スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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釜瀬 と 欲 と 目的と

 

:まさに瞬殺

:三連居合いすさまじいな

:1匹だと思ってたブラックロックが3匹もいたとは

:その3匹とも戦闘開始十秒くらいで血抜きされるハメになるとは思うまいて

:抜いて→斬って→納めてを三連回繰り返したのかあの速度で。。。

:It's so fast I can't understad what's going on.....

:What did Mr.Narukane do?

:涼ちんがうれしそうに首なしブラックロック吊してるし

:ダンジョンのエントランスを抜けて最初に見る光景がこれなの若干トラウマ生産機な気がするけど

:血も肉も骨も黒いなブラックロック

:《翻鶏》Three quick draws with sword

:トンネルを抜けるとそこは桜が満開な綺麗な森で目の前には首なし巨大カラスが吊されていました

:シチュエーションが謎すぎる

:Amaizing Smurai Quick Draw

 

 コメント欄が盛り上がっている通り、襲ってきたブラックロックは三匹いた。同時に襲ってきたのを守が同時に瞬殺したが。

 

 釜瀬がその技に驚いている横で、涼は嬉々としてブラックロックを桜の木に吊す準備をしたりなんかして。

 地面に長時間接していると黒いモヤとなって消えてしまうが、こうやって処理や解体等を行う時はその消滅までの時間が長くなるから不思議である。

 

 もっとも、ダンジョン内ではその程度の不思議など当たり前すぎてだれも気にしていないのだが。

 

 守も涼の手伝いをしているので、釜瀬はとりあえずこの場を納められるのは自分しかいないと諦めまじりに嘆息した。

 

「えーっと、そっちの四人組」

「は、はい!」

 

 声をかけると四人は一斉に背筋を伸ばす。

 なんだか怖い教師にでもなったような気分で妙に心地が悪いが、そうも言ってられないので釜瀬は続ける。

 

「見ての通り、あの二人の様子から、オレたちは帰還に時間がかかりそうだ。なんで、先にギルドへ行って報告しておいてくれないか。

 恐らくは変異イレギュラーであるブロシアの出現。さらにイレギュラーのブラックロック三体の出現。どちらも討伐は既にされてはいるけど、発生していたってコトをさ」

「わかりました!」

「エントランスに香って奴が待機してたなら、そいつにも終わったと一声掛けておいてくれ」

「はい!」

「助けてくれてありがとうございました!」

「ベテランさんってすごいんですね!」

「自分たちもがんばります!」

 

 四人は目をキラキラさせながらお辞儀すると、鳥居連なるエントランスへの階段を上って行った。

 その後ろ姿を見ながら、憧れられるなんてガラじゃないと――ボヤきつつ、自分の連れである二人に向き直る。

 

「赤川、刈屋」

「は、はい!」

 

 呼びかけた時の二人の反応も四人と同じで、なぜか背筋をビシっと伸ばした。

 

「まぁ、なんだ……。

 辛辣なコトは言ったが、ダンジョン探索はゲームじゃない。ゲームのようにキチっと数値や方向性が決まっているワケでもない。

 それらは全部、人間がそう理屈つけただけのモンばかりだ。気にしすぎるな。例外はいくらでもある。

 遅咲きの実力者なんてのもいる界隈だからな……これまでの自分たちの行いを愚かだと思えたなら、ここからちゃんとやればいいさ。

 人より覚えられるスキルの数が少なくとも、その少ないスキルをどう使いこなすかで、出来ることも変わるだろうしな」

 

 二人は安堵したような、助かったような顔をする。

 だが、このまま緩ませてしまうのもよろしくないので、釜瀬は付け加えるように告げた。

 

「ダンジョン探索はゲームじゃないと言ったが、ゲームじゃないからこそ命がけだってのも忘れるなよ。

 ダンジョンでのゲームオーバーってのは死ぬのと同じだ。コンティニューもリセットもない。

 ダンジョンに潜るってコトは、自分の命を常にベットしてると思えよ」

「……さすがにイレギュラーを見ると分かります……」

「イレギュラーでなくとも自分らより強いモンスターは怖いというのを実感したんで……」

「ま、そこを理解できたなら上出来だ。それでも探索者やりたいって言うなら、キチっと勉強と鍛錬をするこった」

 

 これ以上の説教は面倒くさいという空気を出して、釜瀬は手をヒラヒラさせる。

 

