スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と 死神 と 久々の雑談配信

 

 心愛から二日目の治療を受けた涼。

 彼女の作ったポーションのおかげで、両手はほぼ完璧に完治したものの――

 

「とりあえず一週間は探索は禁止だから~~、ケンカやはぐれ討伐もね~~!」

 

 ――とのことで、暇を持て余している涼は、香と相談して配信をすることにした。

 

 ちなみに、相談したその日のうちに雑談配信をすることになった理由として、香が明日は大事な用があるからとからしい。

 

 香の事情はともかく――

 場所はいつもの茂鴨家の道場……ではなく、東京美食倶楽部の領主邸前だ。

 

 理由は特にない。

 ただ探索できなくてもダンジョンには入りたかっただけである。

 

 心愛に診察してもらっていた時と同じようにブルーシートを敷いてそこに座っていた。

 

「突発~、涼ちゃんねるの雑談道場~、そんなワケでこんスニ~」

 

 無表情気味に淡々と、涼がそんな棒読み挨拶をすると、即座にコメント欄が湧いてくる。

 

:はじまった!

:こんスニ~!

:こんスニー!雑談道場久々じゃん!

:kon-sne

:涼ちゃん手は大丈夫?

:こんスニ

 

「手に関しては大丈夫です。心愛さんに治療してもらいました。

 ただ、一週間は探索やケンカ禁止というコトで、暇を持て余した末の雑談道場です」

 

:理由!

:まぁ鶏肉とダンジョンが生きる糧の涼ちゃんにとって片方の封印はキツいか(笑

:医者の言うこと聞いてちゃんと安静にしとけよ~

 

「あ、そうそう。モカPからチキンのみんなに伝言があった」

 

:お?

:なんだろう?

 

「えーっと、収益化? っていうのが通ったそうです。

 次回の配信から、機能を使えるように設定しなおすとか?」

 

:ついに!

:収益化おめー!

:おおおおおおおお

:おめー!涼ちゃんはよく分かってなさそうだけどw

 

「おめでたいコトなんです?」

 

:配信することで涼ちゃんの食卓に唐揚げを一つ増やせるチャンスが増したとすれば?

:収益化が通って機能を解放するとそうなるんだよ

 

「めちゃくちゃおめでたいコトじゃないですかッ!! やばい次回の配信がめっちゃ楽しみ!!」

 

:この食いつきよwwww

:やはり唐揚げ唐揚げは全ての理解へと通じている

:全ての道は唐揚げに通ず

:唐揚げはローマだった?

 

「……と、盛り上がっても今日はその収益化? っていうものの機能は使えないので、雑談しましょう」

 

:冷静になるのも早い

:温度差ァ

 

 ふぅ――と息を吐いて、涼は足を崩す。

 ずっとあぐらだったのだが、下がゴツゴツしているので痛くなってきたのだ。

 

「座布団とか持ってくればよかった」

 

:わかる

:お花見とかでゴツゴツした場所になると結構痛いよねー

 

「そして雑談なんですが……たぶんみんな気になってるだろうギガントジェリーに関しては、あまり語るコトないんですよね」

 

:ないんだ

 

「だってほら。だいたい配信で見て貰った通りだし。戦闘に関しては出回ってる切り抜きの通りですし」

 

:大分の件は?

 

 何人かのコメントから、似たようなモノが飛んでくる。

 だが、涼は難しそうに眉を顰め、言葉を選ぶように答えた。

 

「大分に関してはボクから言えるコトは特にないです。

 ボクらだってたまたま上手く行っただけで、運と偶然の綱渡りに成功したに過ぎませんから」

 

:謙虚だなぁ

:謙虚というか事実だよ

:こればっかりはなぁ・・・

:難しい問題よね

 

「実際、香のジャンプタッチでは怒らないというのが分かったからアレが出来ただけですよ。あのタッチ程度で怒られてしまった場合、大分と結果はそう変わらなかったと思いますし」

 

:それはまぁそう

:領域の外で超人的な動きしてたことより大事なのはソレだよな

 

「……あとはまぁ、大分の件に関してはギルドもダンジョン庁もゴタゴタしてるようなので、ボクから何か言うべきコトもないんですよね」

 

:連日報道されてるしな

:あんま面白くない報道ばっかだけど

:スキルを理解してねぇコメンテーターが高笑い使ってた子をバカにしてたしな

:大分のあの子もファインプレイだったよな 死んじゃったのは残念だが

 

 だんだんとコメント欄が殺伐としてくる。

 こうなるのを予想していたから、あまりギガントジェリーの話はしたくなかったんだけどな――などと思いつつ、涼は手を叩いてチキンたちの注目を惹いた。

 

「とりあえず、ギガントジェリーの話題はここまでにして、他に何かある?」

 

:ならミスティックについて

:ああ!ディアちゃんが使ってたあれな

 

秘想技(ミスティック)に関してですけど……ぶっちゃけ分かりません!」

 

:ぶっちゃけすぎるww

:涼ちゃんでも分からないのかー

:まぁ急に出てきたしな

 

「一応ですね。ディアさんより前に秘想技(ミスティック)を習得していた知人に、Linker(リンカー)で聞いてみたりはしたんですよ」

 

:え?ディアちゃん以外にもいるの!?

:シカテイの鳴鐘だよね?

:そういや環境雑音の時に使ってたな

:環境雑音の時って何?

