スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と 湊 と お裾分け

 

『レンタル・キッチンスタジオ 万亀(マキ)

 

 以前にコカトリスの唐揚げをごちそうしてもらったキッチン付レンタルスタジオだ。

 

 そこに、涼と香は改めてやってきていた。

 先にキッチンでスタンバイしている人がいるのだ。

 

「待ってたッッッ!!」

 

 玄関から見える位置。

 キッチンの中で腕を組み、仁王立ちしている少女こそ――言うまでもなく湊である。

 

 背後に輝く星とハートを乱舞させ、目を爛々と輝かせながら、身体をソワソワと揺らし、それでもがんばって仁王立ちを続けている。

 

「香……何かスゴい気迫のようなモノを感じるんだけど」

「奇遇だな。オレもだ。何が彼女を駆り立てるんだ?」

 

 玄関で靴を脱いだばかりだが、すでに靴を履き直したくなっている二人。

 そんな二人を逃がすまいと、最後に入ってきた白凪が告げる。

 

「お二人ともはやく上がってください。私がつっかえてしまいます」

「……うん」

「……はい」

 

 逃げ道は塞がれたので二人は仕方なく、スタジオへとあがっていった。

 

 そして、仁王立ちしている湊とカウンターを挟んだ対面に二人は立つ。

 

「実は何も聞かされてないんだけど! 二人が白凪さんを通して私に会いたいっていうから時間をとったの! いったい、何の用かな?」

 

 疑問を呈しているようで、彼女の中では何かが確定しているようである。しかも、それが外れる可能性を微塵も考えていなさそうだ。

 

「まずこれ。お裾分けです」

 

 そう言って、涼は自分のカバンの中から瓶を二本取り出した。

 透明なその瓶の中には、黄金色に輝く液体がたゆたっている。

 

「そ、それ!!」

「はい。レイク・コンソメです」

 

 涼はその瓶を、湊と白凪に手渡した。

 

「ふおおおおおッ!!」

「ありがとうございます、涼さん」

 

 奇声を上げながら掲げ崇めている湊を無視して、白凪が礼を告げる。

 

「涼にリアフレの分も採取して来いと言っておきましたからね」

「ふふ、そうでしたね。私までフレンドに含んで頂けるとは思ってませんでしたが」

 

 香と白凪のやりとりが聞こえていたのだろう。

 奇行を続けていた湊の動きがピタリと止まった。

 

「え? あの……先日の配信で、リアフレって呼んでたの……って、もしか――しなくと、も?」

「あ、うん。湊のコト。

 大角ディアさんとの直接的な繋がりはないけど、湊とは直接的な繋がりがあるでしょ」

 

 涼が肯定すると、湊の顔は赤くなり笑っているような恥ずかしがっているような照れているような絶妙な表情を浮かべ、目が泳ぎだす。

 

「し、白凪さんは……」

「すぐに気づきましたけど?」

 

 実は香から連絡をもらっていたことを伏せて、白凪がしれっと告げれば、湊の顔はさらに朱に染まっていった。

 

「どういう顔なんですかアレ?」

 

 香が訊ねると、白凪は涼しい顔をして答える。

 

「クレクレアピールして運良く貰えればラッキーくらいに思ってたのに実は相手は最初からくれるつもりだったし何なら身内はそれに完全に気づいていたのに気づかずウザ暴れしまくってしまっていた自分に対する羞恥と照れが極まってきて逃げ出したいけどわざわざ持ってきてくれた涼さん達がいるのにココで逃げ出すのはちょっと無礼がすぎるという自制心が働き理性と感情と貰えた歓喜とが色んなモノがまぜこぜになった顔……でしょうか」

「一息に言い切るには色んな要素が混ざりすぎてますね」

「なかなかの早口でした」

「~~~~~~~~ッ!!」

 

 羞恥を耐える曖昧な笑みとともに歯を食いしばる湊へ、他の三人は生暖かい眼差しを向ける。

 

