統一歴1924年 ライン戦線
フランソワ共和国軍の小隊長であった彼は今日も塹壕にこもりながらいつもの任務をこなしていた
まず部下への指示上官への戦線状況報告そして帝国軍の急襲への警戒だ
ここ数日ライン戦線全体がどうにも動きがない、帝国の奴らが静かすぎる おそらくライン戦線のどこかで強襲攻撃を計画しているはずだ
戦略規模での大規模攻勢か、それとも戦術規模での揺さぶり攻勢かは分からないが己の経験からくる勘が不穏な兆候を告げていた
そんなことを考えていた直後だった、耳をつんざく轟音と共に凄まじい衝撃波が己を襲ったのは
「クソッ!!おい生き残ってるやつはいるか!!」
幸い爆心地から離れていたためか幸運にも生き残っていた彼は即座に己以外の生き残りがいないか探し出す
そして爆心地の上空を見上げた時彼は悟った、己の絶望的な不運と防衛部隊の壊滅を
彼の網膜は映し出す、天にすら届き今もなお広がりつつあるキノコ雲とその傍らに飛ぶ人知を超越した魔法を放った一人の女魔導士
ライン戦線において知らないものは居ない「ラインの悪魔」と並び称される災厄の魔導士「天使」の存在を
小隊長は数秒ほど我を忘れて「天使」を見つめていた、破壊と死とともに空を飛ぶ彼女はあまりにも美しく残酷でそれこそ彼は眼上の「天使」に聖書で読んだ残酷で冷酷な神の記述と重ね合わせていた
直後「天使」の持つ小銃から眩い閃光が放たれた
光は塹壕陣地を一直線に横切り、次の瞬間天すら焦がしつくさんとする爆炎が至る所で巻き起こった
フランソワの小隊長が最後に見たのは己に迫りくる魔力と火薬が織りなす裁きの天炎だった
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メアリースーは自分が才に恵まれていることを知っている
直接的な戦闘方面では敬愛するターニャ・デグレチャフ少佐すら大きく上回る
絶大な魔力から繰り出される魔法出力は全ての魔導士を超越する
防殻は重砲の直撃すら弾き飛ばし、空を飛べば音速を超越して機動し、術式と併用した弾丸は一発で直径1kmを消し飛ばす
多少練度の高い航空魔導士部隊ごときでは触れることすら叶わぬ絶対的な力量の差
だからこそメアリー・スーは帝国でたった一人の戦域支配級航空魔導士としての戦力評価がなされている
ただ一人で一個航空魔導士師団に匹敵する存在
その力はまさに天災と呼ぶに相応しい
だがこの力を過信してはいない、この世では力では解決できない問題もあるからだ
己の武力は適切なタイミングで適切な場所に投入されてこそ最大の効果を発揮する
それこそが己が祖国、帝国に究極の勝利をもたらし世界に我らが神の威光を知らしめることにつながるのだ
デグレチャフ少佐が予測するにはこれから帝国は世界との戦争に突入する
合衆国も連邦も協商も帝国を滅ぼすために史上最強最大の軍を編成しこの大陸に投入してくるだろう
帝国魔導士とそれに支援された帝国機甲師団がその全てを叩き潰し滅ぼしたとき
世界は帝国こそが神の意志の執行人であることを知るのだ