一緒に窃盗を勧めてきた。

 

 そして最後にスケバンたちに聞けば、「ニセコが楽しかったらいいんじゃないか?でも怪我はするなよ」とニセコの頭を撫でながら答え、それがヘルメット団たちのような投げやりな考えではなく、しっかりと考えた上での発言だと理解したニセコは即座に強盗か窃盗かで統計を取っていた紙を破り捨てた。

 やはりスケバン…! スケバンしか勝たん…‼︎

 

 このあと滅茶苦茶ご飯を奢った。スケバンたちは後で集まって妹分にこんなに甘やかされてあたしたちはこれから大丈夫かと本気で悩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 スケバンたちの助言を得て、何事も経験だし取り敢えずやってみようと考えたニセコは早速装備を整えた。今回は正面からの突入ではなく夜間の侵入なのでいつもとは違う行動を取らなければならない。

 

 そのため今まで縁が無かった装備も必要になり、使いこなすために練習も必要になる。まずこれに数日程要した。

 

 次に盗んだ金を運搬する手段。最初はいつもみたいにボストンバッグでいいかと考えていたが、気付かれない限り盗み放題だと気付いたので車での運搬に変更。ネルによって破壊されたバイクを製造した企業へ行き、札束の山と共に一番良いのを頼むと車を注文する。

 数週間後、誰がここまでやれと言った?なんて言いたくなるものが届いたが、まぁ車として使えるから問題なし。取り扱い説明書を読みながら練習に励む。

 

 そして最後に一番大事な下見も行う。狙う銀行は今回もトリニティだ。ニセコの経験上、トリニティは一番ニセコの想定通りな動きをしてくれるため対処がしやすく、練習だけではわからない新しい装備の使用感などが確かめやすいのだ。

 

 さらに気付かれない前提ならより多くお金があるところを狙おうとのことで、ニセコはトリニティ内で最大の規模を誇る銀行に狙いを定めた。最大の名に恥じず、警備は比較的厳重。突入するだけなら簡単だが、潜入なら難しいのは確実。だからこそ腕がなるとニセコは思わず笑みを浮かべる。

 

 しかし流石に夜の銀行内ではどんなセキュリティが動いているのかニセコでもわからないし、潜入することに対してこだわりなんて無いため今回は外部から情報を仕入れることに。

 

 そんなことが可能なのかと聞かれれば、少し前からゲヘナがトリニティ内の銀行を調べ上げてネットにばら撒いているので可能だ。

 それに対抗してトリニティが混ぜたであろうガセ情報も多々あるが、銀行強盗を繰り返して来たニセコはどんな装置があるかをそれなりに予想出来るので、本物と思われる情報を見抜くのは簡単なことだった。

 

 とはいえ警備のローテーションや配置は何処にも載ってなかったため、そこはニセコが夜な夜なトリニティに行って調べ上げた。いつものように堂々とするのは今回に限っては逆に目立つので、近場の建物の屋上に忍び込んで双眼鏡で遠方から警備員を眺めるだけだったが、数日かけて様々な角度から行うことで得た情報を繋ぎ合わせれば十分役に立つ。

 

 これで準備は整ったので決行日の朝に最終下見を行い、お昼頃に就寝。夜中に眠くなって失敗したなんてプロとしてあってはならないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ〜あ、眠い……」

 

 トリニティのとある銀行にて、1人のトリニティ生が大きな欠伸とともに辺りを警戒していた。

 時刻は深夜。本来なら明日の学業に響かないように寝ているはずの時間だが、最近出回り始めたこのバイトは金払いが良いのに加え、明日は休みなのもあって少女はお小遣いを稼ぐ目的でこのバイトを受けていた。

 

 バイト内容は簡単で、指定時間までここを警備するだけ。不審な人物が現れれば然るべき場所へ連絡した後で対処に移る必要があるが、少女は今まで不審な人物を見たことがない。

 

 そもそもこのバイトが発生した理由であろう銀行強盗犯の活動時間は銀行が開いてから閉まるまでだ。彼女が世間に認知されてからもうすぐ1年だが、夜の銀行に来たことは一度たりともない。そのため少女にとってこのバイトは数時間突っ立っているだけでお金が貰える非常においしいバイトという認識になっていた。

 

 バイトが終わったら別のところを警備している子を誘ってケーキでも食べに行こう。そんなことを考え、ケーキを食べる自分を想像しているのか楽しそうに翼を動かす少女の姿はまさに隙だらけ。

 

 そんな少女の背後から、灯りに照らされていない夜の暗闇に紛れて暗視ゴーグルをつけた水着姿の不審者がヌッと現れた。その不審者は隙だらけの少女の後ろ姿を注意深く眺めた後、何かの液体が染み付いたハンカチを手に持って足音を立てずに距離を詰める。

 

「むぐ⁉︎ んん゛ーー‼︎」

 

 背後から膝を蹴られたことでカクンと少女の体勢が崩れ、少女の脳が何者かに攻撃されたと理解する前に下がってきた口と鼻を覆うようにハンカチを押し付ける不審者。予想すらしていなかった突然の襲撃に、少女は目を白黒させながら反射的に拘束から逃れようと抵抗するが、脳内がパニックになっているため考えた通りに身体が動かない。

 

「ん、んん…」

 

 やがて少女の力が抜けていき、ハンカチについた睡眠薬の効果で緩やかに夢の世界へ旅立っていった。不審者は少女が寝たことを確認すると、音が鳴らないようにゆっくりと少女を地面に寝かせ、装備の解除や少女のポケット漁りを行った後で縄を取り出して縛り上げた。亀甲縛りである。追加で大きく開脚もしている。

 

「……ヨシ」

 

 そんな少女を見て、不審者……もといニセコは頷く。眠った少女からすると全然ヨシな体勢じゃないが、この縛り方にはもちろん訳がある。決してニセコの趣味じゃない。

 

 何度でも言うがトリニティはお嬢様学校だ。そのため生徒もお嬢様みたいな人が多い。

 そんなお嬢様が目覚めるなりパンツ丸見えの恥ずかしい格好をしていると知りながら周りに助けを求めるだろうか?最低でも開脚は自分でなんとかしたいはずだろう。

 