 ともあれ、そのまま湊に固まられていても話がすすまない。

 なので涼は、悶えている様子を無視して、カウンターにそれを載せた。

 

 それは毛抜きされ、血抜き処理もされた、グラスコッコだ。

 

「これもありますよ」

「ふ、ふおおおおおお……ッ!!」

 

 複雑な赤面から一転、歓喜に奇声をあげる湊。色々と忙しい女である。

 

「グラスコッコ。是非とも湊に料理してもらいたく、持ってきた」

「あ、あ、あ、ありがと~~~~ッッ!!」

 

 羽の下にある皮もうっすらと緑色なのがいささか不気味さはあるが、未知なる食材を好む湊にはたまらない一品だろう。

 

「お礼は、グラスコッコの調理でお願いします」

「もっちろんッ!!」

 

 ・

 ・

 ・

 

「そんなワケで、芸は無いけどまずは適当にカットしてステーキね」

 

 湊がすぐに用意してきたのは、一口サイズのチキンステーキだ。

 

「熱を通したら薄緑色だった肉色が深みをましちゃって、抹茶色になっちゃったんだけど……ちょっと不気味だよね」

「ううむ……」

「これは……」

 

 皿に載っている緑色の鶏肉になんとも言えない顔をする香と白凪。

 だが、鶏肉となればためらいなど忘れた男がここにいた。

 

「ぱく。もぐもぐ」

「涼ッ!?」

「涼さんッ!?」

「涼ちゃんッ!?」

 

 鶏肉が関わるなら男前。

 涼は三人が驚くのをよそに、もぐもぐと口を動かす。

 

「歯ごたえはしっかり。肉質は硬め……だけど……」

 

 しっかりと味わった涼は、じっくりと余韻を楽しむようにレポートを口にする。

 

「だけど……?」

「噛む度に肉汁が弾けて、旨味があふれ出してくる感じは良い……なんていうか滋味深いっていうか……。

 肉質硬めっていても噛みきれないワケじゃないし、プリプリした弾力が強いとも言える。何より――」

「何より?」

「皮がすごい美味しい。なんだろうこれ。パリっとしててジューシーなのはそうなんだけど、うまく説明できないんだけど、皮がすごい」

 

 顔が輝いてこそいないが、涼がハイテンションで食レポしているともなれば、気にならないワケがない。

 

「……よし! ぱく!」

 

 まだまだためらいのある香や白凪をよそに、覚悟を決めた湊が、緑色のチキンステーキを口に運ぶ。

 

「あ。美味しい!

 確かにちょっと硬めだけど、全然平気! いやコカトリスと比べちゃうとコカトリスに軍配はあがるんだけど! これだって十分美味しいよ!

 なんかこう、軍鶏(しゃも)っぽいかも!!」

 

 涼と湊。

 二人がここまで絶賛するとなると、さすがに香と白凪も覚悟が決まる。

 

 示し合わせたわけでもないのに、お互いに顔を見合わせてから、やや緊張気味に口へ運んだ。

 

「お、旨い」

「口に入れてしまえば美味しい鶏肉ですね」

 

 そう言いながら香と白凪も、味わうように口を動かす。

 

「二人の食レポは正しいな。うん。

 コカトリスと比べるとインパクトはないが、これも十分に旨い」

「本当に皮が美味しいですね。皮だけならコカトリスよりも上かもしれません」

 

 香と白凪の二人の感想を受けて、湊は一つうなずいた。

 

「涼ちゃんの為に揚げ物は作るとして、他に何を作ろうかと考えてたから……ちょっと方向性が決まったかも?」

 

 湊はそう言って厨房へと戻ると、包丁を手に、三日月のような口で笑みを浮かべるのだった。

 

 





【Idle Talk】
 湊――涼と香からお裾分けとしてレイク・コンソメをもらった時、プライベートはともかく、配信者としての直接的接点は薄めておこうという、一番最初のプランを思い出したとかなんとか。
「あれ? 私、最初に白凪さんと香くんから提示されたプラン……完全に失念して荒ぶってない? 大丈夫? これ?」
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