スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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湊 と 白凪 と ミステリー

 

 湊と白凪はどちらともなく顔を見せ合うと、小さくうなずきあった。

 そして、湊が先行して姿を見せた階段へと足を踏み入れる。

 

「暗いし、ちょっとカビっぽい?」

「我々が利用する以前から、開けられるコトなくここにいたでしょうからね」

 

 ダンジョン探索から、ホラーハウス探索になったような気持ちで、湊は階段を降りていく。

 踊り場を一度挟んでさらに下へ。

 

「……最初の階段から踊り場までの距離、長かったですよね?」

「うん。踊り場の位置がそもそも地下一階って感じな気がする……」

「普段、倉庫として使っていた部屋の脇にこんな階段があった……とか言われてもピンと来ませんね……」

「だよねぇ……」

 

 地下一階は、各事務所の大道具や一部衣装などを補完している倉庫だ。

 あと社長がどこからともなく持ってきて、持て余したゴm……――もとい用途不明のよく分からない私物の数々を放り込んだ物置部屋とかもある。

 

 まぁそんな社長の物置には、ウィジヤ盤だったり、使用言語は神仏系祝詞ベースなのに祈りや祝福ではなく呪詛がびっちりと裏面に彫られた銅鏡だったり、明らかにアステカ系オカルトアイテムである儀式用黒曜石のナイフだとか、なんかそういうのが色々と転がってたりするのだが、完全に余談である。

 明らかに騙されているとしか思えない霊験あらたかなツボとか、水の精霊と水の女神のサイン入りのいつでも聖水を楽しめるウォーターサーバーとかもあったりする。どれも私費を投じているとはいえ、ウォーターサーバーあたりは流石に見過ごせないとかで、美人秘書さんに怒られたとか。

 まぁそれも余談も余談であるが。

 

 さておき――二人は、雑談混じりに階段を降り続け、終端へと到着。

 

「距離的に地下二階……ですかね」

「そうだろうけど、うちって地下二階あったんだ……」

「私も初耳です」

 

 お互いに苦笑しあいながらも、周囲を見回す。

 

「うーん、暗い」

「明かりがありませんからね」

 

 言いながら白凪はスマホを取り出すと、ライトを点灯させた。

 

「バッテリーを結構使うので、早い段階で廊下に電気を付けたいところです」

「あるの?」

「どうでしょう……」

 

 とりあえず、一般的な建物の構造として考えれば、階段降りてすぐのあたりに電源ボタンくらいはあるだろうが――

 

「一応、ボタンはありましたね」

「問題は付くか……だよね」

 

 なにせロクにメンテナンスがされていないのだ。

 耐用年数に余裕があっても、メンテナンスされないだけで壊れるというのも少なくない。

 

 なんであれ、触ってみないことには始まらない。

 できれば点いて欲しい――そう思いながら、湊は階段脇にある電源ボタンを押した。

 

 カチリ。

 僅かな間。

 

 それから、上方――階段の踊り場の電気が点いた。

 

「…………」

「…………」

 

 二人はなんとも言えない顔をして、踊り場を見上げる。

 

 違うそうじゃない――という感情と、

 一応生きてるんだね――という感情が湧いてくる。

 

「まぁあそこも点いてないよりマシだよね。

 他に電気のスイッチがありそうな場所を探そう。うん」

「そうですね。見つからないなら進みましょう」

 

 改めて周囲を見るとやはり見当たらないので、進むしか無さそうだ。

 

「ここまで暗いのはダンジョン探索でも経験ないんですよね」

「そうなんですか? たまにありますよ、真っ暗闇なダンジョン。コウモリ系やネズミ系のモンスターが多かったりして、厄介だったりもします」

 

 白凪はそう口にしてから、ぼんやりと付け加えた。

 

「……ここにそういうの、いないといいですよね」

「超人化ナシだと対処できないだろうしなぁ……」

 

 戻って適当な領域を見つけてSAIからアイテムを引っ張り出してくるべきだろうか。

 元々その予定だったのに、隠し通路を見つけてついつい降りてきてしまったのは、失敗だった気もする。

 

 二人はどちらともなく、そう考えながらも――

 

