スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と 見極め と 準決勝

 

 

「フィート棒ネキ、微妙な怪しさみたいなの、ずっと(うっす)らとあるんですよね」

 

 始まった準決勝第一試合を見ながら、グレイがそう口にする。

 

「月宮もそう思うんだけどさー……でも、剣の扱いあんま上手じゃないし? 戦闘の度にわざわざ棒と剣を持ち帰る段取りの悪さ的なところとか含めて、初心者っぽくね? ってなってる」

「それに、普段から剣を使ってはるんやったら、持ち替えたあとモタつく感じの芝居感なさが説明つかへんと言いますか」

 

 サラサとディグも同意見のようだ。

 

「実際、怪しいけど逮捕に踏み切るものが一切見当たらないというのが、この人の評価なんですよね。

 ディグさんの言うところの芝居感とか、接待感みたいなのはこの人から感じられませんし」

 

:フィート棒ネキ怪しまされてはいたんやな

:確かに初心者っちゃ初心者って感じなんだよな

:試合ごとに剣の扱いは上手くなってるけどそれはあくまで初心者として上手くなってる範囲と言えるしなぁ

 

「格闘家ニキの方はどうですか、皆さん?」

 

 津田に振られて、パネラーたちがそちらを見る。

 

「これ、素人目に見てもかなり動きが良くなってる気ぃせぇへんです?」

「するね。元々格闘技やってて動ける人だから、自分の感覚をダンジョンという空間に適応させられれば、こうもなるか」

 

 モニターの先ででは、格闘家ニキが飛びかかってくるジェルラビを拳で打ち落としたところだ。

 

 そこから数歩進んだところで、罠でも踏んだのか森の茂みから矢が飛んでくる。

 

 それに対して格闘家ニキは上手いことキャッチ。

 すぐ近くを張っていたナメクジへ向けて投げ放つ。

 

「鮮やかですね。

 格闘技やってただけあって、攻撃が自分に向かって飛んでくる恐怖への耐性があるんでしょうね」

「そっか! 確かにモンスターの攻撃とか、トラップの攻撃とかが自分へ向かってくるのって最初はめっちゃ怖いもんね。攻撃を避けたり防いだりするのって、自分に向かってくる攻撃をちゃん見ないといけないもんね☆」

 

:そう言われると格闘家ニキはすごいな

:前にあったプロ戦闘職ネキの動きとかもそうだったね

:ああ!プロ戦闘ネキの動きと似た動作になってきてるかも

 

「コメントにもありますけど、話題になったすごい動ける女性参加者さん。彼女の動きと似てきているの間違いありません。

 格闘ベースにダンジョンないしリングの無い場所でかつ探索能力を発展させていく必要がある場合は、こういう動きになっていくのかもしれませんね」

「収斂進化的なやつかもしれませんね」

 

:なるほどなー

:涼ちゃんが解説してくれると説得力がすごい

 

「でも格闘家ニキの成長っぷりはすごいよねー☆ 正直、脱初心者してない?」

 

 サラサの言葉に、パネラーたちが一斉に唸る。

 実際、否定できないのだ。

 

「どないします? (かた)や怪しいけど埃の出て来ぃへんフィート棒ネキ。片や成長によって脱初心者レベルに至ってる格闘家ニキ。

 決勝へ進めるんを勝負の結果に任せるんか、自分らの逮捕で決めるんか……瀬戸際やと思いますけど」

 

 グレイとサラサは腕をくんで、「うーん」と眉を顰めて唸る。

 

:サラサちゃんとグレイさんがマジ悩みしてる

:実際難しいよな 確かに格闘家ニキは脱初心者扱いで良い動きはしてるんだけど

 

「…………」

「どったの涼ちゃん? フィート棒ネキを熱心に見て。もしかして、恋?」

「――いや、確証が微塵も無いし証拠もないんですけど、フィート棒ネキをどこかで見たことあるような気がして……」

 

:おっと?

