スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と 悪ノリ と ダン材メシ

 

 二人が作業を始めてすぐに、ディアがステーキとは別の一品を作っていた。

 

 それを皿に盛るディアを、涼は人参を切りながら追っていく。

 

「メインの完成まで少し時間がかかるので、先にこれを」

「え? 料理手伝ってるとそれ食べれないんじゃ……」

 

 ディアがテーブルへと料理を一皿置くと、それを見ていた涼がはっきりと涙目になってしまう。

 

「わ、わ、わ! 大丈夫、大丈夫だから! まだフライパンに残ってるから! お手伝い傍らでつまんでいいからね? ね?」

「……うん!」

 

:しょぼんからパァかわいい

:明らかに小さい子泣かしたお姉さんムーブ

:涼ちんも涼ちんで完全に幼児のそれだったぞw

:ところでディアっていくつ?

:ところで涼っていくつ?

:涼くんなら16だよ

:ディアちゃんは自称16だな

:wwww

:同い年かよww

:タメとか草wwww

:同い年という情報を得た今改めてさっきのシーンみたいww

:わかる(笑

:誰かテロップ付き切り抜きよろww

 

「あ。モカPがカンペ出してる! 涼ちゃんあやしてて見てなかった!」

 

:あやしててww

:あやすっていうなwww

:そして涼は輝いてるww

:めっちゃ美味しいんだろうなw

:フライパン直喰いって楽しいよな

 

「料理の解説してなかったのでします!」

「あ、しなくて大丈夫ですよ」

「部長おおおッ!?」

 

:部長キャンセルww

:いや視聴者的に聞きたいが!?

 

「おおっと皆さん誤解しないでください。

 どういう料理かはテーブル席の私とシロナさんがするので、ディアさんと涼くんは料理しててくださいという意味です」

「一応、主役はあちらの二人ですけど?」

 

 シロナが訊ねると、部長はどこかドヤ顔気味に告げる。

 

「私のコトは出たがり部長と呼んで欲しい」

「どうしたんですか急に?」

「うちの子たちの配信見ながらね、ずっと思ってたんだよ」

「はぁ……」

「私も配信に出たい」

 

:部長さんwww

:素直かww

:正気なのは良いと思う

:でたがりwww

 

「ここでウケたら他の子の配信にも時々乱入しようかなって」

 

:やる気満々だぞこの部長!?

:ここぞとばかりにw

:シロナさんのあの顔よw

:完全に扱いに困ってるww

 

「さて、この鴨肉の炒め物なんだけど」

 

:周囲の困惑を無視して解説はじめたぞww

:ディアちゃんと涼を映せよwww

:配信ナメてたなヘタなバラエティより楽しいぞw

:また変な誤解が生まれた気がする!

 

「ドレイクの肉と、ネギを炒めたモノで、焼き鳥風の味付けがされているよ」

 

:ふつうに美味しそうじゃん

:そりゃあディアちゃん料理上手だしな

:解説してるのは突発ゲストの部長だけどな

:カメラもなんで素直に部長映してるの?

:そりゃあ部長だしなぁ……

:上司に逆らうのは怖いって

 

「鴨の味が焼き鳥のタレに負けてない。それどころかこのネギも負けてない。というか鴨に負けないくらいネギが美味しい。二つを一緒に食べるとこれらはまるで最初からセットで口にする為に生まれたんじゃないかってくらい美味しい」

 

:美味しそうに食べるなぁ

:まさかのネギ絶賛

:え?ドレイクの味に負けないネギって何?

:それ本当に俺らが知ってるネギか?

 

「恐らくはこのネギもダン材……ダンジョン食材だと思うのだけど……ネギに関しては本人に聞いてみようか。ディアさん?」

 

:ネギ……ネギか。まさかな

:ダン材なら納得…………できないな

:どんなネギなんだろう?

 

「え? はい? 呼びました? 部長」

「呼んだ呼んだ。話聞いてた?」

「すみません料理に集中してました」

「……涼くんは?」

「すみません炒め物に集中してました」

 

:ディアちゃんww

:いや草

:涼ちんに至っては料理の手が止まってるww

:涼くんちゃんとお手伝いして!(笑

 

「いやこのネギ何かなって。どこのなんて言うネギ?」

 

:部長動じてない

:ツッコミも入れずに進めた

:つよいw

 

「それボクも気になってた。すごい美味しいネギだけど……これ、リーキだよね?」

 

:リーキ?