:二度目の↑ディアちゃんコラボの時の冒頭のこと

 

「アーツの瞬牙(シュンガ)葬一刃(ソウイツジン)を我流で現在進行形で鍛えまくってるそうですが、ある日、体力も精神も限界を迎えてなおひたすら鍛錬してた時に、意識が急に海に沈んだようになって目の前に扉があったので開けたら、中から水が溢れてきて、それを浴びたら意識が戻って、気づくと使えるようになってたとか」

 

:やっぱ鳴鐘の話だろそれ

:体力も精神も限界を迎えてなお鍛錬を続けてたってナニ……?

:鳴鐘は本来1ヒットしかしない葬一刃を何故か2ヒットするように改良してるからな・・・

:その時点で意味わからないのに秘想技まで使えるって何なんだろうね

:扉って何かの比喩か?

:その2ヒット化した技をさらに3ヒットや4ヒットする技にしようとしてたら閃いた

:ん?

:おいw

:いまチラっと本人っぽいコメントあったよな?

 

「ここで興味深いのがディアさんの話なんですよね。

 一手が足りないと気づいた瞬間に、持てる力の全てを込めてもう一歩踏み出してもなお足りないから、何でもいいから足しになれと力を込めてさらに一歩踏み出したそうです。

 その時に、周囲の時間が止まったようになって、意識が海の中に沈んだような感覚のあとで、目の前に扉があったとか」

 

:あれ?それって・・・

:鳴鐘と同じ現象か

 

「ディアさんは扉を大きく開けたらマズいという直感が働き、小さく開けて漏れ出てきたスライムのようなモノを、勢い任せに引っ張り出して……スライムは途中で千切れたけど、それでいいやと、そのスライムを受け入れた瞬間に意識が戻り、あの技を閃いたと言ってました」

 

:ちょっと開けて引っ張ってる光景を想像するとちょっと微笑ましいw

:鳴鐘は水を浴びたらしいけどディアちゃんは千切ったのか

:そうなるとディアちゃんのあの技って未完成?

 

「未完成なんだと思います。

 今は単体では発動できず、ある程度のマナを練り上げた上で、特定の技から派生させる形でしか発動できないようですので。

 ボクの知人の方は、派生させず生で出せるようなので、差はありますね」

 

:雑談配信でさらっと新情報流すのやめてくれる?ww

:確かに涼ちゃんねるはそういうところあるよな笑

:どっちにしろ限界を超えた先にあるスキルって感じか

 

「二人ともゲームで例えるならゲージ消費の超必殺技とか秘奥義とかそういう感じっぽいと言ってました。

 使う為には、戦闘中に自分のテンションやメンタルを使える状態に整える必要があるっぽいとも言ってたので、そういうところもゲームのゲージ技と似てますよね」

 

:習得したからって自由に使えないのか

 

「ちなみに二人の共通点として、他に使い手のいない我流スキルを保有しているところですね」

 

:そこ重要かな?

:涼ちゃんはそこがポイントだと思ってる?

 

「個人的には思ってます。超人化の恩恵として閃くスキルや、マテリアルで習得できるスキルとは別に我流――とまでいかなくても、独自ルートで何らかのスキルを習得しているコト。

 鳴鐘さんの葬一刃の我流派生である二連。ディアさんは魔法剣とそこから派生した魔法剣スキル。

 ディアさんの魔法剣は完全我流ではないものの、閃きやアイテムによる習得ではなく、思いつきで無理矢理発動して、それを使い続けたコトでスキルに昇華させてますからね。我流といえば我流です。

 個人的にはこれらが、必須条件なんじゃないかな……などと考えています」

 

:我流の動きをどうやってスキルに昇華してるんだろうな?

:だとしたら条件がそうとう難しいぞ

:さりげに鳴鐘の名前出しちゃってて草

:まぁ別にだいぶバレてるから名バレしてもいいんだけどな

:やっぱちょいちょい本人がコメしてるだろw

 

「その上で一番気になるのは、二人が見たっていう海と扉ですね」

 

:それなー

:意識が海に沈んで底にある扉を見るって意味がわからんよね

:ディアちゃんに関しては時間が止まった感じがしたとまで言ってるし

:一種のゾーンか?

:扉見つけても開かない可能性があったりするのかな?

:見つけても開かない扉なら開けるしかねぇなドリルとかで

:どうやってドリル持ち込むんだよw

 

「二人とも共通して見ているので、ただの無意識から生まれたイメージではないような気がしますし……」

 

 涼もコメント欄も悩み出した時――ふいに、新しい声がこの場へと現れた。

 

「なかなか良いところまで考察しておるではないか」

「え?」

 

 声のした方へ向けて涼の顔と、カメラが向く。

 するとそこには――

 

「久しぶりだな。リョウよ」

 

:エ、エンちゃんだー!?

:えんどりーぱー!?

:アイエエエ!エンドリーパー!?エンドリーパー!?ナンデ!?1?

:エンドリーパーキター!!!!!

 

「その海の名を想海域(ソウカイイキ)。その扉の名を想海門(ソウカイモン)と――我は呼んでいるぞ」

 

 ――ダンジョンの死神の姿があり、登場と同時に爆弾発言を落としやがるのだった。

 





【Idle Talk】
 涼が東京美食倶楽部を良く探索するというのを知ってから、積極的に赴く散歩コースとして設定しているのがこの死神である。

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