 そのためニセコは少女からすぐに見つかる届きそうで届かない位置にナイフを置いた。これなら声を出して周りに助けを求める前に自分の恥ずかしい姿をどうにかしようとナイフへ手を伸ばすはずだ。

 

 これでさらに時間を稼ぐことが可能。今の少女で本職の者を含んだ警備員は全て眠らせたので、ニセコは早速建物へ向かって足を進める。そして裏口の電子ロック錠に、背負っていたカバンから取り出したタブレットから伸びているUSBケーブルを差し込み、いくつかの操作を行って解除。堂々と中に侵入する。

 

 事前情報で中に人が居ないのは知っているが、鵜呑みにするのは良くないのでクリアリングを行いながらニセコは慎重かつ大胆に進み、日中に職員が働くオフィスへ移動。そして目当ての装置の前まで行くと、背負っているカバンの大半を占めていた装置を取り出した。

 

「ん、ミレニアムなら無理だったけど、トリニティなら……うん、出来た」

 

 装置を立ち上げ、先端に洗濯バサミのようなものが付いているケーブルをトリニティ側の装置のカバーを外してその先にあるケーブルに挟む。その後に装置の決定ボタンを押すと、装置についているキーボードが勝手に動き出し、少しすると作業が完了したことを報せる音が静かに響く。

 

 ニセコが今使用したのは簡単に言うならハッキング装置だ。それによって銀行のセキュリティが定期的に飛ばす異常無しかどうかを連絡する装置を乗っ取った。これでこの後の定期連絡は全て問題なしとなるので多少無茶な動きをしても問題ない。

 かといって油断は禁物。無力化したのは外部への連絡のみなので、銀行内の警報装置は無力化出来ていない。

 

「ん、ここから本番」

 

 こういう施設は金庫前に赤外線レーザーとかがあるのが当たり前。流石のゲヘナでも金庫前は調べることが出来なかったのか情報はなかったが、ニセコは前世知識で知っているので準備は万端だ。

 

 先程までは地味な作業だったが、ここから面白くなる。準備した道具を取り出しつつ、ニセコはドキドキし始めた自分に気付いて少しだけ口角を上げた。

 

 

 

 

 

 何も無かった。鍵を破壊して開け放たれた金庫を前にして、ニセコは両手と両膝をついて落ち込んでいた。

 

 本当に何も無かった。赤外線レーザーも落とし穴もない。唯一あったのは金庫前の監視カメラのみ。それもニセコにとって無力化は容易く、数秒も掛からなかった。

 

「スタイリッシュに赤外線レーザーを潜り抜けたかったな……」

 

 個人的な今回の目玉がそもそも無かったことに落ち込むが、無いものは仕方ないとニセコは気持ちを切り替えて金庫内に侵入。そして近くに置いてある札束を無造作に掴むが、その表面を見ると目を見開き、次には両頬をぷくーと膨らませた。

 

「これ、偽札だ」

 

 普段から札束をよく見るニセコにはわかる。一見そっくりに見えるが細部が違うことに。次々と置かれている札束を確かめていくが、金庫の扉から近い場所は全て偽札で埋め尽くされていた。

 

「ん、私対策」

 

 その意味をニセコは正しく理解した。ニセコは1人で銀行強盗をしているため、どうしても金庫の破壊などはドローンに頼りがちになる。そしてドローンには突破した金庫先にある札束を持ってくるようにプログラムしている。

 

 しかしドローンは逃亡時に重荷となるので基本は銀行内に放棄する。そのため札束が本物か偽物かを判断出来るほど高性能なプログラムは搭載していない。

 

 なので金庫に入ってすぐの位置に偽札……もっと細かく言うなら札束と同じ形をした長方形の物体を置いておけば、ドローンはそれを札束だと誤認して持っていく。そしてニセコがそれに気付かずそのまま持って帰ればそれで良し、上手くいけばブラックマーケットで偽札を出し、商人たちのニセコに対する信用を落とすことが出来る。

 逆に気付いても良い。本物の札束を手に入れるためにはニセコ自身が金庫に行かなければならず、その時間があれば治安部隊が到着する。

 

「むぅ……」

 

 恐らくこれは最近になって実行され、一番大きなこの銀行から準備されているのだろう。ここで知れたのは良かったが、なんだか面白くない。それがニセコの感想だった。

 

 それと同時に自身の迂闊さにも気付いた。今まで大丈夫だから良かったが、札束の内部を切り抜いて発信機や爆弾を仕掛けられる可能性もあった。偽札だって、本物と良く似ているので強盗をしている最中なら急いでいることもあって気付かなかったかもしれない。

 

 これで銀行強盗のプロを名乗るなんてお笑い草だ。無意識のうちに頬が熱くなり、恥ずかしい気持ちを誤魔化すようにニセコは偽札を握り潰す。

 

 それでもまだ恥ずかしいが、反省して次からはもっと注意するべきと自分の気持ちを切り替えた。それに今は窃盗中、なら何をするべきかは明確。

 

 まずニセコは奥の方に積み上げられている本物の札束を色々置いて来たことで軽くなったカバンに詰め込み、ぱんぱんにしてから玄関へ向かう。そこで一度カバンを置くと自分だけ銀行から出て行き、今回準備した軽装甲車に乗って堂々と帰還。銀行の前に停めると後部扉を開けてから置いていたカバンを車内へ放り投げ、その手で軽装甲車に積んでいた空の袋を持って金庫に再度突撃。金庫を空にする勢いで札束をドンドン詰め込み、車に乗せていく。

 

 数分後、用意していた袋は無くなり、札束で膨らんだ袋が車内の大半を占めていた。しかしまだそれなりにスペースは残っており、どうせならここにも何か詰めたいと考えるニセコ。

 

「……金塊って高いのかな」

 

