アビドス「ニセ」スナオオカミ   作:フドル

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やぁ、久しぶり。アイン、ソフ、オウルの3人がマルクトと一緒にきて育成に必要な素材はスケジュールに追加された鋼鉄大陸で取れるんだろうなと思っていた筆者だよ。

まずは前回の誤字脱字報告、並びに高評価ありがとうございます。

今回はネタ少なめで戦闘が多めだよ。それとオリキャラも出ます。オリ主サイドだとどうしてもオリキャラが多くなるんだよね……。

あと前話にお試しで一箇所だけ透明文字を入れてたけど、ちゃんと気付いている人いて素直に凄いと思った。


ん、アビドス。そして……

 2人で初めての共同作業(銀行強盗)をしてから早数週間。ニセコはヒフミと一緒にD.U.シラトリ区へやって来ていた。

 

 そこにある喫茶店の一つが現在期間限定でモモフレンズとのコラボキャンペーンをやっているらしく、ヒフミからよければ是非ニセコちゃんも行きましょうと誘われた形だ。

 

 コラボの内容はモモフレンズのキャラクターを模したケーキを食べられるとのことで、それならと甘いものが好きなニセコはヒフミからのお誘いを受けた。その時のモモトークによるやり取りを覗き見していたスケバンたちが後ろでニマニマしていることに気付き、反射的に銀行強盗のパートナーとは良好な仲であるべきなんて言い訳をする一部始終がありながらもニセコはワクワクしながら日々を過ごし、約束の日になると集合時間の30分前には集合場所に到着していた。

 尚、ニセコは食べ物に目がないとスケバンたちに思われたことを恥ずかしがっており、スケバンたちは初めてできた友達と遊ぶのを楽しみにしていたところを見られて恥ずかしがっているんだなぁと勘違いしているすれ違いが発生していたが、まぁ微笑ましいのでヨシ。

 

 そんな微笑ましいすれ違いはともかく、30分前に来たのに待ち始めてから数分でやって来たヒフミとニセコは隣同士で肩を並べて世間話をしながら目的地である喫茶店を目指す。ブラックマーケットとは違って治安が比較的に良いシラトリ区なのでこれといったトラブルは起きず、無事に喫茶店にたどり着いた2人は早速案内された席でメニューに目を通す。しかし視線はコラボメニューに釘付けだ。

 

「とりあえず一つ頼んでみましょうか」

「ん、賛成」

 

 可能ならばそれぞれのキャラを模した計七種のケーキを全て食べてみたいが、メニューの画像サイズを信じて注文した結果、どこぞの珈琲店で出てくる逆詐欺サイズがきちゃったら最初は良いけどお腹が膨れてくる後半からはただの苦行となってしまうことが容易く想像出来たので、2人は様子見としてまずは自分が一番食べたいものを注文した。

 

「ペロロ様は勿論ですが、モモフレンズはどれも──」

「……ん」

 

 注文したケーキが届く間にヒフミは怒涛のモモフレンズトークを展開する。ヒフミには今回のコラボメニューを食べる以外にも狙いがあった。ニセコをモモフレンズ沼に沈める狙いが。

 

 あんなにペロロ様のぬいぐるみを持っていたのならニセコちゃんがモモフレンズに興味があるのは確実。ならこのチャンスを活かしてニセコちゃんをモモフレンズ沼に沈めてみせる…! そんな覚悟を秘めてヒフミはモモフレンズトークを展開させながら太ももに置いた両手で力強く握り拳を作った。まぁニセコはヒフミがあの時に見たペロロぬいぐるみを全て爆弾にするつもりだったのだが。

 

「お待たせしました〜」

「ありがとうございます」

「ん、ありがとう」

 

 そんなヒフミのモモフレンズトークを遮りながらヒフミたちが注文したコラボケーキを店員が持ってきた。ニセコにはスカルマンを模したケーキを、ヒフミのところには勿論ペロロのケーキだ。

 

 ニセコのところに置かれたスカルマンケーキを見てヒフミは脳内に浮かばせていたモモフレンズの情報をスカルマンのみに限定させる。今のこの状態は簡単に言うならばボーナスタイム。ニセコがスカルマンを注文したということはスカルマンに興味があるのは明白。ならばスカルマンの豆知識を教えることでまた一歩沼に沈めることが出来る…‼︎

 

 しかしヒフミがスカルマントークを放とうとした瞬間、ニセコの獣耳が少しだけへにゃっていることに気付く。そして瞬時にヒフミは己のミスを自覚した。

 

 ヒフミからするとジャブ感覚だったモモフレンズトーク。だがそれはモモフレンズに興味がある程度の人間には重いボディブローに匹敵していたのだ。そこへ特定のキャラに変えてさらに細かく話すなんてボディブローで弱らせた相手の後頭部を掴んで沼に顔面を沈めるような行為だろう。

 

 そんなことをして相手は喜んで沼に沈んでくれるのか。否、断じて否である。むしろここまで知識が必要なのかと沼を怖がってせっかく沈みかけていた足まで抜きかねない。

 

 致命傷に近いミスだが、ここで気付けたのは幸いだった。今回でニセコをモモフレンズ沼に沈めきりたいのは本当だが、嫌がって逃げてしまうリスクを背負ってまでしたいことではない。そう考えをまとめたヒフミは脳内のスカルマントークを一度消し去り、休憩タイムと言いたげに一般的な世間話に話を切り替えてペロロケーキを食べ始めた。

 

 それからしばらく。ケーキは逆詐欺サイズではなかったので、ほどなくして2人はケーキを食べ終えた。

 

「まだいけるけど、全部は無理なサイズだね」

「なら全種類を頼んで2人で分けませんか?」

「ん、それでいこう」

 

 再びメニューを手にして悩む様子を見せるニセコにコラボケーキを頼んだ特典で店員から貰ったペロロシールを傷が付かないように丁寧に鞄へ収納したヒフミが提案する。その案を採用したニセコは店員を呼んでケーキを再び注文。

 

「ん、トリニティの銀行は──」

「あはは……」

 

 再び店員が来るまでは待つ2人だが、先程のミスを鑑みてモモフレンズトークを始めないヒフミに反撃と言わんばかりに今度はニセコが銀行強盗トークを展開。ヒフミに狙いがあったように、ニセコにも狙いがあった。ヒフミを銀行強盗沼に沈める狙いが。

 

 なんだかんだ言って最終的に銀行強盗に参加してくれたのならヒフミが銀行強盗に興味があるのは確実。

 所持していないものなら即行で購入していた初めの頃とは違い、最近は私が調達してきた限定ペロログッズを買う時にもヒフミは財布を開いて難しい顔をしている。多分趣味に使える分が少なくなってきていると思うから、ここで銀行を襲うメリットと魅力を見せてヒフミの銀行強盗に対して残っている微かな抵抗感を粉砕してみせる。そんな考えでニセコはトリニティの銀行について話し、まずはヒフミがその銀行を通る度に自分の話を思い浮かべるように仕込む。

 ここで大切なのは自身の自慢話は避けることだ。特に犯罪紛いの話は相手に興味を惹かせるどころか敬遠されてしまう。まぁニセコの場合は犯罪まがいではなく上から下までガッツリ犯罪なのだが。

 

 例えニセコが自慢話をしてしまってもヒフミなら嫌がらずに聞いてくれるだろうが、ニセコはヒフミを銀行強盗仲間にしたいだけで自慢話をして感心されることで自尊心を満たしたいわけじゃないのだ。

 

 しかしニセコは気付いてしまった。ヒフミが少し困ったような笑みを浮かべていることに。

 

 ニセコは瞬時に己のミスを自覚した。事細かく話したところで一回しか銀行強盗をしていない普通の女子高生であるヒフミには共感できない部分が多い。いわば初心者に上級者の応用テクニックを話しているものだ。ヒフミには理解出来なくて当然。

 

 今のヒフミは銀行強盗沼を覗き込んでいる状態と言っていいだろう。そこへ理解しづらい銀行強盗トークをするのは背後からドロップキックで奇襲して沼に突き落とす行為だ。

 そんなことをしてヒフミは大人しく沼に沈んでくれるのか? 否、断じて否である。

 

 危うく取り返しの難しいミスをするところだったとニセコはここで気付けた自分に内心で安堵の息を吐くが、状況はまだ悪い。いきなり銀行強盗トークを中断して世間話をすると気を遣わせてしまったとヒフミに思わせてしまう可能性があるし、だからといってこのまま銀行強盗トークを続けてしまえばヒフミから銀行強盗への興味を失わせてしまうかもしれない。

 

「お待たせしました〜」

「ん、ありがとう」

「ありがとうございます」

 

 どうしようかとニセコは悩んでいたが、このタイミングで店員が注文したケーキを届けに来るというファインプレー。あまりにも丁度良いタイミングにニセコはチップとして懐に入っている札束を店員に渡したくなったが、別の意味で騒ぎになるのは明白なのでグッと我慢し、ケーキに気を取られた風を装って銀行強盗トークを打ち切った。

 

 しかし2人の間には奇妙な空気が漂っている。現在はただの休憩タイム。これが終われば再び相手に配慮してちょっと勢いを落とした趣味トークが始まるだろう。

 

 何故なら2人の目的は相手を自身の趣味に沼らせることなのだから…‼︎

 

「あはは、ケーキ食べましょうか」

「ん、食べよう」

 

「な、なぁ? あそこだけなんか空気が──」

「バカ‼︎ 視線を向けるな! あれは絶対やってる側だ、下手に気にして目をつけられたら消されるぞ‼︎」

 

 本心を隠してニコニコするヒフミと、口角だけあげて笑みを浮かべるニセコ。お互いに相手を自分の趣味沼に沈めたいだけなのだが、あまりにも雰囲気が怪しいせいで自分たちの周りにいる生徒たちを密かに怯えさせていた。だが2人はそれに気付くことはなく、ケーキを分けあったり食べさせあったりしながら趣味話の攻防戦を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ただいま」

