スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と 寝顔 と カマキリと

 

 

 特撮ドラマに使われていそうな石切場のような場所。

 

「うんうん。思ってたより面白い顔かも!」

 

 そんな場所で中性的な容姿をした少年が、スマホを構えてややテンション高めに小声で騒ぎながら写真を撮りまくっている。

 

 カメラの先にいるのは奇妙な生き物。

 ダンジョンモンスターのサニー・スマイリーだ。

 

 サイズとしては少年――兎塚(トツカ) (リョウ)と同じくらい。

 見た目はヒマワリの花にそっくりで、本来タネが詰まってる部分は大黒様を思わせる顔になっているのだが――口だけは三日月型のギザ歯だ。

 

 花びら部分は硬質的で、刃物ほど鋭くはないものの、薄くて硬いので当たると痛いどころではすまない。

 普段は宙に浮いていて、くるくると自分を回転させながら、これをぶつけるように体当たりしてくるのが基本スタイルのモンスターである。

 

 そんなモンスターが、地面を転がるようにしながら、すよすよと気持ちよさそうに眠っている。

 その寝顔を、涼はテンション高めに撮影しているのだ。

 

:寝てるのに口だけはいつもどおりか

:キモイ系だと思うのに寝顔は可愛いかも?とか思っちゃう寝顔マジック

:わかりやすく歯ぎしりしてる笑

 

 本来、茎が繋がっているだろう背面には特に何もなく、ただ鋭く大きいトゲが一本生えている。

 このトゲを地面に向けて、独楽(こま)のように回転しながら攻撃してくることもあり、その技を探索者や配信リスナーたちは『芸コマ』などと呼称したりもしている。

 

 馴れてしまえば手強くはないのだが、馴れないとその様々なスピンアタックを対処しきれずに大怪我してしまう。ある意味で初心者キラーとも言われているモンスターである。

 

:キモカワ系としてグッズ化したら売れる?

:↑うーん微妙

 

 そして、涼はそんな自分の様子を配信していた。

 今は表示を消しているものの、涼を撮影しているドローンの頭上には、そういったコメントが表示される。

 

 涼が見てなくとも、配信先のサイトのコメント欄にはコメントが流れており、視聴者たちが好き勝手にコメントを送っていた。

 

「……っと、堪能してましたがそろそろ眠りスキル(スランバー)の効果時間が切れそうですね」

 

 ドローンのマイクの近くでそう囁くと、涼は名残惜しみつつも、即座に眠っているサニー・スマイリーから離れていく。

 

:ささやきあり!

:ウェスパーボイス最高!

:そろそろマジでシチュボくれ!

 

 そんなこんなで涼はその場から離れると、周囲にモンスターの気配がないのを確認してドローンの頭部のスイッチに触れる。

 

 すると、ホロウィンドウが表示されてそこにコメントが流れていく。

 

「さて。今日の目的であるサニー・スマイリーの寝顔の撮影ができましたので、今日はこの辺りでお開きに……」

 

 涼が落ち着いた場所で〆の挨拶をしようとした矢先だ。

 

「ちょッ、キミたち! そんな無茶をしたら……ッ!」

 

 女性が誰かを制止するような声が聞こえてきた。

 

「……配信したまま助けにいった方がいいですかね?」

 

:うーん判断に困る

:とりあえず言うこと聞かないのがいるのは間違いない

:キミたちって言ってたし複数系か

 

「放置して制止した女性の方が大きい被害を受けてたりすると寝覚め悪いですね」

 

:制止を振り切った方へはドライで草

 

「状況は不明ですけど、あんな大きい声だすんです。それなりの状況じゃないですか。

 それでケガしてたら自業自得ですけど、ちゃんと注意してる側がケガするのって理不尽じゃないです?」

 

 コメントへそう返しながら、涼はドローンのスイッチに触れてコメントを表示しているホロウィンドウを消した。

 

「じゃあ、ちょっと行きます」

 

 視聴者へとそう宣言すると、涼はそろそろと動きだした。

 

 

 

 複数のサニー・スマイリーに囲まれた中心から、女性の声が響く。

 

「キミたちッ、どう収集付ける気ッ!?」

 

 現場へとやってくると、涼の顔見知りである女性が(まなじり)を釣り上げてプリプリ怒っている。

 

 周囲には駆け出しっぽい探索者が三人ほどいて、自分たちのやらかしに怯えてしまっているようだ。

 

:あれ?カママたん?

:ほんとだ

:おちゃらけ三人娘でセットのイメージあるから他の人といるの珍しい

 

「カママさん!」

「え? 涼ちゃんくん!? やったッ!」

 

 灯籠(トウロウ)カママ。

 直接関わることはすくない相手ながら、同じダンジョン配信者として、小さな共演は複数回あるので知った相手だ。

 

 今日はプライベートなのか、メイクも最小限で、本格的な探索者装備という感じだった。

 

「討伐より脱出優先の方がいいですかね?」

「うん! お願い!」

 

:言葉少なに目的が定まる頼もしさよ

:中央の三人組が戦犯ぽいな

:その戦犯へのお説教も生き延びてこそだしな

:まずは切り抜けないと

 

 涼はコメントが見えていなが、考えていることはコメントと同様だ。

 色々と思うことはあれど、全ては生き延びてからでないと始まらない。

 

「邪魔だから縮こまってるならそのまま縮こまってて」

 

 配信中では聞けないような冷たい声でカママはそう告げると、相棒であろうシンプルな槍を構えた。

 カママの身長と同じくらいの長さの槍だ。それを危なげなく振るっているので、相当遣い込んでいるのが分かる。

 

