スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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涼 と 収穫 と 帰り道

 

:倒した瞬間は阿鼻叫喚だったけどな

:何体も見てると馴れるもんだな

:Japanese assassin!! yheeeee!!!!!

:いや馴れないが?

:なれろよ

:ninja! ninja!! ninja!!!

:涼ちゃんの鮮やかな手並みがすごい

:気づかれず近寄って殺して収納してという機械のよう

 

 コメント欄がネギ魔導を倒す光景に馴れてきた頃――

 

「……重要なコトに気づいてしまった」

 

 ――涼が、突然手を止めてそんなことを呟いた。

 

:どうした涼ちん

:なんだなんだ?

 

「ボクのスタイルだと、ネギ魔導の魔技(ブレス)であるネギグレイブを使わせる機会がない……」

 

:あー

:確かに

 

「これだとリーキを採取できない……」

 

:でも一体でも使わせたら周囲に気づかれるよな

:暗殺スタイルだからこその狩り方してるもんなぁ

 

 とりあえず困った顔をした涼は、芝生地帯から畑エリア近くの岩陰へと移動してコメント欄を開いた。

 

「コメント欄を開いたので、チキンからのアイデア希望」

 

:無茶言わんといてw

:真面目な話するとスタイル崩さずにリーキ回収は無理

:リーキ諦めて畑の野菜を回収してまわったら?

:聞かれてもなぁ笑

:探索者ニキたちなにかある?

:難問だぞこれ

 

「それだ」

 

 流れていくコメントの中に、何か閃くものを見つけたのか、涼はドローンを指さした。

 

:指さされてもわからん笑

:どのコメントに反応したの??ww

 

「ネギグレイブのリーキは諦めて、畑の野菜型モンスターなんかを退治&採取していきたいと思います」

 

:まぁそうなるか

:それだって結構リスキーなエリアではあるんだけど

:スニーキングスキル発動させながらの採取……これ可能性の塊では?

:↑むしろ今まで探索者はしてなかったの?

:↑発想がなかったが正しいかも

:まぁゲームと違ってバフやデバフよりパワーを鍛えて殴るが優先されるような人種が多いしな探索者って

:そもそもゲームだろうとバフやデバフだけでなくスキルを本来の用途以外で利用するようなコトをするのやりこみ勢くらいでしょ

:レベルを上げて火力で突破する人ばっかりだよねゲームでも

 

「世の中の人たちの多くって脳筋なんです?」

 

 素朴な疑問を口にする涼に、視聴者は一斉に苦笑する。

 

:レベルを上げてパワーで突破する 世の中で一番単純でわかりやすいスタイルだからね

 

「そういうモノですか」

 

 主流(パワー)――それを武器に、それを鍛えて、その結果突破が出来るのであれば、それが一番容易いだろう。

 だけど、容易いけれど簡単ではないと知っている者は、パワー以外に目を向けて鍛えていく。

 

:あるいはそれ以外の手段が分からないからパワーに頼るしかない人もいるかな

:腕力ないのにそれ以外の手段が知らないから腕力で乗り切ろうとして壊れる人っているよなー

 

「それ以外の手段を知らない……ですか?」

 

:そそ パワーで解決以外の解決方法に出会ってこなかったりとかね

:精神あるいは知識的な視野の広さって大事よ

 

「コメント欄のみなさんが何やら難しいコトを言い出しました」

 

:ようするにパワー以外の手段を考えたり使ったりするキッカケに遭遇できてない人は案外多いって話よ

 

「何となく分かった気がしました。

 超人化にも適正や偏りがありますからね。ボクの場合、腕力なんかのパワーに関するステータスの伸びが悪いからこそ、今のスタイルを選んだようなものですし」

 

 元々、ゲームなどでも絡め手を考えるのは嫌いではなかったことも大きいだろう。

 

 そういう経験と、モカPパパからのアドバイスがなければ、今のスタイルを思いついたりはしなかったかもしれない。

 

「さて、なんだか雑談しちゃいましたが、一度コメント欄を閉じますね。

 畑で野菜とモンスターを採取しつつ、帰ろうと思います」

 

:松エリアでキノコの希少種いるかもでしょ?気をつけて

:帰り道 松エリアは注意な

 

 コメント欄を閉じる前に目に付いたコメント、涼は小さくうなずいた。

 

「あ、注意ありがとうございます。ちょっと忘れてました」

 

 そうしてコメント欄を閉じた涼は、スニークスキルを使用して気配を消しつつ、畑に踏み込んでいった。

 

 気配が希薄になっている涼は、畑からネギのような頭をのぞかせているモンスターの、その頭部分を握ると、勢いよく引き抜く。

 

「!?!?!?!」

 

 突然、地面から引き抜かれて混乱するモンスター。

 頭はネギのようだが、体は丸っこくて小さな手足の生えた、まさに玉葱ボディなモンスターだ。

 

 頭のネギ部分を捕まれてジタバタしているのを涼は即座に切った。

 

:あわれ鬼オーン

:鬼オーンって名前なのかあれ

:大きな玉葱に愛嬌ある顔がついてるだけのモンスターだなぁ

:《翻鶏》ちなみに英名はogrenic onion

:無農薬なの?

:オーガニックオニオン…

:《翻鶏》よく見ろ本来はorgeの部分が、鬼を意味するogreになってる

:日英どっちもダジャレかよ!!

