スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と チャンス と 暗撃必倒

 

 交差する炎の斬撃。

 ただの斬撃よりも、確実にドレイクを切り裂き踏鞴(たたら)を踏ませる。

 

 二人は払い抜けた先――ドレイクの背後から、さらなる追撃をしようとそれぞれの武器を構えた。

 

 その気配に、ドレイクはそうはさせじと振り向いて、翼拳を構える。

 湊と白凪にとっては、自分たちの方へと振り返ることこそが、本来の狙いだったと気づかずに。

 

 二人はそのままドレイクが涼に気づかないように、気を引くように、大きく動く。

 

「ええええい!」

 

 湊が炎を纏った剣で斬りかかる。

 ドレイクはそれを翼で受け止め、反対の翼を拳のようにして湊を殴りとばす。

 

「……ッ?!」

 

 直撃こそ避けたものの、単純に腕力のあるドレイクの一撃に湊は大きく吹き飛ばされる。

 

 だが、そのやりとりの中、白凪はムチを構えて狙いを澄ましていた。

 

「そこッ!」

 

 湊の様子が気になるという感情を押し殺し、ドレイクの左足首に炎を纏ったムチを巻き付ける。

 

「グゥワァ……」

 

 徐々に足首が焼けていくことに顔をしかめながら、ドレイクは両翼を拳のように構えた。

 

 雰囲気は、拳で繰り出す走牙刃のような技。

 技の特性上、威力はやや低いだろうが――そもそもこのモンスターは元々の攻撃力が高い。

 

 躱さなければ危険だろう。

 どのタイミングでムチを外すか――そう考えていると、すぐに復帰した湊が、翼を構えるドレイクへと肉薄する。

 

 口の端でも切ったのか血を流しているが、湊はそれを気にした素振りは見せずに剣を振るう。

 

 咄嗟にドレイクはそれを防ぐが、そのおかげで準備していた武技は解除されたようだ。

 白凪は安堵しつつ、巻き付いたムチを維持するのに注力する。

 

 左足首にはムチが巻き付き、右からは炎の剣による攻撃がしつこく繰り返される。

 自由に動くにはムチをどうにかしたいが、ムチをどうにかしようと構えると、剣によって攻撃されて思うようにチカラを溜めることができない。

 

 その状況に――

 

「グゥワァァァ……」

 

 ――ドレイクは忌々しげな声を漏らしながら、二人を睨みつける。

 それはドレイクの意識が完全に二人へと向ききった合図。

 

 

 気配消して様子を見ていた涼は、今こそがチャンスだと判断して動き出す――

 

 

「武技:バックスタブ」

 

 声音遮蔽のスキルによって、ドレイクの耳に届かなくなっている涼の声が、スキル発動の宣言を行う。

 

「武技:絶命一如(ゼツメイイチニョ)

 

 バックスタブと絶命一如の重ね掛け。

 以前、グラスコッコを(ほふ)った時に使った組み合わせだ。

 

 あの時は、ここからシンプルな斬撃強化の武技を放ったが、今回はあの技では必殺に届かない。

 

 このまま攻撃しても有効打にはなるだろう。だが有効打止まりだ。

 

「武技:…………」

 

 一度手がバレれば、バックスタブを仕掛ける機会はもうないだろう。

 故に、ここで切るべき手札はもっとも威力のある武技であるべきだ。

 

 黙礼(モクレイ)死鵠絶鳴(シコクゼツメイ)

 短剣を用いた高威力の武技。これこそが、涼の手持ちの武技の中でもっとも攻撃力の高いカード。

 

 使うならこれ――そう思ったが、涼は少し考えを改める。

 

 単純な攻撃力で見る最強の一撃よりも、諸々の補正がついた上で最高火力をたたき出せる技の方が恐らく威力が出るのではないだろうか?

 

 何より気づかれていない上に背後を取っているという絶好の機会だ。

 

 ならば使うべきは、その技自身がバックスタブや絶命一如と似たよう特性を保有している技にするべきだろう。

 

 それなら手札にある。

 そしてそれはバックスタブと絶命一如の効果と重複する。

 

(よし――やろう……ッ!)

 

 今、この時この瞬間――ッ!

 

 確信を持って、涼はその技の準備をすることにした。

 

 ドレイクが湊と白凪に意識を向けて、涼から完全に意識を外し――その背中を晒しているこの一時(ひととき)ッ!

 

 この技が通用しないなら逃げるしかないという確信を持って。

 しかしこの技が、もっとも威力を発揮する好機を逃すワケにはいかないッ!!