「あの……ナマ言って言うコト聞かずにすみませんしたっ!」

「すみませんっしたッ!」

 

 体育会系の頭の下げ方だなぁ――などと内心で苦笑しつつ、釜瀬は自分の下顎を撫でた。

 

 素直に受け止めてもいいのだが、それでも一言添えておくべきだろう。

 

「オレは、人が死ぬ間際の絶望顔を拝むのは嫌いじゃないんだが、それは別に誰でもいいってワケでもない」

 

 ニンマリとどこか作り物のようなわざとらしい悪党スマイルを釜瀬は浮かべる。

 

「え?」

「は?」

「そうならずに済んだ奴に死ねというほど悪党のつもりもないんだよなぁ……」

 

 そこまで言ってから、釜瀬は表情を戻して小さく笑った。

 

「死ななくて良かったなって話だよ。分かったらお前らも帰りな」

「でも……」

「いいんだよ。気にすんな。涼と鳴鐘さんがしばらくココいるだろうからな。

 あの血抜きと毛抜きが終わるまで、たぶん後始末的な話し合いとかは始まらないだろうし……」

 

 遠い目をしながら涼と守を見る釜瀬。

 その様子に、赤川と刈屋は顔を見合わせてから、改めて釜瀬に頭を下げる。

 

「真に頭を下げるべきはオレじゃないだろ。

 今はテンションあがってるせいで話を聞いてくれるかわからんが、涼にも一声掛けて、視聴者たちにも謝罪しとけよ」

「はい」

「わかりました」

 

 そうして涼のところへ向かう二人の背中を見ながら釜瀬はまた嘆息した。

 

「正直ガラじゃねぇんだよなぁ……なんて、こんなコト繰り返しながら言い続けてもう何年経ったコトやら」

 

 小さく独りごちる言葉には、複雑な感情が入り交じる。

 

「あいつらの死にゆく絶望顔が見たかったってのも、あながち嘘でもないあたり、我ながらほんと壊れてるよなぁ」

 

 なんならそれは、涼や守の顔でも良かった。

 一方で、仲良くなった相手や世話をしている初心者には死んだり大変な思いはして欲しくないという感情も本物だ。

 

 自分の欲望は満たされない。満たしちゃいけない。釜瀬は常に自分にそう言い聞かせている。

 

「まぁ前にやらかしたコトの贖罪だと思えば、付き合ってもいけるか」

 

 目の前で自分を助けにきたベテランが死んだ。

 目の前で自分のパーティのリーダーが死んだ。

 目の前で自分を慕う幼なじみで弟分が死んだ。

 それ以外にも釜瀬の言うことを聞かずに目の前で死んでいった新人たちが多くいる。

 

 彼らの死ぬ直前の絶望した顔を思い出す時、悲しみや申し訳なさとともに性欲に近い強い興奮を覚えるのだと自覚したのはいつからだろうか。

 

「……今日の仕事の独り反省会するにはまだ早いな」

 

 思考の方向性がよろしくない方向に行っているのに気がついて、釜瀬は頭を横に振る。

 

「釜瀬さん、涼ちゃん、鳴鐘さん! おれたち先に失礼します!」

 

 二人がこちらに声を掛け、軽く会釈する。

 それに軽く手を挙げて応えつつ、釜瀬は涼たちの元へと向かう。

 

「お二人さん。手伝うコトはあるかー?」

「もうだいたい終わりました!」

「……いつの間にブロシアまで解体したんだ?」

「すごかったですよ。鳴鐘さんがシュパパパパパっと」

「ま、皮膚の強度は戦って分かったからな。動かない相手なら楽勝楽勝」

 

:涼ちゃんの説明の仕方が完全に幼児のそれw

:ちょいちょい幼児化するよな笑

 

 涼の近くを飛んでいるドローンの上部にコメントが表示されている。

 解体しながら、視聴者と雑談をしていたのだろう。

 

「それより釜瀬さん。すっかり人の対応任せちまって悪かったな」

「いいよ。適材適所だ。人付き合いは嫌いじゃないからね」

 

:そういえば助けた四人もいないな

:イキリ組は挨拶しにきたけど

:反省はしてるっぽいし良かったんじゃないの?

 

「さて、血が抜けるまでは暇なんだよな。

 配信用の雑談を続ける感じでいいか?」

 

 守に問われた涼は僅かに考え――

 

「それも良いんですけど、配信したままで問題ないようであれば一つ確認したいコトがありまして」

 

:あれ?真面目な顔?