 

 結局相手を沼に沈めることは出来ず痛み分けに近い決着となったが、スケバン以外との初めてのお出かけは事前に予想していたものよりも遥かに楽しかったとニセコは自宅の玄関で笑みを浮かべた。

 

 そのおかげか今のニセコは絶好調状態。例えるならガチャの最高レア排出率が通常2%なのに現在は5%になった感じだろう。そのため今のニセコはどこの銀行を襲っても大成功すると謎の自信に満ちたパーフェクトニセコ状態となっている。

 

 なら銀行強盗をしないと銀行に失礼だろうと銀行が聞いたら高速で首を横に振りそうなことを考えながらニセコは荷物を置くなり銀行強盗の計画を立てる部屋に行き、早速今回襲う銀行を選びにかかる。

 

 とはいえゲヘナやトリニティ、ミレニアムの銀行はほぼ全てを一度は襲撃済み。逆にそれ以外の自治区にある銀行はほとんど手をつけていない。その自治区にヒナなどの学園トップどころかキヴォトス全体で見たトップ級がいたら対処できるかわからなかったからだ。

 

 では絶好調の今のうちに挑戦するのか? となるが、ニセコの答えはNOだ。ニセコにはトップ級がいるかわからない自治区よりも先に挑戦したい自治区がある。

 

「……アビドス」

 

 そう、それは本物のシロコとキヴォトス最高の神秘とも称されたホシノがいる自治区。それに加えて広いが何も無いという逃走するには簡単そうで難しい地形。今までやっていた事前の銃器隠しも周辺に何も無いなら工夫を加えないと見つかって回収されてしまう可能性が高い。

 

 それらの理由によって、ニセコはアビドス自治区での銀行強盗は高難易度と決めつけていた。しかし現在は最初の頃に加えて資金や武器が充実している。そしてニセコ本人のスキルも度重なる銀行強盗で磨き上げられた。

 

 つまり、現在のニセコはアビドス自治区へ挑む実力にはなっているはず。ホシノと比べるとレベルはまだまだ足りないだろうが、技術は通用するだろう。

 

 ここで別の自治区を選ぶのはやり慣れたゲームのルート選択時に高難易度じゃなくて難易度普通を選ぶようなもの。ここはゲームじゃなくて現実だから安定した行動を……なんて銀行強盗弱者の思考は銀行強盗のプロを名乗る者として許せない。

 

「ん、次はアビドス!」

 

 そんな考えもあり、ニセコの次の強盗先はアビドスの銀行へと決定するのだった。……自分がどれほどの影響を与えているかも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 昔とは違い、過疎化の影響なのか今のアビドスで機能している銀行は少ない。そのため逃げやすい通路などを考慮すれば、襲う銀行は自然と決まった。

 

 いつものようにメインとサブの逃走ルートへ色々と仕込んでいき、今回は隠れて追っ手をやり過ごすことは難しいと予想出来たのでチャンスがあれば一気に逃げ切れるようにと逃走用の乗り物もあちこちに駐車しておく。

 

 アビドスは高難易度なんて言っておいてニセコがやったのはいつもの銀行強盗とほぼ同じ準備のみ。そんな準備で高難易度のアビドスに挑むつもりなのかとなるが、ぶっちゃけアビドスが高難易度になるのはホシノに見つかった場合のみなのだ。この広いアビドスでたった1人に見つかるなんて向こう側がニセコを探すつもりで行動パターンを組んでいないとまず無理だろう。

 

 それにあのホシノであろうとニセコが乗り物に乗ってしまえば追いつくことは不可能。

 

 そのためニセコが銀行強盗をしてから準備した車やバイクのどちらかに乗るたった数分間。それだけがホシノに許された時間だ。加えてホシノがアビドスの銀行に訪れている前提が必要なので、彼女がニセコと出会う確率はガチャで最高レアリティを単発引きするよりも低い。

 

 さらにニセコは銀行強盗を確実なものにするべく、ホシノたちの行動パターンを把握……しようとしたのだが、情報収集を開始した初日に彼女たちを観察しようと使用した双眼鏡越しからホシノと目が合ったことで即座に中断。恐らく偶然だろうが、ホシノなら気付いてもおかしくなさそうだったからニセコは念のため撤退した。

 

 そんな理由で行動パターンの把握は不可能だったので、ニセコはホシノたちと銀行で出会わないことをお祈りしながら銀行強盗を決行するハメに。ぶっちゃけこの時点で銀行強盗をせずにアビドスから撤退するのが正しい選択なのだが、今までの銀行強盗で積み重ねたニセコのプロとしての矜持がその選択を押し留めた。

 

 とはいえ先程もいったがこのアビドスでいくつかある銀行にニセコが銀行強盗をしているところをピンポイントでホシノが遭遇という偶然がなければ2人が出会うことは無いのだ。つまり何も問題ない、勝ったな銀行強盗してくる状態──だったのだが……。

 

「シロコちゃ〜ん? なんで銀行を見ているのかなぁ?」

「………………ん」

 

 銀行強盗決行日。目的の銀行がキチンと営業中なのを確認し、じゃあ逃走ルートの確認をしようとニセコが銀行から視線を逸らしたタイミングでニセコはホシノとエンカウント。気配もなくいきなり声をかけられたことでニセコの心臓が飛び出しそうになったが、なんとか堪えてニセコは背後に立つホシノと向き合った。

 

 ニセコの内心は何故ホシノがここにいるのかという疑問で一杯だ。勝ったなガハハと遭遇フラグを建てまくったからか、それとも日頃の行いか。唯一の幸運はホシノがニセコをシロコだと勘違いしていることだろう。そのせいでシロコの普段の行いも透けて見えたのだが。

 

 やっぱりシロコも銀行強盗が好きなんだとニセコは勝手にシロコへ仲間意識を持ちつつも、相手が勘違いしているうちにここから穏便に離れるための口実を作るために思考をまわす。

 

「ん、見つかった。残念」

「残念じゃないよシロコちゃん。銀行強盗はダメだっていつも言ってるでしょ」

「……ん」

 

 一先ずシロコの真似をして、ホシノに怒られて落ち込んでいるかのように頭上の獣耳をへにょりとさせるニセコ。

 

「じゃあ行くよシロコちゃん。そろそろミーちゃんのご飯もあげないといけないし」

「ん、なら自転車を取ってくる。すぐに戻るからホシノ先輩はここで待ってて」

 

 そんなニセコを見て反省していると思ったのか、ホシノはため息を吐くと学校を目指して歩き出した。その際に出てきたミーちゃんという存在を知らないニセコは疑問に思ったが、これはチャンスと適当な理由をつけてホシノから離れる。

 

 幸いホシノは走り出したニセコを追う様子は見せず、いつもの気の抜けた顔でニセコを見ていたのでニセコは安心して路地裏に入り、直後に太ももに取り付けたナイフホルスターからスタンナイフを逆手で抜き取り背後へ振り向きながら突き出した。

 

「うへ、危ないよシロコちゃん」

 

 しかしそれはニセコが視線を外すなり気配を消してニセコの後ろを追いかけてきていたホシノに手首を掴まれたことで命中することはなく、ホシノは刀身に青白い電光が走るナイフの先端が自分に向いているのに気にする素振りも見せずにニセコを見ていた。

 

 力を込めてもビクともしないホシノの力に押し切るのは不可能と判断したニセコは身体の向きを調整しながら掴まれていない腕で予備のスタンナイフをナイフホルスターから抜いてホシノへ突き刺そうとする。それも掴もうとホシノは試みたが、右手でニセコの右手首を掴んでいる状況では難しいのか、回避を優先してニセコの手首を離して少し後退する。

 

 そんなホシノへニセコは自由になった腕のナイフを順手に持ち替えて二刀流で挑み掛かるが、ホシノは腕を払うように動かしてニセコのナイフを持つ手首を弾き、ナイフとの接触を避け続ける。

 

 そしてここで一度に放出する電気の出力を上げる改造をしていたためかスタンナイフが充電切れ。バッテリー式なので充電しないと役に立たず、ギコギコしても食パンすら切れないナイフにまで成り下がったものをホシノ相手にいつまでも握る意味はないので、青白い電光が消えるなりニセコを掴もうと踏み込んできたホシノの眼球めがけてニセコはナイフを投擲し、ホシノが投擲されたナイフへ意識を向けた瞬間を狙って2本目を投擲してからニセコはホシノから距離を離す。

 

 ホシノがナイフを気にせず突っ込んでくるのならまた別の対処が必要だったが、幸いその必要はないようで、ホシノは片手の指で飛んできたナイフの刀身を挟んでキャッチ。即座に順手に持ち替えて同じ軌道を辿るように投げられた2本目を弾いた後、少しだけ自身の手に握られたナイフを眺めるが自分たちで再利用出来るものではないとわかるなり興味がなくなったのか後ろへ投げ捨てた。

 

「よくおじさんが後ろから来ているってわかったね」

「ん、ミーちゃんに私が反応を返さなかった時、反応が一瞬だけど露骨に変わった」

「うへ、そこでバレたか。すぐに取り繕ったのに、おじさんもまだまだだねぇ」

 

 純粋に自分が気付かれた理由が気になったのか、ホシノは腕まくりをしながらニセコに問いかけ、ニセコの返答にあちゃーと言いたげに額に手を当てた。

 

 ニセコが言った通り、ホシノが言ったミーちゃんというものにニセコが反応しなかった時にホシノの目付きが一瞬だけ鋭くなったため、それを読み取ったニセコは自らの失敗を悟り、一時凌ぎで離れるのではなく完全な撤退を選択。しかし途中でニセコの足音に合わせながらついてくる足音がしたことでホシノが着いてきていることに気付き、このまま逃げると捕まる可能性が高いためニセコは不意打ちを実行した。

 

 ちなみにホシノが言ったミーちゃんというものは架空の存在だ。そこからわかるように、ホシノたちはいつか来るニセコに対して最強の対抗策を用意していた。

 