 金庫内で悩んでいたニセコは、視界の端にある金塊へ目を向ける。札束と並べてみると同じ大きさ。重さは金塊が上。今までは嵩張るのに加えて金にするためには売るという余計な手間を挟む必要があるので避けていたが、車なら金塊の重さは大して気にならない。売るという手間もどれくらいの時間が必要なのか試すのに良い機会だ。やらない手はない。

 

 せっせこ金塊を運び、車に詰め込んで行くニセコ。車内ギリギリまで詰め込み終わると、ニセコは満足気に目を細めた。

 

「ん、満足」

 

 やることはやったので、ニセコは車に乗り込もうとするが、その際に目覚めていた警備員バイトの少女が顔を真っ赤にしてナイフを手に入れようとビタンビタンしていることに気付いたので、脇に手を入れて初期位置に戻しておく。

 

 少女から漏れる濁音混じりの抗議の叫びを無視して今度こそニセコは車に乗り込み、身体の前でクロスするタイプのシートベルトを装着してから出発。乗り込む際に少女の前に置いていたナイフは回収したので少女は最低でも1人に恥ずかしい格好を見られることが確定した。まぁ、彼女と同じ格好の子は他にもいるので大丈夫。

 

 今回の結果を見れば大成功は間違いなしなのだが、ニセコはまだやることがある。信号機が赤になり、車を止めたタイミングでニセコは自身の近くに置いてある収納箱を開けて中の起爆スイッチを取り出した。

 

 爆発する爆弾は、ニセコが持ち込んだ装置と偽札の山の近くに置いてある。スイッチの安全装置は既に外しているので、一回でも押せば即座にドカンだ。

 

 偽札のほうの爆弾は予備のやつだったが、どうせなら使ってしまえ精神だ。流石に金庫内で爆破させるのは残った本物の札束が可哀想なので爆発しても影響がない場所まで偽札を運び込んでいる。

 

 後はスイッチを押して起爆させるだけ。しかしトリニティ自治区内で押すのは挑戦者すぎる。メインの帰還ルートはトリニティ学園のすぐ近くを通る予定なのだ。

 

 スイッチの信号はトリニティ自治区を出る直前まで届くので、そこで起爆する。そうすればトリニティ側が慌てて捜索する頃にはニセコは既にブラックマーケットの中だ。

 

 それまでは大切に置いておこう。信号機が青になったが前に車はいないので、車を発進させつつもニセコは視線を横に向けてスイッチを元の位置に戻した、その時だった。

 

「むむむむむむむむむ」

 

 ガタゴトと車体が大きく揺れる。何事とニセコが外を見れば、先程まで綺麗だった道路が知らぬ間に凹凸のある荒れた道へと変化していた。

 少なくともニセコが寝る前に行った最後の下見の時点ではこんな道は無かったので、恐らくニセコが下見を済ませて帰った後にここら辺で誰かが暴れたのだろう。マンモス校のトリニティとはいえ流石に問題発生当日で破壊されたものを元通りには出来ないようだ。

 

 行きで気付きそうなものだが、通ってきた道は大して凹凸がないためちょっと揺れたかな程度だった。

 

 まぁ、揺れるだけで走るのに何の支障も無いし、このまま行こう。しかしその考えは背後から……具体的には先程まで忍び込んでいた銀行辺りから鳴り響いた爆発音によって遮られた。

 

「…………あっ」

 

 何故急に爆発が?誰かが起爆させた? そんなニセコの疑問に答えたのは、収納箱に入れて固定していなかった起爆スイッチだった。ニセコが驚いて外を確認するレベルで車内が揺れたので、収納箱に入っていた起爆スイッチも当然箱の中で動き回ったのだろう。それで壁に当たった際にスイッチが入った、と。

 

 そんなことあるか普通?

 

「ん、ギャグ漫画展開」

 

 爆発から生き残った銀行の警報装置が夜の静寂を切り裂くように鳴り響く中、ニセコは呑気にそんなことを口にする。その姿に焦りはなく、いたって自然体だ。

 それもそのはず、ニセコはすでに脱出しているのでそもそも慌てる必要がない。むしろここで慌ててスピードを上げればそちらの方が怪しまれるだろう。

 

 なので道路の制限速度を守りながら、ニセコはパジャマ姿のまま慌てて銀行に向かって走る正義実現委員会らしき人物を見送りながらのんびりと帰る。

 

 車は進み続け、トリニティ学園が見える場所まで来たのでついでとばかりに様子を見れば、行きは数箇所しか明かりがついてなかったのに今では眩い明かりがそこらじゅうに点灯しており、校内を慌ただしく生徒が出入りしている。

 

 そんなトリニティ学園の校門前をニセコは堂々と通り過ぎるが、やはり誰も気に留めない。爆発した時はどうしたものかと悩んだがこの様子だと問題なさそうだ。

 

 個人的難所のトリニティ学園前通過は難なく済ませたので、後は郊外へ向かって走るだけ。捜査網も銀行を中心に広がっているので既に逃れていると見てもいいはずだ。

 

 それから数分後。追っ手がいないのは楽だけど、何か物足りない。でもわざわざ騒ぎを起こして追っ手に来てもらうのは違うよなぁ。なんてことを考え、思考を脱線させながらニセコが車を走らせていれば、前方から歩道を走ってくる生徒が現れた。

 

 その生徒はこんな時間にもかかわらずしっかりと正義実現委員会の服を着用しており、キリッとした表情なのに口端に生クリームをつけたまま走る姿は滑稽に見えるがどこか様になっている。

 

「羽川ハスミ」

 

 走る生徒の姿を捉えたニセコはその生徒の名前を呟く。彼女のことは先の銀行強盗で頭を狙撃されたのでよく覚えている。武器がスナイパーの癖にスコープをつけないため反射光から場所の特定などが出来ず、回避が面倒だったのが印象的だった。

 当時は幸いにも狙撃ポイントが少ないのに加え、彼女の翼が目立ったので狙撃場所に気付けたが、夜だったら危なかったかもしれない。

 

 そのことからニセコ作の要注意人物ランキングでは10位以内に入っている。ちなみに1位は白モップ、2位はネル、3位はホシノだ。

 

