スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

11 / 153
涼 と 魔物 と 寝顔配信

 

「あ、そうだ。

 探索前にみなさんに言っておかないと」

 

 エントランスをでてフロア1を歩き始めた涼が、自分の後を付いてくるドローンに話しかける。

 

 何か行動を起こす時や、事前に言っておいた方が誤解なく視聴して貰えると判断した物事は、ちゃんと口に出して視聴者に伝えろ――と、香から口を酸っぱく言われている。

 

 これはその実践を兼ねての前置きだ。

 

「今回の探索においては極力戦闘を避けます。

 臨戦態勢になっているモンスターって眠らせても可愛くないので」

 

 そう言って、涼はゆっくりと中腰になっていく。

 それから岩陰から様子を伺い、モンスターの配置などを確認。

 

「モカP。ドローンをもうちょっとボクに近づけられる?」

 

 言葉の意味を理解してくれたのだろう、ややしてドローンが涼のところへと寄っていく。

 

「こういう岩陰に隠れる時とか、オートのせいで岩陰の外に出っぱなしとかになられると困るから、ちまちま補正して欲しい」

 

 だいぶ涼の顔によるドローン。

 涼は全くコメントを意識が向いていないのだが、コメント欄はわりと盛り上がっていた。

 

:ふつくしい

:モカピーさんとやらもっと寄せて!

:え? 涼ちゃん美人じゃね?

:どあっぷもっとよろ

:うあ 美人

 

 とはいえ、顔ばかりを映していても代わり映えしないので、適度なところでドローンは向きを変えていく。

 

「それじゃあ、シザーマンに気づかれないように階段まで行きたいと思います。しばらくお喋り止めますね」

 

 そうして涼は気配を消すスキルを発動させると、スルスルと滑るように動き始めた。

 その後ろを完璧な位置取りでドローンが追従していく。

 

 本当にそのまま階段まで到達する涼。

 

「はい。とりあえずフロア1の階段まで到着です」

 

:なんだこれ

:すご

:真後ろ通ったやん

:うせやんwwww

:マジで気づかれずに通り過ぎてった

:は?マ?

:え?待って?何で襲われないの?

:戦いは避けるってレベルじゃないぞ

 

「では、同じ要領でシャークダイルのいるところまで進んで行きますね。

 今の通り、スニーキング中は喋れないので、無音になっちゃうの申し訳ないんですけど」

 

:いやいやいやいや

:コラでなく?

:すごいコトしてる自覚ある?

:見応えある無音だ

 

 同時接続数や、コメントの勢いが徐々に増しているのだが、涼は気にせず――というよりも、コメントを全く見ていないだけだが――探索を続けるのだった。

 

 もちろん、その裏にはWarbler(ワーブラー)ではっちゃけ実況している大角ディアの影響が強い。

 

 涼はそれを知らずにいたが、外でドローンの状態を常に気にしつつも、Warbler(ワーブラー)を見ている香は少し呆れていた。

 白凪や、事務所からの怒られ直前のようにしか見えないのだ。

 

 とはいえ、そのおかげで人は増えているので、少しくらいのサービスはしておこう――と、香はドローンを操作して少しの間だけ涼の横顔のアップを撮る時間を作るのだった。

 

 その都度、Warbler《ワーブラー》でディアが尊い悲鳴を上げているので、よい宣伝になってくれる。

 

 香からすると、どこでそんなに涼へハマる要素があったのかが不明なのだが。

 ディア本人は楽しそうなので気にしないでおくことにした。

 彼女に怒られが発生しても、涼と香のせいにはならないだろうから、それでいい。

 

 

 

「着きました。フロア6です」

 

:はっやw

:麗しの横顔見てたら着いてた

:ワブでのディアちゃんがやばいw

:ディアちゃんハイテンションすぎるww

:すご技と横顔がどっちもすごい

:マジで一戦もしなかったな

:RTAかな?

:すごい無音探索配信してると聞いて

:ディアちゃんに応援されて調子乗るなよ

:↑もうただのファンなんだよなww

:つかコイツ男?女?

:もう変なの湧いてきてるのか

:↑可愛いからどっちでもいい

:涼ちゃんがコメント拾わんから好き勝手やってるなお前ら

:配信コメなんてこんなもんだろ

:↑こんな可愛い子が女の子なワケないだろいいkげんにしろ

 

 コメント欄のボルテージがだんだん高まっているのだが、涼本人はやっぱり気づかずに、そのままフロア6のシャークダイルの生息地まで向かっていく。

 

「あ、いました。シャークダイル・サワードです」

 

 涼の示す先にドローンがカメラを向ける。

 

「こちらが何かする前にすでに寝てますね。

 普段は遊んでいるところを遠距離から眠らせるのですが、好都合です。

 ちなみに、モンスターの自然な寝顔はレア中のレアです」

 

:ほえー

:涼ちゃんかわいい

:腹を上にして寝るんかあいつ

:確かにちょっと可愛く見える

:寝顔見てテンションあがってるぽい涼ちんかわいい

:なにげにこの配信すごない?

 

「このまま接近して撮影したいところですが……シャークダイルは気配に敏感ですからね。

 本当は完璧に自然な寝顔を見たいですが、今回は安全マージンをとります。ドローンもいますしね」

 

:ドローンがいるとダメなんか?

:静音型でも音がするからなぁ

:空気の振動とかもあるかもsれん

:そこは涼ちゃん次第で

 

 それから涼は、シャークダイルに気づかれないギリギリまで接近し、人差し指を伸ばした状態で右手を掲げた。

 

「スキル:射程強化(ハイスナイプ)

 

 よく使うスキルの一つを発動。

 涼としてはなんてことのないスキルだが、視聴していたリスナーたちは少々違った。

 

:ハイスナイプ?

:技の射程伸ばして性能下げるやつだ

:使い道ないスキルのランキング上位

 

 困惑するコメントなど気にもとめず、涼は続けてスキルを発動させる。

 

魔技(ブレス):スランバーウェイブ」

 

 涼が掲げた手の指先から、紫色をした半透明のリングが連なったような波動が放たれる。

 

 それは眠っているシャークダイルを包み込み、柔らかく消えていく。

 

「よし。眠りを深くしました。

 これで、多少撫でたくらいじゃ起きないはずです」

 

:え?

:どういうコト?

:届くの?

:またも産廃スキルww

 

 戸惑うコメント欄だが、涼はコメント欄を見て無かったので気にせずにシャークダイルの元へと向かう。

 

 そしてシャークダイルの元までいくと、ドローンに装備されているマイクに口を近づけた。

 その上で出来るだけ小声で告げる。

 

「これが、シャークダイルの寝顔です」

 

 言いながら、ドローンのカメラがシャークダイルの寝顔をベストで見られる位置へと誘導する。

 

:んんん!!!

:やっば!!

:これは……

:AMSRありがたい

:涼ちゃんウィスパーボイスやば

:mottmotto

:ヘッドホン勢ワイ無事尊死

:ありがてぇありがてぇ

 

 だけど、コメント欄はシャークダイルの寝顔よりその直前の涼の声にやられてそれ一色になっている。

 ついでにWarbler(ワーブラー)では、涼のウィスパーボイスを聞くなり、大角ディアも尊死していた。

 

 




【Idle Talk】
 ディアの荒ぶるワブに白凪さんが現在進行形で頭を抱えている
 事務所ルベライト・スタジオは二人の様子をめっちゃ笑いながら見ている
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。