スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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香 と 試し と 配信 と

 

:正直状況が分からん

:ディアちゃんと鳴鐘とメガネの人が七首ガチョウと戦ってる

:そりゃあ見れば分かるんだけどさ

:いつもと違って画角が悪い

:シロナさんやモカP、カオルくんじゃないからだろうな

:その辺りは別格過ぎるって 戦いながら撮影できるタイプなんだぞ

:涼ちゃんねるの方も緊急配信するっぽいぞ 枠できてる

:カメラに映ってないけど涼ちゃんもいるのか

:これまたプライベートからイレギュラーパターン?

:その可能性が高いだろうな

:涼ちゃんねると2窓すっか

:向こうはまだダンジョンの入り口みたいだな

:あれじゃあ涼ちゃんそっち?

:いや涼ちゃんねるの方はシロナさん、ココアちゃん、カオルくん

:どういうパーティだよ

:カオルくん撮影だから向こうは安定してるな

:誰だか知らんおっさんの撮影に期待するな

:マジでカメラマンのおっさん誰?

:チラっと映った感じ政治家の良轟に似てた気がする

:それこそ何でこんなところにいるんだよ?

 

「うむ。視聴者諸君。撮影者は良轟殿で会っている。

 ちなみに、儂は良轟殿の護衛である和戸 一成だ。よろしく頼む」

 

:え?

:グラマスなにやってんすか!?

:ちょ

:会長じゃんッ!?

:グラマス!?なんでいるの!?

:グラマス?

:は?

:探索者協会長 探協の最高権力者

:グランドマスター ギルドで一番偉い人

:え? え? 何でいるの? てか護衛??

 

 突如、横から聞こえてきた声に、ディアーズ・キッチンの視聴者たちが大いに戸惑っている。

 そのコメントを見ながら、一成は軽く説明を口にした。

 

「良轟殿がダンジョンの空気に触れてみたいというのでな。

 マザーグースと戦っている面々と共に彼を護衛をしながら、このダンジョンを散歩していたのだ」

 

:マジで良轟なのかよ

:散歩中のイレギュラーって・・・

:ダンジョン散歩中にあの鶏肉と遭遇する確率ってどれくらい?

:ガチャを単発で回してピックアップ最高レア引き当てるのと同じくらいじゃね?

:マザーグースっていうんだあの鶏肉

:ちゃんと迷宮気に掛けてたんだなこいつ

:すでに鶏肉扱いなんなの?ww

:鶏肉呼ばわりされてるの草

:でもディアちゃんと涼が揃ってるんだろ?

:なるほど鶏肉の名前になるなマザーグース

:鶏肉になる運命が確定扱いなんな笑

 

「和戸会長。この暢気な言葉の群れはなんだ?」

「コメントと言ってな。視聴者たちがリアルタイムで打ち込んでるものだ」

「……リアルタイムで……? この光景を見てるにしては暢気すぎるのではないか!?」

 

 良轟の言う通り、マザーグースを相手に守たちは戦っている。

 だが、その光景というのも、視聴者たちからすれば良くあるものだ。

 

:いやでも俺ら視聴者じゃあ何も出来ないし

:意見や手助けを求められたらコメントで仕事しますけども

:基本無責任に囃し立てるのが我らの役目

:然り 所詮我らは有象無象

:お前ら何キャラなん?

:情報収集が必要そうなモンスターでもないしな

:一応ギルドのモンスター登録に存在あるけど詳細不明って扱いだぞ

:探索者以外の視聴者も多いからこんなもんこんなもん

:名前もついてないっぽいのでマザーグースは今つけられた感じ

:あと涼ちゃんとディアちゃんの視聴者は二人に飼い慣らされてるという面もある

:二人のイレギュラー遭遇率高いもんなーwww

:番組的には日常茶飯事なんスよ

 

「本気で飼い慣らされてるな視聴者ッ!?」

 

:良轟さんツッコミかまけてカメラがブレてますよー

:カメラマンちゃんとしてくださーい

 

「こいつらァ……!?」

「落ち着いてください良轟殿。彼らはあくまで野次馬のようなモノなので。

 ただ撮影はちゃんとお願いしますよ」

「和戸会長まで……」

 

 なだめているのか煽っているのか分からない一成の言葉に、良轟は何とも言えない表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 一方で涼ちゃんねる枠――

 

:原宿の上級かここ?

:よりによってなんでここで散歩してんの?

:有名な場所なの?

:高難易度ダンジョンとしてな 散歩で来るような場所じゃない

:関東最高難易度とも言われてる場所

:関東最高難易度って・・・

:マジで散歩でくるような場所じゃないやん

 

「いや~~~、視聴者諸君の言う通りなんだけどさ~~!

