スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

130 / 153
涼 と 大会 と 現行犯以前

 

「……では早速第一回戦を始めたいと思うんですが」

「あ、ちょっと待って。確認したいコトもう一つあるんですけど」

「グレイさんどうしました?」

「総勢何人参加してるんです?」

「今回32人ですね」

 

 津田の答えに、ディグが少し怪訝(けげん)そうな顔をする。

 

「それ、16組――いや、えーっと……――合計で38組分の試合を一つずつ見てく感じだと、配信の尺って足ります?」

「足りません」

 

 即答する津田に、流石のパネラー四人は首を傾げた。

 

「どうするんですか?」

「だいたい4試合くらいを同時進行で行きます」

 

 涼が問えば、津田は想定通りとばかりに返答する。

 それに対して、涼が続けて訊ねた。

 

「え? 8人全部を同時に確認して、現行犯探すんですか?」

「その通りです」

「よし。やっぱ月宮は片っ端から逮捕していくね☆」

「やっぱルール分かってないなアンタ!?」

 

:漫才やコントの時はボケ役メインの津田が月宮にはツッコミ入れ続けてるww

:月宮はちゃんと話聞いてw

:いやでも4試合同時進行は見る方大変だぞ

:俺らだって見る方だろ?

:オレらはほら野次馬みたいなモンだし気楽気楽

:野次馬草

:でもその通り笑

 

「ともあれ複数試合の同時進行でいきます。

 それから、自称初心者すぎるが集まりすぎているので、せっかくだからみんな月宮さんみたいな仮面を付けてもらうコトにして、顔を隠してます。

 そういう意味では巧妙に隠れた偽初心者すぎるを探す人狼でもあります」

 

:まぁ絵的にそっちのが面白い……のか?

:ただ初心者すぎる人みるよりもそれはそれでいいのかも

 

「有名な人だと顔でバレちゃいますもんね」

「そういうコトです」

 

 グレイが納得したように言えば、津田が肯定した。

 だが、それを聞いていた涼は何とも言えない顔をし、ディグはニヤリと笑う。

 

「あの、津田さん。それってようするに……」

「……顔を隠さんと速攻で素性がバレてまう参加者がいるいうコトでええです?」

「二人ともメタな読みしないでくださいッ!」

 

 即座に津田がツッコミを入れると、サラサが楽しそうに「あはははははは」と爆笑する。

 釣られるように、グレイも口を押さえて笑っていた。

 

:草

:笑

:草すぎる

:涼ちゃんwww

:ディグにゃんさぁ笑

:なんかひたすら月宮が楽しそうでこっちもニコニコしちゃうww

:爆笑するサラサちゃんが可愛すぎる草草草

:グレニキも完全にツボ入った笑いしてるじゃん

 

 そんな爆笑する二人に誘われたのか、コメント欄にも草が生い茂って大草原だ。

 

「ああ、もう! とにかく始めましょう!」

 

 このままではカオスになる――そう判断した津田はとっとと試合を始めようと、進行していく。

 すでにカオスになってる気がすることには見て見ぬフリだ。

 

「舞台となるダンジョンは先ほども説明しましたが、テン・グリップス社が新たに造り上げた新施設。一般公開を間近に控えた大型商業施設『シーカーズ・ライジング』内に作られた探索者向けアトラクションである疑似ダンジョン・シミュレータ『メイズ・メイカー』によって作られた疑似ダンジョンとなります。

 そして、皆さんの前にはちょっと大きめのPCモニタがある通り、そこに探索中の八人の様子が映し出されますので、現行犯を捜してちょうだいよ、と。

 視聴者の皆さんにも、同様の探索風景と一緒に、それを見る我々の様子もワイプで出ますので併せて楽しんでください」

 

 改めての説明をした上で、津田が宣言する。

 

「では、Aブロックの皆さん、位置に着いてください。

 各探索者の皆さんには、事前に控え室で装備や道具などを自分の好み通りにコーディーネートしてもらっております」

 

:さてどんな人が出てくるか

:人狼として混ざってるヤツがどこまで隠れられるか気になるわw

 