:海外の太いネギのコトな

:何気に涼ちんも詳しい?

:いやまてリーキ……もしかして

 

「涼ちゃん正解。それ、ドレイクが魔技(ブレス)で生やしてたネギ」

 

:え

:ま?

:はい?

:やっぱりw

 

「採取してたんですね」

「そうなの。ドレイク倒しても消えなかったんでせっかくだからって」

 

:まってまってまって

:涼ちゃんもふつうに話すすめないで

:明らかに二人以外固まってるじゃん

:モカP! モカP!!!!

:っていうかブレスで作ったネギ食えるの???

:《モカP》焼き鳥風炒めウマイ!マジでこのリーキ旨いよ

:いやそうじゃなくて

:自慢のカンペでこの空気どうにかしてくださいよー!

:《モカP》自分にどうしろっていうんですか……(遠い目

:完全に諦めてるッ!?

 

「みんなどうしてそんな大袈裟なリアクションしてるんですか?」

「ほんとだよねー」

 

 不思議そうに小首を傾げる涼に、ディアも同意するようにうなずく。

 その様子に、コメント欄は――ダメだこいつらはやくなんとかしないと……という空気に満ちていった。

 

:そうだまだシロナさんがいる!

:確かに!カメラさんシロナさん映して!

 

 コメント欄のノリに乗っかるようにカメラがシロナを映しだし――

 

:我関せずの顔で喰ってる!

:ダメだツッコミがみんな諦めてる

:美味しさにとろけてる顔かわいい

:史上空前のぐだぐだの気配がしてきた!

 

 ――しかし、シロナの様子にコメント欄が楽しそうに絶望するのだった。

 

 ・

 ・

 ・

 

 そんな感じで終始ぐだぐだとしながらも、ディアと涼の料理は進んでいく。

 

:しかし鴨肉カレーとはな

:肉も脂もがっつり入れてたな

:レイク・コンソメまで使ってたぞ

:マズいワケがないだろ

:あのリーキまで一緒にいれて……

 

「さて、実は敢えてカメラには映さないでもらっていた料理がもう一品あります」

 

:マジで

:カレー作りながら仕込んでたのか

 

「涼ちゃん、準備は?」

「もちろん出来てる。この料理をミスるワケにはいかない」

 

 淡々とした表情のまま、涼はフンスと鼻を鳴らす。

 

:涼ちんがやる気だ

:そういえば揚げ物がないもんな

:つまりそれこそが揚げ料理

 

「カメラさん、こっち映して~!」

 

 ディアの手招きにカメラが寄っていき、涼の手元を映し出す。

 

:それはダメだよ

:反則がすぎる

:正気か

 

 そして、コメント欄の阿鼻叫喚を横目に、涼はバッター液にドレイクから切り出した厚さ1cmほどの肉をくぐらせ、パン粉をまぶし、油の海の中へと落としていく。

 

:揚がる音がやばい

:なんて暴力的なビジュアルと音なんだ

 

 完璧なキツネ色のタイミングでそれを油の海から引き上げ、網を敷いたバットに移していく。

 

:鴨カツって初めてみる

:美味しそうすぎる

 

「この油を切る為に寝かせておく時間……至高ですよね」

 

:鶏キチの顔してる

:涼くんうれしそう

:幸せそうにカモを揚げてるなぁw

 

 そして、涼は油がある程度切れたカツをまな板の上に移し、包丁を握ると、カメラ目線で告げる。

 

「いきます」

 

:やめて

:今の顔カッコよ

:カツを切る為のキメ顔

 

 ザクリ。

 涼が鴨カツに包丁を入れた時、テンションの上がる快音が響いた。

 ザクリ。ザクリ。ザクリ。

 

:音だけ切り取ったASMRが欲しいくらいのよい音

:揚がり方が完璧だわこれ

 

「涼ちゃんはい!」

 

 そして横から、ほかほかご飯に鴨カレーの掛かったお皿が差し出される。

 

:いやいやいやいや

:本気?本気でそれやるの?