 それは、秘密の合言葉…‼︎

 

 主にオレオレ詐欺に対して昔から使われていた対策法で、最高のセキュリティ性能なのに絶対に必要なのは当人たちの記憶力のみという億越え借金を背負うアビドスも思わずニッコリしてしまう最強のコストパフォーマンス…‼︎

 

 秘密の合言葉が最強たる所以は当人たちで正解を決めることが出来るため、いかに相手が向こうのことを知り尽くしていても合言葉を知らないと太刀打ち出来ないことだ。

 

 なのでホシノはニセコが間違えた時点で捕まえることが出来たのだが、それをしなかったのはホシノが確信を得たと同時にニセコが気付かれたことを悟って素早くそれらしい理由を並べて距離を離したからである。

 

 向こうも警戒しただろうし、それなら一度気付いてなかったフリをして逃げ切れたと安堵したタイミングで強襲しようとホシノは後を追ったのだが、今回はそれが裏目に出た形だ。

 

「でもニセコちゃんがアビドスに来てくれて助かったよ〜。……ここならおじさんでも捕まえることが出来るからねぇ」

 

 ホシノの動きに警戒するニセコを前に、ホシノはスカートのポケットを探り、中からヘアゴムを取り出した。そしてそれを口に咥えると両手で後ろ髪を纏め始める。

 

 そんなのんびりとしたホシノの戦闘準備にチャンスだと考えたニセコはホシノから背を向けて駆け出した。その姿を視界に捉えながらホシノは纏めた後ろ髪をヘアゴムで留めてポニーテールにすると、背負っていた折り畳み式の盾を片手で持ち上げて展開させる。

 

「じゃあ追いかけっこを始めよっか。私に捕まったらとりあえず全治1ヶ月は覚悟してもらおうかな」

 

 おめでとう‼︎ ホシノはうへうへおじさんから臨戦ホシノへと進化した!

 

「ん、冗談じゃない」

 

 臨戦ホシノ状態になったのを少しだけ振り返りながら横目で確認したニセコは走る。そして路地裏を抜けた先の道路に路駐させていた車に乗り込むと、時間が惜しいとベルトもせずにエンジンをかけて車を発進させた。

 

 いくらホシノでも車の速度に追い付くわけがないと一安心したのも束の間。破砕音と共に急ブレーキをかけたかのような衝撃が車体全体に襲いかかり、急停止した反動で前に吹っ飛んだニセコはハンドルに激突してクラクションが周囲に響く。

 

「ん、何が……」

 

 謎の急ブレーキに戸惑いつつハンドルから身を起こしたニセコが周囲を見ると、サイドミラーには車の後輪付近に盾を突き刺しているホシノの姿が映っていた。恐らくその盾が車を前に進めないようにした原因だろう。

 

 ニセコが止まった原因を分析している間にホシノは弾を撃ち込んで後輪を破壊し、引き抜いた盾を後部ドアに突き刺して入口を強引に作り始める。車体のフレームが悲鳴のような音を鳴らし、これはマズイと判断したニセコは携帯していた手榴弾のピンを抜いて車内に一つだけ放り込んでからドアを蹴飛ばして開き、外へ身を投げるように飛び出した。

 

 出てきたニセコにホシノの視線が向くが、ニセコは両手で後頭部を守る体勢を維持して道路に伏せたまま。逃げる様子のないニセコをホシノは訝しむが、何かに気付いたかのようにニセコが飛び出した車の方へ視線を戻した。その反応は正しかったが気付くのは遅かったようで、ミスをしたと言いたげにホシノが舌打ちをしたタイミングでニセコの置き土産である手榴弾が起爆。車内にあった他の爆薬を巻き込んで大爆発を起こす。

 

 車の破片が辺りに散らばるなか、身を伏せていたニセコは立ち上がって逃走を再開。しかしニセコが数歩進んだところで爆煙を切り裂くように無傷のホシノが突っ込んで来てニセコに急接近し、射程距離に入るなりホシノは愛銃であるショットガン『Eye of Horus』を構える。

 

 足音でホシノの接近に気付いたニセコは煤は付いていても傷はないホシノに対して同じ人間なのかと失礼なことを考えつつ迎撃を選択。身体に接触するか否かの距離まで近付いた銃口を先程のホシノを真似するように銃身を横から腕で叩いてずらし、なんとか至近距離からの直撃を避ける。

 

 当然一回ずらせたから安心なんてわけがなく、ホシノは即座にずらされた銃口を戻して愛銃の引き金を引く。対してニセコは先程のように腕でずらすことはせず、今度は自分の身体を射線から外して回避。

 

「やるねぇ!」

「……っ!」

 

 そこでニセコの実力を認めたのか、ホシノは愛銃だけではなく盾も攻撃に使い始めた。手始めにホシノは構えた銃口の先をニセコの身体の中心からやや右に逸らし、盾側へニセコの回避を誘導したところで勢いをつけたシールドバッシュを繰り出す。それに対して予測撃ちをしてきたとホシノの狙いを読み間違えたニセコは突っ込んできたホシノのシールドバッシュに対応が間に合わず、モロに当たり、勢いよく突き飛ばされた。

 

 咄嗟に踏ん張ろうとするニセコだったが、数歩後ろへよろめいたところで足がもつれて尻もちをつく。ホシノは隙だらけとなったニセコにショットガンで追撃をかけるが、こけただけで大してダメージを負っていなかったニセコは距離が近かったことでシェル内の散弾が思ったより散らばらなかったのもあって身を丸めながら後転するだけで回避に成功する。

 

 後転途中で脚をピンと伸ばし、腕の力で身体を持ち上げながら逆立ちを経由してニセコは素早く起き上がり、ホシノから撃たれる前に今度は自分からホシノの盾へ突っ込んだ。そのためホシノがニセコを狙うためには絶妙に盾が邪魔になり、シールドバッシュをしようにも至近距離だと勢いがつけられない。

 

 腕の力だけでシールドバッシュをするのはナイフでのやり取りで大体理解したニセコの膂力を考えると効果が薄いと判断したホシノはモロに当たれば一撃で仕留めることが出来る射撃での攻撃を選択。何をしてくるのかわからないニセコ相手に盾を引っ込めるのはリスクがあるので続けて保持し、盾側へニセコが逃げないように牽制しながら最大火力を出せる距離の確保を優先する。

 

 状況は圧倒的にホシノが優勢。このままだとニセコがやられるのは確定なのだが、ホシノの猛攻が激しくてニセコはマトモな行動が取れない。愛銃の『真偽』を使えば多少は自分のペースに持ち込める自信はあるが、一度目の逃走時にヒナの愛銃を破壊したように『真偽』を使ったニセコの早撃ちは存在を知らない相手には切り札になりえる。なので今みたいに盾を構えたカチカチホシノ状態に向けて撃つのは勿体無くないかとニセコは躊躇っていた。

 

 なら多少の痛みは許容して現状を打破する手を打つしかないと、覚悟を決めたニセコはあえてホシノの射線上に飛び出した。罠だとしてもせっかくのチャンスは逃さないとホシノから放たれた銃撃はニセコの身体に直撃するが、事前に当たるとわかっていれば急所を隠すことも出来る。とはいえ痛いものは痛いので、身体全体に響く衝撃と痛みに今すぐ撃たれた箇所を押さえて転げ回りたい気持ちがニセコの内で湧き上がるが、ニセコは歯を食いしばって我慢しながらダメージと引き換えに生み出したチャンスを無駄にしないと懐から取り出したスモークグレネードのピンを抜いて地面に叩きつけた。

 

 本当ならフラッシュグレネードを使いたかったが、ホシノは盾という自由に動かせる遮蔽物を持っているため断念。現にニセコがスモークグレネードを叩きつけた頃にはホシノは盾で顔を隠していた。

 

 しかしこの行動のおかげでホシノは一時的にニセコを見失い、投擲物が何かを知ったホシノが盾を顔から出した時には既にスモークグレネードの煙幕が周囲に充満しておりニセコの姿を覆い隠していた。

 

 その間にニセコは逃走。少しでもホシノから離れるために走り出す。これで少しは距離を離せるだろうが、いつかのヒナがやったようにホシノは盾を力一杯振るうことで煙幕を強引に払い、良好となった視界でニセコを再捕捉する。

 

 再びホシノが追いかけてくるが、先程と違って状況はそこまで悪くない。さっきは準備も無しにいきなりホシノと戦闘だったからヤバかったのであって、ここからはニセコが事前に準備した武器群がある。今回は多人数ではなく対ホシノを想定して用意したのでいつも以上に有効な効果が見込めるだろう。

 

 その一つ目の隠しポイントへやって来たニセコは早速武器を隠しておいた箱を開け、反撃の時だと武器を取る──ことはなかった。

 

「んっ⁉︎」

 

 箱の中にあるはずのものがなく、すっからかんの空箱にニセコは思わず目を見開いた。隠し場所を間違えたのかと空箱をひっくり返しながら周囲を見渡すが、どう考えてもここに武器を隠した記憶がある。

 

「へぇ、やっぱりそこの武器はニセコちゃんのものだったんだ。悪いけどこんなところに置かれたら危ないから回収させてもらったよ。勿論他の場所にあるものも全部」

「……ん! 人のものを盗んだら泥棒‼︎」

「うへ、ニセコちゃんが言うのはダメだとおじさんは思うな」

「ん、私は銀行を襲って獲得したお金で買い物するだけで盗みをしたことはない」

「銀行強盗は盗みだからね⁉︎」

 

 ホシノの武器没収発言に一瞬ポカンと口を開け、理解が及ぶなり両腕をあげてプンスコ怒るニセコだが、ホシノが言った通りお前が言うなとニセコを追いかけたことがある人たち全員が思うことだろう。

 