「行こう。ぐだぐだ悩んでる時間も惜しいですし」

「了解です。こういう時、私はついつい悩んでしまうんですが、湊さんが即断してくれるので助かります」

「それがいいかどうか分からないよ?」

「答えのない答えを求めて悩んで足踏みするより、ずっといいですよ」

 

 そんなことを言い合いながら、二人は階段エリアから外へと踏みだし、どこへ通ずるとも分からない真っ暗な廊下へと踏み出した。

 

「うーん……ゲームでこういうとこ歩くのは平気なのに、自分がリアルに歩くとなると怖いなぁ……」

「同感ですね」

 

 ましてや今は超人化もしていない。

 

「……香さんって、超人化なしでダンジョンに顔を出しますけど、よく平気ですね、この感じ……」

「確かに。でもまぁ適性ないのを自覚して涼ちゃんと付き合ってるなら、馴れちゃってるところもあるんじゃないかなぁ……」

 

 低層の相手なら何とかなる。

 その実感を持っているからこそ、超人化適性ナシでも平気でいられるのだろう。

 

「あ。シロナさん、そこの壁。突き当たりの。ちょっと照らしてもらっていい? 左側の角っこ寄りで」

「はい」

 

 これまで直線だった廊下が、直角に右へと曲がることとなる角。

 そこで湊が声を出し、指で示した場所に白凪は明かりを向ける。

 

 すると、そこにはレトロなデザインながら電気のスイッチだと分かるデザインのあれだ。

 

「……切り替えるよ?」

「はい」

 

 白凪に確認し、湊はスイッチに触れた。

 

 カチリ。

 僅かな間。

 

 そして数度の点滅の後で、点灯するのは――

 

「来た道の電気かぁ……」

「これ設計した人、だいぶ意地が悪いですよね」

 

 ――二人は呆れたように嘆息しあう。

 

 最初の踊り場に、この廊下。

 連続して発生した二点を思えば答えは明白だ。

 

 ここの電気の電源は行った先にあり、電源に触れて点灯する明かりは今し方歩いてきた道ということなのだろう。

 

「まぁ明かりの確保という点では重要ですので」

「だね。先に行こう。ケータイのバッテリ平気?」

「はい。まだ全然余裕です」

 

 そして二人は角の先へと歩き始める。

 これまでと同じような真っ暗な廊下。

 

 だけど、その途中で感覚が変化する。

 

「……!?」

「これは……」

 

 ダンジョン領域に踏み込んだ。

 身体の感覚が通常のそれから、超人のそれへと切り替わる。

 

「まずは武器を」

「うん」

 

 即座に、二人は自分のSAIから相棒を取り出した。

 湊は細身の長剣を。白凪はムチを。

 

「ここからが本番、かな?」

「狭い廊下ですからね。妙なモンスターが出ないコトを祈りましょう」

 

 そうして再び突き当たりが現れ、右に曲がる。

 そこの角にも電気のスイッチがあるのでそれを切り替えると、やっぱり通ってきた道に明かりが点いた。

 

「もしかしなくても、グルグルしてる?」

「そのようですね。少々面倒ですが、いけるだけ行きましょう」

 

 そのまま真っ直ぐ行き、また突き当たりが右に曲がっている。

 二度あることは三度あるというべきか、電源スイッチを見つけるとちゃんと切り替えて電気は点けておく。

 

「やっぱり渦巻きみたいになってる廊下かぁ……面倒……」

「そういえば最近、古いゲームを遊んだんですけど」

「白凪さん、相当ヒマになってきましたね?」

 

 唐突すぎない? と思いつつも、何もない廊下に飽きてきている湊は、それでも話は遮る気はなかった。

 

「まぁそれもあるんですけど、ちょっと似たシチュエーションがあったので、ふと」

「なんてゲーム?」

「ポートピア連続殺人事件って知ってます?」

「知ってる。犯人はヤスってやつですよね?」

「それですそれ。ちゃんと遊んだコトなかったので遊んでみたんですよ」

「言われてみると、ミームとしてしか知らないや」

「そしたら何故か3Dダンジョンを突破するイベントがありまして」

「ほんとうになんで?」

「この地下の廊下。そのダンジョンと構造が似てるなって」

「ちょっと待って。物騒なコト言わないで欲しいというかこの廊下の終端に出来たてホヤホヤの死体とか転がってて急にミステリ展開とか始まると困るんだけど……」

「電気も点いておらず、誰かとすれ違った気配もないし、モンスターとも遭遇がなかったのに、転がっている死体。確かにミステリ感ありますね」

「白凪さん、ちょっとワクワクしてません?」

「実はミステリとか好きでして。探偵とか憧れません?」

「行く先々で事件に出会(でくわ)す死神にはあまり憧れはないかなー」

「だいぶ偏見入ってませんか、探偵に」

 