:配信ってこんな腹減るコンテンツなんだな

:さらにあらぬ誤解が増えた気がする!

 

「乗せます」

 

 六等分したカツ。

 涼はその下に包丁を滑りこませ、軽く手で押さえながら持ち上げる。

 

 そして包丁の上を滑らせるようにカツを丁寧に持って行く。

 

 ご飯とカレーの境界線。

 そこに、六切れのド迫力鴨カツが乗せられた。

 

 ネームドネギ魔道と、ネギ魔道のリーキ入り、鴨カツカレー。

 その大迫力の一品をカメラがしっかりと映し出す。

 

:あああああああ

:いいないいな

:これは食べたみがすごい

:ディアーズキッチンで一番うまそうまである

:見てるだけとかキツい

 

「完成しました!」

「完成でーす!」

 

 いえーい――と涼とディアはハイタッチ。

 

「美味しく完成わーい」

「楽しく完成わーい」

 

:幼児のようにはしゃいでるw

:かわいいな二人とも

:さっきのお姉さんムーブはどこいったw

 

「ちなみにスタッフ用にこういうのも用意しました」

 

 一口のご飯にカレーが掛かり、一口サイズに切られたカツの添えられた小鉢がカメラに映る。

 同時に、スタジオの中のどよめく声を、マイクが拾っていた。

 

:今すぐスタジオにいきたい

:ずるいぞスタッフ!

:ここまで現場が羨ましいと思ったのはじめてだ

:《剣名(つるぎな)ツボミ》もうダメ我慢できな~い!!!!

:《灯籠(とうろう)カママ》ディアちゃんギルティ!

:《羽粉(はねこ)リン》部長もスタッフもギルティ!

:《剣名ツボミ》ワタシたちの分はないの~~??

 

「ついにみんながコメント欄に集まってきたかー……」

 

 コメント欄を見て、ディアが思わず苦笑する。

 全員ではないものの、この配信を見ていたらしいディアの同僚たちがコメントを書き込み出した。

 

:ほかのルベライト勢が我慢できずにやってきたw

:ワブでずっと荒ぶってたもんなぁw

:これを見せられたらねぇ(笑

:《モカP》ではルベライトのみなさんへ魔法の暗号をば

:《モカP》ここは社内でいうところの通称第三です

:《灯籠カママ》モカP有能!

:《羽粉リン》モカP最高!

:《剣名ツボミ》モカPにでっかいラブ!

:あっという間に退出していった

:いやでもわかる

:いいなあ……

:大丈夫なのモカP?

:《モカP》無許可でこんなコトしませんって

:それもそうか

 

 実際のところ、モカPがカツカレーを提案した時点で、部長とシロナもこの状況は想定していた。

 

 なので、カメラの外で想定をした上での対応をちゃんと考えておいたのだ。

 

 コラボ配信を見ているルベライトの子たちがワブなどのSNSで荒ぶってくれれば、この配信の同接数が増えるかもしれない――という下心が、モカPにあったかどうかと言われれば間違いなくあった。

 

 その辺り、部長に読まれている気もするが、何も言ってこなかったので、モカPは気にしないことにする。

 

 様々な複雑な空気が満ち始めた中で、極めて純真で、極めて素朴な質問をする者がいた。

 

「ところでこれ、いつ食べられるの? 冷める前に食べられる?」

 

 それを口にした涼は――誰が見ても、しばらく食べられないと口にしたら間違いなく泣かれるだろうな……と思うほどに、この世の希望の全てを集めたようなキラキラとした表情をしていた。

 





【Idle Talk】
 ルベライト所属の子たちの芸名。
 メタ的な名前の由来としては――

 大角ディア――大鹿
 灯籠カママ――カマキリ
 羽粉リン――蝶々の鱗粉
 剣名ツボミ――き剣名(キケンな)

 全員、ある迷宮(ダンジョン)由来の名前です。
 同じモチーフをネタとしているのは、涼と香の通っている瀬海樹(セミツキ)学園の名前もだったりします。
 自分の中でダンジョンといったらコレなので大リスペクト。

 ちなみに、涼は、刃物と兎がモチーフなので、もっと原点寄りなアレが名前の元ネタです。

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