:涼ちゃんの知り合いの探索者とかだったら人狼やぞ

:これはますます悩ましくなってきたか

 

 

「渾身のボケをスルーされて月宮は傷心だよ」

「ボケだったんですか? すみません」

「謝らないで!」

 

:ボケだったんだ

:ごめんな月宮 ヘビーな月光の俺もわからんかったわ

:月宮は時々変なボケするんだよごめんな初見のみんな

:ええんやで

 

「月光ども覚えておけよー!」

 

 がるるるる~と犬歯を剥くサラサを横目に、涼はもうしばらくフィート棒ネキを注視し、やがて肩を竦めた。

 

「ダメだ。知り合いだったとしても分からない。

 これはもう、素直に見たまま評価した方がよさそうだ」

 

:ダメかぁ

:そこまで巧妙だったなら仕方ないか

:まぁ涼ちゃんの知り合いと決まったワケでもないし

 

「涼ちゃんの判断も終わったところで、改めてみんなに確認するけど……逮捕はどうする?」

 

 グレイの最終確認に、三人はそれぞれに思案した顔を見せ、そして僅かな時間のあとで顔を上げた。

 それを確認し、グレイは自分の意見を告げる。

 

「自分は格闘家ニキ逮捕。フィート棒ネキはスルーでいいと思うんだ」

「月宮も同じくかな~。格闘家ニキはもう初心者って呼べないと思う。フィート棒ネキも怪しさはあるけど逮捕できる証拠も確証もないからね~☆」

「自分も二人と同意見ですね。格闘家ニキは素人目から見ても動きがよくなりすぎてる思いますんで」

「そうですね。フィート棒ネキは気になりますけど、月宮さんの言う通り、逮捕するには決定打がありませんので。

 一方で格闘家ニキは間違いなくこのトーナメントの最中に成長し、間違いなく脱初心者したと思います」

 

 そうして四人は顔を見合わせ、四人を代表してグレイが宣言した。

 

「では満場一致というコトで、脱初心者達成で格闘家ニキは名誉の逮捕……卒業とさせて頂きます。おめでとうございます!」

 

:お~!パチパチパチパチ!

:本当に逮捕おめでとう案件だ!

:888888888

:すげーぞ格闘家ニキ!

 

 温かい拍手とコメントで番組が沸く中、格闘家ニキは無事にゴール。

 やや遅れて、フィート某ネキもゴールに辿り着いたところで、第一試合は終了した。

 

「さて、無事に第一試合が終わったところで、即座に第二試合と行きたいと思います」

 

 そして、もう一つの準決勝。

 

「27番vs12番!」

 

 どちらの選手もおっかなびっくり入ってくる様子から、こういう催しに馴れていないのだろう。

 

「27番はあれやね。ラッキーガールさん。ラッキーなんやかガチなんやか分からん人やったけど」

「一回戦、二回戦が不戦ですからね。そこ含めて、不思議な人です。

 ただラッキー以外の動きは本当に初心者というのを考えると、判断が難しい人でもありますね」

 

:確かになぁ

:ラッキーだとしたらあのトラップ回避はすごすぎるけど

:本当に難しい人だw

 

「対する12番さんは、まさにこの企画ドンピシャの初心者さん!

 基本的に対戦相手の逮捕で勝ち上がってきた人というのも含めて、企画の申し子だよね☆」

「そう考えると、この試合は実質決勝戦でいい気がします」

 

:グレイwww

:いやまぁ確かに本当の意味での初心者対決という意味では間違ってないけどw

:フィート棒ネキが怪しいから余計にな笑

 

 両者のこれまでの戦果とインプレッションを終えたところで、津田が宣言する。

 

「それでは、27番vs12番。スタートです!」

 

:はじまった

:どうなる?

 

 色んな意味で注目されながら始まった試合は――まさしく初心者対決の様相を呈していた。

 

「すごい。まさに見たかった試合だ」

 

 そのせいか、津田が感動している。

 

「今回27番さんのラッキーが発動してない感じありますね?」

「確かに。何というか本当に初心者すぎる人が探索してる感だけですね」

 

 パネラーもコメント欄も一斉に首を傾げる。

 あの異能じみた幸運を見てしまったので、みんな期待していたのだが特に何もおきそうにない。

 

「12番さんは成長してる感じはしますが、まだまだ初心者のままって感じだね」

「せやなぁ。格闘家ニキみたいにめざましい成長って感じはあらへんねぇ」

 