 ちなみに没収された武器群はアビドスの校舎に持ち運ばれている。その量は一室が武器部屋になる程で、ホシノも他の人たちがニセコを捕まえられないわけだと先駆者が使う道具に興奮気味なシロコを見ながら納得していた。

 

「むぅ……」

「……こっちにもニセコちゃんみたいな子がいてね。私たちがニセコちゃんの用意した物を見つけることが出来たのはその子のおかげなんだ」

 

 初めてホシノがニセコの隠した武器を発見したのはいつもの見回りの帰り道で喉が渇いたからと自販機で飲み物を買おうとした際に開けた財布から500円玉が落ち、地面を跳ねて運悪く自販機の下へ入り込んでしまったのを取れるかどうか確かめるために覗き込んだ時だ。

 

 自販機下に置かれた複数の地雷を当初は危ないなぁ〜と思うだけでニセコが隠したものだとホシノは考えてもいなかったが、あんなところにあるのなら他にもあるかもしれないと念のため次の日の見回りで普段は見ない室外機の下やゴミ箱の中なども軽く見てみたところ、ホシノの予想は的中して爆薬や銃器が出てきたのだ。そうなれば偶然誰かが落としたのではなく、計画的に配置したとホシノも気付く。

 

 どれもこれも意識して探さないとまず確認しないだろうと思ってしまう場所に隠されており、見つけた銃系のものには予備の弾倉がない。最初に装填されている分を撃ち切ればそれでいいと配置主の思惑が透けて見え、発見した場所を試しに線で繋げてみれば偶然なのか近くには銀行があった。

 

 穴だらけのルートなので確定は出来ないがホシノは配置主を銀行繋がりで暫定的にニセコと決め、銀行周りから円を広げるように捜索範囲を徐々に拡大。周りから自販機の下を覗き込んだりゴミ箱を漁らないといけないほど生活がヤバイのかと極めて遺憾な勘違いをされたり、何故自分がそんなことをしているのか話していなかったためにその噂話を聞きつけたノノミから生活がキツイならと善意でお金を差し出され、シロコにはお弁当のオカズを譲られる一幕はあったが結果として過去にニセコが使用していた映像が残っている銃器やロケットランチャーなども発見出来たため、ホシノはこれらを配置した人物はニセコだと確信を強めた。

 

 しかしそれだけでニセコと決めつけるにはまだ理由が弱い。そこでホシノは次の手を打った。

 

 目には目を、歯には歯を、ニセコにはシロコを。……つまりホシノはシロコに銀行強盗をするとして、逃走ルートに武器を置くならシロコちゃんはどこに置く?と質問したのだ。

 

 ホシノも銀行強盗をするつもりになったとシロコのぶち上がったテンションを抑えつけるのはホシノでも非常に苦労したが、その甲斐はあったようでシロコと共に隠された銃器や爆薬を探すのは非常に捗った。

 

 ここ掘れワンワンならず、ここ探ってんっんっ。シロコのここに武器を隠すと指差した場所を探れば、シロコ本人が隠したのではないかと疑ってしまうほど高確率で出てくる銃や爆薬。ここまでくればこれらを配置した人物がニセコなのは確定的に明らかだ。

 

 つまりホシノはニセコの銀行強盗の予兆に気付いていた。そのためここ数週間は銀行周りの見回り回数を増やし、見回りをしていない時も銀行で銃声が鳴れば即座に駆け付けられる位置に待機していた。なので今回ニセコがホシノと出会ったのは偶然ではなく必然である。ニセコがシロコと瓜二つの見た目じゃなければ不意打ち上等で確保すら出来た。

 

 まぁニセコの隠した銃探しの過程でニセコがアビドスの銀行を狙っているとシロコに気付かれたのでシロコの銀行にくる頻度が極端に上がり、ニセコが来るまでホシノがシロコを誤認確保した回数は2桁を越えたのだが。その結果生まれたのが秘密の合言葉だし、ぶっちゃけ背後からニセコに話しかけた時もシロコがまた来たんだとホシノは本気で勘違いしていた。

 

 確実を求めるなら多少キツイ言い方になってでもホシノはシロコにニセコを捕まえるまでは銀行に来るなと言えばよかったのだが、今みたいに仮に気付かれてニセコが逃げても捕まえられる自信がホシノにはあったのでそこまで言う必要はないだろうと判断していた。

 

「その子はシロコちゃんって名前なんだけどね、ニセコちゃんに瓜二つの容姿をしているんだよ。で、シロコちゃんはニセコちゃんに何か感じるって言っているんだけど、ニセコちゃんはシロコちゃんに何か感じるのかな?」

 

 逃走ルート上にあるものは全て没収したと思っているホシノはここまでのやり取りで自分ならニセコを問題なく捕まえることが出来ると確信し、それによって生まれた余裕からかまだ捕まえてもいないのにニセコへシロコのことを聞いた。しかし直後にテレビに映ることなんてなかったシロコのことをニセコが知っているわけないかと内心でツッコミを入れる。

 

「シロコ……。ん、シロコには私も仲間意識がある」

「……えっ?」

 

 だがホシノの予想とは違い、シロコは自分の仲間だとニセコはしっかりと頷いた。

 

「ん、覚えてる。シロコがあなたにマフラーを巻かれた日、私も近くにいたから。あの時はよく分からなかったけど、今ならしっかり仲間だって言える」

「ちょ、ちょっと待って‼︎ だったらなんでニセコちゃんはコッチに来なかったの⁉︎」

「ん、あの子は本物で、私は偽物だから。ニセコって名前もここから自分で付けた」

「なっ……」

 

 ホシノの焦りが滲んだ問いかけに、ニセコは少し目を逸らしつつ断言した。

 

 その言葉にホシノは絶句しているが、勘違いしてはいけない。ニセコの仲間意識はホシノに追われる前のやり取りでシロコも銀行強盗が好きなんだと感じたことからだし、自分の名前もシロコ本人がいるなら似ている自分はニセコでいいや〜という適当な理由で付けたもので決して重苦しい背景があったわけじゃない。なんなら愛銃である『真偽』の名前に込められた意味の方が遥かに重い。

 

 だが説明不足によってホシノにはクリティカルヒット…‼︎ さらにホシノが冗談のつもりで考えたニセコという名前がそのまんまの理由だったことでダメージが倍増…‼︎ ホシノの思考は本人が聞けば何それ知らないと断言するであろうニセコの悲惨な過去(笑)を急造で作り始め、1人で勝手に曇り始める。

 

 そんなホシノの姿にチャンスを見出したニセコはジリジリと後退していくが、それはそれ、これはこれと言わんばかりにニセコのつま先ギリギリの地面をホシノは撃ち抜いた。

 

 逃げることを咎められたニセコはホシノと視線が合うと構わず逃走。ニセコの背中をホシノは何かの決意が漲った瞳で捉えるが、側から見たら罪悪感と使命感の二つがぐちゃぐちゃに混ざり合った濁った瞳だ。今までそんな目で見られたことがないニセコが逃げるのは当然と言える。

 

 ニセコの名前の理由やシロコに対する仲間意識の有無を聞いてからホシノの中では一度は取りやめていたニセコをアビドスに編入させる案を再決定していた。そのためには様々な問題があるが、シロコちゃんとニセコちゃんのためならとホシノは即座に覚悟を完了させた。

 

 何か踏み込んじゃ駄目なところを刺激したのかと困惑しながら逃げるニセコをホシノは猛追する。相変わらず盾を持っているとは思えない速度のホシノに先程の二の舞はゴメンだとニセコはついに腰のホルスターから回転式拳銃(リボルバー)を抜いた。

 

 しかしそれは愛銃の『真偽』ではなく、M19コンバットカスタム。片手で握ったそれをニセコは手慣れた様子で構え、逃げながらホシノの脚を狙って撃つ。

 

 転倒を狙った射撃だが、盾を構えたホシノには効果が薄い。だが盾を前面に構えたことでほんの僅かだけホシノの走るスピードを遅くすることに成功。

 

 とはいえ全弾撃ち終えるとホシノが再び加速を始めるのは明白なので、リロード時間を埋めるようにニセコはピンを抜いた手榴弾を足下に落とした。ホシノの今のスピードなら爆発するタイミングで丁度真下に手榴弾がある計算なので、回避するためにはスピードを落とすしかないだろう。

 

 手榴弾を落としたニセコは走りながらコンバットカスタムのシリンダーロックを解除し、横へシリンダーを出してから銃身を上に傾けて重力で弾を落とす。数発は発射時の高圧ガスで薬莢が膨らんでシリンダー内に張り付き落ちてこないため、シリンダーに取り付けられている抜弾具であるエキストラクターを押して一気に廃莢。それが済めばポケットに手を突っ込み、取り出したスピードローダーで一度に全て装弾してから左手でシリンダーを銃身に押し戻す。

 

 そして再びホシノへ撃とうと構えたタイミングでニセコは想定よりも迫ってきているホシノに驚き目を見開いた。愛銃と同じ種類のためか淀みなく行われたリロードに時間はかかっておらず、背後で爆発音もしたので手榴弾が不発だった可能性はゼロ。手榴弾の足止めを考慮すればホシノの速度ならもっと後ろにいなければおかしい。

 

 だがそれはホシノが既に最高速度であることと、手榴弾の命中を嫌って速度を落とすことの2つが前提の話だ。もしホシノがまだ速度を上げられるのならニセコはとっくに捕まっているので、後者の前提が間違ったのだろうとニセコはあたりをつけた。

 

 それは正しく、ホシノはニセコがピンを抜いて手榴弾を地面に落とすまでを観察して爆発までの大まかなタイミングを計算。怯まずに走り続け、爆発の瞬間に上から自分ごと倒れ込むように盾で手榴弾にのしかかり、その際に盾の角度を調整することで爆発の衝撃を利用して前方へ飛ぶ。そして空中で体勢を立て直し、タイムロスを極限まで無くしつつ着地。即座に追跡を続行した。

 