「ねぇねぇ。津田さんは人狼誰か知ってる?」

「いや、ぼくも何も知らないんですよ。一応、参加選手の自称プロフィール自己PRをまとめたモノは皆さんの手元にありますので、各自で確認していただければと」

「ほうほう。これかー☆」

「視聴者の皆さんも番組概要のところにURLを張っておきますので、気になる人はそこでプロフィールのチェックをしてみてください」

 

:視聴者配慮が手厚い

:すでに何人か怪しいプロフィール見つけたんだけどw

 

「さて、Aブロックの八人が各自準備が出来たようなので、スタートしたいと思いますが――こちらの皆さんの準備はいいですか」

 

 涼、グレイ、サラサ、ディグが、津田の問いかけにうなずいた。

 

 それを確認した津田が、宣言する。

 

「それでは第一試合。スタートです!」

 

 するとレースのように、赤信号が表示され、プ、プ、プ、ポーン! という音と共に青信号になった。

 

 同時に、各員がそれぞれ動き出す。

 

「全体的に恐る恐るスタートしたね」

「これさぁ……目が急がしすぎひん?」

「確かに。手分けします?」

「それでもええんやけど、三人に比べておれの知識が弱いねんからなぁ」

 

:これは確かに見極めむずい

:一人で八人見比べるのはキツいのは確かだ

 

「じゃあさ、じゃあさー! 月宮は四分割画面のうち上二つ、一番と二番を見るから☆

 それでグレイさんはさぁ画面の左側二つの一番と三番。涼ちゃんはね画面の右側二つの二番と四番。

 ディグさんはフリーで好きに見る感じにしてもらえば、バランスよくな~い?」

「それだ。月宮さんの案でいきましょう」

 

 うなずくグレイに、涼もディグも異はない。

 

「あれ? ぼくは?」

「津田さんはてきとーで☆」

「じゃあディグさんと一緒にフリーに見てます」

「あ、もちろん担当以外のモニターも見たり指摘したりしていいからねー☆

 あくまでもそのモニタをメインで見るってだけの話で」

 

 役割分担が決まったところで、改めてそれぞれが決まった画面を見始める。

 

「月宮ちゃん月宮ちゃん。右上の二番モニタのさ、左側の選手……ゼッケンだと7番。この10フィート棒を使いながら歩いてるの……どっちやと思う?」

「わっかんねー☆ 知らずともゲームやアニメでこういうの……って思い込んでる可能性もあるし、分かっててやってるなら人狼の可能性高いし……どうだろうねー……」

 

 サラサとディグのやりとりを聞きながら、涼も難しい顔をしながらモニタを見ていた。

 二人のやりとりの通り、疑わしい動きはあれど、本当に分かっててやってるのか、知らずにその行動を取っているのかの区別が付かない。

 

「これ、何気に現行犯逮捕って難しくありません?」

「思った。疑うならどこまでも疑えちゃうからなぁ……。

 罠の(かわ)し方、今の上手かったな……とか。モンスターとの戦い手慣れてる気がする……とか」

 

 涼の言葉に、グレイも難しそうにうなずいている。

 

「そうなんですよね。今の警戒の仕方は正しいな……とか、ちゃんと背後も気にしてて偉い……とか」

「初めての探索でも人によってはサラっと出来ちゃったりしますからね」

 

:基本的に疑惑の言葉が褒めで草

:そりゃあ初心者でない人探すんだからそうなるわなw

 

「それが偶然なのか、必然なのか見極めるのも難しいですもんね」

 

 津田の言葉もその通りなのだ。

 たまたま運良くその行動ができたのか必然なのかが分かりづらいのも難易度が高い。

 

「格ゲーみたいに、上下のガードがちゃんとできてるから怪しい……みたいな基準あらへんもんなぁ」

「ディグさんの言う通りですね。初心者や初体験の人だとまずできないコト――みたいなのがあればいいんですけど」

「まぁあっても、おれの場合は見分けつかんと思うねんけどな」

 

 格闘ゲームの場合、立ちガードとしゃがみガードを使い分けることは、初心者だとかなり難しい部類の行動なのだ。

 その為、防御側の腕前の確認として使える基準になるのだが、探索だとそうもいかない。

 