 そこは、ほら~~! 政治的なあれやこれとかあったんだよね~~!!」

 

 スマホに外付けした画面に流れるコメントを見ながら、心愛がそう反応する。

 

:それ言っちゃっていいやつ?

:じゃあ涼ちゃんたちはそれに巻き込まれたって感じか

 

「一応補足しておきますと、ギルドからの正式指名依頼ですよ?」

「単に原宿支部にいた守たちを指名した突発のやつだけどね~~」

「……心愛さん、実はだいぶ機嫌悪いです?」

「そりゃあね~~! ワガママで迷惑掛けられてるだけでもアレなのに~~、イレギュラー対応だぜ~~??」

「イレギュラーに関しては誰が悪いというワケでもないと思いますが」

「そこに関しちゃ~~、涼ちゃんとディアちゃんが悪くね~~??」

「…………」

 

:無言で視線逸らしてて草

:シロナさん否定してあげてww

:まぁでも二人ともイレギュラーに愛されている気はする笑

:確かに コラボとかでダンジョン潜るならイラギュラー期待しちゃうし

:分かるw

:涼ちゃんとディアちゃんはそれらを上手く対応するだろうって安心感もあるし

 

「……っと、お喋り終わり~~! 敵ッ!」

 

 妙な空気も、心愛のその一言で霧散する。

 三人は即座に臨戦モードへと移行した。

 

 カメラがモンスターの方へと向く。

 

:なにあのマッチョゴブリン

:パワーゴブリンだな

:そこらのザコゴブリンとは雲泥の差の強敵

:近くにアーチャー系ゴブや魔法使い系ゴブが隠れてる可能性あるから面倒

:原宿上級は道も複雑ながら腕も頭も良いゴブリンたちが連携して襲ってくるから

:一体一体が下級ダンジョンのボス張れそうなくらい強いもんなここのゴブリン

:やばすぎるじゃんそれ

:散歩コースに選ぶんじゃないよそんな場所

 

「シロナさん。一時的に撮影を任せても」

「構いませんが……大丈夫ですか?」

「それを試したいんです」

 

:カオルくん出撃?

:え?でもカオルって超人適性ないんじゃ…

:どういうこと?戦えるの??

 

 カメラが手渡される際に、画面が大きくブレる。

 それから、スーツ姿の男性の背中が映された。

 

:スーツ……男子ッ!!

:カオルくんのスーツえっっっっ

:高校生の出して良い色気じゃない

:スーツ似合ってるのはいいけど戦闘マジどうなん?

 

「心愛さん。フォローお願いします」

「まっかせて~~!」

 

 力強い心愛の声に小さく笑うと、香は全身にチカラを込めた。

 

「それじゃあ……試してみますかねッ!」

 

:踏み込みはやッ!?

:これで超人化してないってマ?

 

 あっという間にパワーゴブリンの懐に入ると、コンパクトな動作でアッパーカット気味のボディブローを繰り出す。

 

 ドン――という大きな音が響くも、脇腹を打たれたパワーゴブリンは微動だにしない。

 

「ちッ!」

 

 思ってた以上に効果がないことに舌打ちしながら、香はパワーゴブリンの反撃を躱しつつ飛び退いた。

 

:カオルくんは逸般人(いっぱんじん)枠の動きするんだけどなぁ

:超人化が存在しない世界なら超人扱いされる運動能力持ちではある

:だけど上位ダンジョンの上位モンスターには通用しないのか

 

「当たらねぇよッ!」

 

 下がったところに、矢が飛んでくるが、カオルはそれを見切って(やじり)に触れないようにキャッチする。

 

「返すぜッ!」

 

 即座にそれを飛んできた方向へと投げ返すも、特に手応えはなかった。

 

:これで超人化してないってマ?????

:素で飛んでくる矢をキャッチしてんのやばいんだよなぁ

:どこから飛んできたか見切って返してるのもやばい

:そしてそれが通用してないのもやばい

:改めてダンジョンってやっべぇのな

 

「カオルく~~ん。交代する?」

「もう一手試させてください。それがダメながら下がります」

「おっけ~~」

 

 急ぐ必要があるのは分かっている。

 だけど、香はここを試す良いチャンスだと思ったのだ。

 

 香はもう一度、パワーゴブリンへ向けて踏み込んでいく。

 飛んでくる矢を躱して、パワーゴブリンの振り回す腕を躱して、その懐へ。

 

 父より学んでいる武術の中でも、特殊な打撃の放ち方。

 古くは鎧を着込んだ武者に対して、その内側にある肉体へとダメージを与える手段として考案された技。

 

 時にそれは、分厚い筋肉の壁を越えて、内臓を揺らす技としても応用できる。

 

「おらァッ!?」

 

 拳を打ち込む。

 手応えはあった。分厚く堅牢な筋肉の鎧を無視して、その内臓へと衝撃を伝えた実感がある。

 

「ゴブ……フッ?!」

 

 パワーゴブリンが吐血する。

 

:効いた!?