 手榴弾のピンを抜く瞬間さえホシノに見せていなければいつ爆発するか分からない手榴弾をホシノは警戒して多少はスピードを落としていたかもしれないが、過ぎたことはどうしようもない。慌てていて普段ならしない凡ミスに気付いたニセコは歯噛みするが、ホシノは待ってくれない。

 

 走りながら構えられたホシノの愛銃。先程までとは違って適度に距離が離れているので障害物がないこの場で防御または回避は難しいが、このまま逃げ続けても延々と痛い弾を背中に撃ち込まれるだけ。かといって射撃戦に持ち込んでもホシノ相手だとニセコが負けるのは確実。

 

 自分に有利な状況となったことでホシノの瞳にはこれで終わらせるという気迫が込められているが、奇しくもこの状況はニセコも望んでいたものだった。

 

 そのためニセコは走る脚を止め、反転しつつコンバットカスタムを構える。そしてホシノと撃ち合いが始まる……瞬間にニセコはコンバットカスタムを上に投げ、隠し持っていた愛銃の『真偽』による早撃ちで仕留めにいった。

 

「うへっ⁉︎」

「んっ⁉︎」

 

 驚愕の声は両者から。ニセコの早撃ちを知らなかったホシノは自身の愛銃を撃たれて弾き飛ばされたことに。ニセコは真上にコンバットカスタムを投げてホシノの視線を誘導したことに加え、初見では対応が難しい自慢の早撃ちにホシノが反応してみせたことに。

 

 銃口に弾を撃ち込んで銃そのものを破壊するつもりだったのに、計算が狂ったニセコは何度目かになる逃走。反射でそれをホシノは追いかけようとするが、ニセコを捕まえるために愛銃は必要だと確信していたため、距離が離れるとわかっていても後ろへ弾き飛ばされた愛銃の回収を優先。結果としてニセコに状況は大きく傾いた。

 

『はいはーい、回収屋だよ』

「ん、聞こえる? 私の予約番号は275。依頼は予約時と変わらず回収。アビドスのB地点に至急でお願い」

『え〜と、275、275……ニセコちゃんだね。いつもご利用ありがとうございます。依頼は了承したよ。その場所だと……10分程はかかるね』

「ん、待ってる」

 

 その間にニセコはホシノを警戒しつつ、銀行強盗をするにあたって覚えたアビドスの地図を脳内に浮かべ、配置した乗り物が全て遠い場所にあるからか念の為にと用意しておいた保険を使うべくスマホでとある業者に依頼を通す。滞りなく依頼が済めば近くの銃の隠し場所へ向かい、道端に放棄された古臭い鉄箱を開けて予想通り残っていたショットガンを取り出した。

 

 ホシノはシロコと協力してニセコの事前準備した銃や爆薬を回収したと言っていたが、全てを回収されたわけではないとニセコは見抜いていた。

 

 その根拠として、シロコは銀行強盗が好きでも実際にやったことはないことが挙げられる。

 

 世の中には実際にやってみれば思ってたものと違っていたなんてことはザラにある。それは銀行強盗にも当て嵌まり、地図を見た限りではここからここまでは一個前に回収した武器でいけると思っても、実際にやれば中間点にも何か欲しいとなったことは数知れず。ニセコが現在握っているショットガンはそういった何かを埋めるために用意したものだ。

 

 とはいえ愛銃にショットガンを使っているホシノとショットガンで撃ち合いなんてプロ相手にアマチュアが挑戦するようなもの。なら何故脚を止めてまでこれを回収したのかといえば、これに込められた弾が理由だ。

 

 早速と言わんばかりにニセコがショットガンを構え、迫ってくるホシノへ狙いを定めて引き金を引く。この距離ならスラグ弾でも大したダメージにならないとホシノは走り続けていたが、構えられた銃口から飛び出したのは弾ではなく炎。キヴォトスでは滅多に見ない光景にホシノは驚き、咄嗟にその場で急停止して盾を構えた。

 

「うへ、ドラゴンブレス弾なんて珍しいもの使ってるね」

 

 あまりの派手さにホシノは驚いたが、使われた弾の正体を見破ると周囲に燃え移っていないかだけ確認して前進。ニセコも致死性が低いドラゴンブレス弾はキヴォトスでは派手な花火でしかないと知っているので、炎でホシノの服が燃えて全裸になり、恥ずかしさから行動不能になったらいいな程度にしか期待しておらず、ホシノが脚を止めた時点で逃走を再開していた。

 

 ドラゴンブレス弾の派手さに紛れ込ませて最後の一発を撃つと同時にちゃっかりばら撒いておいたフラッシュバンで再びホシノの足を止め、ニセコは全力ダッシュ。そしてその先にある廃墟となったビル群の一つに駆け込む。

 

 電気はきていないのでエレベーターは使えず、階段を駆け上がる。ビル自体が5階建ての小規模なものだったこともあり、そこまで時間をかけずにニセコは屋上まで辿り着いた。

 

 そこに置いてあるとあるスイッチを回収したタイミングでポケットに仕舞っていたニセコのスマホが振動する。回数は5回。回収屋が指定されたポイントまであと数秒で着くという合図だ。

 

「もう追いかけっこは終わりかなぁ〜?」

 

 スマホの振動が収まったと同時に、少し遅れて屋上に辿り着いたホシノが姿を現した。ニセコがパラシュートの類を持っていないことをホシノは確認すると、どんな行動を取られても確実にニセコを捕まえるためにジリジリとニセコとの距離を詰めていく。

 

 既にホシノの脳内はこの後のことを考え始めており、ニセコが迷惑をかけた自治区への謝罪周りから始まってそれを済ませた後のアビドス校舎でシロコとニセコの再会までは描かれていた。

 

 しかしそんなホシノの思考を近付いてくるヘリのプロペラの音が掻き消した。最初は気にしていなかったホシノでも、その音が段々と近付いてくるのなら当然気になるわけで。一度足を止めて視線を音が響く方角へ向け、その先で飛んでいるヘリの機体下部に取り付けられた機関砲がコチラを狙っていることに気付くとホシノは即座に盾を構えた。

 

 盾を構えたと同時に撃たれ、機関砲の弾幕がホシノの動きを制限する。ニセコが巻き添えをくらうかもしれないとホシノはその場で耐え続けるが、その間にヘリはドアを開いて縄梯子を下ろしながらホシノたちがいるビルへ急接近を開始。ニセコもヘリ側へ移動していることからヘリの目的はニセコの回収だとホシノは勘付き、多少強引でもニセコを捕まえるために盾を構えながら駆け出した。

 

 だがそれもニセコが屋上で回収した小型装置のスイッチを押したことで止められた。スイッチから発せられた信号がこのビルの基盤となる柱群に巻き付けられていた爆弾へ届き、起爆。支えとなる柱が全て破壊されたことでビルは形を保てなくなり、崩れる際に発生する強い振動にホシノは立っていられず膝をついた。

 

 その姿にニセコはホッと安堵の息を吐く。この方法は危険度が高く、追いかけてきたのが確実に生き残るだろうと確信出来るホシノだけだった場合のみに使おうと決めていたものだ。もしここでシロコやノノミがいれば別の方法を取っていたが、その場合は今も追いかけっこは続いていただろう。

 

「じゃあね、ホシノ……先輩?」

「待って‼︎ ニセコちゃん‼︎」

 

 流石に崩落はマズイと考えたのか、盾に込められた神秘を解放したホシノは球体状に展開されたシールドの中からニセコへ手を伸ばす。その手をニセコは少し眺めたあと、逃げられる嬉しさを顔に出せば煽りに思われるかもしれないと顔を引き締め、もし緩んでも大丈夫なように念の為ホシノから顔を背けたまま近付いてきたヘリの縄梯子を掴み、崩れゆくビルから悠々と脱出するのだった。

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ニセコはどうしたんだ?」

「あー、アビドスで銀行強盗を失敗したらしい。しかもやる前に見つかって追われたみたい」

「マジで? 凄いなアビドスは」

 

 回収屋の手を借りて無事にブラックマーケットから帰ってきたニセコはスケバンたちの家の絨毯の上でうつ伏せになりながら落ち込んでいた。

 

 纏うオーラはどんよりとしており、そんなニセコを見ながらスケバンたちはヒソヒソ話しながら情報共有を行う。一方アビドスでも絶対ニセコを捕まえるって言ったのに逃してしまったホシノに対してシロコがニセコと似たような状態になっていた。何度も様子を見に来るシロコへ絶対に捕まえるからおじさんに任せてと言ってどうにか納得してもらったばかりなのに逃げられたので、おじさん状態のホシノはオロオロとするしかない。

 

「ただいま〜。って、うおっ⁉︎ どうしたんだニセコ⁉︎」

「おかえり。ニセコは──」

 

 最後のスケバンも帰宅し、シェアしている家のリビングでどんよりオーラを纏いながらうつ伏せ状態のニセコに驚くが、先にいたスケバンから理由を説明されると納得した表情になった。

 

「確かに今まで失敗したことなかったもんな。あたしからすると逃げて帰ってきてくれただけで十分だけど。……よし! だったら丁度買ってきたアイスでも食べて残念会でもするか‼︎ ニセコも食べるだろ?」

「…ん、食べる」

 

 帰ってきたばかりのスケバンが掲げたビニール袋が音を鳴らし、アイスという言葉に獣耳を反応させたニセコは顔だけを上げると芋虫みたいに腰を上げて下げてと繰り返してみんなが集まっている机までモゾモゾと移動する。

 

「ほら、いつものバニラ味でいいだろ?」

「ん、ありがとう」

 

 辿り着いた机の上に顎を置いたニセコは受け取ったアイスの蓋を開けて早速食べ始める。どうやらお気に召したようで、どんよりオーラは木の板みたいなスプーンで掬ったアイスを食べる度に引っ込んでいき、代わりに幸せオーラが溢れ出していく。やがてニセコは完璧に幸せ状態になり、スケバンたちは互いに目を合わせて良くやったと讃えあう。

