スニーク・チキン・シーカーズ~唐揚げの為にダンジョン配信はじめました。寄り道メインで寝顔に絶景、ダン材ゴハン。攻略するかは鶏肉次第~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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香 と 白凪 と 仲良し と

 

「涼の顔が見たコトないくらい幸せそうに輝いてやがる!?」

 

 ぺかー……という効果音が聞こえてきそうなほど輝いた顔に、香が驚愕の声をあげる。

 幼なじみにして悪友ながら、初めてみる顔といっても過言ではなかった。

 

 だが、そんな悪友の言葉など聞こえていないかのように、涼は感動を口にした。

 

「コカトリスの肉がこんなに美味しかったなんて……!」

「でしょでしょ? こういう発見があるから、ダンジョン産の食材探しがやめられなくってね。配信ネタにもしちゃってるんだ」

 

 どうだ――と可愛く胸を張る湊に、涼はうんうんと何度もうなずく。

 

「そして涼くん、これを見て!」

「そ、それは……ッ!!」

 

 湊がどこからともなく取り出したのは、ジッパー付きビニール袋に入った鶏肉だ。

 袋の中にはタレらしきモノも入っていて、それが一口サイズにカットされた鶏肉にしみこんでいるのがハッキリと分かる。

 

「私の特製醤油ダレをもみ込んだ鶏肉だよ!」

「ふおおおおおお……!」

 

 テンションが高まり変な声を挙げる涼。

 そんな涼のリアクションが楽しいのだろう。湊はいちいち大げさに色んなモノを取り出していく。

 

「そして小麦粉!」

「おおおおおお……!」

 

 そんな二人を一歩離れたところから見ながら、香が苦笑する。

 

「二人して楽しそうだな」

「あなたは混ざらないのですか?」

 

 保護者のように二人の様子を見ていた香に、白凪が話しかけてきた。

 それに、香はいつも女の子をナンパする時の表情で返す。

 

「白凪さんとお喋りしていた方が楽しいので」

「よく回る口ですね」

 

 クールビューティの眉間に皺が増えた。

 どうやらお気に召す反応ではなかったようである。

 

 その様子に、香はすぐに表情を冗談ですよ――と言うようなものに変えてから、軽い調子で返した。

 

「よく言われます」

 

 それから、僅かに間を空けてから、香は訊ねる。

 

「今のうちに聞いておきたいんですが――美食家の人たちは、涼のコトはどう捉えてるんです?」

「…………」

 

 白凪はすぐには答えなかった。

 答えたくない――というよりも、答えあぐねているというところだろうか。

 

 美食家とは、大角ディアの配信リスナーのファンネームだ。

 シャークダイルからの逃亡の時にカメラは回りっぱなしだったので、涼が僅かに映り込んでいるのは確実だ。その為、香はファンの反応を確認したかった。

 

「逃げている時に映ったのと、戦闘シーンの一部ですからね……涼さんの顔などはあまり出てなかったとは思います。

 お礼を言う際は、少しカメラの位置も下げて顔が映らないようにしてましたので」

 

 その上で――と、白凪は答える。

 

「性別がハッキリしていないので、そこまでは荒れてないように思えます」

「なら、今後なにがあっても性別不明の方が都合良さそうですね」

「とはいえ、ディアさんがお礼にごちそうすると口にしたので、少々ザワつきはしました」

「問題には?」

「なるほどではないかと思います」

 

 まずはひと安心――と、香は小さく息を吐く。

 その上の提案として、人差し指を立てた。

 

「湊さんには、涼の呼び方を『くん』ではなく『ちゃん』や『ちん』を使ってもらってややこしくしてしまいましょう」

「それは助かりますが……『さん』ではなくて良いのですか?」

 

 白凪のもっともな問いに、キッチンへと入って湊と一緒に唐揚げを揚げはじめた涼を見、苦笑した。

 

「二度揚げは?」

「もちろんするよー!」

「おおおおお……!」

 

 仲良く料理をしている様子は微笑ましい。

 だからこそ、香や白凪としても、面倒ごとは二人だけで片づけたいところがあるのだ。

 

「二人があんな風に仲良くなっちまいましたからね。

 何らかの形で二人がよく一緒にいるとバレたときの言い訳やカバーストーリーは、最初から用意しておいた方がそちらもラクでしょう?」

「つまり、気安く呼び合うくらいに仲の良い、リアルの友達というコトにしておけ……と?」

「明確に男だとバレてるならマズいでしょうけど、まだ性別はあやふやな状態。

 なら、こっちも面倒なユニコーンに付きまとわれるリスクも軽減できます」

 

 香の言葉に、白凪は「ふむ」と小さく声を出してから、形の良い下唇を左手の親指で撫でる。

 

「こちらに都合が良すぎる話ばかりな気がしますが。見返りはなにをお求めで?」

「あなたとのデート権などはどうですか?」

 

 露骨に顔をしかめられてしまったので、香は大げさに肩を竦めてみせた。

 

「冗談です。真面目な話……現状では見返りは必要ないです」

「現状では――?」

 

 訝しむ白凪に、香は本日何度目ともしれない苦笑を浮かべる。

 

「まだ涼からの了承は取れてないんですけどね。いずれは二人で配信やりたいと考えているんですよ。

 どこかの事務所に所属するのか、単独でやるのか……現時点では未定ですけどね」

「それが見返りと何か関係が?」

「その時に、配信に関する基礎的なノウハウを教えて欲しいんですよ。

 事務所からでも良いですし、あなた個人からでも良いので」

「涼さんからの許可をとってないのにその話を進めてしまっていいんですか?」

 

 もっともな質問に、だけど香は意味深な笑みを浮かべて答える。

 

「大丈夫じゃないですかね。

 どうにも、さっきのコカトリスのステーキのおかげで、涼に火が着いた気がするんで。今日のうちに説得すればいけると思うんですよ」

「……ふむ」

 

 白凪の目には、涼の表情の変化があまりないように見える。

 だが、白凪よりもつきあいの長い香にしか分からないものもあるのだろうと納得する。

 

「できたー!」

「できたー!」

「わーい!」

「わーい!」

 

 二人で両手をあげてハイタッチしているキッチン組。

 なんかもう仲良すぎるくらい仲良しになっているし、同じノリとテンションで喜んでいるようだ。

 

「続きは食ってからにしますかね」

 

 皿を見ればピラミッドのように山盛りの唐揚げができている。

 

「四人で食べれる量なのでしょうか、あれは……」

「涼は一人で食べきりますよ、あれ」

「涼さんのお腹はどうなってるんですか?」

「さて……? そればっかりは付き合いの長い俺にも分からないんですよね、これが」

 

 割と本気で肩を竦めて、香は二人が唐揚げを運ぶテーブルへと向かうのだった。

 





【Idle Talk】
 白凪さん的に、実は香くんの顔は結構好みの顔。
 これで年下ではなく同い年くらいか年上ならもっと良かったのに――とすら思っている。
 ただ端々から感じる軽薄さと女性にだらしなさそうな気配に対して、昔の知人を思い出し警戒心を抱いている。
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