:マジか!!

:すげぇ!!!

 

 ――だが、パワーゴブリンはふらついた身体をすぐに立て直すと、拳を握って香に向けて振り下ろした。

 

 型もなにもない。

 ただ雑に、上から下へと振り下ろすだけの動き。

 

「……ッ!」

 

 それだけでも充分に脅威。

 香はそれを大きく後ろに飛ぶことで(かわ)すと、大きく嘆息した。

 

 自分の持てる最大の奥義を持ってしても、相手を戦闘不能にするのは不可能。

 時間を掛ければ可能だろうが、今はそんなのんびりしている場合でもない。

 

 故に、香は己で己に冷徹な判断を下す。

 

「心愛さんお願いします。

 白凪さん、カメラありがとうございました」

 

 交代した二人がパワーゴブリンと、後ろに控えていたアーチャーを瞬く間に倒すのを見ながら、香は改めて嘆息した。

 

「……はぁ、涼と一緒に深層に潜ってみたいってのは、叶わねぇ夢なのかね……」

 

 ほとんど無意識。

 自分の心境を、無自覚に吐露していた。

 

:カオルくん…

:そういうことかぁ

:せつねぇなぁ

 

 コメント欄を見て、香はそれに気がついた。

 

「……っと、今の独り言は聞かなかったコトに」

 

:おk

:しかたねぇなぁ

 

 そうこうしながら三人が涼たちを探しながら進んでいると、気になるコメントが流れてくる。

 

:ちゃんねるのメールアドレスに地図送った

:守たちの戦ってる場所も何となく分かったので位置もメモしておいた

 

「助かります」

 

 言われた通り、涼ちゃんねるで公開しているメールアドレスに、地図データが添付されたものが届いている。

 

 送り主は――

 

「シーカーズ・テイルの芹逢(セリア)さん。ありがとうございます」

「セリア姉ありがと~~!!」

 

 それから三人で地図を見る。

 

「まだ向こうは終わってないですよね?」

 

:終わってないね

:意外とタフというか攻撃が通しづらい感じかな

:カンがいいのか涼ちんの暗殺系スキルも成功してない

 

 コメント欄からの報告に、三人はうなずきあった。

 

「急ぎましょう」

「だね~~、ちょ~~っと手強そうっぽし?」

「手が増えれば立てられる作戦も増えるかもですしね」

 

 




 前回やり忘れてたので今回は前回の技を解説

【Skill Talk】
《グラップ・パリイ》
 防御系初級技。
 各種武具のスキルに同系統の技が存在する。これは格闘系。
 相手の攻撃を拳や蹴りで弾いて防ぐ。
 防御の構えから、小さく手や足を振ることで発動する。
 馴れてくると初動の構えはスキップできる。
 攻撃を弾くタイミング次第では相手に大きな隙を作り出すことができる。

 ゲームになぞらえ、完璧なタイミングを成功させた時は使用武具問わずジャストパリイあるいはジャスパと呼ばれたりもする。

 ただゲームならいざ知らず現実としてはミスった時にダメージを受けてしまう技というのは使ってられないとされており、使い手は多くない。


《黒豪真撃/コクゴウシンゲキ》
 拳系武技の初級技。闇属性。
 炎のように揺らめく黒いオーラを纏ってストレートパンチを繰り出す。
 シンプルに威力が強化されたストレートパンチである。
 ただ属性持ちの為、耐性のある相手には減衰し、苦手な相手には威力が増す。
 湊の魔法剣とはことなり、こちらは最初から属性が付与された攻撃。
 シンプルなストレートやアッパーを繰り出す武技には、なぜか属性違いのバリエージョンが多数存在している。
 そんな中で旋は、現役当時使い手が少なかった闇属性をメインに選んでいた。
 もちろん闇属性の効かない相手用の技の習得にも余念はない。
 

《黒豪翔破・散/コクゴウショウハ・サン》
 拳系武技の中級技。その我流応用版。つまりは旋のオリジン。
 本来の黒豪翔破は、バレーボールほどの大きさの闇属性のオーラの塊を作り出して投げつける技である。
 旋は、本来投げるべきオーラボールに、黒豪真撃をぶつけて砕くことでショットガンのように解き放つ手段を編み出した。
 射程は短くなったが横の射角は広い。
 一発一発の威力は小さいのだが、至近距離で全弾ヒットした時の威力は、通常のものよりも大きい。
 
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