 しかしランキング上位とはいえ、今回は気にする必要はない。現に今彼女はコチラに気付かないまま通り抜けた。目指す先は銀行だろう。

 

 そのまま走っていくハスミをバックミラーで何となしにニセコが眺めていると、彼女は走りながら無線機を取り出し、何処かと連絡を開始。しばらくすると何かに気付いた様子で足を止め、いきなりニセコの方へ振り返った。

 

「そこの軽装甲車!止まりなさい‼︎」

 

 静かな夜にハスミの声はよく響く。しかしニセコは止まらない。そもそも止まる理由がない。

 

 止まる様子を見せないニセコに、ハスミは即座にスナイパーライフルを取り出して構えた。そして警告もなく発砲。撃ち出された弾は見事に左後輪へ命中したが、ニセコの車はパンクすることなく走り続ける。

 

「ん、対策済み」

 

 この車は銀行強盗から帰るために造られた車だ。そのためスピードと防御力に極振りされており、防弾装備は当たり前のように搭載されている。

 

 流石にたっぷりと神秘が込められた弾丸は防ぎ切れないが、それでも損傷止まりで大破までいかないことからこの防御力がよくわかるだろう。

 

「警備員からの情報で車はバレると思ってたけど……ハスミがここにいたのは想定外」

 

 無線機に向かって叫ぶハスミの様子から、ニセコの現在地は完全にトリニティ側に気付かれたと見ていいだろう。

 警備員が何を話したところで既に手遅れだから問題ないとニセコは判断していたが、まさかこんな時間にも正義実現委員会に所属している者がパトロールをしているとは考えていなかった。

 

 自身の下見が甘かったことに本当に何であんな自信満々に銀行強盗のプロなんて名乗っていたのかと恥ずかしさで穴に入りたい気持ちを誤魔化すようにニセコは強くアクセルを踏み込んだ。

 

 バレてしまった以上、速度制限なんて気にする必要がない。ドンドン加速していく車にハスミは狙撃を続けるが、装甲に傷がつくだけで車体を貫通するまでは至らない。

 

 同じ箇所を撃ち続ければいつか貫通するだろうが、それよりも早くニセコは角を曲がって射線から外れた。ハスミは急いで追うが、彼女が角を曲がった頃には既にニセコの車は豆粒サイズとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「そこのけそこのけ私が通る」

 

 ハスミを振り切ったニセコは現在スピードを上げながら道路を爆走していた。夜でも走っている数少ない車にクラクションを鳴らして迷惑運転をしつつ、ニセコはブラックマーケットを目指す。

 

 このまま行ければそれで良し。そうニセコは考えるが、それがフラグになったのか、ニセコが通り過ぎた曲がり角から多数のバイクが現れた。

 

 恐らくトリニティに控えていた残りがハスミの連絡を聞いて急遽発進してきたのだろう。よく見れば武装もロケランなどの対戦車用のものばかりだ。

 

「ん、仕方ない」

 

 それを見たニセコは運転席の各所に配置されているボタンを次々と押していく。天井の2つ、レバー横の3つ、そして前方で横並びに配置された五つをなぞるように押せば、車体に変化が現れる。

 

 追加装甲が車体を覆うように展開され、その装甲に隠されていた防御兵装が迫り上がりながら姿を現す。ニセコの運転席にも変化が現れ、収納箱が車体後部に下がってその代わりに手榴弾などの投擲武器や拳銃が搭載された箱がニセコの横にスライドしてくる。

 

 そして早速と言わんばかりにニセコは手榴弾を手に取り、片手はハンドル操作で動かせないので代わりに噛んでピンを引き抜き、ピンを吐き出してから隣の窓を開けてタイミングを見て外へ手榴弾をリリース。

 

「⁉︎ グレネード‼︎」

「えぇ⁉︎」

 

 リリースされた手榴弾が爆発するタイミングでその近くを正義実現委員会が通る。先頭を走っているバイクのサイドカーに乗っていた1人が投下された手榴弾に気付き、叫ぶことで周囲にその存在を知らせるが、当の本人が乗っているバイクの運転手が気付いていなかったことで手榴弾の爆発が直撃。

 

 バイクは大破したが、キヴォトス人なので本人は無事。追いかけっこから脱落した彼女は何で気付かないのよー!と煤けた身体でポカポカと相方の身体を叩いていた。

 

 そんな彼女たちの犠牲もあって、脱落は彼女たちだけで済む。残ったメンバーはニセコが投下する手榴弾を警戒しながらロケランを構え、準備出来たものから次々と発射。

 

 しかしニセコもハンドルをきって蛇行運転をすることでロケランの狙いを躱しつつ逃げる。新品のタイヤはしっかりと道路を噛むのでスリップも今のところ無い。

 

「ロックオンは⁉︎」

「駄目!出来ない‼︎ 多分車体上部の装置がジャマー装置! それもかなり高性能なやつ‼︎」

 

「むぅ、撃退用の砲台くらいは用意してもらえばよかったかな」

 

 大声で情報の交換を行う追跡者たちの話に耳を傾けつつ、今も自身の真横を通り過ぎた弾頭を見ながらニセコは呟く。そしてこれ幸いと弾頭が前方に着弾したことで発生した土煙に紛れこませるように手榴弾を投下。煙のせいで気付かなかったのか、数台がまた巻き込まれて脱落する。

 

「待てぇ‼︎」

「逃げるなぁ‼︎ 私の創作活動時間を返せぇ‼︎」

 

「ん? 私はお金しか盗んでない」

 

 この調子で行けば余裕かな。そうニセコが考え始めた時、追跡者たちの後ろから訳の分からないことを叫ぶ新たな追跡者が登場。あっという間に最前列まで進んで来て叫び続ける彼女にニセコは聞こえてないと理解しつつも真面目に応えて速度を上げて逃げる。しかし彼女は距離を詰め続け、ニセコによる手榴弾の投下なども難なく回避する。そのことから彼女のドライブテクニックはかなりのものだとわかる。

 

 ニセコはわかっていないが、彼女の創作活動時間はニセコによる銀行強盗が発生し、緊急出動を命じられたせいで無くなったのでニセコに返せと言うのはあながち間違いではない。

 

 フィーバータイムだったのにぃ…! 創作の神が降りてきたのにぃ…!と怨嗟の声を漏らしながら血涙すら流していそうな彼女にニセコは引いた。周りにいる他の子たちも距離を離し、叫ぶ本人のバイクに接続されたサイドカーに乗っている子は他の子たちへ助けを求めた。速攻で拒否された。

 

 ついでに言えば彼女の創作物は現ティーパーティーのメンバーとシフターフッドのメンバーが肌着が一つもない身一つで百合の花が咲き乱れる危険な薄い本である。トリニティでは恐らく特級呪物である。コイツ入る学園間違えてねぇか?