 どうしたモノかと思いつつ、涼がモニタに視線を戻したとき――あれ? と首を傾げる。

 

「あの、グレイさん。たまたま見えたんですけど、左下の……三番モニタに映ってる蝶々のバレッタしてる人」

「うん? このゼッケンだと……14番さん?」

「その人はたぶん逮捕するべきです。そして卒業なんぞ生ぬるいコト言わないで、追放してください」

「なんか涼ちゃんが過激なコト言い出したぞ……!?」

 

 涼の突然の発言にグレイが戸惑っていると、コメント欄はむしろ涼に乗っかって騒がしくなっていく。

 

:ん?蝶々のバレッタ?

:あ

:隠せよwwwww

:草草草

:草しか生えない

:むしろ花咲かせて引き寄せなくちゃ

:装備もムチだし笑

:そりゃあ逮捕して追放処分するべきだ笑笑

 

「コメント欄の人たちもノリノリ?」

 

 ますますグレイが戸惑っていると、サラサが14番を指差して叫んだ。

 

「あ~~ッ!! この子、アレだよね!? 月宮とも案件でコラボしたコトもあるよねッ!? ルベライト・スタジオの羽粉(ハネコ)リンちゃんじゃない? 違う? それにしか見えないけど、どうかなー?」

 

:それだw

:もうそれにしか見えない笑

:草草草

:間違いない

 

武技(アーツ):ドレインウィンド!』

 

 そんなやりとりをしていると、14番は現れたモンスターにムチを巻き付ける技を使った。すると、モンスターから怪しげなオーラが立ち上り、ムチを伝って14番に流れ込んでいく。

 それによってモンスターが徐々に衰弱していくのを見て、ディグも叫んだ。

 

「さすがにその技見たらダンジョン配信ROM(ロム)勢のおれにも分かるわッ! 少しは正体隠す気とかあらへんのかいッ!?」

 

:ディグにゃんも叫んだ笑笑笑

:得意のドレインスキルだー!www

:草すぎる

:ダメだ笑ってしまうww

:ムチ使いでドレインスキル使いこなす探索者ってリンちゃんしか知らんのよ笑

:仮に羽粉リンでなくとも素人のする戦い方じゃないの草

 

「うん。羽粉リンさんについて詳しくない自分もアウトでいいと思います。卒業というか明らかに経験者っていう人狼なので追放」

 

 グレイも納得したところで満場一致だ。

 

「一応、念の為にプロフィールと一緒に書いてある意気込みとか見てみますか」

 

 津田も異論はないのだが、盛り上げも兼ねて読んでみることにした。

 

「えーっと……『配信者歴三年の探索初心者です。ムチを使ったドレイン能力とかに憧れてます。どこかの蝶々系ムチ使い配信者に似てると良く言われます。よろしくお願いします』……だそうですけど」

「ほぼ事故PRじゃないですか」

「この人いけしゃあしゃあと何言ってるんでしょうね」

「人狼モノでここまで正体を自白してるのも珍しいんとやいます?」

「あははははは! もう絶対リンちゃんでしょこれ~☆」

 

:草草草

:確かにダンジョン配信者歴三年だけどさぁww

:カド曲がる時の確認法が素人の動きじゃないもんなw

:ていうか背後から来るジェルラビを見ずに撃退してるし笑

:仮面越しでも分かるくらい表情だけは戸惑いながらも一生懸命な初心者なの草

:表情の芝居だけは完璧なのな!仮面してるけど!ww

 

「アウトですアウト! ムチスキルもそうですけど、良く見てると動きが完全に中級者以上のそれです。14番さんは逮捕で、対戦相手の8番さん勝ち上がりです。おめでとうございます!」

 

 そんなワケで、最後のグレイの宣言によって14番の逮捕が確定したのであった。

 

 






【Idle Talk】
 なおリン本人としてはかなり完璧に初心者への擬態が出来ているとドヤ顔気分でいる模様。
「ふふッ、どーよ! カママやツボミには出来ないこの完璧な偽装演技!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。