:シリアスな話?

 

「釜瀬さん。一つ伺っても?」

「オレが四国から出てきた理由かい?」

「はい」

 

:そういえば四国の保護者って呼ばれてるんだっけ?

:確かに東京に来てる理由が謎だな

 

「答えるよ。むしろ配信中の方が都合がいい」

 

:目的があってきてるのか

:新人の世話は目的のついでみたいなやつかな?

 

「オレが四国から出てきた理由。それはとある解散したパーティの残党を追いかけてきたんだ」

 

:残党って言い方

:これはロクなパーティじゃなさそうだな…

 

「四国で悪名高いパーティ。OHR88。通称オーハチ。探索性の違いから連中は解散したんだけどな」

「探索性の違い……って」

「音楽性でなくてもそういうのあるんですね」

 

:バンドかよ!

:まあでも意外と重要かもしれん

 

「オーハチのリーダーや、そのシンパはさ、赤川や刈屋みたいなのが運良いのか悪いのか、反省する機会なくそれなりの実力を付けちゃったタイプなんだよ。あーいや、機会はあったか。どっちにしろ反省はしなかったワケなんだけど」

 

:あー……

:そんなのが四国を出たのか

 

「パーティごと四国を追い出されそうになった時、パーティは反省するのとイキるのとで二分になった。そんでまぁ、イキり側は四国なんて田舎じゃ名をあげるのに不足だって出て行ったワケだ。

 大阪とか東京とかに行くと言ってたんで、まぁ――なんだ……結成初期に面倒見ていたよしみもあって、追いかけてるんだよ。よそに迷惑かけるワケにはいかないし」

 

:お人好しというか面倒見が良いというか

:苦労を自分から背負うタイプか釜瀬氏

 

「そんなワケで涼。あとで、オレのInstaPigeon《インスタピジョン》のIDを紹介してもらえたりしない? 情報欲しくてさ」

 

 InstaPigeon《インスタピジョン》は人気SNSの一つだ。

 個々が好き勝手に(さえず)る匿名性の高いWarbler(ワーブラー)と比べると、サービス全体がキラキラした空気感が強く、実名に近い形でアカウントを運用する形になる為、リアルが充実している人や明るく陽気な人が多いSNSと言われている。

 

 問われて困った涼は、ドローンへと声を掛ける。

 

「モカP?」

 

:《モカP》釜瀬さんOKです すぐにIDでます?

 

「うーん……ちょいと出ないな」

 

 スマホを取り出し操作するも、あまりそういうのが得意でもないのか、やや手間取った様子を見せる。

 

:《モカP》ならあとで教えてもらったIDをうちのWarbler(ワーブラー)アカウントで紹介しますね

:《モカP》涼ちゃんねるはイン鳩のアカウントもってないのでそういう形になっちゃいますが

 

「いや十分。助かるよ。

 有名な人に協力して貰えるのは、情報収集する上ではかなりメリットだからさ」

 

:それはそう

:オーハチ変なところで迷惑行為してないだろうな

 

「――とまぁオレの事情はそんなところ。これでいい?」

「はい。お答え頂きありがとうございました」

 

 ペコリと涼は頭を下げる。

 

「さてそれじゃあ、ここからしばらくは、お二人が問題ないならお二人交えて雑談でも――」

 

 涼がそう告げようとした時だ。

 

「あ~~~~~!! やっぱり三人で片づけちゃってるじゃ~~~~ん!!!」

「もう解体や血抜きも終わってそうね。まぁ手間がないならそれでいいわ」

 

 二人の女性の声が入り口の方から聞こえてくる。

 

「そういや保険を呼んでたな」

 

 その声の主を見ながら、守は申し訳なさそうに困ったように、そう苦笑するのだった。

 

 





【Idle Talk】
 ブラックロック。ナレ死ならぬコメ死という新機軸の被害者となる。
 コメ死とかダンジョン配信モノ以外で使う機会のなさそうなシチュエーションだけど。

 ブラックロックの戦闘描写のない理由ですが、ブロシアのあとにこれと戦っても面白味にかけるしな――くらいのやつです。
 2章の予定文字数的にもそろそろギリギリなので。

 何で出したの?と問われると2章が思ったよりというか想定以下というか鶏肉成分が薄かったので涼ちんを喜ばせたくて……
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