 

「ん、進捗どうですか?」

「ぐぅぁぁぁぁ‼︎⁉︎ 進捗駄目ですぅぅぅ‼︎」

 

 確かこういうタイプに効く言葉があったなと前世知識から思い出したニセコは、並走するところまで距離を詰めていた彼女へ何気なしに尋ねれば、彼女はニセコを撃とうと構えていた拳銃を放り投げ、突然狂ったかのように両手で頭を抱えてのけ反った。運転手がハンドルから手を離せば当然操縦は不可能になり、バイクはスピン。絶叫を上げながらそのまま彼女は夜の暗闇へと消えていった。

 

「……なんか、ごめん」

「いえ……、コチラこそ先輩がお見苦しいものをお見せしました……」

 

 難敵を倒したというよりか申し訳ない気持ちになったニセコは拡声器を使って追跡者たちへ謝罪をした。それに対して彼女たちも思うところがあったのか、謝罪を返す。

 お互いが気不味いまま、しばらくエンジン音だけが響く。しかし彼女たちが元を辿ればニセコが悪いことに気付いたのか、前髪に隠れた目を吊り上げて攻撃を再開する。

 

 だがニセコからすると余裕だ。既に何台も脱落しているせいで攻撃の頻度も少なくなっており、その上補充される気配も無いのだから楽勝も楽勝。

 

 しかしニセコに油断は無い。トリニティがニセコの存在に気付いているのにこの程度の追跡で済ませるはずがない。必ず何処かで何かを仕掛けてくる。その予感がニセコにはあった。

 

 それを裏付けるように気になる点が一つ。ニセコはバックミラー越しに追跡者たちの中にいる一組へ視線を向けるが、その一組は無線機を持ったまま攻撃に参加する気配を見せない。

 

 最初はただの連絡役だとニセコは考えていたのだが、それにしては違和感がある。ニセコから常に一定の距離を保ち続け、目視出来る距離にもかかわらず双眼鏡のようなものを覗き込んでいる様子は、連絡役というよりか何かを測定しているような──。

 

 その考えが頭をよぎった瞬間、ニセコは即座にサイドブレーキをかけて後輪をロック。そのままハンドルを切り、ドリフトを行いながら急カーブで進路を変更。

 

 直後、一瞬だけ夜空が輝き、進路変更をしなければニセコがいたであろう場所へ爆音と共に鉄の矢が降り注いだ。

 

「フレシェット弾? 自治区内で撃つんだ」

 

 榴弾砲によって放たれた弾の正体に当たりをつけ、それを自分たちの自治区内へ放つことに絶対に捕まえるという向こうの本気度をニセコは感じ取る。恐らくフレシェット弾で広範囲を制圧射撃、ニセコの足を無力化してから主戦力を投入。確保という流れだろう。

 

 このタイミングで榴弾砲を撃ってきたということは、すぐ近くにニセコを確保する本命部隊が控えている可能性が高い。だがニセコの車が無事なうちはネルみたいな速度特化がいないトリニティ相手なら逃げ切ることが出来るだろう。

 

「ん、まずは観測手の無力化」

 

 そのためには車を破壊する可能性が高い榴弾砲を無力化する必要がある。榴弾砲の配置場所は十中八九トリニティ学園の敷地内だろうが、ニセコにそこまで行く手段はない。というか行けば確実に捕まる。

 となれば、砲手へ情報が届かないようにするしかない。早速と言わんばかりにニセコは箱を漁り、手榴弾とは別のものを取り出す。

 

「作ってよかったEMP」

 

 作ってから使用回数堂々一位のEMPグレネードを先程と同じく窓から投下。堂々一位は伊達ではなく、投下されたEMPはニセコの期待通りに役割を果たす。

 

 それによって観測手を乗せたバイクは後退。恐らく壊れた無線機とは別のものを取りに行ったのだろうが、この時点でもう合流は不可能だろう。

 

 厄介な砲撃が来なくなり、本来の逃走ルートに戻ったニセコ。あいも変わらず追跡者たちは後ろから追いかけてくるが、序盤に撃ちすぎたのかだんだん攻撃の頻度は落ち、ついに弾がなくなったのか今では逃げるなと叫ぶだけとなっている。

 

 そうなればニセコに怖いものはない。彼女達の中でも数人程はニセコの車にバイクで突撃したり飛び移ろうとしてきたが、ニセコは全て撃退。道路のど真ん中を陣取り、ブラックマーケットに続く道を走り続ける。

 

「ん、ラストスパート」

 

 道路を曲がり、ニセコはとうとうブラックマーケットまで直線上に続く道路へ辿り着いた。本来の予定ではもっと早くついていたのだが、榴弾砲や何処かに潜んでいるであろう狙撃手を警戒して迂回を繰り返していたので遅くなった。

 

 とはいえここまで辿り着けば逃げれたも同然。最後の仕上げと言わんばかりにニセコはハンドルに取り付けられている赤いボタンを押した。

 

 すると前回大破したバイクと同じように車体後部からジェットエンジンが登場。エンジンに火が点き、前回のような出落ちにはならずに加速を開始。

 

 追跡者たちはあっという間に小さくなるが、ニセコにそれを確認する余裕は無い。スピードが早くて操縦に集中しないと事故に繋がるからだ。

 