:わりとそういうモンスター少なくないぞ

:ogrenic onion is popular in my contry that it's turuned into a chte doll!!lol

:《翻鶏》海外だと人気で人形にもなってるってさ

:マジかよ海外では人気なのかよ鬼オーン

:人形化されたりしてるんだ

:その人気のタマネギ魔神を引っこ抜いて殺してる人気配信者がこちらです

 

「鬼オーン自体はそこまで強くないんですけど、こいつらも獲物を見かけると強襲からの仲間呼びで集団リンチしてくるんですよね。効果は低いですけど、目眩ましや幻術系の魔技(ブレス)も使ってくるから危険度は高いです」

 

:厄介なはずなのに作業のように狩ってる涼ちん

:狩りっていうかただの収穫作業なんだよなぁ

:引っこ抜いてパニクってる間に倒す

:冷静になって仲間呼びされる前に倒すのは利には適ってるんだけど

:絵面がさぁ……w

 

「というかこの畑自体が、戦闘力は大したコトないんだけど、擬態と奇襲と集団リンチが得意なモンスターが集まっているともいえますね」

 

:そこだけ聞くとやべぇ畑だな

:実際やべぇ畑でやべぇタマネギの収穫作業してるんだけどな

:そんなやべぇ畑でトレーニング中のお化け美脚さん

:うっかり倒すと集団リンチが得意な野菜が集まってくるのやべぇな

:集団リンチが得意な野菜とかいうパワーワード

 

「タマネギ以外も収穫していきましょうか」

 

:収穫って言ったな?

:コメ欄見てないはずなのに口にしたってことは本人もその感覚なのかw

 

 そうして、涼は畑で野菜型モンスターを満足いくまで収穫して、梅林エリアへと戻っていく。

 

 梅林エリアに戻ってきた涼は、ドローンに向けて告げる。

 

「……タケノコも欲しいですよね?」

 

:にげてー!猛将ダケにげてー!

:竹の化生(けしょう)の分際で梅林でドヤ顔擬態してるのが悪い

 

 梅林の中でドヤ顔擬態している猛将ダケに対して、スニークスキル全開で背後から近づいて、一閃。

 黒いモヤになってダンジョンに吸収される前に、その足下から生えてるタケノコを収穫して、SAIへと収めていく。

 

:完全に作業

:タケノコ狩りよー!

:立派なタケノコだなぁ。。。(遠い目

 

「バイオージュはどうしようかな……あいつらの擬態を見抜くのって難しい……あ。アレはバイオージュだ」

 

 梅は諦めようかな――と思った涼だったが、たまたま動いていたバイオージュが目に止まった。

 しかも、そのバイオージュは涼に気づかないまま擬態モードに入る。

 

「……よし。あの一匹だけは狩ろう」

 

:涼ちんに動いた姿を見られたのは運の尽きだなぁ……

:アーメンソーメンウメラーメン

:ウメラーメン……とは?

 

 コメント欄がふざけている間に、涼はササっと動くと、擬態しているバイオージュの背後に回って、一閃。

 

 バイオージュがくたりと倒れて伏せた。

 

「よし、収穫します」

 

 手早く収穫しないと黒いモヤとなってダンジョンに吸収されるので、実の成っている枝を、枝ごと切り落として回収していく。

 

「他のバイオージュは擬態モードと通常の梅の木との見分けが難しいので、無視して抜けます」

 

:手際が良すぎてな

:擬態系モンスターと涼ちゃんの相性がすごいなw

:擬態見抜いたら暗殺確定とか涼ちん怖いわw

 

「竹林もとっとと抜けます。タケノコはいっぱい収穫したので」

 

:完全に収穫って言ってる笑

:採取ですらないんだなぁw

 

 宣言通り、涼はさっさと竹林を抜けて、松林まで戻ってきた。

 

「エリンギの収穫もしたいところですが……」

 

 松林に踏み込み、気配を消しながらきょろきょろと周囲を見回す。

 コメント欄も、最初に松林に来たときのことを思い出している。

 

:希少種っぽい影があったらしいもんな

:うっかり遭遇すると厄介かもな

 

 そんな中で、涼の動きがピタっと止まって、小さく呟く。

 

「…………いる」

 

:は?

:え?

:マジで?

 

 涼はすぐに周囲を見回して身を潜ませられそうな大きい松を見つけると、そちらへと移動した。

 

「モカP、あっちの方にカメラ向けて」

 

:なんぞあれ?

:確かにエリギンフェンサーっぽい・・・けど

:希少種というより近似種の別モノっぽいな

:なんだあれ?マツタケか?

 

 そこにいるのはエリギンフェンサーによく似たキノコ型。

 コメントにある通りマツタケを思わせるシルエットのボディを持ち、手には長巻(ながまき)――持ち手が長い、刀と薙刀の合いの子みたいな武器――を携えた……見慣れないモンスターがそこにいた。

 





【Idle Talk】
 涼のノリノリ収穫祭にディアちゃん大喜びしながら見ている。
 お裾分けしてもらえること前提にメニューまで考えてたりする。


 スタブ系の気づかれていないなら威力アップなバフが通しやすい相手というのは、涼にとってもやりやすい相手。
 擬態するタイプや、待ちかまえて奇襲するタイプのモンスターは、自分たちが奇襲されると弱いコトが多いので、それらを見抜けさえすれば涼にとっては容易い相手となる。
 とはいえ、野菜たちはともかく、ネギ魔導やトレント系は、真っ向勝負となると、涼も苦戦は免れない相手たちなので、奇襲による一撃必殺以外での攻撃はあまりしたくない。
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