 

 一方ホシノは未だに伏せているシロコの前でオロオロしていた。辺りには機嫌を取ろうとしたのかゴチャゴチャといろんな物が散らばっているが、期待していた分の反動が強いのかシロコの機嫌が戻る様子はまだ無い。

 

「そういえばなんだけどよ。ニセコ、最近またニセコのことを探ってる奴らがいるらしいぞ。ここら辺でニセコのことを素直に話す奴らはいないと思うから大丈夫とは思うけど、相手が強引に聞き出すかもしれないし、自力でニセコのことを見つけるかもしれないから一応気を付けておけよ」

「……そうなんだ。ん、ありがとう。気を付ける」

 

 しばらくは雑談をしながらアイスを食べていたスケバンたちとニセコだったが、アイスを食べ終えて落ち着いたタイミングでブラックマーケットの住民ネットワークで聞いたことをスケバンはニセコに伝えた。それに対してニセコはしっかりと頷き、この後はスケバンたちと一緒に人生ゲームなどで夜遅くまで遊ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は深夜。夜でも営業している店の周りは騒がしいが、それ以外は基本的に静かだ。そんなもうすぐ日が変わるかどうかといった時間帯に、ニセコの自宅前には4人の少女たちがコソコソと行動していた。

 

 罠や周囲を警戒しつつ、ニセコ宅の敷地に入り込んだ4人組は先頭を歩く少女が出すハンドサインに従いながらリビングの窓まで移動。そして3人が辺りを警戒し、残った1人は音に気を付けながら道具を使って窓ガラスを切断すると慎重にガラスを外してから腕を通し、奥の鍵を開けた。

 

 極力音を鳴らさないように窓を開け、ニセコ宅に侵入する4人組。侵入の際に暗視ゴーグルを装着したからか、電気がついてないため暗い家の中でも足取りはしっかりとしている。

 

 歩みを進め、とある部屋の前に辿り着いた4人組。先頭に立つ少女が部屋のドアを僅かに開けて中の様子を確認し、視線の先に1人分の膨らみがある布団を確認するとゆっくりとドアを全開にして部屋の中へ侵入する。

 

 そして仲間たちが布団を囲むとチェックメイトだと言わんばかりにそれぞれが銃を膨らんだ布団へ突き付け、1人が布団の端を掴んで一気に捲った。

 

「んなっ⁉︎」

 

 しかしそこに少女たちのターゲットであるニセコはおらず、代わりに人の形に見えるように積まれた爆薬が鎮座していた。驚き暗視ゴーグルを外したリーダー格の少女は『ん、残念』と書かれた張り紙を目撃し、そのタイミングで張り紙のすぐ下に取り付けられていた何らかのセンサーが条件を満たしたのか無機質な音を周囲に響かせる。

 

「しまった‼︎ 総員──」

 

 ターゲットに気付かれていたことを知り、リーダー格の少女がここから避難するように残りの3人へ伝えようとするが時既に遅し。センサーからの信号を受けた爆薬が起爆し、もし侵入者が来た時用にとニセコが設置した他の爆発物へ連鎖していき最終的にニセコ宅を丸ごと吹き飛ばす大爆発を起こす。

 

 爆心地にいた4人組が耐え切れず気絶するなか、突然の爆発音にブラックマーケット内の騒ぎが大きくなり始める。マーケットガードやアルバイトで夜の警備に出ていた不良たちが原因を特定しようと現場に駆け付けようとするが、その足はすぐに止まることとなった。

 

「合図だ‼︎ 突撃ィィ‼︎」

「なっ! なんでゲヘナの風紀委員がこんなところに⁉︎」

 

 ブラックマーケットを囲むように展開していたゲヘナの風紀委員たちが突然攻め込んできたからだ。風紀委員は本来なら忍び込んだ別動隊が仕掛けた爆薬が爆発したと同時に攻め込む手筈だったのだが、作戦開始時間が近かったためかニセコが仕掛けた爆薬の爆発を合図と勘違いしてしまった一部が先行。これによって騒ぎはさらに拡大することとなる。

 

「……チッ、勘違いした奴がいたか」

「あらあら、そちらは下の指揮系統にも問題があるのですね」

「そっちのガチガチと違って柔軟な対応が売りなんでな。はぁ、こうなっては仕方ない。始めるぞ」

「えぇ、よしなに。……こほん、ティーパーティーホストからトリニティ各隊へ通達します。楽しいお茶会を始めますわ」

「司令部からゲヘナ各隊へ告ぐ、作戦開始だ! 1人のおこぼれにあずかって成長し、自らを強者だと勘違いした身の程知らずどもに痛い目を見せてやれェ‼︎」

 

 一部の間違った先行に司令部が気付くも手遅れ。ブラックマーケット側に気付かれてしまった以上、隠す必要もないため前倒しで作戦開始を告げる。

 

 その数秒後、遠方から砲声が幾つも響き、さらに数秒後にブラックマーケットのあちこちへトリニティ側が放った榴弾砲の弾丸が着弾。後にブラックマーケット事変と呼ばれることとなる戦闘が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「押せぇぇ‼︎」

「押し返せぇ‼︎ 折角暮らしが良くなってきてんのに滅茶苦茶にされてたまるかぁ‼︎」

 

 日替わりとほぼ同時刻に始まった戦闘。道路には戦車が並び、空には戦闘ヘリが多数飛び回る。側から見れば壮観だろうが、それらの主砲や銃口が自分たちに向けられているとなれば話は変わってくるだろう。

 

 しかしトリニティもゲヘナもすぐに決着がつくと考えていたこの戦いは、意外にもブラックマーケット側の激しい抵抗によって戦況が拮抗していた。特にニセコが銀行強盗をする前までその日暮らしでなんとか生活していた者たちは積極的に戦いに参加しており、自身が倒れるのも厭わない戦い方でブラックマーケット側が態勢を整える時間を稼いでいた。

 

 そんなあちこちで銃声やら爆発音やらが響く道路を自宅ではなくセーフティーハウスで寝ていたニセコは走っていた。最初に向かったのはスケバンたちの家で、彼女たちが居ないことを確認すると次は少し離れた場所に存在する何の変哲もないビルに入り、壁に設置されている静脈認証の装置に指を通す。

 

 無事に認証が完了すると、壁に偽装されたドアが開いて地下への階段が現れる。その階段をニセコが下りていくと、その先にはミレニアムでよく見る近未来的な一室が姿を見せた。

 

「やぁやぁ、来ると思ったよニセコくん」

「ん、ソヨ。久しぶり」

 

 そこにはニセコからソヨと呼ばれた少女が待っており、彼女は巨大なモニター前の椅子から立ち上がってニセコを歓迎する。そんなソヨにニセコは挨拶を返しつつ、各地の映像が映るモニターを眺めた。

 

「これ、どうなっているの? さっき私の家にSRTの生徒が来てた」

「んー、ボクが集めた情報だとトリニティとゲヘナがここを攻め込んでいるね。目的はブラックマーケット内で我が校の生徒が不当な暴行を受けたことに対する制裁。記録上では大きな怪我をして病院送りになった生徒がいるから正当性も一応あるし、連邦生徒会もこの作戦行動を認めている。……まぁ骨折などの被害に遭ったはずの生徒は何故か入院した翌日に絆創膏一つだけで通学しているし、件の証拠映像も暴行を受けていたとこだけでその後の反撃で相手をボッコボコにしているところは使ってないみたいだけど」

 

 椅子に座り直したソヨが机の液晶キーボードを操作すると、モニターに件の暴行の映像や被害に遭った生徒のプロフィールが表示される。映像はともかく、体重などが事細かく掲載されているプロフィールは見てもいいのかとニセコは不安に思ったが、言わなければ問題ないと体重の横に表示された+3kgという文字から視線を外した。

 

「そんなわけでこれらは全てここに攻め込むための口実作り。向こうの本命は十中八九ニセコくんだね。SRTが君の自宅に来たのならまず間違いない。あちら側の筋書きはブラックマーケットへの制裁中に偶然そこに隠れていた銀行強盗犯を捕らえましたってところだろう。ブラックマーケットの規模を縮小させて悩みの種である銀行強盗犯も捕まえることが出来てまさに一石二鳥というわけさ。しかも仮にニセコくんを取り逃しても本命は制裁だったからって逃げ道も準備済みだ」

 

 やれやれとでも言いたげに頭の後ろに腕を組んで椅子にもたれかかるソヨ。着ている白衣のポケットに手を突っ込み、取り出した棒付きキャンディの袋を剥がして口に咥えるとため息を吐いた。

 

「そんな向こうに対してこちら側の一部の悪い大人たちは情けないことに早々にトンズラ準備だ。いくら力を付けてもトリニティとゲヘナの相手は分が悪いって判断だね。もちろんそこでアルバイトをしている生徒たちは切り捨てだよ。ボク個人としては腹立たしいことだけど、これも一つの手ではある」

 

 モニターに映る戦局図はこちら側が圧倒的に不利。包囲されているだけでもマズいのに、手が出せない安全圏から延々と榴弾砲で撃ち込まれている状況だ。包囲を突破すればまだどうにか出来そうだが、それをゲヘナの戦車隊が許さない。

 

「……でも君は行くのだろう?」

「ん、スケバンたちは逃がさないと」

「はぁ、彼女たちも愛されているね。羨ましいよ」

 

 劣勢な戦局図や逃げる大人たちの映像を見せても怯まないニセコにソヨは観念したかのように立ち上がり、ニセコについてくるように指示を出してから部屋を出ていく。それにニセコもついていき、別室に着くとそこには一つのパワードスーツが鎮座していた。

 

「これって……」

「お察しの通り、ニセコくんからの援助を受けてボクが完成させたものさ。名は『カタフラクト』」

「おお……‼︎」

「正直に言うならもっとデザインを弄りたかったが、スポンサーである君の…って聞いてないね」

 