 

 ――涼は必殺の為の構えをしながら、足を踏み出す。

 

 これから繰り出す武技は、バックスタブと絶命一如と同じ補正効果を持つだけではない。この技は、条件さえ整っていればリーチも伸びる。殺気を隠しながらも、技の持つ殺意は増していく。

 

 気配を消し、音を消し、息を殺し、意志を殺し、ただ望む結果の為に一歩踏みださん。

 

 ダガー本来のリーチを越えた不可視の刃がスキルによって展開する。

 

 今から放つ技は、十全に準備を行い、十全に状況を整え、十全にこの技が振える時、文字通り必殺(暗殺)に至る一撃。

 

「武技:軻断(カダン)荊菖蒲(イバラアヤメ)

 

 背後より飛びかかり、その技が終わるまで相手に気づかれることはなく――

 

 斬。

 

 音もなく、気配もなく、だがその動きは美しき舞踊のように。

 

 覚悟の眼光と共に静かに振り抜かれた大振りのダガー。その白刃は、不可視の刃を伴い左から右へと一閃される。

 

 この技は――いわゆる、妖怪1足りないを許さない。

 

 完全に条件を満たした状態で放たれていたのであれば、かろうじて生き残ろうとも――ゲームで例えるならば、この技でダメージを受けたあと倒れることなくHP一桁……いや1%程度が残っていた場合――直後に耐性無視の即死効果が発動する。

 

 故に――

 

「グ……ワ……?」

 

 白刃と不可視の刃が、ドレイクの首をすり抜けていく。

 音もなく、気配もなく、首を裂かれた感触すらも、透明にして。

 

 それでもドレイクは自分の首への違和感に気づく。

 

 斬撃を放った涼が、音もなく着地する。その刀身を軽く振るって、ついた血を振り払う。

 

 ペシャリと小さな音がして、ダガーから振り払われた血が地面に荒れた三日月を描いた。

 

 そこでようやく、ドレイクは違和感の正体に気がついたらしい。

 

「グヮゥ……」

 

 自分の敵が三人だったのを思い出したのだろう。

 三人目――つまりは涼の姿を確認するべく、首を動かそうとする。

 

 ちょうどその時、涼は振るったダガーを鞘に戻そうとしていた。

 壮絶な覚悟を秘めた双眸をドレイクに向けながら、涼はダガーを鞘へと戻す。

 納刀されるダガーと鞘がぶつかりあって、チンっと小さく涼やかな音が響き――

 

「……ヮ……ゥ……」

 

 続けて、ゴトリ――と、音を立ててドレイクの首が地面に落ちた。

 遅れて、グラリ――と、傾いたドレイクの身体が地面に倒れ伏す。

 

 ドレイクは、そのまま動き出すことはなく、完全に動きを止めた。

 

 現場もコメントも、その瞬間だけは痛いほどの沈黙が流れ――

 

「涼ちゃん!!」

「涼さん!!」

 

:うおおおおおおおおおお

:うわああああああ

:すげぇぇぇぇぇぇぇ!!!

:おおおおおおお

:マジか!!!!!

:88888888888888888888

:やりやがった!!!

:かっちゃったよ!!!!

:ネームド討伐オメー!!!!!!

:88888888888

 

 ――直後に、爆発するように声が上がった。

 

 

 この瞬間の同接数は、ふだんの涼ちゃんねるの十倍は軽く越えていた。

 

 





【Skill Talk】

軻断(カダン)荊菖蒲(イバラアヤメ)
 複数の条件を満たした場合に習得できる、上級を越えたランク「秘技」に分類される武技。
 短剣を用いた一撃を繰り出す。一撃の繰り出し方に型はない。
「相手が気づいていない」「相手の背後を取っている」「相手のHPが減っている」「相手の状態が正常ではない」などの、相手側に不利な条件がついていればついているほど、性能があがる。
 また妖怪1足りないを許さない技である。ゲームで例えるならHPが1%未満での生存や、いわゆる「ふんばる(ガッツ)」などによるギリギリ生存スキルの一部の発動しようとも、復活後の残りHPが効果範囲内なのであれば、直後に問答無用で耐性無視の即死を付与する。即死効果発生時は、ガッツ等の発動を無効化する。
 なお、この奇跡的な生存を許さない効果も、相手の状態に応じて残りHPの有効範囲が変わる。相手の状態が悪いほど許さない範囲の残りHP量が増える。
 また性能向上の条件を最低一つでも満たしていないと、追加の即死付与は発生しない為、使用時は相手の状況を見極めることが重要である。
 現実としての効果は、この技が正しくヒットしてた場合、かろうじて生きている状態の相手を数秒の時間差で殺すという形になる。
 ライバルなどの戦いで、うっかりこの技でトドメを刺してしまうと、物語的に盛り上がる「おまえと戦えて良かった」的なライバルとの劇的なシーンが途中で中断されライバルが生き絶える困った技。


黙礼(モクレイ)死鵠絶鳴(シコクゼツメイ)
 短剣の秘技の一つ。黒い光を刃に纏わせ攻撃する。
 上記の軻断が無色透明の一撃ならば、こちらは無光漆黒の一撃。 
 やっているコトは超強力で決められた型のないハイスラッシュ。補正値がバカみたいに高いことを除けば、大差ない。
 また、剣や槍でも似たような奥義はある為、わざわざ短剣で覚える必要ないのでは?とも言われている。
 威力の補正値だけ見るなら、剣や槍の方が上なのでなおさらである。
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