 まぁ、それを少しでも回避するためにジェットエンジンの使用を直線の道まで我慢したわけだが。

 

 あとは走り去るだけ。一度加速さえしてしまえば誰もこのスピードについて来れない。それに加えて車の防御力があればスピードも合わさって質量兵器としても運用出来るので妨害を用意されても無理矢理突き破れる。

 

 なんて考えていたが、流石のトリニティも妨害を用意する時間はなかったようで、道路には何も置いていない。

 

「……ん?」

 

 そんな時、ニセコの視線の先へ正義実現委員会の者が出てきた。破れかぶれの妨害だろうか? 顔はうつ伏せになっていて誰か判別出来ないが、手に持つ銃器はショットガンでとてもじゃないがニセコが乗る車を止められそうには見えない。

 

 車道に人が飛び出してきても頭上に輪っかがあれば轢いても大丈夫。ニセコはアクセルを踏み込み、更に加速して容赦なく突っ込んだ。キヴォトス人なら轢いても死にはしないと身をもって確認しているからこそ出来ることだ。

 

 車のスピードもあって、遠方にいた人物はあっという間に目の前に迫り、車に少しの衝撃が来たのと同時に姿を消した。ニセコの目には轢かれた衝撃で錐揉み回転をしながら車体上部に転がっていくのが見えたので、今頃は道路に落ちて転がっているだろう。

 

 だからニセコはバックミラーでその姿を確認しようとした。しかし本来ならあるはずの姿がそこにはなく、車の威力が強くて未だに空中を舞っているのかとニセコは勘繰った。その瞬間だった。

 

 バン‼︎

 

 フロントガラスの上部から細い少女の手が現れ、力強くガラスを叩く。想定すらしていなかった出来事に、ホラー耐性が無いニセコは思わず身体をビクつかせ、目を点にしながらその手を凝視する。

 

 次いでもう片方の腕も伸びてきて、最後にぬぅーと顔が現れる。轢いた少女の霊が早速現れたのかと想像力を働かせて勝手にビクビクしていたニセコはその顔を見るなり安堵のため息を吐いた。

 

「剣先ツルギ、前が見えないからそこを退くべき」

「きひひひひ、破壊してやる…!」

 

 普通に前が見えないので邪魔だとニセコは言うが、ツルギは怖い笑みで物騒な返事を返す。本来なら敵に張り付かれた危機的状況であり、すぐに引き剥がすための行動を取るべきなのだが、ニセコは特に慌てた様子を見せない。

 

 何故ならこの車は現在凄まじいスピードで走っているのだ。当然風圧も凄いことになっている。ツルギが攻撃に移ろうとしても、手を銃に伸ばした時点で風に吹き飛ばされるだろう。仮にそれで吹き飛ばなくても、この車の防御力なら他のに比べて防御力が低いフロントガラスを狙われない限り問題ない。

 

 だから大丈夫。そうニセコは考え、意識をツルギから運転に移そうとした時、なんてこともないようにツルギはくるっと回ってボンネットの上に着地した。

 

「……えっ?」

 

 あり得ないと考えた直後にそれを実現され、ニセコは困惑と共に声を漏らす。その間にツルギは両手に持った2丁のショットガンをニセコに向けて発砲。

 

 弾はフロントガラスに当たり、ガラスが防弾性だったことでヒビを入れるだけに留まる。しかし直後にツルギが蹴りを繰り出したことで、早々に砕け散ってしまった。

 

 そこでやっと思考が追いついたニセコは片腕をかざして盾とすることで目にガラス片が入るのを防ぎつつ、何故ツルギが平然と立っていられるのか原因を探し始めた。流石にただのフィジカルで実現されていた場合はお手上げと言わざるを得ないが、いくらなんでもここまでフィジカルでなんとかなるわけがない。

 

 幸いにも原因はすぐに見つかった。翼だ。ツルギの細いトゲトゲとした翼が左右のドアミラーに絡みついており、ツルギの身体を固定している。

 

 原因さえ分かれば次は対処だ。ニセコはツルギの翼を引き剥がすために箱から拳銃を取り出そうと手を伸ばそうとし、その途中でツルギが車内に乗り込もうとする動きに気付いて愛銃である『真偽』に持ち替え、即座に発砲。自慢の早撃ちでツルギの動きを牽制する。

 

 トリニティでは今まで見せてなかったこともあり、弾はツルギの額に命中。乗り込もうと屈んでいた身体を押し戻すことに成功した。

 

 かと思えば撃たれてのけぞった体勢のまま、ツルギはショットガンをニセコに向ける。そして発砲。至近距離で撃ち出された散弾がニセコの顔面を蹂躙する。

 

「ぐっ…!」

「今まで散々手を焼かせてくれたなぁ?」

 

 顔…、特に目を狙われれば生物なら無意識に怯む。ニセコもその例に漏れず反射的に目を閉じてしまい、その隙を突かれて伸びてきたツルギの手に首を掴まれた。

 

 言葉に出てしまうほど手を焼かされたニセコに王手をかけているからか、それとも元からなのか。ツルギはホラー系に登場する化け物たちにも引けを取らない笑みを浮かべている。

 

 しかしピンチにもかかわらず口角を上げるニセコを見て、ツルギは顔は笑いつつもその瞳は注意深くニセコの行動を窺っていた。

 

「ん、私の勝ち」

 

 首を絞められつつもニセコが勝利宣言を行い手を動かす。が、それはツルギがショットガンで撃つことで跳ね除けた。

 

 だが手を動かしたのはニセコが仕掛けたブラフ。ツルギの視線がニセコの手に向いたタイミングでニセコは足で椅子の下部に設置された誤操作防止のガラスケースを踏み砕きながらその先にあるボタンを押した。

 

 その直後、車体を覆う装甲の全てが吹き飛ぶようにパージ。それはツルギが上に立つボンネットも例外ではなく、ツルギを装甲ごと空へ跳ね飛ばそうとした。

 

