スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と まろ煮 と 案件 と

 

 

 縦回転しながら襲ってくるサニー・スマイリーは、顔がある方へと避けて側面攻撃で叩く。

 背中のトゲを地面に向けて独楽のように回転しながらランダム軌道での体当たり――通称芸コマをしてくる時は、素直に距離を離す。

 

 芸コマに対しては、自信があるなら、涼のように大きく垂直ジャンプして、上方から顔へ攻撃をしかけるという手段もある。

 

 なんであれ、とにかく柔らかい顔を叩く。

 それがサニー・スマイリー戦では重要な手段だ。

 

 逆に言うと顔以外は非常に硬く、ダメージが通しづらい。

 単純に物理攻撃だけでなく、魔法(ブレス)スキルへの耐性も高いので、顔を狙うのは必須だ。

 

 涼とカママ。一人二殺。

 四匹のサニー・スマイリーはほぼ瞬殺といっていいレベルで、二人に倒された。

 

 残った三匹はまだマヒでビクビクと震えているので、決着はついたも同然だった。

 

「助かったよ、涼ちゃんくん。

 見ての通りで、私のスタイルって分かってる人以外と組むと、どうにもねー」

「そのオーラウェポンも、バステ付与が付いてるから、フレンドリーファイア恐いですもんね」

「そうなの。だから、ああいう素人集団に巻き込まれた時、対応に困っちゃって」

 

:雑談しながら振り下ろされる鎌

:マヒしてビクビクしてる笑顔が白目を剥いて精気を失うホラー

:呪いに犯されて呪・怨・死の文字が全身に浮かびあがって(うごめ)いてるのもホラー

:一匹ずつ死んでいく・・・

:可愛い顔してカママちゃんのスキル恐いな

 

「SAIが小さいから、一番上のひとまわり大きい花びら一枚だけとって、それを三枚かなぁ……」

「あ、ボクのSAIの容量大きいんで、収納しましょうか?

 どうせこれから引き上げるところなんで、一緒にギルド行きましょう」

「マジで!? 涼ちゃんくんにでっかいラブ!」

 

:SAIの容量小さいとこういう時に困るのよな

:キャリー手伝ってくれるのマジありがたいんだよ

 

 投げキスするほど喜ぶんだ――と思いながら、涼は三体と、まだモヤになってないサニー・スマイリーを全部回収した。

 

「五匹持って帰れば、換金したのも山分けいけますね」

「え? いいの? 巻き込んだのこっちだよ?」

「でも討伐したのは半々ですよね? 構いませんよ」

「ありがとー! さらにでっかいラブ!」

 

:軽々投げキスして平気?

:こいつらの花びらやガクは加工して武具にすると強いからな

:カママちゃんはいつものコトなのでコーンも安心

:助けてくれた人に誰にでもやるしね

:おかげで良い値段で買い取ってくれるんだよね

:探索者じゃないオレの為に誰かゲームで例えてくれ

:皮の鎧+ちょいくらいの値段で鎖帷子(くさりかたびら)とか鱗の鎧とか買えるイメージ

:わかるようなわからんような

:安くて強いは駆け出しには助かるよな

:サニスマ系装備も買えないような探索者はこのダンジョンに来るべきではないとも言える

 

「途中であの子たちを拾ってギルドにいこう」

「ですね。このままダンジョンさまよわれても迷惑ですし」

 

 そうして二人は歩き出し、ふとカママが気づいた。

 

「ところで涼ちゃんくん。配信したままギルド行くの?」

「え? あ。忘れてた」

 

:草

:忘れられてた!w

:まぁ涼ちゃんだし

:知ってた笑

 

「カママさん。先に行って、三人組を捕まえといて貰えます?」

「りょーかい。それじゃあチキンの皆さん、お世話になりましたー」

 

 ひらひらと手を振って、カママは先へと進んでいく。

 

:おつかれさま~

:カママちゃんもおつかれ~

 

 涼はドローンに向き直ると、小さく一礼した。

 

「毎度のようにドタバタからの終了になってしまって申し訳ありませんが、今日の配信はここで終了とさせて頂きます」

 

:最近、棒じゃなくなってきて寂しい

:すっかり馴れてきちゃって

 

「まぁ流石に〆の挨拶くらいは馴れますよ」

 

:そりゃあそうか

:人は成長するものなんだなぁ

 

「そんなワケで本日はここまでです。

 チャンネル登録とか、Warbler(ワーブラー)のフォローとか、なんかそういうヤツ。みなさんよろしくお願いします」

 

:結局棒じゃねーか!

:どうしてここは棒なんだよ!!

:定型文ほんとダメだな!!

 

「ではまた次回に会いましょう」

 

 

 ===この配信は終了しました===

 

 

「こっからはプライベート撮影って感じで、モカPよろしく」

 

 ドローンにそう告げると、涼は先行したカママを追いかける。

 素人トリオが色々とゴネて面倒ごとになった時の証拠にするのだ。

 

 

 そうして、キッズを無事にギルドへと送り届け、ついでに回収したサニー・スマイリーをお金に換え、さらにはカママのノルマ依頼も完遂。

 特にドローンの証拠映像が必要な場面は発生せず、涼もカママも安堵の息を吐くのだった。

 

 

  ・

  ・

  ・

 

 

 数日後。

 

 チキンラーメン・1P鶏(ワンパンチ)。テーブル席。

 

「えーっとチキンラーメンの特級セット一つと、鶏のまろ煮一つ」

「特級セットにはまろ煮がつきますよ」

「はい知ってます。なのでまろ煮一つ」

「???」

 