 灰色を基調として水色と黒が散りばめられた装甲マシマシ、武装マシマシな己の好み全開の見た目をしたパワードスーツに目を輝かせるニセコ。当然ソヨのデザイン云々は耳に入っても逆側の耳へそのまま抜けている。

 

 まぁこのパワードスーツを製造する過程でロマンや格好良さを語り合った仲なので、ソヨにも今のニセコの気持ちはわかる。しかし時間が惜しいのでソヨは両手を鳴らし、ニセコの意識を自分へと向けさせた。

 

「ボクも拘った部分などを存分に語りたいところだけど、残念ながら時間が惜しい。ニセコくんだけが動かせるように生体認証の登録などを手早く済ませていくよ」

「ん!」

 

 自分専用という言葉にニセコはさらに目を輝かせる。パワードスーツに駆け寄る姿はデパートなどのオモチャコーナーに突撃する子どものようだ。その姿をソヨは微笑ましく思いながら、登録の補助をするために自分もニセコのもとへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

『さてニセコくん。聞こえるかな?』

「ん、大丈夫」

 

 色々な登録作業を済ませたニセコは現在パワードスーツに身を包み、地下から地上へ向かうエレベーターに乗っていた。この戦いでもし自分が捕まっても心配しないようにとヒフミにモモトークでメッセージを送った後、火器管制や通信を兼ねるバイザーを下ろし、各システムの調子を確かめながらニセコはソヨからの通信に応答する。

 

『カタフラクトは正直に言うと正常に稼働していないと装備した武装の重みで動けなくなる欠陥品だ。エネルギー残量には常に気を配り、危険だと思ったら一度下がってエネルギーの回復を待つんだ』

「ん、わかった」

『ボクはこれからここで君のサポートに入る。ニセコくんは大事なスポンサーだし、ボクの生徒でもあるからね』

「ありがとう。そういえば今月の勉強代、ソヨはまだ引き下ろしてないけど……」

『おいおい、ボクをなんだと思っているんだ。今月はまだ一度もプログラミングの勉強を教えてないのにお金だけ貰うつもりなんてないよ』

 

 説明と雑談をしていると、地上に着いたようでドアが開く。それに連動してビルの壁も動き、外への道が真っ直ぐと開かれた。

 

「ん、システムオールグリーン。進路異常なし。出るよ」

 

 ニセコが前屈みになり、背後の大型バックパックの推力偏向ノズルから火が噴き出す。加速したニセコは外へと飛び出し、同時にビルから多数のドローンがニセコを追いかけるように飛び立つ。

 

 道路へ出たニセコは早速身体を丸めると、パワードスーツが変形を始めた。装甲がニセコを包み込むように展開し、前方のスリットからニセコが装着しているバイザーの光が漏れる戦車形態となる。

 

 その状態でニセコは前進。進んだ先にいた抵抗を続けている不良たちを追い越して、2校混成の部隊の前へ躍り出た。

 

「な、なんだ⁉︎」

「ん、邪魔」

 

 突然飛び出してきたニセコに風紀委員や正義実現委員会の生徒たちが困惑する中、ニセコは四本のサブアームを展開して大型バックパックに懸架してあった機関砲を装備。戦車状態のまま装備した機関砲を斉射する。

 

 その威力は絶大で、数発受けただけで次々と生徒たちは気絶または行動不能になっていく。反撃の攻撃も分厚い装甲に阻まれてニセコには通らない。

 

 ならばと混成部隊の奥に控えていた戦車がニセコを狙って砲弾を放つが、ニセコはバックパックの両側にアームで保持されたシールドを前に展開して砲弾を防御。直撃の瞬間にシステムが的確な角度を測定し、角度をずらすことで後方へと砲弾を受け流す。

 

 戦車の弾を受け流す行動に思わず口を開けて呆然とする戦車の乗員たち。そのせいかお返しと言わんばかりにニセコのパワードスーツに取り付けられた主砲に光が収束していることを見逃してしまった。

 

「ん、発射」

「……へっ?」

 

 主砲から放たれたのは青白いレーザーの照射。当然呆然としていた彼女たちにそれを躱せるはずがなく、レーザーに飲み込まれた戦車は装甲が赤熱していき、やがてエンジンが熱でやられて爆発を起こす。照射が終わると装甲の隙間から炎を吐き出す戦車から髪型がチリチリアフロヘアーとなったゲヘナ生徒たちが慌てて這い出てきた。

 

「ぷっ! あははは‼︎ だっさいアフロ!」

 

 そんな彼女たちを見て思わず笑ってしまったのはトリニティ側の生徒。白い服を着ていることから恐らくティーパーティー所属の生徒なのだろうが、笑ってしまったことで注意が散漫になり、ニセコがミサイルコンテナから放ったミサイルに気付いてない。

 

 その結果として彼女はミサイルに直撃し、密かな自慢だった艶やかなロングヘアーがチリチリアフロヘアーへとフォルムチェンジ。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎⁉︎」

 

 煤けた身体のまま懐から取り出した割れた手鏡に映る己の無惨なアフロヘアーに殺人現場でも見たような悲鳴をあげるトリニティ生徒。思わずといった様子でへたり込む彼女を尻目にトリニティ側はニセコに恐れ慄く。

 

 彼女たちはトリニティに通学する者として、当然見た目や髪には気を遣っている。日々の肌荒れや髪の毛のケアはもちろんのこと、必要なら美容院にも通っている。

 

 そんな少女たちの努力がニセコの攻撃をくらえば一瞬で無に還るどころかマイナスへ突っ込んでいくのだ。恐れるのも仕方ないと言える。

 

 まぁ髪のケアはそこそこで済ませているニセコはそんなもん知らんがなと言いたげにコンテナを多数展開。装填されているのは当然一発くらえば貴方もアフロヘアーなミサイルだ。

 

「ん、全弾発射」

「きゃぁぁぁ‼︎ 鬼!悪魔‼︎」

 

 複雑な軌道を描いて飛来するミサイル群にトリニティ側は正義実現委員会に所属する者を除いて堪らず壊走。誰だってアフロヘアーにはなりたくないのである。しかしニセコの武装はミサイルだけではないので当然背後から容赦のない追撃が入る。

 

 追撃の機関砲で足を止めればミサイルが直撃。増援として2両の戦車が来てくれた時は中身がゲヘナ生徒でも天使に見えたトリニティ生徒たちだったが、直後に戦車はニセコのレーザー砲で一掃されたので汚いとわかっていても期待を返せとトリニティ生徒たちはその場で唾を吐き捨てた。

 

 そんなグダグダした戦場にニセコが苦戦なんてするわけがなく、大して時間はかからずに制圧は完了。ニセコが次の場所へ向かってこの場を去ったあと、ここで戦っていた不良たちが辺りを見渡すと、転がっているのは機関砲で気絶した生徒とアフロヘアーとなって戦意を喪失した生徒ばかり。

 

「あー、なんだ、大丈夫か?」

「……ありがとう。あなたもアフロなのに優しいのね」

「あたしは元からこの髪型だからな⁉︎」

 

 攻め込まれたとはいえ、流石に気まずいのか不良がハンカチを差し出しながらアフロヘアー生徒に声を掛けるが、彼女から返ってきた言葉に思わずツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソヨ、リロードをお願い」

『任せてくれたまえ』

 

 次のポイントへ向かう最中、ニセコの要請に応えて走行するニセコのバックパックにソヨが操作する四足歩行の飛行型ドローンが取り付き、持ち運んでいたカタフラクト用の弾薬箱を補充用の穴に入れる。ソヨから受け取った弾薬箱がバックパックの中へ取り込まれ、バイザーに映る各兵装の残数が回復したことを確認するとニセコはソヨにお礼を伝えた。

 

 あれからもニセコは移動を続け、道中で出会った敵を倒しながらスケバンたちを探していた。しかし中々スケバンたちは見つからず、ニセコに焦りが募っていく。

 

 初めに接敵してからそれなりの時間が経っているため、そろそろ向こう側も何らかの対策を打ってきてもおかしくない。一番可能性が高いのは、向こうの強者たちをニセコにぶつけてくることだろう。強者筆頭であるヒナやホシノと戦った経験から、このカタフラクトをもってしても勝てる確率は六割あるかどうかといったところだ。

 

『ニセコくん、スケバンたちを発見したよ。今はボクのドローンで拠点まで誘導している最中だ』

「ん! 本当⁉︎」

『あぁ、本当だとも』

 

 そんな時、ソヨからスケバンたちの発見報告が入る。ニセコは時計回りにぐるりとブラックマーケットを一周する形で移動していたのだが、運が悪いことにスケバンたちはこのままニセコが進んだ場合、最後の方になる場所にいた。

 

 とはいえ無事に見つかったことにニセコは一先ず安堵した。スケバンたちが見つかった以上、ここからの戦闘は無駄なのでニセコは進路を変えてソヨの拠点を目指すが、そんなニセコの耳にヘリのプロペラ音が届く。

 

 真っ直ぐとニセコの方向を目指して飛んでくるヘリに、また来たかとニセコは主砲にエネルギーをチャージさせながら照準を合わせたのだが、よく見ればここまでで撃墜した戦闘ヘリとは違って今回のヘリに武装はなく、戦えるようには到底見えない。

 

 もしかしたらやられた生徒を回収しに来たのかもしれないと、同じような見た目で他の生徒を回収していたヘリのことを思い出したニセコはやられた生徒の追い打ちをする趣味はないとヘリから照準を外した。

 

 よそ見運転は危ないのでそのまま視線もヘリから外そうとしたニセコだが、その前にヘリの扉が開き、空崎ヒナが姿を見せたことでニセコは即座にヘリを再照準。エネルギーが完全に溜まっていないが構わず主砲からレーザーを発射した。

 

 そのせいか照射ではなく砲弾のようなレーザーがヘリに向かって撃ち出されたが、それでも破壊力は十分。だがその頃にはヒナはヘリから飛び出していた。

 