 そうして、良い意味で盛り上がる瞬間がないまま、初心者らしいデッドヒートの末に、12番が先にゴールした。

 

「えー……逮捕は?」

 

 津田の問いに、パネラーたちは顔を見合わせてから、一斉に首を横に振る。

 

「ナシで」

「この結果でOK☆」

「異議無し」

「異論無し」

 

 そんなワケで12番の決勝進出が確定した。

 

:すごい微笑ましい準決勝だった

:この期に及んで両者ともに罠にびっくりして声上げるのはすごい

:しかも同じ場所で同じような声だしてたのはさすがに笑う

:でも27番の準々決勝マジで不思議だったよなぁ・・・

 

 結果に不満を持つものは居ないが、どうしても27番の幸運について気になる者はいるようだ。

 

 実際、パネラーの中でもグレイはそこを気にしている。

 

 するとスタッフの一人が何やら紙を持ってきて、津田に手渡した。

 

「おっと。プロ戦闘ネキから、メッセージが届きました」

「おや?」

 

:え?

:なんだ?

 

「27番さんについてですね。

 時折、戦場にいる無自覚な異能力者系ではないか――とのコトです」

 

:まず「時々戦場にいる」という発言がきになりすぎる

:マジで戦場帰りネキなのか

:あと異能力者系っているんだ異能力者

 

「発動条件のあるタイプで、ネキの推察では『対峙する予定の相手ないし、対峙した相手の実力差が自分と一定以上の差がある場合、ラッキーガールの幸運値に補正がかかる』という異能ではないか……とのコトです」

 

 その解説を聞いて、パネラーたち――特にグレイと涼が、とてつもなく真面目な顔をして黙り込む。

 

「説得力というか筋は通りますね」

「ですね。ダンジョン領域の外で発動できるスキルの存在も噂されてますし、もしかしたら27番さんの幸運はその類いかも知れませんね」

 

:グレイと涼ちゃんは認めるのか

:領域外発動スキルとかあるのね

:その説を信じるなら確かに12番とは実力が拮抗してたから発動しなかったのかもなぁ

:逆説的に27番って格上キラー?

 

「ねぇねぇグレイさん、涼ちゃん。27番さんってオートジャイアントキリングってコトなの?」

 

:それな

:月宮いい質問だ

 

「極端な例えをするなら――実力差分がそのまま幸運補正になるとしましょう。

 レベル10の彼女がレベル50の敵と戦う場合、幸運が+40されるみたいな。

 ……じゃあ、それでレベル50の敵を攻略可能かどうか……となると」

 

:うーん

:そう言われると

:ラック全振りしても難しいか

:クリティカル率、バステ率が上がったとて、レベル差ありすぎるのはな・・・

 

「正直、運が介在しない状況を徹底して作り出せるなら、それで封殺できますしね。

 その幸運補正の結果、盤面に隕石が堕ちてきてひっくり返す――とかも発生するなら、その限りでもないでしょうけど」

 

:そのレベルの事象が発生するほどの実力差が必要だろうし

:確かに強いんだか弱いんだか分からない能力だな

 

「ある程度任意に発動できて、生存に特化させられるんやったら有用な能力かもしれへんですけど、現状やとちょう微妙ですね」

「そっか。すごい能力だとは思うんだけどな~」

 

:すごいはすごいけどね

:補正がかかるのが幸運だけとなると

 

「グレイさん、涼ちゃん解説ありがと~! プロ戦闘ネキもわざわざありがとうございました☆」

「改めて、12番さん決勝進出おめでとうございます! 現場の準備が整い次第、決勝戦を開始したいと思いますので、視聴者の皆様はしばしお待ちお願い申し上げます!」

 

 

 






【Idle Talk】
 プロ戦闘ネキも幸運補正程度ならなぁ……と思っていたのだが、ディグの言う任意発動+生存に特化したら強いかも――という言葉で考えを改める。
 元古巣の特殊部隊へ推薦するべく、27番の情報集めとスカウトに動き出した。
 戦場で絶対幸運で生き延びるように成長すれば、色んな意味で有用な人材になるだろう。

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