:カマたん長モノだから近くに足手まといがいると立ち回り辛そう

:だから縮こまってろって言ってるんだろうな

:シリアスカマたんの声いいぞー

:もっと聞きたいがシチュがシチュなんだよなぁ

 

「それッ!」

 

 カママが槍を振るい近寄ってくるサニー・スマイリーを牽制(けんせい)する。

 その隙に涼は、牽制に動きを止めたサニー・スマイリーの一体の背面に飛び乗った。

 

 乗られたサニー・スマイリーは驚いた様子を見せるが、涼は慌てず騒がず。

 足を掛けたサニー・スマイリーの背をさらに蹴って飛び上がると、空中で投げナイフを複数本構えた。

 

「アーツ:パラライゾス」

 

 スキル宣言と同時に、ナイフは黄色くバチバチと弾けるオーラに覆われた。

 

()ッ!」

 

 呼気と共に空中から複数のナイフを投擲(とうてき)

 カママたちの背後から近寄ろうとしているサニー・スマイリーの顔に突き刺さる。

 

 顔以外の部分が硬いサニー・スマイリーだが、正面の顔は意外と脆いし、状態異常に対する耐性は低めなのだ。

 

 顔にナイフの刺さった三体のサニー・スマイリーはマヒのオーラに覆われてビクビクと身体を震わせながら動きを止める。

 

「カママさん!」

「OK! ほらキミたちッ、そっちから逃げるッ!!」

 

 恐らくは中学生らしき三人組は、カママに示された場所を見て、僅かに難色をみせた。

 マヒしているサニー・スマイリーの隙間を進むのが恐いのだろう。しかし、今はここでそんなこおとを言われても困るのだ。

 

 涼は着地と同時に、一番ガタイの良い少年のお尻を軽く蹴飛ばす。

 

「とっとと行けッ! 邪魔だッ! 死にたいのかッ! 巻き込んだカママさんを殺したいのかッ!」

 

 同時に鋭く告げる。

 決して大きい声ではなかったものの、殺気混じりの怒声は中学生たちに堪えたようだ。

 涙目になりながらもうなずいて、彼らはマヒしたサニー・スマイリーたちの隙間から包囲網を抜け出していく。

 

「カママさん、ボクらも」

「うん!」

 

 二人も同じように隙間を抜けたあと、抜けてすぐのところに腰を下ろそうとしている三人へ鋭く声を掛ける。

 

「もっと離れなさいってば!」

「そこで休むのがどれだけ危険か分からないのか!」

 

:普段は聞けない涼ちゃんカマちゃんのガチのお叱りボイス

:ファン的には嬉しいけどシチュがダメすぎる

:夏休みキッズはこれだから・・・

:叱られて当然なんだよなぁ……

:どうすればあそこで休めると思えるのか

:探索者でないオレすらアレはないと思うぞ

 

 疲れてるのに――と文句を言いながら離れていく三人を見て、涼とカママは大きく息を吐いた。

 

「マヒしてるの含めて七匹ですけど、イケます?」

「サニー・スマイリーならね。あ、資格更新用のノルマ依頼で三体分素材欲しいんで協力してくれる?」

「わかりました。なら、マヒしてるのは後回しにして、他を全部片付けましょうか」

「さっすが涼ちゃんくん! 分かってるぅ!」

 

 嬉しそうに声を上げて、カママは槍を肩に乗せるように構えた。

 

「アーツ:奪命鎌刃(ダツメイレンジン)

 

 スキル宣言と同時に、槍の先端にオーラで作られた鎌の刃が生えてくる。

 

「命刈り取るカマキリこと灯籠(トウロウ)カママ! ネタキャラ配信者ってだけじゃないとこ、涼ちゃんくんのところのリスナーに見せてやるんだからッ!」

「あ、カママさんってわりとそこを気にしてたんですね」

「涼ちゃんくんと私の温度差ヒドくね!?」

 

 涼の淡々とした興味なさげなリアクションに、カママは思わず涙目になるのだった。

 

 

 




【Skill Talk】


《奪命鎌刃/ダツメイレンジン》:
 汎用系スキルの一つであるシックルクリエイトをカママが使い込んだことで発現したもの。
 シックルクリエイトは、オーラウェポン系スキルとも呼ばれ、本来は武器をロストした時などの緊急用に用いられるウェポンクリエイトスキルの一つ。

 ウェポンクリエイトスキルは基本的に、スキルを使い込むほど精製武装の性能が高まり、発動コストが下がる。
 ただ、わざわざスキルで武器を精製するくらいなら、必要な武器を持ち歩いた方が無駄なマナを使わなくて済むという理由で、使い手は少ない。

 カママは本来、鎌がメインで槍がサブなのだが、自身のSAI容量が小さいことや、鎌を持ち歩くのが面倒だからという理由で、本来適性としてはサブである槍を主武装としている。
 とはいえ鎌適性を持ち腐れするのももったいないということで、シックルクリエイトを使って槍に鎌刃を付与して戦いだした。
 それを使い込んでいるうちに、ただのシックルクリエイトではなく、特殊効果が付与された進化版シックルクリエイトが発現。それが、奪命鎌刃(ダツメイレンジン)である。

 本来のシックルクリエイトよりも性能の良くコストの低い鎌刃を作り出すだけでなく、低確率でダメージを与えた相手のマナを吸収&低確率で即死付与&低確率で呪い付与という三つの効果を持っている。
 この鎌刃を用いた鎌スキルには、同様の三大効果が付く。
 その為、広範囲攻などに吸魔、即死、呪いがプラスされると思えばシンプルな鎌スキル強化技とも言える。

 欠点があるとすれば、本来のコストとは別にウェポンクリエイト共通の発動と維持にマナを消費することだろう。
 それも吸魔の効果を思えば、以外と微々たるものかもしれない。
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