 しかし装甲が吹き飛ぶ直前でボンネットの僅かな浮き上がりを感じ、ニセコが何をするか察したツルギは翼を全力で締め付けた。それによってドアミラーの装甲は吹き飛ぶことなく押さえつけられ、ツルギはこの一回限りの振り解きを耐え切る、はずだった。

 

「ん、予想済み」

 

 そんなことはニセコもわかりきっており、装甲がパージされる瞬間にツルギの翼と自身の首を掴んでいる手を早撃ちによってほぼ同時に撃ち抜く。その攻撃で翼と手の締め付けは弱まり、その状態でボンネットの装甲が跳ね飛んだことでツルギは耐え切れず空中へ。そして加速したままの車はまだ微かに絡んでいたツルギの翼を無理矢理振り解いて通過しようとする。

 

 ツルギが咄嗟に片腕を伸ばすが指は車体上部を掠めるだけで終わり、ニセコが乗る車は走り去っていった。

 

 

 

 

 

 今度こそツルギから逃げ切ったニセコは安堵しつつ、車の運転に戻る。首を掴まれた時は今までにないほど危機感を感じたが、それも乗り越えた今となっては興奮の一助となっている。

 

 トリニティ側もジェットエンジンは予想していなかったのか、追っ手は既にいない。ブラックマーケットもすぐそこであり、問題なく逃げ切れるだろう。

 

 ニセコは空へ照明弾を撃ち上げ、ブラックマーケットへ合図を送る。いつもみたいにニセコ単身で行くならともかく、車で突撃すれば最悪撃たれかねないからだ。

 

 空が昼間のように明るくなったのを確認してから、今度は色付きのスモーク弾を撃つ。これで向こうもニセコがどんな状態で帰ってきたのか気付いてくれるだろう。

 

 無事にスモークが上がったことを確認すれば今度は減速だ。車体に設置されているスイッチの一つを押すと、車体後部にパラシュートが展開される。

 

 パラシュートは風を受け止め、徐々に車のスピードを落としていく。車の速度が100を切ったあたりでニセコはパラシュートをパージ。あとは自然に減速させつつ、ブラックマーケットに侵入するはずだった。

 

 だがブラックマーケットまであと数キロといったところで、ニセコの耳が車によるものではない風切音を聞き取った。それが聞こえた瞬間、ニセコは思いっきりブレーキを踏み込み──。

 

 直後、目の前が大爆発を起こす。それどころかニセコの周囲にも続々と爆発が起こり、辺り一帯を耕していく。

 

「ケホッ、また榴弾砲を撃ってきた」

 

 フロントガラスが砕け散っているので容赦なく土や煙が車内に入り込み、ニセコはその煙に咳き込みつつ攻撃の正体に当たりをつける。

 

 しかし可能な範囲で見渡した限り観測手らしき者の姿が見えない。弾のばらつき具合から、もしかしたらただの予想で撃ってきたのかとニセコは勘繰るが、それにしては狙いが良すぎるので即座にその考えを切り捨てた。

 

 取り敢えず先にブラックマーケットに逃げ込もう。そう考えてアクセルを踏むこみ、加速する車。だが加速したのはほんの僅かで、少し走るとボスンという音と共にスピードが落ちていく。

 

 そこでニセコはガソリンの容量が無くなりかけていることに気付いた。行きにしっかり満タンまで補充していたし、ジェットエンジンとは別燃料なので無くなることはまず無い。そのことから恐らくつい先程の爆発か、逃亡途中で燃料タンクに穴が空いてそこから漏れていた可能性が高い。

 

「……もしかして、結構ピンチ?」

 

 後ろから徐々に聞こえ始めてきたバイクのエンジン音に、思わずといった風に呟いたニセコの声はやけに車内で響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……着弾確認。直撃は無し。至近弾が1発。誤差修正──はい?必要無し? ですが──了解しました」

 

 ビルの屋上からニセコの車を確認し、砲撃手に座標などの情報を送っていたハスミは、無線機から送られてくる指示に歯噛みをしながらも頷く。

 

 通信が切れ、思わず無線機を握り潰しそうになるが、なんとかそれを堪えてハスミはビルから出るために階段を走って下り始める。

 

 今のこの状況は数ヶ月間に渡ってトリニティの頭痛の種となっているニセコを捕まえる絶好のチャンスだ。なのに榴弾砲による追撃を中止した数ヶ月後には卒業する上級生には失望すら感じていた。

 

 彼女たちは後続の機動部隊で十分だと言うが、恐らくニセコとブラックマーケットの距離が近く、榴弾砲がブラックマーケット地区に当たることを恐れたのだろう。

 

 確かにブラックマーケットはここ数ヶ月で急激に力を付けている。新たな武器や兵器の開発。それを扱う人材の育成。そのせいで今では簡単に手出しが出来ない火薬庫となりつつある。それによって増長した企業はブラックマーケットに一定以上の損害を与えた学園に報復活動を開始した。

 

 しかしそれらは元を辿ればニセコが銀行強盗を始めたからなのだ。そのニセコに確実にトドメを刺すための追撃を、よりにもよって報復が怖いから中止するなどとは何の冗談だとハスミは問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。

 

 だが彼女たちの言い分も一応理解は出来る。現在ニセコを追っている追跡部隊には振り落とされた際に車の燃料タンクを撃ち抜いたツルギも合流しており、追いつくことさえ出来れば確保は容易だろう。

 ピンチになればなるほどニセコは楽しくなるのか身体の動きが良くなるようだが、それでもツルギには及ばない。今までツルギがニセコを取り逃していたのだって、ニセコが準備に準備を重ねて万全の状態なのに対してツルギは突発的な強盗で準備が整っていなかったからだ。

 

「ハスミさん!」

「急いで追跡部隊に合流します!」

「了解です‼︎」

 

 ツルギが追いつきさえすれば捕まえられる。そう結論を出したハスミはビルを出るなり待機していたバイクのサイドカーに飛び乗り、追跡部隊に合流するよう指示を出したのだった。

 

 

 

 

 

「むぅ、困った」

 