 鶏のまろ煮はこのお店の人気メニューの一つだ。

 骨付きの鶏モモを、ラーメンのスープにも使っているとろとろの鶏白湯で煮込み、スープに負けないくらいトロトロほろほろに仕上げた一品である。

 

 この店オリジナルのチキンラーメン――とろとろ鶏白湯スープのラーメンとの相性も最高だ。

 大きいモモ肉なので、ラーメンを頼まずこれとライスを頼むという人もいるくらいである。

 

 ラーメンと一緒に頼むとかなりのボリュームになるので、ここに追加でライスやミニどんぶりを付けるかどうか悩むくらいなのだが――

 

「あー……すみません。こいつ、まろ煮を二つ食べたいんですよ」

「そういうコトでしたか。失礼しました」

 

 一緒にお店に来ている涼の幼馴染み、香のフォローで店員のお姉さんは納得した顔をした。

 

「あと、トッピングに煮卵二つと、鶏チャーシューを五枚。一緒に鶏まろそぼろ丼のミニを一つ。鶏肉餃子の五個をお願いします」

「は、はい」

 

 見た目華奢な涼が想定以上に注文してくることに、お姉さんは驚いた様子で端末を操作している。

 

「オレはチキンつけ麺の特級セットで。麺大盛り、あおさのトッピングでお願いします。それと黒豚餃子十個」

「かしこまりました」

 

 スタッフのお姉さんが離れていくのを目で追って、カウンターに入っていくのを確認してから、香はお冷やを一口。

 喉を湿してから、涼に顔を向けた。

 

「さて、涼。仕事の依頼だ」

「ん? ギルドから?」

「いや。いわゆる案件ってやつだな」

「案件?」

 

 どうやら涼はピンと来ないようだ。

 

「うちのパトロンをしてくれているテン・グリップス社からの依頼だよ。

 探索者初心者向けの配信イベントに、ゲストとして参加して欲しいんだと」

「うーん……出ないとダメ?」

「まぁお前が台本通りにってのが苦手なのは分かってるんだが……」

 

 想定通りの反応に、香は苦笑する。

 

「一応、向こうの顔を立てる意味でも参加して欲しいってのがオレの本音だ。

 お前の顔と名前と実力が知れ渡りだしてるせいで、オレだけじゃあ守り切れない状況みたいなのが増えてるんだよ。

 こうなると配信者を止めたところで意味がない。権力者がギルドへ圧を掛けて、お前を要求しかねないような状況だからな。

 テン・グリップス社はそういう状況に睨みを利かせてくれてる面もあるから、可能な限り依頼は引き受けたいとも思ってる」

「あー……詳しくは分からないけど、そっちの権力者側に首輪付けられちゃうと、本当に自由がなくなりそうなんだ」

「そういうコトだな。むしろ今まで通りの配信と探索を続ける為にも、テン・グリップス社へのお礼を兼ねて参加して欲しいと思ってる」

「それを聞いたら断れないな。でも依頼なんだよね?」

「もちろん。報酬(ギャラ)は出る。金もそうだけど、涼が参加するなら宮崎県産の炭火焼き黒鶏の冷凍十キロ用意するって」

「やる」

「……そうか。即答レベルか」

 

 分かってはいたが、この鶏肉狂いは報酬に鶏肉があるだけで、簡単に釣れそうだ。

 

(……面倒なお偉いさんが、こいつの鶏肉狂いに気づきませんように……!)

 

 香がそんな風に切実な祈りを天に捧げていると、テーブルに注文した料理が運ばれてくる。

 

「特級ラーメンと、まろ煮二つ。トッピングの煮卵二つと、鶏チャー五枚ですね」

「こっちです」

 

 目をキラキラさせながら手を挙げる涼を見ていると、不安から来る祈りもどうでもよくなってくるから不思議である。

 

「特級つけ麺大盛りとセットのまろ煮です。餃子はもう少々お待ちください」

「どうも」

 

 そして、最後に頼んだ覚えのないチャーシューがテーブルにおかれた。

 そのことに首を傾げていると、店長がカウンターから顔を出して笑った。

 

「いつも大量注文してくれてるからね。ちょっとしたおまけ。

 鶏じゃなくて悪いが、特性まろ豚チャーシューだ」

「あ。どうもです」

「ありがとうございます」

 

 ラーメン用鶏白湯で煮込まれた豚チャーシューだ。

 鶏肉ではないものの、豚なのに鶏の風味と旨味のある不思議なチャーシューは、涼も香も好きな品だ。

 今日は頼まなかったものの、トッピングで付けることもある。

 

「案件の詳細は喰ってからだな。ラーメンなんだし、伸びる前に喰うに限る」

「だね。いただきます」

「いただきます」

 

 そうして二人は鶏尽くしのラーメンセット+おまけの征服かかるのだった。

 

 

 





【Idle Talk】
 チキンラーメン・1P鶏(ワンパンチ)
 鶏にこだわったこのラーメン屋は涼ちんのお気に入りのお店の一つ。
 鶏肉を炊き出して作ったとろとろ鶏白湯が特徴的な一皿。
 とろとろ白湯に濃厚煮干しスープを合わせた「ダブルスープの中華そば」というメニューも人気。
 涼が初めて来店した際にはテンション上がりすぎて、ラーメン、つけ麺、まぜ麺の全てを特級セットで注文した上で、鶏肉餃子十個を三皿食べたほど。
 あまりの食べっぷりに店主は涼ちんを気に入った。当時いたスタッフには完全に顔を覚えられている。
 今回のスタッフのお姉さんはどうやら新人バイトさんのようである。

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