 ヒナとレーザーの砲弾がすれ違い、砲弾はヘリの尾を破壊するだけに終わる。くるくる回転しながらヘリが墜落していくなか、月を背景にしたヒナはデストロイヤーを構えながらニセコのもとへ落ちてくる。

 

「ターゲットを確認した」

「ん…‼︎」

 

 放たれたデストロイヤーの弾幕をニセコは盾で防ぎながらランダム回避。しかし戦車形態だと動きが読みやすいのか、弾幕から抜けられる気配が感じられない。このままだと盾で防いでいるとはいえダメージは嵩む一方だと判断したニセコは通常形態へ移行し、両脚の偏向ノズルを動かしてホバー移動をしながら弾幕から脱出。お返しと言わんばかりに腕の外側に伸びた一対のマニピュレーターを備えたアームにそれぞれ2門ずつ装備された機関砲をヒナに向けて撃つが、ヒナは羽を小まめに動かして空中で回避を続け、やがて建物の陰に姿を隠した。

 

 それを確認したニセコは即座に後退。出力を最大にしてこの場からの離脱を図る。最高速度は戦車形態の方が速いが、多少速度を落としてでも対応力の高い通常形態を優先。

 

 それでもスピードは速いので振り切るには十分。ある程度離れたところでヒナがいると予測した場所へミサイルを全弾ばら撒いてからコンテナをパージし、可能な限り身軽になってからニセコは真っ直ぐにソヨがいるビルを目指す。

 

 背後からはミサイルの爆発音が聞こえるが、どうせ防がれているか躱されているので逃げを優先。今までの経験からヒナがカタフラクトの速度に追い付くことは不可能だとニセコはわかっているが、ヒナには集中射撃という遠距離でも高い貫通力と破壊力を有する攻撃手段があるため油断は出来ない。

 

 そうやってニセコが警戒していると、爆煙の中から姿を現したヒナが腰を落としてデストロイヤーを構えた。その体勢に過去のトラウマ(ドローン破壊による高所からの落下)を思い出して身体が震えだすが、何とか押さえ込んでニセコは盾を構える。

 

「んっ⁉︎」

 

 ヒナから放たれた神秘の篭った弾丸は、猛スピードでニセコの盾に接近。システムが適切な角度を計算する前に、んなもん知るかと装甲をぶち抜いて通り過ぎていった。

 

『んなっ⁉︎ カタフラクトでも最硬の部位だぞ⁉︎』

「ダメージコントロール‼︎」

 

 あまりにも出鱈目な光景をドローン越しにモニターで見ていたソヨの驚く声を聞きつつ、ニセコは内部を破壊されてスパークする盾を見ながらシステムにダメージコントロールを指示。そんなニセコに追い打ちをかけるかのように、ニセコが進む先の曲がり角からピンク髪の少女が姿を現す。

 

 だがニセコはヒナの攻撃に意識を向けており、前を見ていなかった。それがニセコの今後を決定させてしまった。

 

 曲がり角から姿を見せたのは今回の騒ぎをいち早く聞きつけてアビドスから走って駆け付けたホシノだった。しかも防弾チョッキに身を包み、いつもの装備に加えてニセコから回収したスタンナイフや4連装ロケットランチャーを背負った完全形態だ。その立ち振る舞いはどこぞの娘を拐われた元陸軍特殊部隊隊長のような効果音(デェェェン)すら幻聴で聞こえてくる。

 

 そんなホシノにニセコが気付いたが、カタフラクトは急には止まれない。うわっ、前から臨戦ホシノがっ⁉︎ とニセコは身体をのけ反らせて急ブレーキをかけるが、ホシノは構わず4連装ロケットランチャーの引き金を引いた。

 

 飛来する弾にニセコはカタフラクトの兵装ではなく、自身の愛銃である『真偽』で迎撃を選択。早撃ちで全ての弾を撃ち抜くことに成功するが、4連装ロケットランチャーから撃ち出された弾は爆発ではなく中のトリモチを前方へぶちまけた。今回でいえばニセコの方へトリモチをぶちまけた。

 

 トリモチはカタフラクトの装甲に付着し、運が悪いことに数カ所は関節部に入り込んだ。いつもは頼りになる強力な粘着力が今回は牙を剥き、カタフラクトの動きを制限する。それにニセコが戸惑った瞬間、ホシノは距離を詰めてニセコの腹部に愛銃の銃口を向けた。

 

 ニセコが自身のミスに気付く前にホシノは引き金を引き、ニセコに強烈な一撃を撃ち込む。さらに確実に無力化するためか、一発では済まさないで愛銃に込められた分を全てニセコに連続で撃ち込んだ。

 

「うっ……ぷ、これは……無…理…」

 

 流石にこれは耐え切れないのか、ニセコは込み上げてくる吐き気に口を押さえながらその場に座り込み、前のめりに倒れてそのまま気絶。そんなニセコを助けるためにソヨのドローンがホシノに立ち向かうが、ホシノは胸のホルスターに収めていた拳銃を抜いて構えるとノールックでソヨのドローンを撃ち落として破壊する。

 

「待ちなさい」

「……うへ、何かな?」

 

 邪魔者は排除したからと気絶したニセコを連れていこうと彼女へ手を伸ばすホシノ。近くまで来ていたヒナはホシノがニセコに向ける危うい視線も合わさってその行動をニセコへさらに攻撃するつもりなのだと誤認し、阻止するためにホシノの腕を掴む。

 

 結果、2人の間にはピリついた雰囲気が漂い始め、そこへ正義実現委員会が現着。2人の雰囲気に戸惑いつつも気絶しているニセコを一先ず拘束するために正義実現委員会の1人が手錠を持って近寄るが、ホシノとヒナから同時に視線を向けられたことでピィっと情けない声を漏らしてツルギの後ろまで後退する。

 

 さらに猛ダッシュでブラックマーケットに向かうホシノを偶然見かけ、気になって追いかけてきた夜勤のヴァルキューレ生徒たちが息を切らせながら到着。先程の正義実現委員会と同じように2人の間に漂う雰囲気に戸惑うが、倒れているニセコの姿を発見し、その正体に思い至った瞬間各々がこれはチャンスと手錠を取り出してニセコに殺到する。

 

 が、やっぱりヒナとホシノの視線を受けて硬直。後退はしなかったものの、それより先には進めない。普段からシロコの様子を見に行ってホシノから友達じゃなくて仕事で来たなら早よ帰れオーラを浴びているヴァルキューレ生徒でもこれ以上先へ踏み込める度胸はなかった。

 

 結局この拮抗状態は司令部の生徒たちが駆け付けるまで継続し、駆け付けた司令部もニセコの扱いで揉め始めて周囲の空気は混沌状態へ突入。最終的には連邦生徒会が腰を上げて両校とホシノの仲裁に入るまでこの混沌状態は終わることがないのであった。




ニセコ

いきなり臨戦ホシノのEX技を腹部にぶち込まれてダウン。気絶する寸前で情報を抜かれないようにと自分のスマホを破壊。仮に頑張ってもヒナとホシノに加えて少しすればツルギたちも来たので詰んでた。銀行強盗で捕まるのは納得するけど、これで捕まるのは理不尽だとちょっぴり不満。今回の件でホシノがトラウマになった。


カタフラクト

資金さえあればどんな物でも作れると豪語したソヨによって造られたニセコ専用のパワードスーツ。ニセコの要望に応えてかなりの重装甲、重武装になり、稼働していてもシステムのパワーアシストなどが途切れてしまえば自力で動くことが出来ない欠陥品となった。装甲でニセコを包んで防御と機動力に優れた戦車形態と、人型で火力重視の通常形態がある。

盾には特殊な磁場を発生させる装置が埋め込まれており、それによってエネルギー系統の攻撃は歪曲させて無力化が可能。わかりやすく言えばフォビドゥンガンダムのあれ。そのためやろうと思えば主砲のレーザーを曲げて相手の不意を突くことも可能。


スケバンたち

ソヨの拠点でニセコがやられるのを見てしまい、助けに行こうとするがソヨにここで君たちが捕まればニセコくんの頑張りは水の泡だと怒られて思いとどまる。その後にやっぱり捕まってニセコと一緒に矯正局に行ったほうが良かったのではないかと悩むこととなるが、家に忘れていたスマホに届いていたニセコからの『すぐに出てくる』というメッセージを見て待つことにした。


ソヨ

オリジナル生徒で3年生。3話でニセコがお金を払ってプログラミングを教えてもらっていると言われてた人。元ミレニアムで、高い技術力を持つけど作りたいものを作るためにはお金が足りなかった。それで少し暴走してミレニアムを追い出され、ブラックマーケットで1人燻っていたところでニセコと出会う。

そこからニセコに資金を援助してもらって色々と作って充実した毎日を過ごしており、ニセコもロマンなどに理解を示してくれるのでさらに嬉しい。

過去に同級生であるビッグシスターが作った前衛的デザインのロボットに衝撃を受け、密かに対抗心を燃やしている。そのため自分の作ったものに前衛的なデザインを施そうとする悪癖がある。


トリニティ・ゲヘナ

ニセコの取り合いで揉めてそこから今回の作戦での互いの不備を指摘しあい、最終的には一触即発の空気になった。やっぱり共通の敵がいなくなれば人は争うんだね。





ちなみに次話で先生が来る予定です。つまりそういうことです。




……ケイちゃんと臨戦アリスで石を搾り取られた状態できた臨戦ユズとエイミ。必死に石を集めても7000個が限界で、天井なんていけそうもない。

自分のガチャ運はわかっているし、限定じゃないならいつか来る誰かの限定ガチャですり抜けてくる可能性は大いにある。つまりここはスルーするのが安牌な選択…‼︎

しかしそれは己のガチャ運に自信がない雑魚の思考だ…‼︎ なんて考えた時点で筆者の負けは決まっていた……。(爆死)
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