 完全に動かなくなった車を後部から全身を使って押しているニセコは、自身が走ってきた道から多数のライトが差し込む光景を見つつ、困ったような表情で呟いた。

 

 ぶっちゃけ車を捨てて持てるだけの札束を持って逃げれば確実に逃げることが出来る。出来るのだが、ここまで来たのだからあまりしたくない。向こうもニセコのそれをわかっているからブラックマーケットが近いにもかかわらず追いかけているのだろう。

 とはいえこのまま押していけば間に合うか微妙なライン。知らせは出しているのでブラックマーケット側もニセコのことには気付いているだろうが、地区内に入らないと動いてくれるかわからない。

 

「まぁ、無理なら逃げよう」

 

 悩んでみたが答えは出ず、やるだけやってみようとニセコは車を押し続ける。

 

 追跡者との距離が縮まる。ブラックマーケットにはまだ入らない。

 

 奇声のような笑い声がニセコの耳に届く。ツルギが来たのだろう。それでもニセコは振り返らずに車を押す。

 

 一部の銃が射程圏内に入ったようだ。射撃音が聞こえ、ニセコの身体に弾が当たり始める。そろそろ逃げる潮時かもしれないが、あと少しだけと車押しを続行する。

 

 合流してきたのだろうハスミが早速スナイパーライフルを撃ち、弾丸がニセコの腕に当たる。痛みでニセコは顔を顰めたが、すぐに笑みを浮かべた。

 

「いい車持ってるじゃねーか‼︎ あたしらにくれよ‼︎」

「うわー、怖い。車は貴方たちに渡しますー」

 

 車の先端がブラックマーケット内に入った途端、待っていたと言わんばかりに現れた不良たちがワイヤーを車の先端部に撃ち込み引っ張って引き摺り込んでいく。それを確認したニセコはすっごい棒読みで不良たちに車を譲渡する旨を叫び、その下手くそすぎる演技に不良たちがズッコケルのを尻目にブラックマーケットの奥へと走り去っていく。

 

「追え‼︎ 数人は車の確保!残りは強盗犯だ‼︎」

 

 それを見てトリニティ側は即座に役割を分担し、追跡を続けようとした。しかし──。

 

「あぁー、しまったぁー。ブレーキが利かないなぁ」

「なっ⁉︎」

 

 曲がり角から現れた戦車が壁にぶつかり、彼女たちが進みたい道を塞ぐようにして停車。

 

「早く退けなさい‼︎」

「いやー、そうは言っても今ので履帯をやっちゃったから動けないんすわ」

 

「貴様たち‼︎ 一体何をやっている⁉︎」

 

 早く退けという正義実現委員会の人員に、呑気に履帯の修理を始める不良。そんな彼女たちの前に騒ぎを聞きつけたマーケットガードが続々と駆けつけ、彼女たちに銃を構えた。

 

「すいません、戦車のブレーキが急に利かなくなっちゃって。建物にぶつかってしまったっす」

「何? なら仕方ないな。取り敢えずこの建物の持ち主に連絡をするのでしばらくはこのままだ。戦車の乗員はここに残れ」

「了解っす」

 

「……くだらない茶番を‼︎」

 

 淡々と進んでいく話に、これら一連が全て向こうの演技と確信したハスミは我慢の限界が来たのか目の前の障害を物理的に排除するために自身の愛銃を構えたが、その引き金を引く前に落ち着けと言わんばかりにハスミの肩へ誰かが手を置いた。

 

「ツルギ?」

「ハスミ、撤退だ」

「ですが⁉︎」

「ここまで準備されているなら既に奴は遠くに行っている。車も何処かに隠されたはずだ。今更暴れたところで得るものはあまり無い。今回も負けだ」

 

 そう言うとツルギは手を離し、下を向いたままのハスミから離れて周りに撤退指示を出す。

 仮にハスミがツルギの指示を無視してここで暴れた場合、ブラックマーケットに報復の大義名分を与えることとなる。先に仕掛けたのはそちらだと叫んだところで、トリニティ側に明確な証拠がない今、シラを切られるだけだろう。

 

 ニセコが道路を爆走する映像を見せたところで、ブラックマーケットとニセコに繋がりは一切無いため無駄だ。

 

 そんなことはハスミだって勿論わかっている。だが納得出来ない。周りがツルギの指示で撤退の準備を整えている中、ハスミだけはツルギに再び声をかけられるまでその場で留まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニセコ!大丈夫だったか⁉︎ あぁ、顔も腕も傷だらけじゃねぇか‼︎ 待ってろ、今治療してやるからな」

「ん、スケバンは今すぐ私とご飯に行くべき」

「はぁ? 心配してもらえて嬉しいのか知らないけど怪我を治療するのが先……ってその札束はなんだ? おいバカ腰を掴むな引っ張るな!せめて消毒くらいさせろぉ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホシノ先輩‼︎ シロコちゃんがヴァルキューレに‼︎」

「えぇ⁉︎」




ニセコ

この後この時間帯でもやっている屋台を見つけて滅茶苦茶食べさせた。


スケバン

食わなきゃニセコが満足しないので滅茶苦茶食べた。胸やけした。


アビドス勢

急いでシロコの元へ


ゲヘナ

まだだ、まだ踊るな…!堪えるんだ…!カウンター強盗が来ないと確信するまで…‼︎




カウンター強盗……強盗被害にあった自治区を煽っていると自分のところにニセコが強盗しにくること。煽られていた自治区がお前のところも被害にあってるじゃんねと逆に煽ってくることからこの名がついた。なおニセコにそれといった思惑はなく、そろそろここら辺で強盗するかという軽い思考。







誰かセイアに成り変わったけど現実で実装されてないから自分の声が周りに届かず(自分には自分の声が普通に聞こえる)、何でもやって運営に実装してもらおうと奮闘するセイア(オリ主)に周りが勘違いする小説書いてくれねーかなー。
んで現実でやっている運営の次に実装する生徒発表の放送をセイアは夢で見ることが出来て、今回もダメだったよと落ち込む姿を周りが見て(ry
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