 なんであれ――湊としては、そのミステリ展開は正直なところ変な強敵モンスター出現よりも困る展開はやめてほしい。

 人の死体が転がってたりしたら、アンデッド系モンスターや巨大なゴキブリ型モンスターと遭遇するよりも大きな悲鳴を出してパニックになる自信がある。

 

 そんなこんなで、結局モンスターとも出会わないまま、終端へとやってきた。

 恐らくは渦巻き状の廊下の中心にある部屋なのだろう。

 

「なんの変哲もないドアだけど……」

「私が開けます。何が出てきても良いように構えておいてください」

 

 湊は剣に手を掛け、白凪は壁に張り付くようにしながらゆっくりとドアを開ける。

 

 次の瞬間――

 

「グオオオオオオオ――……!!」

 

 中から青い肌をしたボディービルダーを思わせる体躯のゴブリン型モンスターが飛び出してきた。

 

 さらに、その次の瞬間――

 

「びっくりさせないでよね!!」

 

 湊は襲いかかってくるゴブリンに対してマナで強化しただけのスキル未満の蹴りを放った。

 

 そのまま部屋の中へと押し返し、剣を構えたままに部屋の中へと押し入る。

 

 部屋の中は殺風景なもので、モノらしいモノはほとんどなかった。

 ただその中で、部屋の奥に祭壇のようなものがあり、それだけが異質感を醸し出している。

 

 かなり気になるが、そんなものは後回しだ。

 

「少し前のわたしなら苦戦したかもしれないけどさ、今のわたしだとアンタなんて相手じゃないからッ!」

 

 見たことのないゴブリンで、間違いなく強敵の部類。

 けれど、でっかい鴨のドレイクだの、海岸を漂う巨大クラゲなどとやりあってきたのだ。

 

 目の前の特異系強化型ゴブリンが、まったく強い相手に感じない。

 

「グオオオ!!」

 

 湊の言葉を理解したワケではないだろう。

 それでも挑発や嘲り、余裕を感じ取ったのか、怒ったように湊へと飛びかかってくる。

 

「遅い」

 

 そんなゴブリンに対して、湊は冷静に足を払ってうつ伏せに転ばせると、その背中から心臓の辺りへと剣を突き立てた。

 

 ビクンと震えたあとで、ゴブリンはそのまま動かなくなる。

 

「スキルも使わずに済んで良かったかな」

 

 小さく安堵したところで、白凪も部屋の中へと入ってきた。

 中を見回し、ゴブリンを見――

 

 謎の祭壇の前。

 うつ伏せに倒れた人型のモンスター。

 その背中に突き刺さる刃物。

 

 ――白凪はポンと手を叩いた。

 

「なるほど、ミステリなシチュエーション」

「言われてみると!?」

「お巡りさんあの人です」

「だから白凪さんがボケに回るのやめてってば~!」

 






【Idle Talk】
 初期の湊と比べるまでもなく、今の湊はかなり強くなっている。
 以前は逃げ回ってたシャークダイルも、今ならソロでふつうに狩れる。
 超人化レベルの上昇や、スキルの強化や進化など、単純にわかりやすい強化ポイントも多いが、一番の理由は強敵戦の経験をしまくっていること。
 自分より一回りも二回りも、それどころか五回りくらい上の強敵と向かい合ってるうちに、何か強敵モンスターの持つ特有の威圧感に馴れてきた。
 それもあってか、初見モンスターと遭遇した時に、どう対応するべき相手か、食べられる相手か、食べるならどう倒すべきか――などなど冷静に判断できるようになっており、状況によっては涼や白凪を上回る判断や行動を取れるようになってきている。
 なお、本人は多少強くなった自覚はあれど、未だ涼や白凪には勝てないと思っている。
 全てはダンジョン食材のために!全てのダンジョン食材を食べ尽くすために!


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